Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-
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A's編
第四十五話 管理局特別会議『魔術師 衛宮士郎について』
side リンディ
裁判が始まって早一ヶ月。
だけど裁判自体はそれほど進んでいない。
今現在で言えば完全に止まってしまっている。
原因は二つ。
一つは事件の規模が規模だけに裁判での事件状況の確認や証拠物品の証明などが多いためという事件規模のに伴う資料の多さ。
そしてもう一つはアリシアさんが亡くなった事件が関係しているため。
今回の事件の発端、プレシアさんを行動を起こさせた原因ともいえるアリシアさんが亡くなった魔導実験の事故。
それに関する証言が管理局に残されたものとプレシアさんの証言が大きく食い違っていた。
そこで詳しく調べてみると、当時の上層部に関するデータの一部に改竄や消去された形跡が見つかったのだ。
魔導実験の事故の原因がプレシアさんになく、上層部が何らかの圧力等をかけた可能性が高い。
以上の事から裁判所に再調査を申請し、受理されたため現在再調査中で裁判も一時中断している。
「まあ、そのおかげでプレシアさんとフェイトさんもゆっくり出来るのだからいい事なんでしょうけど」
先ほどアースラの食堂で親子二人でのんびりとお茶をしている二人をみるとそう思える。
それに裁判が始まった直後からフェイトさんが管理局の嘱託魔導師に興味を持ってくれたのもうれしい事よね。
プレシアさんもジュエルシードに関する情報は積極的に教えてくれている。
これだけ協力的なら海鳴の管理者である士郎君との要請と合わせれば裁判後の自由に動く事が出来る可能性は高い。
もっともプレシアさんは魔力の大幅封印ぐらいはあるかもしれないけど。
だけどフェイトさんやプレシアさんの事と同じぐらい、いえそれ以上に難しい件がある。
「正しくは完全に別件というわけでもないけど」
ため息を吐きながらアースラのブリッジで椅子に腰かけ、私を悩ませている会議を思い出す。
先日秘密裏に開かれた会議。
先のジュエルシード事件に関係のある事ではあるけど、内容がジュエルシード事件の裁判の中で話せるモノではない内容のためプレシアさん達はいない。
この会議に参列している方々もそれなりに肩書や役職をもつ方々のみ。
そしてこの会議が開かれた訳というのが
「以上が第97管理外世界の魔術師、衛宮士郎に関する情報です」
管理外世界に存在する管理局の知らない魔法技術を持つ士郎君の存在が管理局に知られたためである。
「リンディ提督。
彼、衛宮士郎の話では何人か同じ魔導師、いや魔術師の存在がいるように思えるが」
「はい。何人か知っているようですが魔術師の特性上、他の魔術師との関わりが薄いため、現状所在は確認出来ておりません。
また衛宮士郎自身も所在は知らないと報告を受けております」
何らかの魔術師組織があれば何らかの接触を考えるのだけど、士郎君の言葉を信じるならその存在はない。
なにより管理局上層部からすれば少しでも多くの魔術師の存在を把握し、技術を知りたいというのが本音なのでしょうけど。
「だが彼は本当にその世界の出身者か?
もしかすれば管理局の存在を知っており管理外世界に逃げただけかもしれんぞ」
「その可能性は低いと思われます。
彼自身が次元世界や管理局、魔導師に関する知識を持っていなかったこと。
そして、彼の魔術自体が今まで見つかった事のない魔法技術だからです」
「だがその世界の国の上層部はそれを把握していないのか?」
「第97管理外世界において歴史的な観点から見てももはや魔法等の存在はゲームや本、空想の存在でしか知られておりません。
ですが過去にはその存在が公にあった可能性もあります」
そう言ってモニターに表示する新たな資料。
「過去には何らかの形で存在したようですが科学技術の向上に伴い消えていった存在と考えるべきだと思います」
今回の魔術に関する事の説明で役立ったのが、第97管理外世界の過去の資料である。
第97管理外世界。
文化レベルBの魔法技術もない世界なのだけどなぜか過去の資料等を調べれば魔法に関するモノが出てくる。
魔術、錬金術を始めとする魔法技術にそれらを記した魔導書。
そして魔術師の存在。
さらに過去の歴史上の出来事には魔女狩りまで存在する。
どういうわけか存在しないといわれる魔術に関する資料が多いのだ。
だけど今回の事に関してはそれこそが重要になる。
第97管理外世界は独自の魔法技術、又はそれに類する技術を持っていたが科学の進歩と共に衰退し歴史から消えた。
つまり士郎君をはじめとする今現在残っている魔術師たちは、衰退した技術を代々受け継いできた最後の生き残りという推測が成り立ち説得が出来る。
そう魔術師の存在に関する推測はたてる事が出来る。
だけどそれが
「ふむ。魔術師の存在については資料不足の上推測するしかないのだ。
我々の知らない魔法技術が管理外世界にあるという真実で十分だろう」
「そうですな。だがリンディ提督。
魔術師、衛宮士郎が我々時空管理局に対し技術提供をする気がないというのは本当か?」
「はい。真実です」
私の返事にざわめく会議室。
そう私達の知らない技術を持つ衛宮士郎がその技術提供を拒む話とは関係がない。
だけどこうしてざわめきに耳を傾ければ大きく意見は二つに分かれる。
一つは管理外とはいえ魔法技術を有しているのだから管理局に従うべきだと声を荒げるいう者。
もう一つは表向きには魔法が存在しない管理外世界であり、当の本人が拒否してるのだから仕方がないという者。
ごく少数ではあるが意見を発さず黙っている者もいるが、意見を発している人数としてはお互いの数はほぼ同じ。
この均衡を見るとあの情報を削除したのは正解だったみたいね。
今回の資料で士郎君の魔術師としての確認済み情報として記載から除外したモノというのは、ジェエルシードを破壊したという情報と破壊した槍に関して。
アースラでの士郎君のとの話し合いの時には、確認済みの資料として記載する予定だった。
だけどこの会議よりも先に信頼できるレティとグレアム提督と相談して削除した。
レティ曰く
「ジュエルシードクラスのロストロギアを破壊する武装の情報など、他の方々がどのような反応するか予測が出来ない」
との事だけどその通りよね。
エクスカリバーという規格外を目にしたせいか、直接見ていないジュエルシードを破壊した槍に関する意識があまかったのかもしれない。
そういった事もあり、ジュエルシードの破壊された事実に関しては管理局が到着前であり、映像等確認する術がない。
それを利用し、資料から記載を抹消したのだ。
ちなみにジュエルシードの一つが破壊された事は、なのはさんとフェイトさんの戦いにより発動、次元震を確認したが、その後ジュエルシード崩壊。
士郎君の関与は不明として、ジュエルシード裁判の資料に後ろの方に少しだけ書いている。
ちなみに士郎君の会議に使われた資料は
-----------------------------------------------------------------------------
住所:第97管理外世界 惑星名称『地球』 日本国海鳴市在住
所属:魔法組織の所属はなし。私立聖祥大学付属小学校 3年1組に在学中
年齢:9歳
使用魔術:武器庫からの自身への武装転送
身体能力強化
(補足)魔術術式を組み込んだ剣等の鍛冶技術有
戦闘タイプ:転送武装、自身が鍛えた魔術武器による接近戦および、弓、投擲による遠距離のオールレンジ
確認武装:盾『プライウェン』
矢『フルンディング』
剣『名称不明』
・
・
・
事実未確認又は詳細不明資料
・
・
・
-----------------------------------------------------------------------------
という構成になっている。
その中で一番量が多いのが『事実未確認又は詳細不明資料』である。
なにせ海鳴に張られている結界、士郎君の研究成果及び研究資料、魔術に関する術式等々、はっきり言えば術式が違いすぎる士郎君の魔術全般が其処にある。
資料のページ数でいえば『確認武装』が多いのだけど、魔力値や士郎君がアースラ内で話していた内容以外の情報はほとんどが映像資料なため情報量としてはそこまでない。
一応『確認武装』と『事実未確認又は詳細不明資料』で分けてはいるけど、実質的にはほとんどの資料が『事実未確認又は詳細不明資料』である。
そして、これらの資料を作るために、記載する情報をまとめたり、資料作成を行っていたクロノやエイミィをはじめとするアースラオペレータスタッフ一同は数日間にわたる徹夜作業で現在はダウン中。
さらにこれとは別に『管理局に関わる意思について』という一ページしかない資料には
『研究成果の漏洩を防ぐために関わる気は基本的にない』
という一文のみがある。
これにもしジェエルシードを破壊した事や破壊した槍の事を確認済の情報に載せようものならどうなるか考えたくもない。
一歩間違えば強硬な手段にでる可能性も捨てきれない。
ただでさえジュエルシード事件の首謀者であるプレシアさんとフェイトさん、そして使い魔のアルフさんの三人を研究成果漏洩を防ぐために、引き渡せという要請。
そのせいで管理局の中には反魔術師派のような派閥までとはいかないが集まりが出来つつある。
ジュエルシードを壊した槍についても、これ以上悪くなりようがない状態になれば、その時に報告する予定だ。
そして、これらの情報操作ともいえる行動
「レティよりもグレアム提督が予想以上に積極的だったわよね」
意外というべきなのかレティ以上にグレアム提督が積極的だった。
なにせ資料の整理や作成などにリーゼ達も協力させてくれたのだ。
だけど積極的になる気持ちもわかる。
「下手に争いになる事を避けたいものね」
資料自体に記載していないエクスカリバーの情報やジュエルシード8つと次元断層の消滅に関してもレティとグレアム提督には話しているのだから。
とはいえ質疑の数は多く私がクタクタになったのは言うまでもない。
「いつもより少し多めでもいいわよね」
最低限のスタッフを残して大半がダウンしているので、ブリッジから動かなくても用意できるように準備しているお茶とお茶請けに手を伸ばす。
そして、砂糖をいつもより一杯多く入れて、喉を潤しながら定期報告の資料に目を通し始めた。
side グレアム
どうにか誤魔化せたか。
「父さま、衛宮士郎の件はどうなりました?」
「ああ、管理外世界という事もあるしばらくは現状維持という事で落ち着きそうだ」
私の言葉にほっと息を吐くリーゼとアリア。
だがこれで安心は出来ない。
とりあえずはテスタロッサ親子を通してだが、接点を潰せば魔術の技術は永遠にわからなくなる危険は冒せないという判断になっため、現状維持となってはいる。
だが現状維持とはいえ現在管理局内でもっとも注目を集めている管理外世界なのは間違いない。
その他の問題もある。
「海鳴市に張られている結界については?」
「海鳴に張られている結界自体はただの感知結界。
といってもこの情報自体がフェイト・テスタロッサと使い魔アルフが衛宮士郎から聞いた情報だからどこまで信用できるか」
「術式は当然のようにミッド式でもないので解析は不能。
結界の維持についても霊脈とかいう、その土地に宿る魔力を使用してるみたいで、クロノ曰く消すなら土地ごと吹き飛ばすしか現状思いつかないと」
「……厄介極まりないな」
ジュエルシード事件の少し前からあの子の監視を警戒して中断していたが、海鳴に張られている結界の存在があるのでいまだに再開できていない。
もしかすれば海鳴の結界は無視できるものかもしれないが衛宮士郎が表舞台に現れたのがあの子の監視を中断した時とほぼ重なるのだ。
そのため何らかの方法で海鳴に入った場合衛宮士郎に感知されるのか判断できない。
クロノ達なら知っているかもしれないが、そんな事を尋ねれば逆に怪しまれる。
そして万が一にでも海鳴に侵入したのが衛宮士郎に知られて戦闘になればリーゼ達がただでは済まない。
クロノとの模擬戦など記録されていた戦闘映像や次元震の影響ということで存在しないとされた映像など確認できるモノは全て確認した。
だが正直得体が知れない上、まだ実力を隠している可能性が高いだろうというのが感想だ。
とはいえ
「アリア、ロッテ、少々危険だが海鳴市に隣接する街から魔法を使わずに海鳴市に入ってみてくれるか。
時期的に考えて闇の書が目覚めてもおかしくない。
多少危険でも海鳴に入る必要がある」
「はい。父さま」
「うん。父さま」
私はあきらめるわけにはいかない。
なんとしてもこの計画を成功させねばならないのだ。
後書き
三日連休なのでいつもより遅く更新です。
休みって素晴らしいですね。
睡眠欲を満たすべく爆睡してます。
寝過ぎて少し身体が痛いぐらいですが・・・
今回は管理局側の動きについての話でした。
それではまた来週
ではでは
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