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トレジャーハンター

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第二章

「けれどよ」
「それでもか」
「お鍋がどうしても欲しかったの、それにね」
「それに?」
「今度は東に国に行って来るわ」
「東の?」
「そう、あの暑い国にね」
 その国にというのだ。
「砂漠を越えてね」
「あの獅子や象がいるっていう国にか」
「ちょっと行って来るから」
 こう素っ気なく言うのだった。
「暫くお家開けるわね」
「何の目的でだよ」
「まあちょっとね」
「ちょっとであんな遠い国に行くのかよ」
 その東の国はチコリ達が今いる国から気が遠くなる程離れている、広い砂漠を越えて馬で一月もかけて行く。
 その途中盗賊やらモンスターがいる、それで兄も言うのだ。
「無茶だろ」
「無茶を承知で行くのよ」
 こう強く言うチコリだった。
「僕だってね」
「一人でか」
「そう、駄目?」
「全く、森でドラゴンに会いに行ったり」
「闘いにはならなかったわよ」
「そういう問題じゃないだろ」
 ギレックは怒った目で妹に返した。
「それは」
「そう?」
「そうだ、危ないことばかりだろうが」
「トレジャーハンターは危険を顧みないものよ」
 そうして宝なり金を手に入れていくものというのだ。つまりハイリスクハイリターンの仕事というわけである。
「だからいいのよ」
「それであの国にも行くのよ」
「そうするわ」
「それでその香辛料をどうするんだ?」
「普通のはこっちで売るわ」
 商人の様にだ、チコリ達のいる地域は香辛料が馬鹿高く売れるのだ。肉料理には香辛料が必要だがこの地域では手に入らないからだ。
「そうしてね」
「その本来のお目当てはか」
「ちょっとね」
 くすりと笑っての言葉だった。
「考えがあるのよ」
「そうか」
「それじゃあ行って来るわね」
「死ぬなよ」
「ええ、キャラバンと一緒に行こうかしら」
「そうしろ、俺も一緒に行く」
 ギレットは妹があまりにも心配なので自分もと言った。
「丁渡今は仕事の依頼もないしな」
「同じ冒険者として」
「行くからな」
 こう行ってだ、チコリはギレットと共にその東に国に行くキャラバンの中に入ってそのうえで向かった。そして。
 その道中は大変だった、水のない炎天下の砂漠を何日も越え。
 そしてだ、砂漠のモンスター達とも戦った。巨大な蠍が襲い掛かって来たが。
 ギレットは右手から氷の魔法を放ち蠍を攻めてだ、それから。
 チコリはその蠍の甲殻と甲殻の間にナイフを投げて刺した。そうして二人で倒した。
 その蠍の亡骸を見てだ、ギレットはチコリに言った。
「また出て来たな」
「ここモンスター多いわね」
「まさに死の砂漠だな」
 歯噛みして言うギレットだった。
「ここは」
「そうね、けれど今回も倒せたし」
 それに、とだ。チコリは言葉を続けた。
「あと少しだから」
「砂漠を越えられるんだな」
「キャラバンの人達はそう言ってるわよ」
「だといいがな」
「それにね」
 さらに言うチコリだった。 
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