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飛ばない鷲

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3部分:第三章


第三章

「これでな」
「いつもの爆撃ですが」
「これだけで」
「いいのだ。そして結果はだ」
 アイゼンハワーの言葉はここで強いものになった。
「そろそろ出て来るらしい」
「そろそろ出て来るといいますと」
「ではあの厄介なジェット機がいなくなるのですか」
「そうらしい。それではだ」
 アイゼンハワーはここでさらに言った。
「地上部隊はさらに東に進めさせる」
「はい」
「わかりました」
 アイゼンハワーのその言葉に一斉に応えた参謀達だった。
「ではこのままフランス全土を奴等から奪還し」
「いよいよドイツ本土に」
「そうだ。勝利は間近だ」
 彼はまた言った。連合軍は既にノルマンディーに上陸している。そこから一気にフランス全土に兵を進めている最中なのである。
「それではだ。さらにな」
「はい、勝利の為に」
「兵を進めましょう」
 参謀達は敬礼して彼に応えた。連合軍の戦いは佳境に入ろうとしていた。
 そして航空部隊もだ。暫く兵器工場や燃料工場への攻撃が続いていた。しかし今回は違っていた。彼等が向かったその場所は。
「そうか。やっとか」
「そうだよな」
 今回はその目的地に向かいながらこう話すのだった。
 向かうのは空港だった。そのメッサーシュミット262の部隊がある空港である。そこに爆撃を加えるべく向かっているのであった。
「いいか、来るぞ」
「わかってるさ」
 戦闘機の部隊はもう緊張していた。
「奴等は手強い」
「っていうか相手にならないからな」
「正直言ってな」
 彼等は敗北を覚悟していた。しかしであった。
「んっ、まだか?」
「来ないのか!?」
 敵が来ると思われたが彼等はまだ来なかった。
 しかも一機もである。全く上がって来なかった。
 これには誰もが拍子抜けした。首を傾げる者すらいた。
「どうしたんだ、一体」
「ああ、そうだよな」
「一機も上がって来ないなんてな」
「何があったんだ!?」
 とりわけ戦闘機隊の面々が不思議に思っていた。するとだった。
 空港の近くになってやっと来た。しかしその数は。
「あれだけか」
「嘘みたいだな」
 数機だけだった。こちらは戦闘機が百二十機で爆撃機は百五十機である。数においてはもう話をするだけ馬鹿馬鹿しい程であった。
「あれだけしか来ないなんてな」
「ふざけてるわけじゃないよな」
「今のドイツ軍にふざける余裕はないだろ」
「それもそうか」
 まずはこうしたやり取りが為された。
「じゃあ本当にあれだけか」
「みたいだな。他に来る気配は」
 一旦周囲を見回す。そして出た結論は。
「ないな」
「そうだな」
 こう言い合うのだった。戦闘機のパイロット達も爆撃機のクルー達もだ。誰もがそれをあらためて認識することになったのである。
 
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