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美しき異形達

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第三十八話 もう一つの古都その八

「確かに遠い場所にあったけれど」
「同じ奈良県でも」
「それでもね。そんなにね」
「凄いものと思わなかったのね」
「本当にね。けれどね」
 成長するにつれてだったのだ、裕香も。成長は心身のことだけでなくそうしたことを知ることもまた、なのだ。
「今は違うわ」
「本当に凄い大仏さんよね」
「奈良時代に作ったのよね」
「初代はね」 
 その聖武帝が建立を命じられたものである。
「そうだったわ」
「あんな昔にこんな大きなものが出来たのよ」
「ううん、そのこともね」
「凄いでしょ」
「ええ、そのこともね」
 向日葵も言う。
「凄いことよね」
「相当な国力を使って作って」
「日本を守ってくれているのね」
「そうなの、この大仏さんはね」
 向日葵はその巨大な大仏を見上げながら裕香に話した。この辺りはやはりお寺の娘だけはあるということか。
 その話をしつつだ、薊がこんなことを言った。
「立ったらもっとでかいよな」
「もうこの本堂の屋根突き破るわよ」
 菊がその薊に顔を向けて応える。
「それこそね」
「そうだよな」
「まさに怪獣よ」 
 そこまで大きいとだ、菊は言った。
「それクラスの大きさよ」
「じゃあ日本が本当にやばいとな」
「この大仏さんが立ち上がって?」
「それで戦うとかな」
「そんなことはないでしょ」
「ないか、やっぱり」
「特撮じゃないから」
 菊は笑って薊に話した。
「流石にね」
「だよな、幾ら何でも」
「そうしたら本当に面白いけれどね」
「座っていても仏罰を与えると思うわ」 
 菫はこう二人に話した。
「この大仏さんなら」
「そっちか、あるとしたら」
「そう、立ち上がる必要はないでしょ」 
「この大仏さんならか」
「もうそんなことしなくても」
「元々持ってる力でか」
「そう、普通に成敗とか出来るでしょ」
 不埒者に仏罰を与えて、というのだ。
「この東大寺はこの大仏さんのお陰で日本有数のパワースポットになってるし」
「ううん、そうなるんだな」
「ええ、まあ普通は大仏さんに悪いことはしないわ」
 普通の人間は、とだ。菊も言う。
「落書きしたりとか」
「しそうな馬鹿もいるけれどな」
 そうした愚か者は何時でも何処でもいる、残念なことに。
「それでも普通はしないよな」
「流石にね」
「だよな、しかしこうして見ていると」
 また言う薊だった、大仏を見上げつつ。
「こんなでかい仏像他にはないよ」
「鎌倉にも大仏さんがいるわね」
 菖蒲が薊に彼女がいた神奈川のことを問うた。
「確か」
「ああ、あの大仏さんは中に入られるんだよ」
「そうよね」
「それでもっと小さいんだよ」
「こうした感じではないのね」
「また違うな、同じ大仏さんでもな」
 それでもというのだ。
「全然違うよ」
「そんなに違うか」
「ああ、こっちの大仏さんの色彩がな」
 それが、とだ。薊は大仏の細かい部分まで見て話す。 
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