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ハイスクール・DM

作者:龍牙
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11話

「ったく、危うくアイツに最悪の選択をさせちまうところだったぜ」

 堕天使側へと乗り込んだ際、カツキングはそう言っていた。四季には完全にキングの力を引き出せないが、たった一つだけ完全な力を引き出す方法は持っている。
 ……肉体や命、己の全てを代価にカツキングの力を極限まで引き出す事だ。短時間だけとは言え、十分にカツキングの力を最終形態まで引き出す事はできるだろう。
 ……例え今の四季の力がアザゼルに届かなくても、最終形態となったカツキングならば文字通り、グレゴリを消滅させるだけの力はある。……現状でも、世界三位の実力と目されているカツキング、その最終形態ならば……十分に世界一位にも匹敵、或いは凌駕してくれる事だろう。
 だが、カツキング達としては四季にそんな選択をさせたくは無かった。……何より、弟分である四季を死なせたくなかった。そして、詩乃が死ぬような事があれば、その復讐のために容易くその“最悪の選択”を選ぶ事だろう。
 アウトレイジの仲間達に恵まれているとは言っても、大切な人でも有り、心の何処かで人ではない事に対して恐怖心を抱いている四季にとって己を受容れてくれた相手でもある彼女の存在は大きい。

 今回の会合は未知の神器であるドラグハート・ウェポンを宿した詩乃はアウトレイジ側の存在であり、手を出したのならアウトレイジ側としては堕天使勢からの宣戦布告として捉える事、そして彼女を襲った堕天使を一人四季が殺した事を伝える事。

 ……取り合えず、堕天使総督としては文句を言えるはずも無かった。……いや、目の前で死屍累々と言った様子で転がっている半殺しにされている過激派……全員が全身複雑骨折程度で済んでいるが大半が羽を根本から無理矢理引き千切られていて、過激派の堕天使幹部のコカビエルに至っては半分の羽を根本から無理矢理引き千切られて足を持ってガンガンと地面に顔面から叩きつけられている。……か細い声で『スミマセン、ゴメンナサイ……』と呟いている姿から辛うじて生きているであろう事は分かる。なお、実力者三人に対して嬉々として戦いを挑んだ現白龍皇はカツキングに一撃で禁手の鎧を粉砕されて顔面を捕まれて『ミシミシ』と言う音が鳴っている。
 ……なお、アルビオンは以前カツキングにボコボコにされた記憶から本気で相棒を止めたのだが、聞いてもらえなかった様子だった。現在は本気で現実逃避で次の相棒へと思いを馳せている。
 此処で下手な事を言ったら間違いなくコカビエルと現白龍皇に過激派は確実に死ねる。

 殺気立つ夢幻と夢幻に次ぐ世界第三位に全盛期の二天龍クラスのアウトレイジ三人を前に胃が痛くなる思いをしながら部下の勝手な行動に関する謝罪をするアザゼルさんでした。
 急いで現在勝手な行動をしているであろう部下の所在を調べ、呼び戻そうとするが……どうなったのかは今後で語ろう。

 ……だがこれだけは言える……。今神器持って返っても愛など与えられないだろう。寧ろ、アザゼルの死因になる。



 これが、アウトレイジ側と堕天使側の交渉の顛末であった。



 さて、現在廃虚の一角で四季達アウトレイジとリアスを戦闘としたグレモリー眷属は対峙していた。

「それで……ここで何をしていたか、教えてもらえるわね?」

「何をしていたって……はぐれ悪魔退治に決まってるだろ? 詩乃の裏社会見学のついでの賞金稼ぎの」

 生きたまま焼き尽くしてしまったと思うが、一応討伐したという証明部位くらいは燃え残っていてくれると思いたい、と内心で思って居たりする。

「今回は良かったが、燃え残りが有る時点で修行が足りてねぇ様子だな、四季」

「う……」

 バイザーだった灰を蹴り飛ばしたブルースがその中の一部……燃え残りの頭部の骨を拾い上げるとそう指摘する。四季の炎熱操作ならば骨も残さず焼き尽くす事も可能と言うのがブルースの弁である。

「それをこっちに綿して貰えるかしら? それは私達が大公から依頼された……」

「くくく……」

 バイザーの頭蓋骨を玩びながらブルースがリアスの言葉を嘲笑する。

「バカかお前は? 所詮は早い者勝ちだ。鈍間なお前らが悪いんだよ」

「まっ、オレ等は賞金、お前らは大公とか言う奴からの評価が代金って所か?」

 そんなリアスの言葉を笑うように続けられるクロスファイヤの声、クロスファイヤとブルースの言い方に怒りを覚えるリアスだが、冷静になる様に勤める。

「……ここはグレモリーの領地よ……」

「カラスにハグレ悪魔がこうも続けて自分の領地に入り込まれているなんて、舐められてるな、お前」

 ……今回の賞金の一部が当面のカレーパン代だけに辛辣な言い方になるカツキング。そして、カツキングの言葉に思いっきり噴出して爆笑しているクロスファイヤ。

「なんだか、言い方が酷いように聞こえるけど、どうしたのよ?」

「……単にカレーパン代を横取りされた事に腹立ててるだけだと思う」

 四季の言葉に詩乃の頭の中に『カレーパン以下』と言うグレモリー眷族の扱いの図式が浮かぶ。そんな彼女達を哀れに思ったのか、内心で何故嫌っているリアス達のフォローを入れなければならないのか? 等と考えながら、

「まあ、根本的にオレ達は商売敵。はぐれ悪魔を討伐してそっちは評価を、オレ達は賞金を得る。全ては早い者勝ち、それに納得行かないようじゃ……」

 四季が詩乃を庇うように前に立ち、腕に赤き血(ザ・ヒート)を展開する。

「実力で我を押し通すしかねぇだろ?」

 四季の言葉にカツキング、クロスファイヤ、ジャッキー、ブルースが不敵な笑みを浮かべる。……アウトレイジ達にとって四季が戦う為に来た訳だが、彼らとしては最近暴れ足り無いのだろう。

 それ以前に彼等の闘争心を満足させる事の出来るレベルの相手がそうそう入る訳では無く、秒殺にはなるが暴れると言うレベルならばはぐれ悪魔退治でもそれなりに発散できると言う程度だろう。

「相手になるぞ……やるって言うんならな?」

 四季の言葉に思わず後ずさるリアス。……流石に赤龍帝と白龍皇を同時に倒した世界三位と目されている実力者の無法龍とそれと互角に戦う実力者を含めた相手を戦うのは無謀以外の何物でもない。

 一番弱いのは自分達の中での一誠と同じ扱いと思われる詩乃を例外とすれば、四季だろう。だが、その四季を相手にしても常に簡単にあしらわれている身の上だ。
 内心、以前個人でブルースと対峙した時に忠告を受けた木場が焦りを浮べているが、木場としてはリアスの判断に従うしかないが……戦うことになったのなら、最悪の場合は自分が盾になってでも皆が逃げる為の時間を稼ぐべきかとも考えてしまっている。

「くっ!」

 相手が態々勝てる勝負を捨てる訳も無く、感情では納得できないが冷静な部分では此処は自分達が引くべきだと判断している。

「……行って良いわ」

 冷静な部分での判断を優先して感情を抑えながら悔しげにそう呟く。そんなリアスの判断を聞いて木場は一人安堵するのだった。

「オッケー、賢明な判断だ」

 四季がそう言うとアウトレイジ側のメンバーはそのまま廃墟を跡にしようとする。

「これだけは言っておくわよ。……このお礼は今までの分も含めて、何時か必ずさせてもらうわ!」

「はっ、ご自由に。……だけどな」

 やれる物ならやってみろ、とでも言う様子でリアスの言葉に返すが、其処で一度言葉を切って、

「……精々遊びで済む程度にしとく事をお勧めするぜ。悪魔を皆殺し、なんて事はオレもしたくないんでな」

 ……要するに、詩乃に手を出したら悪魔を皆殺しにしてでもその報復はする。と言う事だ。冗談には聞こえない言葉に背筋が寒くなる。

(……本当になんで此処まで嫌われてるのよ……)

 思わず四季と敬愛している兄の関係が気になってしまうリアスだった。……流石に四季本人以外に手を出す心算は無いが、本気であんな警告をされるとは思わなかったのだ。一度二人の間に何が有ったのか聞いてみようとおもうリアスだった。


 
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