ソードアート・オンライン ~Hero of the sorrow~
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アシムレイトロイド編 愛、覚えていますか 番外
闇の薬師×地獄×電子少女
前書き
ウルトラハイパーキャラ崩壊。
現実と仮想世界の隔たりが消滅いたします。
そしてこの話で番外が終了、GGOに戻ります。
GGO終了後、これの本編がスタートいたします。
それでは、お楽しみください。
異世界 闇と光の世界
『薬斗、そっちはどうなってる!?』
外から慌ただしく入ってきた声。
ルーグは患者を治療しながら対応する。
「どうもこうも、そっちと同じですよ!!」
今、この状況に慌てる事が出来ぬ人などいるのだろうか?
いや、慌てていなければおかしい。
目の前には、なぜか見覚えのある怪人。
そして、自分の姿は仮想世界と同じ姿になっている。
この異変に気付いてくれたら嬉しい。
だって、ここは仮想世界ではないのだから。
ここは現実世界であるはずだからだ。
事実、怪人が攻撃した人をルーグは治療している。
血が垂れ流しだったが、ルーグのユニークスキル《調合》によって煎じた薬によってどの患者も回復に向かっている。
(まさかアイテムまで出現するなんて・・・・・・ッ!)
『クソッ!まずい、突破された!!そっちに行ったぞ!!』
ルーグは急いで廃屋にから出た。
目の前にいるのは三十体の怪物。
(やるしかないっ!!)
ルーグは立ち上がり、投剣に毒を縫って怪人達へ向け、投げる。
ただ少しだけルーグは恐怖した。怪人は苦しんでいる。
まるで人間のように。
(理央さんたちも・・・・・・こんな感じだったのかな)
誰かを守るために、引き金を引いたと同じ気持ち。
これを体験すれば、少し罪は軽くなるかな・・・・・・?
そう思った瞬間、怪人達が立ち上がった。
(まさか、毒に適応したのか!?そんなバカ・・・・・・)
投剣を再び投げつけようとした時だった。
(なぁ・・・ッ!!)
手が止まった。言葉がうまく紡げなくなる。
怪人が人間になっていたから。
更に、廃屋から悲鳴。
ルーグはすでに走り出していた。
目の前の命を見捨てるなど、できない。
そう思ったら走り出していた。けれど、背を向けたのが間違いだった。
ドッッという何かが自分の体を貫く感覚。後から焼けついた痛みが襲ってきた。
後ろを振り向けば、先ほどまで人間だった怪人が嗤いながら吹矢を持っている。
彼等、怪人の名前はグロンギ。狩猟民族で元人間。
そして矢を吹いたのは、グロンギの中でも最高の称号である《ゴ》の名を持つフクロウ種怪人ゴ・ブウロ・グ。
そして、さらに後ろからコウモリ種怪人ズ・ゴオマ・グが現れ、ルーグの首筋に噛み付いた。
「があああああああっ!!」
後ろのグロンギたちはせせら笑う。一部の怪人は奥へと進んだ。
ブウロは拍手をしながら言った。
「ジャセ。ロロドジャセ。ロロドジレギゾガゲソ・・・・・・!!」
後ろから悲鳴。凄惨な音。ルーグは何とか手を動かし、ナイフをゴオマの顔に突き刺した。
「ギギギギギギギギギッ!!」
ナイフからは血が垂れ、ルーグの手を伝っていく。
あまりの痛みに、ルーグを突き放したゴオマ。
周囲の怪人はゴオマと共にルーグへ飛びかかった。
『集団とは・・・・・・悪趣味ね』
不意に。聞き覚えのある電子音が混ざった声が聞こえた。
それは上空から現れた。
拘束具にぐるぐる巻きにされたような白いスーツを着込み、銃を持っている。
「ク、クロエさん!?」
『どうも、ご無沙汰してるわね』
満面の笑みでそう笑うと、一変して凄まじく冷たい表情になる。
『私の友達を傷つけた罰・・・・・・受けてくれるわよね?』
返事が返ってくる前に、クロエは撃っていた。
目にも見えぬ速度で。
怪人は為す術なく腹部を撃ち抜かれ、消滅した。
ルーグは立ち上がり、奥へ、と言った。
「奥に人がいるんです・・・・・・!!だから、そっちを」
『自分の心配を今はしなさい。そんな怪我じゃ、戦えないでしょう?』
『もっと、自分の体を大事にして』
そう言う間にも、クロエはブウロの吹き矢を粉砕し、神経断裂弾でグロンギを撃ち抜いていく。
『それに、英雄もいるのよ』
「え・・・・・・?」
「ゴオマっ!!」
ダンッと奥の部屋から怪人が吹っ飛んでくる。
後から現れたのは、屈強な男たち二人だった。
一人の男、神敬介はルーグの傍に駆け寄り、麻酔を注射して傷口を縫い、薬を縫って包帯を巻く。
ルーグはその一連の動作の速さに驚くが、何より驚いたのはもう一人の男の方だ。
「超変身!!」
赤い戦士に変身した男は、怪人たちを蹴散らしていく。
神が叫ぶ。
「五代!ココは俺たちに任せて、リオン君という子のところへ行って来い!!」
「分かりました!」
振り返りざまにルーグを見ると、戦士は言った。
「頑張って!君とは仲良くなれそうな気がする!!」
ぐっと力強いサムズアップが向けられ、戦士はそのまま去って行った。
しかし、まだ終わらない。
まだ何体かグロンギは残っている。
『神さん、変身するなら早くして!!』
新しい白い大型リボルバー、ロング・トゥームを撃ちながらクロエは言った。
「分かっている。セタップ!」
「変身」
仮面ライダーXに変身した神は、グロンギたちを縛り上げ、叩き潰していく。
グロンギの数が増えた。増援である。
『キリがない!!』
Xはルーグの方へと一つのナイフを投げる。
「戦う覚悟があるか、歌永薬斗」
『神さん、あなた、彼に戦わせるつもり!!?』
クロエの言葉を無視し、Xは仮面ライダー、人類を守る者として言葉を続けた。
「戦う覚悟があるならそれを握れ。誰かを癒すために薬を煎じるだけの手ではなく、守るために剣を使う手になって見せろ・・・・・・!!」
(誰かを癒すのではなくて・・・・・・そうなる前に守る手)
恐る恐る、ルーグはそのナイフを握った。
熱い。流れ込んでくる使用者の記憶。
途端、意識が反転し、目の前に男が現れる。
髪に青のメッシュを入れた男は、笑いながら言った。
「まさか・・・・・・お前のようなガキがこれを使うとはなぁ?」
「あなたは・・・・・・何者ですか」
その問いかけに、男は笑うのを止めて答えた。
「俺は傭兵部隊NEVERのリーダー。ま、最近は犯罪者って言われることが多くなったが・・・・・・大道克己だ」
「俺は今、お前の心を覗いた」
「!!」
ルーグはその場で固まった。自分のすべてを知られた。
「俺には居心地が悪いな。お前がいる場所は日差しが多すぎる」
「俺みたいに『愛した奴』を殺していたら、居心地よかったろうな」
「それ・・・・・・どういう事ですか」
ルーグは怒りを滲ませながら言った。それは当然の反応である。
自分が犯罪者と近い存在にされた。
さらに、自分の知られたくないことをすべて知られたのと同じなのだから。
「お前はいつでもこっちに来る可能性があるってこった」
「だがお前は、俺とは違って仲間や家族の大切さを知っているだろ?」
大道の冷たかった言葉が、少しだけ温かみを帯びた。
「それを殺されて、お前は耐えきれるか?俺みたいに壊れちまうだろう」
大道も愛した人を失った。
彼女のためになると思ってやったことが、結果的に彼女を死なせた。
「そうしないように、力を貸してやる」
そのままルーグは大道に追い出された。
けれど、ルーグの耳には大道の言葉が届いていた。
俺のようになるな。
意識が戻る。ルーグはエターナルエッジを握った。
そしてメモリのスイッチを押す。
『エターナル!!』
ルーグの周りに風が集まり、ローブを出現させる。
そして右目の星のペイントが変化し、右頬に碧い炎のペイントが描かれた。
彼は大道が言っていた言葉を、グロンギたちに向けた。
「さあ、地獄を楽しみな」
ルーグはブウロに向き直る。
接近。一体のグロンギが火を吐く。それはルーグに直撃する。
「無駄です・・・・・・!」
エターナルローブは全ての攻撃を弾く。そして。
『エターナル!マキシマムドライブ!!』
紫電が周囲に走り、ブウロの能力を封じた。
そしてもう一回押す。
『エターナル!マキシマムドライブ!!』
その足には蒼炎が宿る。
「くらえぇぇぇぇぇぇっ!!」
飛び回し蹴り。飛行能力を奪われたブウロの腹部に命中する。
これで終わりではない。さらに連続しての蹴り。
ブウロは蒼炎に焼き尽くされ、腹部の魔石『ゲブロン』が消滅し、爆発した。
だが、また増援。
「ちっ、まだ来るか!!」
Xの叫びに、クリスは冷静に答える。
「敵は約50体。時間がかかりそうだ」
『もう!冷静に言ってる場合じゃないでしょ!?一気に決めるわよ』
『ルーグ、協力してくれる?』
「分かりました!」
そのままクロエはルーグに背を預ける。
クロエの横顔が自分のすぐ横にあることにルーグは顔を赤らめたが、今はそんな状況ではない。
『行くよ・・・・・・!!』
更にXが二人の背中を押さえる。
ロング・トゥームの銃身が上下に展開する。
銃口には紫色のエネルギーが収束され、どんどんと大きくなっていく。
『ロスト・バージン!!』
瞬間、閃光。目の前にいた怪人たちは全て、塵も残さず消えていた。
ついでに三人は5メートル以上後ろへ吹っ飛ばされた。
ルーグはすぐに立ち上がると、廃屋へ入った。
目の前は惨状。
「ああ、ああああああああ!!」
追いついた神はルーグの肩を叩く。
「馬鹿野郎!泣く暇があるなら一人でも多く助けろ!!」
ルーグは頷き、生存者を探した。
それから二時間が過ぎた。
何人かは亡くなってしまったが、神の神がかり的な治療術とルーグの薬。
この二つによって、ほとんどの患者は回復へ向かっている。
しかし、どうにもならない患者が一人だけいた。
妊婦である。
ルーグの薬には負担があるようで、母体に危険が及ぶ。
麻酔も加減が難しく、これも母体に危険が及ぶ。
ならどうするか。
神は母親の意識があることを確認し、問うた。
「これからあなたを助けます。しかし、もしかしたらお子さんが亡くなるかもしれない。どちらか選んでもらえますか?」
「神さん!?」
思わずルーグは叫んでいた。
正義の英雄が人間を見捨てる。その行為が信じられなかったからだ。
母親は答えた。
「子、供を・・・・・・」
「・・・・・・分かりました」
神は手術の準備を始めた。しかし、ルーグはそれを止めた。
「どっちも、助けることはできませんか」
「無理だ」
「あなたは!人の命を守る医者でしょう!?なんで二人とも助けないんですか!?」
「俺は仮面ライダーである前に医者だ!二人とも助けたいさ。でも、世の中にはできないこともあるんだ!わずかしかない奇跡を待つのが医者じゃない、少しでも多くの命を確実に助ける、それが医者なんだ!!」
「俺は・・・・・・俺はそれでも、どちらも助けたい!!
叫びが周囲に響いた。しばし、静寂。そして神は一言言った。
「クロエを呼んで来い」
「え・・・・・・」
「いいから呼んで来い!どっちも助ける!!」
ルーグはその顔に笑顔を作って。
「はい!!」
そう叫んでクロエを呼びに行った。誰もいなくなった簡易手術室で、神は思った。
(父さん・・・・・・やはり、俺は父さんの子のようだ。俺はあんな風にただ命を思う少年を、助けたいと思ってしまう。医者失格だ。だが、やるからには)
全力だ。
二人が戻って来る。手術が始まる。
何時間過ぎただろうか?
ルーグたちの目の前には。
新しい命と愛おしいという目でそれを見る母親がいた。
クロエはちょっと空気吸ってくると言って室内から出て行ったが、泣き声が外から聞こえていた。
一方のルーグは始めて見た手術に疲れ、座り込んでリオンの連絡を待っていた。
「お疲れさま。ほれ」
突然声を掛けられ、ルーグは後ろを振り返る。
神が立っていた。その手にはドリンクが二つ。
ルーグはそれをもらい、口に含んだ。
神はルーグの隣に座る。
そしてどうだった?と聞いた。
「そうですね・・・・・・命は素晴らしいと思いました。そして、貴方の覚悟も」
その答えに神は笑い、言った。
「そうか。君のような少年に褒められるのは初めてだな」
「君は、医者か何かになりたいのかい?」
「いや・・・・・・ただ目の前で苦しんでる命を助けたい。そう思ってます。だとすれば、医者っていうのも悪くはないかもしれませんね」
二人が談笑していた時、神に通信が入った。
神は立ち上がり、手で静かにというサインを送る。
(なんだ、ユキか?こっちはもう片付いた。これから協力してくれるかどうかを確かめるところだ)
(事態は最悪です、神さん!sorrowがダークさんを斃して、《同質化》したそうです。そのせいで今、様々なところで現実と仮想、世界を分ける隔たりがなくなっています!)
(なんだと!?)
(そして各地でその世界のキーマンたちがさらわれているんです!そっちの世界でも現在一人が行方不明・・・・・・っ!?神さん、さらわれたのはこの世界の詩乃さんです!!さらに今、五代さんとリオンさんの反応が消失!?どうなってるんだ!?あっ・・・・・・神さん、そっちに次元の歪みが移動しました!)
神は慌てて後ろを向いた。ルーグの傍には今、女の子、クラブこと四葉がいる。
更にそこへクロエが現れた。空を見る。時空が歪む。
「全員、逃げろ――――――――――ッ!!!」
神たちはそのまま光に呑まれた。
後書き
かずのこさん、すみませんでした!!
それでは再びGGOに戻ります!
RIGHT@さんは本編でじっくり書かせていただきます。
そろそろ電子も書きますのでお楽しみに。
感想・コメント・誤字・脱字・アドバイス・質問くださいね。それでは~~~~!!・
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