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SAO<風を操る剣士>

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第一部 --SAO<ソードアート・オンライン>編--
第二章 第二層攻略
  第12話 お遣いクエスト

 
前書き
モンスターの名前が……

※現在1話から順々に話の書き方を修正中です。
修正といっても話の内容を変えるわけではないのでそのまま読み進めても大丈夫です。
前書きに『■』←このマークがあれば修正完了で、『□』←このマークがある場合修正中、なければ修正前ということでよろしくお願いします。 

 
 



 2022年12月14日、水曜日。第一層がクリアされてから10日がたった。

 俺とシリカ、それにアルゴは今一つのクエストを受けていた。
「……重い」
「頑張って下さい、シュウさん」
「ほらガンバレ、シュウ助。男だロ」
「ううっ……まだなのか?」
「まだだネ」

 そんな話をしているが、俺達はこの間話していた《お遣いクエスト》をまだ受けていた。
 ……一つのクエストで5日かかるってどんだけだよ。

 このクエストは、荷物をストレージにしまわないで運ぶだけのクレストなのだが、運んだ後にまた荷物を運ぶよう頼まれ、また次も街への繰り返しが続いていた。

 そして急がないと今日の《ボス攻略会議》に間に合わないからと、朝早くから荷物を持って今、林の中の坂道を進んでいた。
 ……ちなみに女に荷物を持たせちゃ悪いと思い、俺がほとんどの荷物を最初に持ってから、ずっと俺が一人でほとんど運んでいた。マジで最初に見栄(みえ)を張らなきゃよかった..

 シリカが俺に何回目か分からない、気遣いをかけてくれながら(たまにアルゴも)さらに30分ほど進んだところで、あたりに気が無くやけに広い場所に出た。

 そして、辺りのその真ん中に一つの小屋があった。
「あそこだヨ」
「やっとか……」
「おつかれさまです。シュウさん」
 俺達はその小屋目指して歩き出した……のだが『ブモゥーーーーー』と言う声が聞こえ、さらにクエストログに更新があった。

「シュ、シュウさん……これって……」
「ああ。俺も思った……これは……」
 俺とシリカは顔を合わせ、

[緊急クエスト:荷物を《オックスサーアックス》から守りきれ!!!
             報酬:《協力調理器具》・一人2万コル]

「「やっぱり~~~!!」」
 二人して現れたウィンドウを見て叫んでしまった。
「あちゃ~本当に出るなんてついてないナ~」
 そんな俺達の隣でアルゴが言った。

 俺はアルゴが何か知っていると思い、急いで聞いた。
「どういうことだよアルゴ! 何か知っているのか!?」
「そりゃ~ネ。この緊急クエストは20回やって、1回あるかないかで起こるクエストなのサ。だから出た時のために二人とパーティーを組んだのサ」
「な!」

「ゴメンヨ~、本当に出るなんて思わなくてネ…」
 驚いていた俺に、アルゴが申し訳なさそうに言ってきた。

 そんなアルゴの顔を見た俺は、文句は後で言うか考えようと思いアルゴに再び聞いた。
「まぁいいから…それよりこのクエストの取り消しは…」
「また5日間荷物運ぶかイ?」
 と、アルゴが言葉を返して来た。
「はぁ~、やっぱりやるしかないのか…」
「あたしたち…緊急クエストと何か運命的なモノがあるんでしょうか?」
「まったくだ…」
 俺のため息の後に呟いたシリカの言葉に同意して、俺は姿を現してきた敵に集中し始めた。




==========================



 《オックスサーアックス》の姿は、言葉にするなら《二本足で立ち両手に斧を持って、真ん中に大きくて丸い赤い宝石のような物を(よろい)を着ている、リアルな牛》だった。

 俺は敵の着ている鎧に驚いた。
「な! あれは!!」
「オイラもあれは予想外ダ、ヤバイナ…」
「シュウさん! アルゴさんがいう『ヤバイ』というのは何でなんですか!?」
 アルゴも分かったようで、一人分(ひとりわ)からないシリカが俺に聞いてきた。

「あれはフロアボス級のモンスターだ…」
「え!? でも、そんなにHPがないような…」
 シリカは俺の言葉にボスのほうを再び見た、確かにHPゲージが一本…しかもかなり短いからそうは思わないだろう……けど

「あの鎧が問題なんだ、あれはβテストの時に第八層で出るモンスターが着けていた物と同じだ。あの鎧はあの宝石に5秒以内に、一定ダメージ以上与えないと壊れないんだ」
「しかも、鎧を壊すまでモンスターにダメージがほとんど無イ。その上鎧が壊れたら防御力がとても低い為か、あの鎧をつけているモンスターは攻撃力も結構高いんダ」
 俺の言葉の後にアルゴが付け足してくれた。

 俺はそのままシリカに向けて言った。
「まぁ、パーティーの総合攻撃力が鍵なんだよシリカ」
「分かりました…でも攻撃力ならアルゴさんは..」
「シリカが言う通り、あまり自信ないナ…」
 …シリカの言う通り、アルゴは近距離での攻撃はクローがメインだ。遠距離でも投げ針があるが攻撃力は低い、クローでの攻撃もアルゴ自身がパラメーターを《敏捷力》にほとんど向けているため、俺達ほどではない…(ちなみにシリカは今の短剣(ダガー)が重めのため、《筋力値》もそこそこ上げている)

「ということは、俺とシリカでどうにかするしかないな…とりあえず、アルゴは遠距離から援護よろしく!」
「分かったヨ」
「行くぞ、シリカ!」
「はい!」
 俺とシリカは敵目掛(てきめが)けて走り出した。



===========================



 牛のモンスターへの攻撃はアルゴの投げ針から始まった。針が当たると宝石の横に、モンスターとは別のHPゲージと上に、5の数字が現れた。

 その後にシリカが牛の右手の斧の、真上からの攻撃を避けソードスキルを放った。
 そしてその攻撃の《スイッチ》で、俺もシリカの後に《バーチカル・アーク》を放った。
 しかし鎧のHPゲージは、半分を過ぎるか過ぎないかという所くらいで止まった。

 俺とシリカは体制を立て直す為に後ろに下がった。
 そして後ろに下がると、数字が0になり鎧のHPゲージが消えた。
 …再び攻撃をしても、また最初からってワケだ..

「やっぱりあれだけじゃダメか…」
「どうしましょう、シュウさん」
「う~ん……あ!」
 シリカが聞いてきた後、俺は考え…そしてこの間のケーキを食べに行って、キリトたちと会って話した時のことを思い出した。

「シリカ、《体術》だ! ソードスキルの後に体術を使うんだ!」
「え!? でも…」
「いいから! 物は試しだ! 行くぞ!!」
「…分かりました。やってみます!」

 俺達はモンスターに再び向かった……が俺達があと4~5mぐらいにまで近くに行くと、牛が両手の斧を地面に向けて振り落とした。

 そして振り落とされた斧から、円状に高さ1mくらいの土と風の混ざった衝撃波が、俺達に向けて迫ってきた。

 俺達はその予想外の攻撃に、見事に二人とも当たってしまった。
 俺達は後ろに(もど)され、シリカはアルゴのいる所まで戻され…俺はアルゴたちから7~8m離された所に戻された。(さいわ)いアルゴまでは攻撃は届いてなかったらしい…

 そして俺は、自分とその下にあるシリカのHPゲージを確認した。
 見ると二人とも1/4位しか減っていなかった。

 そして俺がHPを確認し終わってすぐというタイミングで、牛は二人目掛けて走り出した。
(ヤバイ!!!)
 そう思い俺は、二人に向け大声で言った。
「二人とも!! 今すぐ荷物を置いて逃げろ!!!」
「ダメダ! ここで逃げたらクエスト失敗で、ボス攻略までにボスの情報が間に合わなイ!! そしてその情報が無いばかりに、何人もの人が死んでしまうかもしれなイ!!!」
 アルゴが俺の声に叫びながら返事をした。

 …確かにアルゴの言う通りだ。しかし攻撃力の低いアルゴとシリカだけでは、シリカが《スイッチ》を入れてもモンスターを倒しきれず、下手したら二人とも死んでクエストも失敗という事にもなる..

(……もうやるしかない!!!)
 俺は成功するか分からないが、覚悟を決めて立ち上がり二人に向けて動き出す。

 そしてシリカ達まであと4~5mの所で、牛がシリカ達に斧を振り下ろそうとしていた。それを見た俺はシリカに向かって叫んだ。
「シリカ! 《スイッチ》!!」
「…はい!!」
 シリカは俺の言葉を聞き、すぐに牛に向けてソードスキルを撃ち、その後に
《体術》のスキル…《閃打(センダ)》を放った。

 その攻撃で牛が少し動けなくなっている隙に
「うおーーーー」
 《値移行》のダッシュで、一気に4~5mの距離を縮めてシリカの横…つまり牛の目の前に行き、再び片手剣ソードスキル《バーチカル・アーク》を放つ。



 俺はこの《バーチカル・アーク》に、一つの《システム外スキル》を使おうとしていた。
 《体重移動(たいじゅういどう)》…剣に自分の体重を乗せて剣を振るスキルだ。
 そんなの誰でも出来るし、簡単だと思うかもしれない…

 そう、誰しも自分の体重の1/8から1/10とか位なら、普通に出来る。
 けど…1/1…つまり全体重を剣に乗せるのは、かなり難しい。

 俺も《体術獲得クエスト》で岩を殴る時に、何回も練習してまだ成功率が2~3割ほどだ。
 しかし成功すると威力が凄い…このSAO《ソードアート・オンライン》の攻撃力の基準の《速さ》《筋力値のパワー》《剣の重さ》の3つのうちの1つがとんでもない事になるからだ。

 SAOのゲーム内の俺の体重はアバターの身長と体格で決まるが、現実の俺とほとんど変わらないはずだ。なので45~50キロ位あるだろう…

 そして、俺のこの剣《アニールブレード》も重めとはいえ、第一層の剣なので《筋力値》が低く持てなくないように、4~5キロがせいぜいだろう(俺が重さをたしてないのもある)
 つまり、成功したら10倍以上の重さになるわけだ…

 そして今は、このシステム外スキルが失敗したら、俺達はスキルの硬直が解けてからでは荷物を守りきれず、クエスト失敗だ。運が悪いと死ぬかもしれない…
 なので俺は全力で剣を振る。



 俺は《バーチカル・アーク》の真上からの一撃に《体重移動》で全体重を攻撃に乗せた。
 俺の攻撃で、鎧のHPが赤くなる
「いっ…けーーー!!」
 俺は声をあげて、より力を入れた…
 そして俺の《体重移動》がなんとか成功したのか、鎧が砕けた。

 俺はそのまま《バーチカル・アーク》の2撃目で上に向けて、牛の体を斬る。
 スキルで斬るためにジャンプしたので、空中で牛のHPを確認した。

 すると防御力が低い為か、赤くなっていた。
 俺はそのまま空中で《体術》スキル《弦月(ゲンゲツ)》と使って、後方宙返りしながらのたち蹴りを叩きつけて、牛こと《オックスサーアックス》はガラスのように四散した。



===========================



「いてっ」
 俺は地面にうまく着地できず、頭から落ちた。

「シュウさん、大丈夫ですか!!」
「最後がキマらないナ~」
 そう言ってシリカ達が俺に向かってきた。

 そして俺の目の前にウィンドウが現れ、LAとクエストの報酬が書いてあった。
 どうやらLAの《レッサーコート》という名前から想像すると、防具らしい。
 そしてコルの他に、もう一つあった。

「しかし、なんで第二層のフロアボスの情報を手に入れる為に、フロアボス級のモンスターを倒さなきゃいけないんだ…」
「倒した後に何言ってるのサ、それにしてもシュウ助の攻撃すごかったネ」
「本当に凄かったです!!」
 アルゴの言葉にシリカが尊敬(そんけい)眼差(まなざ)しのような視線を向けてきた。

「それほどでもないよ……それよりアルゴ、お前は先に行け。情報は俺たちが荷物を届けてきいてから、メールするよ」
「いいのカ? あと攻略も…」
「流石に1日に2回、しかもフロアボスと戦う気は無いよ…」
「分かった、アリガトウ。この礼は…」
「クエストの報酬で良いよ」
「…アリガトウ」
 そういってアルゴはパーティーを解除して、ボス攻略の迷宮の方に向けて走って行った。



=========================



 その後アルゴにメールを送り、俺たちは報酬を確認した。
「このお遣いの報酬の、ほとんどが食い物と飲み物だぞ!」
「しかも結構、《敏捷力》とか上がりますね!!」
 俺達は報酬を見てテンションを上げた……のだが、
「ああ!! …でも…」
「…ほとんどが材料だから料理しないと食べられませんね…」
 シリカも俺と同じく途中で気が付いたらしい…

 そう…報酬を貰ったのいいのだが、俺たちは二人とも料理スキルをぜんぜん上げていながった。

 と、この食料どうしようかと考えていると、シリカがある物の事に気づき、聞いてきた。
「そういえば…この《協力調理器具》ってなんですか?」
「さぁ? 見てみるか…」
 そう言って俺はアイテムを出し、説明を見た。

「え~と、なになに…『このアイテムを使用すると、二人で調理してより難しい食材の料理が可能です。 効果:二人の料理スキルの合計+60 使用回数:∞』だって!!」
「え~!! それって…」
「ああ、今の俺たちでも料理スキル60(くらい)の料理なら作れるということだな」
「やりましたね、シュウさん!!」
「ああ!!」

 そんな事を話していたら、俺はふと思い出し
「そういえば、LAがあったんだった」
「え!? 本当ですか!?」
「ああ」
 そう言って俺はウィンドウを操作し、《レッサーコート》を装備した。

 コートは赤と白で、キリトのコートに少し似ていた。
「うわ、目立つな~」
「あれ? シュウさん。そのコート、裏が黒ですよ?」
「え!?」
 シリカに言われ、よく見ると裏が黒である。俺はウィンドウをよく見ると、ウィンドウに表と裏の二つが現れていた。

「このコート、リバーシブルらしいな」
「すごいですね!」
「表がこの色で防御力を上げて、裏は《隠蔽》のスキルの向上か……まぁいいや、それよりメシでも食べようぜ、シリカ」

 俺の言葉を聞いてシリカは
「なら、料理を作りましょうよ!」
 と、力強く俺に言ってきた。

「え~別に、明日でいいじゃんか。今日はフロアボス級を倒したんだぜ…」
「でも相性が良かったのか、すぐに倒したじゃないですか!」
「それでも、経験値はフロアボスと同じくらいだったぞ。3人だったから物凄い経験値で、クエストボーナス入れてシリカなんてレベル17になったよな」
 ちなみに俺は19。

「そうですけど、女の子は料理も作ってみたいもんなんです!!」
 ……そうゆうもんなのか?

「へ~..まぁしばらくレベル上げに、力入れなくてもいいから…まぁいいか」
「本当ですか!?」
「ああ、良いよ。俺もシリカの作った料理食べたいしな」
「ありがとうございます……でもシュウさんも作るんですよ?」
「なら、料理スキルが高くなったらで良いよ」
「はい! 絶対につくります!!」
 シリカの顔は覚悟の為か少し赤かった。

 そんな話をしながら、俺たちは料理の出来るところがある街に向かった。
 ちなみに『シリカが作った料理が食べてみたい』というのは、俺のポロリと出た本音であった…



==========================



「というか、よく考えたら俺のレベル高すぎだろ……」
「そうなんですか?」
「ああ、普通ありえないな」
 俺はご飯を食べ終わった後、ウィンドウで確認して自分のレベルに驚いた。

 俺の言葉にシリカは即答してきた。
「それだけ無茶をしてるんじゃないですか?」
「……マジか……よく生きてた。俺……」
「本当ですよ…あまり無茶しないで下さい」
「……シリカもかなりレベル高いぞ…」
 シリカが俺を心配して言っているが、人の事は言えない。

「なっ! これは……」
「第三層にいけるぞ~!」
 シリカが俺に言い返そうとしたら、外から声が聞こえた。

「あはは、どうやら終わったらしいですね」
「はは、そうだな」
 俺とシリカは顔を合わせて笑った。


 こうして第二層の攻略が終わった。






 
 

 
後書き
間違いなどあったら、言ってください。 
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