Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-
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A's編
第四十三話 穏やかな翠屋
はやて家を一旦後にし、急いで家に戻り汗を流す。
これからバイト、特に飲食店のバイトだというのに夜出歩いた後に汗やほこりを落とさずに向かうわけにはいかない。
一応、夕飯後入浴はしているが、至る所を動き回ったのだからしておいた方がいい。
ジーンズに長袖のシャツを着て、家を出て翠屋に向かう。
いつもより若干遅いが遅刻するレベルではないが、軽く早足でいくとしよう。
バックヤードの入り口から入り、更衣室で執事服に着替え、厨房に入ると美由希さんが洗い物をしている。
「おはようございます」
「あ、シロ君。
おはよう。今日は閉店までだっけ?」
「はい」
「今日はなのはも手伝いに出てるから、何かあったらフォローしてあげてね」
今日はなのはも出ているのか。
「了解です」
美由希さんの言葉に頷き厨房を後にする。
その後、カウンターにいる士郎さんと桃子さんにも挨拶をして客席をざっと見回す。
休みの日の昼。
とはいえまだ十二時を回ってはいないので客席は八割程埋まっているが待っている人がいるほどではない。
ピークはこれからだろう。
そんな翠屋の中で
「テーブル三番さん。日替わりランチ二つ、飲み物はブレンドホットとアイスティです」
「は~い」
お客さまからの注文を受け、エプロンを翻し桃子さんに伝えるなのは。
なのはが桃子さんに注文を伝えてから
「おはよう。士郎君」
「おはよう。なのは」
なのはと挨拶をかわす。
「そういえば朝来なかったけど何かあったの?」
「ああ、すまない。あっちの関係で少しな」
なのはが朝に来なかったというのは裏山での朝の魔法の練習に関するものだ。
なのははフェイトと別れてからももっと魔法をうまくなりたいという事で魔法の練習を続けている。
俺もバイトやら魔術の関係がありいつもではないが付き合えるときは付き合っているのだ。
ちなみにフェイトと別れてからの魔法の練習はあまりにもハードだったのでユーノと考え、トレーニングプランを立てている。
「でなのはの今朝の調子は?」
「う、まだまだです」
「まあ、こればかりは慌てても仕方がないから日々の努力だな」
「はい」
俺の言葉になのはが若干項垂れている。
というのも今のなのはの基礎訓練がいまいち伸び悩んでいるためなのだ。
なのはは魔法と関わってからまだ日が浅い。
特に魔法の使用など実戦が初めてだ。
先の事件の際にも魔法の訓練はしたらしいのだが、あの時は今と事情が異なる。
その最たるものが訓練がジュエルシードの回収と普段の生活の合間しか出来ないという時間的な問題である。
要するに初めての実戦が魔法との出会いになり、そのまま実戦に参加したのだから時間が足りなかったのだ。
特にフェイトと出会ってからはそれが顕著となる。
フェイトと出会ってからは砲撃だけでは勝つのが難しい事もあり、新たな魔法の習得が主になっていたのだ。
ユーノ曰く
「短期間でなのはの戦術幅の向上が最優先だったから」
とのこと。
基礎的な訓練がなくともレイジングハートという優秀な相棒となのは自身の膨大な魔力と才能により、魔法の使用自体には何の支障もないのだからある意味すごい事でもある。
まあ、魔術で基礎的な訓練も何もせずいきなり複雑な魔術など実践しようものなら命がいくつあっても足りないだろうが
そういうこともあり、なのはの魔法に関して基礎からやり直しているのだ。
今現在は魔力の効率的な運用のためにデバイスを使用しない状態での魔力のコントロール技能向上。
それと戦いにおいて有効である誘導弾のコントロール向上と飛行の訓練が主体になっている。
「じゃあ、今日はよろしくお願いします」
「ああ、こちらこそ」
二人で挨拶をかわして注文票を持ち、動き始める。
人が増えてくるなか、注文待ちの人を見逃さないように、誰かにフォローの必要がないか周囲に視線を配りながら注文を受け、配膳をして、会計をして、片づける。
「士郎君、ケーキ追加するからフルーツのカットと生クリームお願いしていい?」
「はい。かしこまりました」
そうしているうちにケーキの追加のために桃子さんのフォローに入りつつ、片手間でカウンター席のお客さんのコーヒーや紅茶を淹れる。
そんな事をしているとピークも過ぎ、徐々に客足が落ち着いて来る。
まだお茶をしにくるお客さんやケーキを買いに来るお客さんはいるが、一息つく余裕は出てきている。
「シロ君、そろそろ休憩に入ったらどうだい?」
「そうですね。でもその前にお客さんです」
「こんにちは」
「お邪魔します」
俺が店の扉に視線を向けると同時に入ってくる二人の少女。
「いらっしゃい。アリサちゃん、すずかちゃん」
「いらっしゃい」
アリサとすずかを出迎える士郎さんと俺。
「今、席空いてますか?」
「カウンターでよければ、お嬢様」
すずかの言葉に月村家の時のような言葉で答える俺。
それに二人は微笑しながら
「ならカウンターで」
「そうね」
カウンターに腰掛ける二人。
ふむ。丁度いいか。
「なのは、休憩にはいっていいぞ」
「は~い。あ、アリサちゃん、すずかちゃん」
俺の呼びかけにバックヤードから出てくるなのはは二人の姿を見つけてうれしそうにする。
「アリサちゃんとすずかちゃんと一緒にお茶にすればいいぞ」
「ありがとう、お父さん。
士郎君は?」
「俺は」
「シロ君はカウンターを頼むな。
テーブルは美由希にさせるから」
「ありがとうございます」
というわけでなのはは翠屋のエプロンを外して、アリサとすずかと一緒にカウンターに座り、俺はカウンターのみの担当として少しのんびりする。
二人の習い事の話を聞きながらのんびりと過ごしていると、どういうわけか俺の恰好の話になった。
なんでも
「少年執事のいる店っていう事で口コミで話題になってるのよ」
「うん。お姉ちゃんも大学で話題になってるって言っていた」
とのことらしい。
だが話題になるというのも俺の執事服の恰好が翠屋で一人だけというの関係しているのだとおもう。
翠屋の制服というのは白のワイシャツに男性がズボン、女性はロングスカートに翠屋印のエプロンという落ち着いたものである。
その中で一人だけ執事服を着ているのだから当然目立つ。
初めは驚くお客さんが多かったが常連さんにも顔を覚えてもらい、最近ではそんなに驚かれる事もなくなってきているのだが。
「すごいね」
「あまりうれしくない話題の広がり方ではあるが、どうせならなのはや美由希さん達もエプロンじゃなくてメイド服でも着れば、俺だけが目立つ事もないんだが」
まあ、さすがにそうなると色々話題を呼んで騒がしくなるかもしれないが。
だが
「それはいいわね」
「桃子さん」
「お母さん」
追加のケーキを持ってきた桃子さんに話を聞かれていた。
いや、それ以前にいいってどういう……
「あんまり派手なのはだめだけど、ファリンちゃん達が来ている服ぐらいならいいかもしれないわね」
「お母さん!?」
急に現実味を帯びてきた話になのはが焦る。
さすがにメイド服は着たくないのか俺達に視線を向けるが
「雇い主の方針に口を出すわけにもいかないだろ」
「私としてはなのはのメイド姿見てみたいし」
「うん。私も」
「そんな~」
俺達の言葉に項垂れていた。
ちなみになのはや美由希さんをはじめとする女性従業員のメイド服については試用してみて決めるとは桃子さんの言葉である。
そして、俺は夕方まで翠屋でバイトして、そのまま夕飯をごちそうになり、なのはの夜の飛行訓練を見て帰宅する。
しかし最近の翠屋の夕方までのバイトの際には毎度夕飯を御馳走になっているのはどうにかならないのだろうか。
夕飯の準備の際に桃子さんの技術を見る事も出来るしありがたいのだが申し訳ない。
もっとも桃子さんに勝てるはずがないので最近はあきらめ始めているのが現状だったりするのだが……俺が桃子さんに勝てる日は……来る気がしないな。
そんな事に内心ため息を吐きつつ、シグナム達を俺の家に呼ぶための準備を始めた。
後書き
というわけで一日遅れの更新です。
もう少ししたらなのはのメイド服登場ですよ。
そして昨日、魔法少女リリカルなのはThe MOVIE 2nd A's のBDを予約して来ました。
楽しみだ&A's編を進めるモチベーションが高まっていい感じです。
また来週お会いしましょう。
ではでは
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