戦国異伝
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第百九十八話 石田三成という男その二
「話してもいいことはないと思いますが」
「いえ、しかしです」
「それでもでござるか」
「左様です」
こう返すのだった。
「石田殿は天下の漢の一人です」
「そう仰いますか」
「ですから」
それで、というのだ。
「これからもお願いします」
「そう言われるか」
「それにここにはおられませぬが」
他にはというのだ。
「前田殿もです」
「前田慶次殿ですな」
石田がここで言って来た。
「あの御仁ともです」
「お話したいと」
「そう仰るか」
「はい、是非」
幸村はその目に強い輝きを宿らせて言うのだった。
「そう思っております」
「では今度です」
石田がすぐにだ、幸村に応えた。
「慶次殿とお会い出来る様に」
「その様にですか」
「前田殿とお話しておきます」
「有り難きお言葉、それでは」
「はい、では」
こう話してだった、そのうえで。
幸村は二人とさらに茶を飲んでいく、そしてだった。
その中でだ、幸村はこうも言った。
「では石田殿は」
「はい、直訴もです」
己の領地でのそれもというのだ。
「許しております」
「そこまでされていますか」
「民に言いたいことがあれば」
それならというのだ。
「聞きたいと思いまして」
「それで、でござるか」
「はい、それがしは許しております」
己の領地の中でというのだ。
「直訴を」
「何と、直訴を許すとは」
「何と心の広い」
「しかも肝の太い」
「凄い御仁なのか」
幸村の後ろに控える十勇士達も唸るのだった。
「そこまでとは」
「見事な」
「そこまでされるとは」
「何という」
「いや、それがし感服しました」
まさにとだ、幸村も言うのだった。
「石田殿はそこまでの方ですか」
「左様ですが」
「まことに民のことを考えておられるのですか」
「民あっての国です」
それで、とだ。石田は幸村に表情を変えずに返した。
「ですからそれもです」
「あるべきだと」
「それで殿もです」
信長もだというのだ。
「安土に意見の箱を置いておられます」
「そこに言いたいことを書けと」
「名を書かずともよいからと」
「そうしてでござるか」
「左様です」
信長もだというのだ。
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