ドリトル先生と学園の動物達
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第八幕その五
「それだけだよ」
「だから先生はもっとね」
「こうしたことも学問だから」
「そっちの学問にも励んだら?」
「もっとね」
動物達は先生にアドバイスするのでした。
「恋愛学」
「これだけ言ってもわからないことにびっくりしてるけれど」
「それでもね」
「試しに日笠さんに先生から声かけてみたら?」
「自分から女の人に声をかけるって?」
そうアドバイスを受けてです、先生は。
ちゃぶ台のところに座ってお箸に鰯の煮付け、晩御飯のおかずを持ったままです。飛び上がらんばかりに驚いて言いました。
「それは紳士のすることじゃないよ」
「イタリア人は普通にするよ」
「イタリア人の紳士はね」
「フランス人もするし」
「それは紳士とか関係ないんじゃ」
「そう思うけれど?」
「それも紳士なの?」
動物達は先生の今の言葉にも突っ込みを入れます。
「何か違うんじゃ」
「そこはね」
「どうにもね」
「先生の勘違いじゃないかな」
「いやいや、女の人には礼節を守ってだよ」
先生の主張です、紳士についての。
「だからね」
「自分からはなんだ」
「声をかけないんだ」
「そんなことしないよ」
とても、というのです。
「紳士はね」
「それ紳士かな」
「紳士はそうするのかな」
「違うんじゃないかな」
「ちょっとね」
「どうにもね」
動物の皆は首を捻って言うのでした。
「何かね」
「先生だけじゃないの?」
「先生だけが女の人に声をかけないんじゃない?」
「それはさ」
「先生は確かに紳士だけれど」
このことは間違いありません、先生が礼儀を失うことはありません。いつも温厚で公平で心優しく織田やな人です。
しかしです、先生が女の人に声をかけないことが紳士かといいますと。
「紳士でも女の人に声かけるよ」
「そうして交際してるよ」
「女の人にも確かにマナーを守ることは大事だけれど」
「エチケットはね」
「けれどね
「エチケットを守っているのなら」
女の人に対して無礼でなければというのです。
「別にね」
「声かけてもいいじゃない」
「迷惑をかけないと」
「先生誰にも迷惑かけないし」
「それならいいじゃない」
「声をかけても」
「そうかな、僕はね」
ここまで言われてもです、どうしてもと返す先生でした。
「女の人にはね」
「声をかけないんだ」
「どうしても」
「そうしないんだ」
「絶対に」
「絶対にじゃないけれど」
それでもというのです、先生は。
「いや、やっぱりね」
「紳士は女の人に自分から声をかけない」
「そういうものだっていうのね」
「僕は自分が紳士とは思っていないけれど」
「紳士でありたいと思っている」
「だからよね」
「うん、そういうことはしないよ」
先生がこのことについて言うことは変わりません。
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