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電子な世界の奴隷アリス~ご主人様は愛しい妹~

作者:枝瀬 景
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2舞い降りるは奈落の底

 僕は常々、もし前世というものがあったら僕は女の子だったと考えてる。
 背はちっちゃいし、女の子みたいって言われる顔だし、人には隠してるけど少女チックなゴシック好きだし、小説もTSものが好きだったり、成れるなら女の子に成りたいと思っている。
 だからと言って同性が好きかと言われればNoだ。恋愛をするとしたら女の子としたいし、現実でオカマになる気はない。

 ただそう思うだけ。たわいもない願望だ。少しだけ普通の人とズレてる事には気がついているけど。
 だから、ゲームの時は必ず性別を女にする。VRゲームは初めてだけど、他のゲームでは全部性別は女になっている。


 という訳で名前の所に『アリス』を入力し、性別を女に設定した。
 設定を女にすると、システムメッセージが入った。

『異なる性別を選ぶとステータスに元の性別も括弧内に表示されますがよろしいですか?Yes/No』

 今日(こんにち)ではネカマも理解が深まり、ネカマだとバレても風当たりはほとんどない。むしろステータスの優劣の為だけにすすんで異性に設定する人がいるぐらいだ。
 このゲームで性別によってステータスが変わるかは未知数だけど。ネカマを減らすための設定かな?皆が皆、女を選べば多分人口比が凄いことになると思うから。
 だけど僕は関係なくYesを押す。

『異なる性別を選ぶと以下の設定がランダムになります。よろしいですか?
・種族
・職業
・初期スキル
・初期ステータス
・初期配置
Yes/No』

 これもネカマを減らす為のペナルティみたいなものだろう。この手のランダム設定でレアな職業、種族は低確率でしか出てこないだろう。ランダムにすると、ある程度進まないと自分のやりたいプレイスタイルが確定しないはずだから。
 でも、逆にランダム狙いで異性を選ぶのでは、と思ったけど、ランダムはランダムで別のボタンがあるようだ。
 それでも、僕はYesを押す。
 名言ぽいって思ったのは秘密だ。

『容姿を設定してください』

 容姿は設定出来るのか。…まぁ、大抵の日本人は黒髪だし、ファンタジーの世界で黒髪多勢とか映えないし無粋だから当然か。別に日本人を貶してるわけじゃないけど。
 今回僕がイメージするのはあの『アリス』だ。不思議の国だったり、様々な本やゲームで登場するあの『アリス』。
 偏見かもしれないけど、ゴシックと言えば『アリス』が最初に思い浮かんだからそれに決めた。

 髪は金髪で腰ぐらいの長さ。瞳は澄んだ青色。少し童顔で可愛らしく。後は肌の色。白い、陶磁器の様な肌っと。
 設定出来るのはこれぐらいで身長は元の体に合わせられるらしい。VRと現実の身長が違うと違和感があるからだとか。
 設定終了ボタンを押すと確認のメッセージが表れた。

『これでよろしいですか?
・名前「アリス」
・性別「女」
・種族「ランダム」
・職業「ランダム」
・初期スキル「ランダム」
・初期ステータス「ランダム」
・初期配置「ランダム」
・容姿(略)
Yes/No』

 Yesを選択する。

『それではPhantasy Second Life Onlineをお楽しみください』

 ザザッとノイズが走り、視界が暗転して真っ暗になった。


    *  *  *


 壮大なOP、オープニングが流れている途中で視界がノイズだらけになった。
 は?と思っている内にゲームが始まったようだ。暗転とは違った薄暗い視界に変わり、ちゃんと感覚がある。OP飛ばしてないはずなんだけど…。

「で、ここどこ?」

 女の子の声であることを喜ぶよりも疑問が強かった。
 正体不明な振動を感じる中で視界が闇に慣れてくると、狭い空間の中で人が何人かいた。

「ああ、お前さん。お互いに不幸だな」

 隣でゴツい男の人の声がした。

「えぇと……」
「嬢ちゃんはその口か…本当に可哀想に…」

 え?何が可哀想なの?凄く嫌な感じしかしないんだけど…。

「嬢ちゃん、落ち着いて聞けよ。嬢ちゃんは多分、誘拐されて奴隷に売り飛ばされたんだ」

 は?

「はぁぁぁあ!!?」

 何!?いくら初期配置がランダムでもそれはないだろ!?え!?ちょっとまって!
 僕は慌ててステータスを開く。そこには…
――――――――――――――――――――
◆ステータス
名前:アリス(女)
種族:魔人
職業:奴隷(売却前)
LV:1
HP:50/50
MP:0(固定)/100
状態:なし
スキル
【愛玩人形(固有)】【器用1】【絶食】【封印3】
装備
「奴隷の服」「奴隷の首輪」
――――――――――――――――――――

 な ん だ こ れ は

 嫌に奴隷におあつらえ向きなステータスだなぁ!?【愛玩人形】とか【絶食】とか嫌な感じしかしない。これランダムなのか?本当にランダムなのか!?

 もしかしたら、ランダムというより消去法で決まったのかもしれない。職業が奴隷だから芋づる式に他の取得出来る設定が決まったに違いない。ランダムで奴隷が当たるのも中々だとはおもうけど。
 誘拐されて売り飛ばされたのはっていうのは初期配置の理由(シナリオ)か。

「……い……おい、聞こえてるのか?」
「っ!あ、すいません」
「いや、いきなりのことで混乱したんだろう。目が覚めたら奴隷とか堪えるよな」

 奈落の底に落ちた気分です。奴隷だけに。人の最底辺ってか?人間じゃないみたいだけど。魔人?……当たり臭が半端ないんだけど。

「ここは馬車の中だ。これから俺たちは売りに出されるんだとよ」

 頼んでもないのに勝手に説明し始めたゴツい声の人。容姿は視界が未だに暗くてわからない。この人ってチュートNPCかな?

「ま、せいぜいいいご主人様に買われるこを願おうや」

 言うだけいってゴツい声の人はしゃべらなくなった。…これだけ?まぁ、いいや。それよりもステータス把握だ。いくつか細かい所が気になる。

名前:アリス(女)

 これバグってね?確かキャラメイクのときに元の性別も表示されるっていってたから

名前:アリス(女、元男)

 とでも付いてないとおかしいはずだ。なのにない。
 ここで悩んでも仕方ない。後で公式に連絡するか。

職業:奴隷(売却前)

 多分、奴隷として誰にも買われてないということだろう。奴隷とか嫌だけど決まったものは仕方がない。…へんな奴に買われなければいいけど。隙を見て逃げればいっか。

MP:0(固定)/100

 これはおかしい。なんだ(固定)って。
 (固定)の部分を操作すると説明が出てきた。

【封印3】
MPが0で固定となり、各種ステータスに制限がかかる。解除には専用スキル、またはアイテムが必要。なお、これは状態異常ではない。

 厄介だな。プラススキルばかりあるわけじゃない、所謂、マイナススキルがあることは理解できるけど序盤でこれってキツくね?せめて下位互換の1か2だろ。

【愛玩人形(固有)】
見るものを魅了1にする。これは他の魅了効果と重複する。
※(固有)がついているスキルは外すことが出来ない。

 これって結構ヤバいんじゃないのか?魅了ってあれだろ。メロメロになるやつだろ。それになんだよ外すことが出来ないって!そんなのありか?って言うかこんなスキルがある方が驚きだ。

【器用1】
DEX+1
生産成功確率up(極小)

 これは普通のスキルだな。普通すぎて説明が逆に貧相に見えてくる…。

【絶食】
空腹ペナルティを受け付けない。

 これはキタんじゃね!?絶対レアスキルで需要があると見た!奴隷だし、これに頼る羽目になることが想像に難くないはずだ!……はぁ、奴隷か。

 ステータスを確認していると馬車の揺れが止まった。そして左の方から強い光が差し込んできて、眩しさで僕は思わず目を瞑った。

「おい、命令だ!降りろ奴隷共商売の時間だ!さっさと並ばんか!」

 どこぞの教官ばりに罵声をとばされると、体が勝手に動き始めた。
 え?なんだ!?体が勝手に……!
 薄暗い馬車の荷台から降りると、そこは小さくはあるが立派な城だった。手入れの入った柔らかな芝生の上に素足で立ち(って裸足かよ)中にいた同じ奴隷立ちと一緒に横一列に並ぶ。

 なんか鱗が生えた強そうなリザードマンみたいなヤツと太っていてオークみたいなのがこっちを見ていた。…ああ、【愛玩人形】が働いてるのか。

「へへっ…今回はウチをご利用してくださってぇありがとぅございやす」

 罵声を飛ばしていたのは、いかにも小物そうな奴隷商の男だった。奴隷商の男も例外なく【愛玩人形】の効果にかかり、チラチラとこっちを見るがわかる。

「ふむ、早速で悪いのだが…その娘を貰おうか」

 太っていて、身長は170センチぐらいあるオーク(仮)みたいなのが僕を指差しながら言った。
 うえぇ…。マジかよ…。

「へへっ…この娘っ子はその…見た目も大変いいでっし、お値段のほうを…」
「いくらだ?」
「百万ユロで……」

 オーク(暫定)にかわってリザードマン(仮)がその言葉にキレた。

「なにいってんだ!どうせその娘は誘拐してただで手にいれたんだろ!?ボッタクリもいいところじゃないか?え?」

 NPC…だよな?こんなに高性能なのか?それとも決まった言葉を喋ってるだけなのか?VRゲーム初心者の僕には区別がつかなかった。

「三十万ユロ。これで充分」
「えっと…七十万ユロ…」
「なんかいったか?」
「いえ、なにも……」

 奴隷商の男は渋々と、紙とペンを取り出した。
 リザードマン(暫定)は何処からかパンパンに詰まった、多分三十万ユロが入った袋を奴隷商に渡し、紙に何かを書いてそのままポケットにしまう。すると、

『オーク小王に奴隷として売られました』

 とメッセージが入った。メニューを確認してみると、

職業:奴隷(主:オーク小王)

 となっていた。これはあれだろう。こんなのが僕の主人とかになるのか。うーん…奴隷って何とかならないのかな…。

「おい、命令だ。こっちに来い」

 オーク小王(小王ってなんぞ)の一言で僕は自分の意思とは関係なく、その言葉にしたがった。
 マジでこれどうなってんの?普通に考えてプレイヤーがここまで操られるなんておかしいだろ。後で@weki見よ。

 俺はオーク小王の横に立った。奴隷の列から外れたことで他の奴隷の顔がよく見える。ゴツい声の人を探してみたけどそれらしき人は見当たらなかった。声と見た目は一致しない人らしい。

「他にお求めになったりは……」
「せん。さっさと帰れ」
「はひっ!」

 商人としては当然のことをしたのに、気に入られなかったのか散々な奴隷商の男。同情はせんがな。
 奴隷商の男は他の奴隷を馬車に入れて早々に帰っていった。

「さて……」

 オーク小王は僕に近付き、三本しかない指で僕の頬をいやらしい手付きで撫でる。
 その容姿と、撫で方に僕は生理的嫌悪を感じた。

「……っ!」
「堪らんなあ。実に初々しい」
「たった三十万ユロで買えたのもラッキーでしたね」

 目を瞑り、じっと堪える。
 くそぅ、なんだってこんな…。

「小王様…そろそろお時間が…」
「む、そうか。予想外の掘り出し物についな」
「はい、ではこの娘は逃げないように閉じ込めておきます」
「頼んだぞ」

 豚(オーク小王)の手が離れて、苦しみからやっと解放された。しかし、心休まることはなかった。リザードマン(でいいや)が首輪の鎖を引いたのだ。
 首輪が一瞬締まり、息が詰まった。

「うぐ…!」
「こい、娘」

 そのままリザードマンに鎖を引っ張られながら城の地下に入り、そこにあった牢獄に強引に閉じ込められた。

「ここで大人しくしているんだな」

 鉄格子の扉をしっかりロックしてリザードマンも何処かに去っていたった。

「ちょ!え?マジで!?」

 チュートリアルも無しにいきなり牢獄で一人とかどんな無理ゲーなんだよ!
 ムダだとはわかっていても鉄格子を握って出ようとする。当たり前だが、鉄格子はビクともしない。

「もしかして…詰んだ?」

 そんな馬鹿な。開始30分もしないうちに詰むとかクズゲーにも程があるだろ。
 ちっ、ログアウトしてキャラ作り直したらログアウト後3時間、ゲーム時間にして36時間ログイン出来ないのは少し痛いし、繭を待たせることになる。
 しょうがないから変化を待とう。それと、SOSを発信するとするか。
 メニューから、事前に登録しておいた繭のIDにボイスチャットを入れた。

「おーい、繭ーたすけてくれー」
『お兄ちゃん連絡遅い!それと【PSL】じゃ、繭じゃなくてマイ!それに今何処!?』
「牢屋の中」
『は?』
「たすけて」
『ちょっと意味わかんない!始まりの町じゃないの?』
「性別女にしたから」
『あ~なるほど。ランダム配置で牢屋に……ってそんなわけあるか!』

 見事なノリ突っ込みだな。妹よ。
 僕は牢屋にいる経緯を繭…マイに職業が奴隷だということ、売られて牢屋にいることを伝えた。

『職業が奴隷とか聞いたことないよ~。それに小王ってなんなの』
「さぁ…こっちが知りたいよ」
『そのようじゃ必要なメニューも取れてないみたいだね』
「メニューを取る?」
『今のお兄ちゃんに持っていて欲しかったのはマップのメニュー。これがないとマップが開けないんだよ。お兄ちゃんの現在地もわからない』

 そう言われてメニューからマップを探してみたけど見つからなかった。というか今気付いたんだけど、ゲームのメニューとしては閑散としているというか空白がやけに多いと言うか。

『このゲームは他のメニューを使いたかったら解放しなきゃ駄目なの。他にも細かいステータスを見る為だったり、アイテムボックスも開放しなきゃ使えないよ?』
「うそ~ん、アイテムボックスすら始めは使えないの?いよいよチェクメイトに近付いてきたよ…」
『あはは…。初期配置は絶対に低レベル地帯のはずだから何とかなるんじゃない?』
「はあ、待つしか選択肢はないのか。わかった。もうちょい頑張ってみる」
『【PSL】スレ使えば?。じゃあ頑張ってそこから抜け出してね。超特急で』



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【PSL】ランダム配置相談スレ その5


23:初めての冒険者 ID:gny
なんか水没古代都市?にいるんだけど、空気のある建物からどうやって脱出すればいいんだ?
泳ごうとすると溺れるんだが
現実では泳げるのに、canなのに


24:初めての冒険者 ID:Wkf
>>23
泳ぎのスキル撮れ
そしてNPCのクエ報酬の耐水袋を使って酸素ボンベがわり
後は探せ


25:初めての冒険者 ID:gny
>>24
サンクス


26:初めての冒険者 ID:mgd5
マップスキルどこー(゜Д゜≡゜Д゜)?


27:初めての冒険者 ID:poow
>>26
ここは初期配置スレ


28:初めての冒険者 ID:6dtg
>>26
@wekiのスキルまとめみろこっちくんな


29:初めての冒険者 ID:6xdp
あのーなんか天空都市にいるんですけど……。落下氏しそうで怖いです。氏に戻り無限ループとか考えたくないです。安全に降りられませんかね?

一応ステータス乗せますね
種族:人間
職業:見習い断罪者
LV:1
スキル
【神聖1】【退魔1】【剣技1】
装備
「普通の服」「ブロンズソード」「断罪者の証I」


30:初めての冒険者 ID:poow
>>29
なにそれ。ラ〇ュタ?ド〇クエ?マ〇ピチュ?と言うか

見習い断罪者ってなんだよ!!


31:初めての冒険者 ID:Wkf
>>30
レア職とおもわれ
>>29
すまん検討がつかん


32:初めての冒険者 ID:6xdp
そうですか…。取り合えずお使いクエストとか出来ることをやっていきます

33:初めての冒険者 ID:otogi
僕は今牢屋にいます。助けてください。

種族:魔人
職業:奴隷
LV:1
装備
「奴隷の服」「奴隷の首輪」

スキルは……恥ずかしいのでのせません
どうすれば出られますかねぇ


34:初めての冒険者 ID:poow
は?


35:初めての冒険者 ID:6tgp
は?


36:初めての冒険者 ID:Wkf
は?

なにそれツッコミどころ満載なんだけど


37:初めての冒険者 ID:6xdp
>>33
私より酷いじゃないですかやーだー


34:初めての冒険者 ID:poow
>>33
本当に初期配置なのか?信じられん…
>>32みたいにクエストさえ受けられない?
それと職業が奴隷とか…VRMMOとしてありか?


35:初めての冒険者 ID:otogi
>>34
正確には奴隷売りの馬車の中が初期配置。そのあとオーク小王って豚に買われた。
鍵はしっかりかけられて脱出不可。回りに誰もいない……


36:初めての冒険者 ID:Wkf
>>35
詰んだな
でも魔人ってレア種族を手放すのも抵抗感あるよな。嫌なら変化を待て

小王ってw


37:初めての冒険者 ID:6tgp
小王ww草生えるww


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