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お金

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第一章

                        お金
 御神南は守銭奴と言われている、とかくお金のことにはこだわる。
 それでいつもだ、友人達にこう言っていた。
「やっぱり世の中はね」
「お金っていうのね」
「そうだっていうのね」
「そう、結局はお金よ」
 最後の最後はというのだ。
「命綱よ」
「あんたいつもそう言うわね」
「お金が全てって」
「世の中お金って」
「そう言って止まないわね」
「だってお金はないと何も買えないじゃない」
 シビアにだ、南はこの現実を言うのだった。
「何処に行くこともね」
「まあ遠いとね」
「電車もバスもね」
「お金があってこそ乗れるからね」
「それは確かに現実よね」
「だからよ」
 それで、とだ。また言う南だった。髪は茶色に脱色して長く伸ばしてから軽いパーマを当てている。メイクは濃い目だが睫毛は長く切れ長の目が可愛い。二重もよく似合っている、肌は白めでメイクをしなくても整っている。唇はピンクのルージュがよく似合う。鼻の形もいい。
 小柄だが出ているところは出ている、そして。
 その彼女がだ、ドヤ顔でいつも言うのだ。
「お金がないとよ」
「お金がないとなの」
「それこそだっていうのね」
「命がないことと同じだから」
 それ故にというのだ。
「私はいつも思うのよ」
「まずはお金っていうのね」
「お金が大事だっていうのね」
「まさに命」
「そうしたものだって」
「そう、将来の夢は手堅くお仕事をしてね」
 一攫千金ではなく、というのだ。
「コンスタントに儲けて」
「お金持ちになる」
「そうなるのね」
「ギャンブルも借金もしないわ」
 このどちらもだ、南は全力で否定した。
「若しそんなことをやったら」
「お金がどんどんなくなる」
「アウトだっていうのね」
「株だの先物だのもよ」
 そうしたこともだというのだ。
「手を出したらね」
「リスクあるからね」
「どうしてもね」
「ハイリスクハイリターンだから」
「もっと言えばハイリスクノーリターンだから」 
 相当な技量がないとそちらになる、先物や株は非常に難しい金の儲け方なのだ。それこそ素人がやるものではない。
「だからよ」
「手堅くなのね」
「儲けていくのね」
「私の考えはそうよ」
 強い声での言葉だった。
「お金があってこそ」
「しかも堅実に稼ぐ」
「無駄遣いはしないのね」
「一攫千金は狙わないわ」
 それは決して、というのだ。
「やっぱり手堅くよ」
「だからいつもケチケチして」
「守銭奴に徹してるのね」
「そう、それでだけれど」
 ここでこうも言う南だった。
「実はお金をもっと欲しくなってね」
「ああ、アルバイトね」
「それはじめるのね」
「そのつもりなの、丁渡アイスクリーム屋さんで店員さんの募集してたのよ」
「駅前の、よね」
「あそこのお店よね」
「そう、ミミね」
 店の名前も言うのだった。
「あそこでアルバイトするのよ」
「それでお金をさらに貯める」
「そうしていくのね」
「そのつもりよ、頑張ってお金稼いで貯めるわ」
「何か言ってることがパートのおばちゃんみたいね」
「そうなってきたわね」
 友人達は目を輝かせて言う南の言葉を聞いて言った。 
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