遊戯王デュエルモンスターズ ~風神竜の輝き~
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第3章 新たなる好敵手
第15話 風神竜の導き
バラムのフィールドに《暗黒界の龍神 グラファ》が2体並び、圧倒的に不利な戦況に追い込まれていた遊雅。
しかし、直前に燈輝から受け取っていた起死回生のカード、《烈風の宝札》がきっかけとなり、見事、2体のグラファを除去しつつ、バラムに大ダメージを与える事に成功する。
しかし、それを引き金にバラムは怒気を強め、攻勢に転じ始めるのだった。
「俺のターン、ドロー!」
バラムはドローカードを確認して、すぐさまそれを発動した。
「魔法カード、《暗黒界の取引》発動!お互いのプレイヤーは1枚ドローし、手札を1枚捨てる!」
遊雅とバラムはお互いにカードをドローし、そして手札を1枚捨てる。
「俺は手札から《暗黒界の武神 ゴルド》を捨てる!そしてゴルドは手札から捨てられた場合、墓地から特殊召喚できる!」
バラムのフィールド上に、前回のデュエルで遊雅にとどめを刺した、黄金の悪魔が現れる。
「更に、《暗黒界の狂王 ブロン》を通常召喚し、2体の暗黒界を手札に戻す!墓地から《暗黒界の龍神 グラファ》2体を特殊召喚だァ!!」
狂ったように声を張り上げながら、バラムは特殊召喚を宣言する。
先程召喚されたゴルドと、たった今現れたブロンは地中に引きずり込まれ、そこから2体のグラファが再び姿を現した。
「くっ、だが攻撃力は俺のデルフォイアの方が上だ!」
「ひゃはははははっ!!攻撃力ゥ!?そんな物飾りに過ぎんわァ!!俺は2体の《暗黒界の龍神 グラファ》でオーバーレイネットワークを構築ゥ!!」
「オーバーレイだって!?」
2体のグラファが、巨大な闇を凝縮したような球体となる。
その2つの球体は交じり合い、更に巨大な闇の球体となった瞬間に、それは弾け飛んだ。
「哀れな傀儡よ、生者を蝕む呪いと共に、今現出せよォ!」
おぞましい形相で、バラムは新たなモンスターを呼び出す
「エクシーズ召喚!!呪い殺せェ!《No.15 ギミック・パペット-ジャイアント・キラー-》!!」
闇の中から現れたのは、巨大なクレーンで吊るされ、胸部に大きく穴が空いた恐ろしい操り人形だった。
《No.15 ギミック・パペット-ジャイアント・キラー-》
★★★★★★★★ 闇属性
ATK/1500 DEF/2500
【機械族・エクシーズ/効果】
レベル8モンスター×2
自分のメインフェイズ1でこのカードのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除き、相手フィールド上の特殊召喚されたモンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターを破壊する。
破壊したモンスターがエクシーズモンスターだった場合、さらにそのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。
この効果は1ターンに2度まで使用できる。
「これが……エクシーズモンスター……」
「驚くのはまだ早いぜェ~?俺はジャイアント・キラーの効果を発動する!オーバーレイ・ユニットを1つ取り除き、特殊召喚されたモンスター1体を破壊する!」
「なにっ……!?」
ジャイアント・キラーの周りを回っていた黒い球体の1つが、ジャイアント・キラーに吸収される。
直後に、ジャイアント・キラーは自身の指から伸びる糸を、《風纏う騎士 デルフォイア》に巻きつけ、自分の元に引き寄せる。
デルフォイアはそのままジャイアント・キラーの胸部に空いた穴に放り込まれ、その中に備え付けられたローラーによって押し潰されてしまった。
「デルフォイアっ!?」
「ふんっ、これがエクシーズモンスターなら貴様にダメージを与えられたんだがな。だが、貴様には苦痛を味わってもらうぞ!魔法カード、《鬼神の連撃》を発動ォッ!!」
《鬼神の連撃》
魔法カード
自分フィールド上に表側表示で存在するエクシーズモンスター1体を選択し、そのオーバーレイ・ユニットを全て取り除いて発動する。
このターン、選択したモンスターは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。
「自分のエクシーズモンスターのオーバーレイ・ユニットを全て取り除く事で、このターン、そのモンスターの2度の攻撃を可能にする!そしてバトルだ!ジャイアント・キラーで、貴様へダイレクトアタック2連打ァッ!!」
ジャイアント・キラーの胸部の穴から、巨大な砲塔が現れる。
残った1つの黒い球体がジャイアント・キラーに吸い込まれると同時に、砲塔から強力なエネルギーが迸り始める。
そしてそれは、バラムの号令によって、2回連続で撃ち出された。
黒いエネルギー弾は遊雅の右肩と左の脇腹を貫く。
その瞬間、遊雅は自分の意識を手放しかけた。
想像を絶する痛みが彼を襲ったからだ。
「あああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
言葉にならない叫びを上げながら、遊雅は貫かれた箇所を両腕で押さえ、まるで自分の体を抱きしめるような格好で崩れ落ちる。
「ふっははははァッ!!痛いだろうッ!?このデュエルはなァ、ダイレクトアタックの痛みがプレイヤー自身に伝わるんだよォッ!ゾクゾクするだろォッ!?」
そんな遊雅の様子を見ながら、バラムは恍惚としたような、あるいは狂気に取り憑かれたような、醜悪な表情で喚き散らす。
遊雅は、立ち上がる事ができなかった。
◇◆◇◆◇◆◇
燈輝は火凛の居場所がわからず、ひたすらに森の中を駆け回っていた。
一度遊雅と合流しようと考えた彼は、デュエル・ディスクのディスプレイ上で遊雅のパーソナル・データを覗いた瞬間に、驚愕する事になる。
表示されていたのは『NOW DUEL』と言う文字列。
「遊雅……まさか奴とデュエルをしていると言うのか……!?」
その瞬間に、燈輝は再び走り出していた。
そこにきっと火凛がいると確信して、そして、生まれて初めて出会えた好敵手に加勢するために。
◇◆◇◆◇◆◇
南雲 遊雅
LP/3400→400
「はぁっ、はぁっ、くっ、そぉっ……!」
「哀れだなァ、南雲 遊雅ァッ!立てよ……まだ死闘は終わってないんだぜェッ!?リバースカードを1枚セットしてターンエンドだァッ!」
「くぅっ……俺の、ターンっ……!」
覚束ない足取りながらも、遊雅は何とか立ち上がる。
しかし、カードをドローしようとしても、右腕が思うように動かなかった。
先程の激痛によって、遊雅は肩から先に力を入れる事ができなくなってしまっていた。
(くそっ、動いてくれ……動いてくれよっ……!)
少しすると、徐々に腕を動かせるようになり始める。
しかし、デッキの上に右手を置いてから、再び動かせなくなってしまった。
(頼む……ここで、何か逆転のカードを引いてあいつを倒さないと……だから、早く、動いてくれ……!)
遊雅が強くそう念じると、突如、デッキの1番上のカードが、眩く輝き始める。
驚いてそれを凝視する遊雅の耳に、聞きなれたあの声が聞こえて来た。
「……フレスヴェルク……?」
それは遊雅の相棒、風神竜フレスヴェルクの咆哮だった。
そしてその1番のパートナーの声は、遊雅に大きな勇気を与えてくれた。
「……相棒、俺を導いてくれっ!ドローっ!!」
勢いよくドローしたそのカードは、デッキに入れた憶えはないどころか、遊雅がその存在自体を全く知らないカードだった。
「このカードは……よしっ、こいつならっ……!俺は、《風神の巫女 ネーシュ》を召喚!」
遊雅のフィールド上に、翠緑色の長い髪をなびかせながら、髪と同じ色が所々に混じった巫女装束に身を包んだ少女が現れる。
《風神の巫女 ネーシュ》
☆☆☆ 風属性
ATK/1000 DEF/1500
【魔法使い族・効果】
①:このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから風属性モンスター1体を選択して発動できる。
選択したカードを墓地に送る。
②:①の効果を発動した次の自分のスタンバイフェイズ時、自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードをリリースする事で、以下の効果から1つを選択して発動できる。
●デッキからレベル4以下の風属性モンスター1体を選択して手札に加える。
●自分のデッキから風属性モンスター1体を選択して墓地に送る。
●自分の墓地に存在する《風神の巫女 ネーシュ》以外の攻撃力2000以下の風属性モンスター1体を選択して自分フィールド上に特殊召喚する。
《風神の巫女 ネーシュ》
ATK/1000→1500 DEF/1500→1100
「ネーシュの効果発動!召喚、反転召喚、特殊召喚に成功した時、デッキから風属性モンスター1体を墓地に送る!その効果で、俺は《フレスヴェルク・ドラゴン》を墓地に送るぜ!」
「ほう……自ら風神竜を葬るとはな」
「見せてやるぜ。これが、フレスヴェルクが俺に示してくれた可能性だ!リバースカードオープン!《風神竜の復活》!風属性モンスター1体をリリースし、墓地から《フレスヴェルク・ドラゴン》を特殊召喚する!」
遊雅がカードの発動を宣言すると、《風神の巫女 ネーシュ》が目を閉じ、両手を左右に広げた格好で、宙に浮く。
そしてその背後に、透き通った《フレスヴェルク・ドラゴン》の姿が現れた。
間もなく、風神竜の幻影の中に、風神の巫女は取り込まれる。
一瞬の輝きによって遊雅とバラムの目が眩んだ隙に、蒼い鱗を輝かせながら、雄々しき風神竜はその姿を現していた。
「《風神竜の復活》で特殊召喚された《フレスヴェルク・ドラゴン》は、攻撃力が500アップする!バトルだ!ゴッドバード・スラスト!!」
《フレスヴェルク・ドラゴン》
ATK/2500→3000→3500 DEF/1800→1400
《フレスヴェルク・ドラゴン》が、ジャイアント・キラーに向かって突進する。
それと同時に、バラムはカードの発動を宣言した。
「罠カード発動!《ガード・ブロック》!このターンの戦闘ダメージを1度だけ無効にし、カードを1枚ドローする!」
《ガード・ブロック》
罠カード
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、自分のデッキからカードを1枚ドローする。
「ジャイアント・キラーは破壊されるが、この戦闘によるダメージは0だ!」
《フレスヴェルク・ドラゴン》が、ジャイアント・キラーの胸部の穴を、その鋭い嘴で突き破る。
それによって、ジャイアント・キラーは消滅してしまった。
「ひゃっははははァッ!残念だったなァッ!俺は無傷だぜェッ!?」
(くっくっくっ、ドローしたのは《手札抹殺》……次のターンに召喚したブロンと、捨てられたゴルドを手札に戻して2体のグラファを特殊召喚すれば、俺の勝ちだッ!)
バラムは心の中で、そのように算段をつけていた。
しかし、遊雅は余裕の表情でこう言い放つ。
「……へっ、そいつはどうかな!」
「何だとっ……!?」
「《風神竜の復活》には、もう1つ追加効果が存在する。特殊召喚された《フレスヴェルク・ドラゴン》はこのターン、2回攻撃する事ができるって効果がな!」
「2回攻撃……だとっ……!?」
「《ガード・ブロック》がダメージを無効にしてくれるのは今の戦闘のみ!もうお前の身を守る物は何もないぜ!バトル続行だ!フレスヴェルクでダイレクトアタック!追撃のゴッドバード・ストライク!!」
バラムの上空に控えていた《フレスヴェルク・ドラゴン》が、急降下しながらバラムへ突進する。
その巨体が、バラムの体を勢いよく跳ね飛ばした。
「ぬあああぁぁぁぁっ!!!!」
バラム
LP/1900→0
バラムの断末魔と同時に、フィールドは消滅する。
《フレスヴェルク・ドラゴン》も遊雅の頭上に舞い戻り、1度咆哮してから、遊雅のデュエル・ディスクへ戻って行った。
「……俺の勝ちだ。さぁ、そいつを渡してもらおうか」
「くっ、貴様……これで終わったと思わない事だなっ……!」
バラムは憎しみのあまりに、掌に爪が食い込むほど手を強く握り締める。
そして、唇を噛み締めながら遊雅を睨み付けた。
「遊雅、無事かっ!?」
丁度そこへ、血相を変えた燈輝が駆け込んで来る。
バラムは旗色が悪いと悟ったのか、ローブを翻しながら、森の中へ走り去って行った。
「逃がすかっ……遊雅、彼女を頼むっ!」
「分かった。そっちを頼むぞ、燈輝!」
お互いにそれぞれの案件を任せながら、2人は自分の役割を全うするために行動を再開する。
燈輝は逃げたバラムを追って森の中へ、遊雅はひとまず、火凛の様子を確認する。
どうやら、見える範囲には外傷はないようだった。
次に遊雅は、試しに火凛の体を揺すりながら声をかけてみる。
「おい、大丈夫か。しっかりしろ!」
しばらくそうしていると、閉じていた火凛の瞼が微かに揺れ動き始める。
「ん、んんっ……?」
そして、彼女はゆっくりと瞼を開ける。
そこに広がっていたのは、真っ暗な森の中の景色。
何より印象的だったのが、自分の目の前で安堵の表情を浮かべている、見知らぬ少年の姿だった。
「よかった、大丈夫そうだな」
「え、えっと……?」
何が起こっているのか分からない火凛は、ひとまず、現状を分析する。
辺りに誰もいるはずのない森の中で、恐らく眠っていたか気を失っていたかしていた自分の肩を掴む、見知らぬ男性。
それらの状況から、火凛は自分が置かれている状況を確信した。
もっとも、それは曲解極まりない結論であったが。
「な、何のつもりっ!?」
「えっ、何のって――おわぁっ!?」
遊雅が疑問を口にする間もなく、彼は火凛に強く突き飛ばされた。
この瞬間から、遊雅の方も何が起きているのか理解できなくなっていた。
「わ、私に何をしようとしていたの!?」
「うぇっ!?ち、違う!俺はお前を助けようと――」
「助ける?私はさっきまで宿にいたんだよ!何でこんな所に……あっ」
一通りまくし立ててから、火凛は何かに気付いて急に口を閉ざした。
「そう言えば私……知らない人に、何かされて……」
「……詳しい事は知らないが、燈輝から俺に連絡が来たんだ。ACSの生徒が1人、怪しい奴にさらわれたってな」
「咲峰君が……えっ?っていう事は、君は咲峰君の知り合いなの?」
「ああ。南雲 遊雅って言うんだ」
「南雲 遊雅……って、それって咲峰君が昼間話してた……!」
再び何か重大な事に気付いた様子の火凛をよそに、遊雅は説明を再開する。
「話を戻すぞ。燈輝から連絡が来た俺は、燈輝と一緒にお前を探していたんだ。そして、ついさっきお前をさらった奴を撃退して、俺は気を失ってたお前の様子を見てた、ってわけだ」
「そうだったんだ……咲峰君は?」
「逃げた犯人を追って行った。無事だといいんだが……」
「そうだね……ねぇ、君が助けてくれたんだよね?」
「えっ?あー、まぁ、そう言う事になんのかな?」
遊雅は歯切れ悪くそう言う。
当の本人は、途中から『誘拐犯を撃退する戦い』から『《フレスヴェルク・ドラゴン》の因縁を巡る戦い』にシフトチェンジしてしまっていたため、人を助けたと言う実感がなかったのだ。
そんな様子の遊雅に、火凛は精一杯の笑顔で謝辞を述べた。
「ほんとにありがとう。君が助けてくれなかったら、どうなってたか分からなかったよ」
「ど、どういたしまして。けど、礼なら燈輝に言ってやれよ。お前がさらわれたのに逸早く気づいたのもあいつなんだし」
「うん。あとでちゃんと言っとくよ。あっ、私は霧島 火凛って言うんだ。よろしくね」
「おう、よろしくな」
火凛は自己紹介に次いで、遊雅にこのような言葉を投げかけた。
「咲峰君から君の話聞いて、私、君にすごく会いたかったんだ。だから、嬉しいなっ」
「そ、そうか……ところで、燈輝は俺の事何て言ってたんだ?」
興味本位で遊雅はそのように質問する。
しかし、火凛から返って来た答えは、遊雅の頭を少しばかり混乱させるような内容だった。
「んーっとね……お互いのモンスター達がすごく楽しそうにデュエルしてたって。そんな人と今までデュエルした事なかったから、きっと何かの才能があるんだって」
「……モンスターが楽しそう?」
「そうだよ。あっ、そうだ、出来れば秘密にしておいて欲しいんだけどね……私、精霊が見えるの」
「精霊って?」
「デュエル・モンスターズのカードに宿った魂の事だよ。君のデッキって、風属性デッキ?それとも、鳥獣族デッキ?」
「えっ?えーっと……一応、風属性で統一してるが、何で分かったんだ?」
「君の隣に丸っこくて可愛い鶏さんと、黒い翼が生えた……鳥人、かな?そんな感じのモンスターの精霊が見えるから」
「丸っこい鶏と、黒い翼が生えた鳥人……って」
遊雅はデッキケースから、思い当たる2枚のカードを取り出す。
取り出した《こけコッコ》と《バード・マスター》の姿は、いずれも火凛の言う特徴と合致していた。
「……ほ、ほんとに見えるのか?」
「うん!咲峰君は私と違って、精霊の姿までは見えないけど、気配くらいなら感じ取れるみたいなんだ。だから、君とデュエルした時に、モンスター達が楽しそうにしてた、って感じたんだと思う」
「そ、そうなのか」
「そう言う事!あっ、あとそのデッキから何か凄い力が出てるね。そんなに強いカードを持ってるの?」
「えっと……まぁ、そうだな。俺の切り札と言うか、相棒というか」
「そうなんだ!ますます君に興味が出て来たよ!ねぇ、今から私とデュエルしない!?」
「えっ、い、今から!?」
「そう!ねぇ、いいでしょ!」
目を輝かせながら懇願する火凛と対照的に、遊雅はもう宿に戻って早々に休みたい気分だった。
なので遊雅は、もっともらしい理由を掲示して、デュエルを回避する事にする。
「えーっと、あれだ。そろそろ燈輝が戻って来るかもしれないし、やめておかないか?」
「えぇ~……まぁ、それもそっか。それじゃあさ、君の連絡先教えてくれない?」
「俺の?何でだ?」
「だって、デュエルしたい時に連絡先知らなかったんじゃ、不便じゃない?」
「あ、あぁ、そう言う事か。構わないぜ」
そして、2人はお互いのデュエル・ディスクのパーソナル・データを交換し合う。
心底嬉しそうに、火凛は遊雅に再び謝辞を述べた。
「ありがとう!それじゃあ、また連絡するね!」
「おう。いつでも受けて立つぜ」
「うん!……それで、えーっと……これからどうすればいいかな?」
「そうだな……このままここで待ってれば、多分燈輝が戻って……おっ、丁度よかった」
会話の途中に、燈輝が2人の元へ戻って来た。
「燈輝、どうだった?」
「駄目だった。追い詰めたと思ったんだが、その途端にどう言うわけか意識を保つのが難しくなってな。何とか持ち直した頃には、既に奴はどこにもいなかった。すまない」
「そうか……いや、お前が気にする事じゃない。火凛にも聞いたが、何かあいつ、妙な力が使えるみたいだからな」
「そのようだな、用心するとしよう。それはともかく霧島、目が覚めたんだな。安心したよ」
「うん。咲峰君が気付いてくれて助かったよ。遊雅君に連絡もしてくれたお陰で」
火凛の言葉を聞いて、燈輝はちょっとした悪戯心を芽生えさせた。
「ほう、もうお互いに名前で呼び合うような関係になったのか」
「ちょっ!そ、そんなんじゃないよ!?」
「ん?どう言う意味だ?」
遊雅は燈輝の言っている意味が理解できない様子だった。
一方で火凛は色恋沙汰に敏感な華の十代女子。燈輝の言葉をそのような意味で受け取り、顔を真っ赤にして猛反論し始める。
そんな彼女の様子を、燈輝は微笑しながら楽しんだ。
「冗談のつもりだったんだがな。そんなに反発すると言う事は、満更でもないと受け取ってもいいのか?」
「も、もうっ、咲峰君の馬鹿っ!!」
「お、おーい、俺にも説明してくれないかー……?」
「遊雅君は知らなくていいの!もうっ、早く宿に戻ろう!」
燈輝にからかわれたと気付いた火凛は、不満そうに1人で宿へ戻って行った。
取り残された遊雅と燈輝も、その後を追いかける。
特に遊雅は、火凛がどうして急に怒り始めたのかを理解できていなかった。
「何であいつ怒ったんだ?」
「遊雅……お前はもう少し勉強が必要みたいだな」
「何だよ!あいつが怒ったのと俺が勉強できないのに何の関係があるんだよ!?」
「そう言う意味じゃないさ。はははっ、本当に面白い奴だな、お前は」
笑う燈輝と不満を露わにする遊雅。
あのような事件が起きた直後だと言うにも関わらず、そんな楽しげな雰囲気のまま、2人はそれぞれの宿へ戻って行った。
後書き
※追記※
一部、台詞のミスを修正しました。
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