くノ一
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第六章
そのうえでだ、こう彼に言った。
「ではすぐにだ」
「あの家を潰しますね」
「そうするとしよう」
主の決定も下った。
クレバート家はゴンガード家との和解、婚姻を進めながらミザール家に対しても手を打った。皇帝にその事実を伝えたのだ。
すぐに捜査が開始されたがすぐにだった、ミザール家の者達は敵国の一つに亡命した。財産を殆ど持って行って。
領地は押収されたが彼等は無事だった。しかしこれでだった。
「ミザール家を排除し」
「敵を潰したな」
グレアノフはディンギルに返した。
「無事にな」
「はい、何よりです」
「全てはそなたの知略だな」
グレアノフは我が子に微笑みを向けて言った。
「見事だ」
「そのお言葉感謝します」
「忍者をよく使ったな」
「月光をですね」
「あのくノ一をああして使うとはな」
彼女のこともだ、グレアノフは言うのだった。
「それは思いも寄らなかった」
「忍者は。特にくノ一は」
ここでこう答えたディンギルだった。
「伝え聞くところによりますと」
「警護役として戦わせるよりもか」
「はい、ああしてです」
「密偵として使う方がか」
「いいと思いましたので」
それも戦うよりも遥かにだ。
「それで、です」
「ああしたのだな」
「左様です」
「そうなのだな、そうした方がいいか」
「そしてこれからも」
月光をというのだ。
「この様にして使いたいのですが」
「いいだろう」
グレアノフはディンギルのその言葉をよしとして返した。
「それではな」
「はい、ではその様に」
「そしてだ、そなたは私よりも遥かに切れる」
ここでだ、グレアノフはディンギルにこうも言った。
「この度のことでそのことがよくわかった、だからだ」
「それで、ですか」
「これからはそなたに全てを任せる」
家のことをというのだ。
「家督を与える、ではな」
「それでは」
「これから宜しく頼むぞ」
こう我が子に告げたのだった、こうして家督も継いだディンギルは両家の婚姻も無事に結ばせ和解を果たしてだ。両家を宮廷内において大いに栄えさせ権門としたのだった。その後ろには常に東洋から来たくノ一が控えていたことは僅かな者だけが知ることだった。
くノ一 完
2014・11・26
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