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うっかり失言

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第三章

「他の場所でね」
「つまりお部屋の中で」
「そこで、ですね」
「ホテルは部屋の中に入る場所だよ」
 その目的はそれぞれにしても、というのだ。
「だから部屋を決めたならね」
「わかりました、今から」
「入ります」
 二人もその辺りのことはわかっていてだった、それで。
 二人でその部屋に入った、部屋には大きなベッドがあり赤い独特の灯りで照らされている。そして内装は可愛らしくもありそれでいて淫靡でありだ。
 鏡張りのバスルームもある、二人はその部屋に入ってだった。
 そのうえでだ、二人でベッドに並んで腰を掛けてだった。話をはじめた。
 涼真からだ、理央に問うた。
「あの」
「どうして私がこのホテルとこのお部屋のことを知ってるかよね」
「そう、そのことだけれど」
「それは涼真君もだけれど」
 理央はこのことに言及した、だがまずは自分のことから答えた。
「確かに私大学時代は男の人とはね」
「付き合ってないって言ったよね」
「高校時代は違うけれどね」
「じゃあこのホテルは高校時代に?」
 その彼氏と行ったのではとだ、涼誠はこうも問うた。
「それでかな」
「いえ、大学時代に時々入っていたの」
「けれど理央さんの大学時代は」
「だから。男の人とは付き合っていなかったのよ」
 こう返した理央だった。
「つまりはね」
「ひょっとしてそれって」
「そう、女の人となのよ」
 こう夫に言うのだった。
「大学時代はね」
「レズだったんだ」
「そう、先輩と付き合っていたのよ」
 同性のその人と、というのだ。
「一つ上の。その人が就職してからも」
「じゃあ女の人同士で」
「このホテルにも入っていたの」
 そしてこの部屋にもとだ、理央は全てを話すと決意している顔で涼真に対して真剣な声ではっきりと話した。
「それで知ってたの」
「そうだったんだ」
「驚いたわよね」
「うん、そういう話があることも知ってたけれど」
 それでもと言う涼真だった。
「まさかね」
「自分の奥さんがね」
「そうだったなんてね」
「けれど今はその人とも別れてて」
「僕だけなんだ」
「そう、そのことは安心して」
 くれぐれもというのだ。
「その人も結婚されて。私が涼真君と会った頃にね」
「丁渡いいタイミングだったんだ」
「それでお互い別れてなのよ」
 今はそのレズビアンの関係は途絶えているというのだ。
「だから安心してね」
「だといいけれど」
「私のことは納得したわね、じゃあ今度はね」
「どうして僕がこのホテルを知っているかだね」
 そしてこの部屋をだ。
「それはどうしてだね」
「そう、大学時代は交際相手いなかったっていうけれど」
「うん、そうだよ」
 その通りだとだ、涼真も答えた。
「一人もね」
「そうよね、けれど」
「うん、知ってるよ」
「同性愛じゃないわよね」
 自分の様に、とだ。理央は自分の夫に問うた。
「そちらじゃ」
「違うよ、僕はそっちに興味はないから」
「だからどうして知ってるの?」
「いや、一人でもね」
 交際相手がいなくともとだ、涼真は理央に答えた。
「それでもじゃない」
「ああ、そういうことね」
「そう、男だからね僕も」
 そうした欲求をどうにかする為にというのだ。
「この部屋に入ってね」
「そこから女の人を呼んでたのね」
「そうしていたんだ、あくまでたまにだけれど」
 所謂デリヘルというものである、彼はそうした風俗店を利用していたのだ。 
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