ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~
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異なる物語との休日~クロスクエスト~
休日の⑥
前書き
宴会しない宴会回。メタ発言多いっす。注意。
風呂上りのセモン達一行の前に突然やって来たグリーヴィネスシャドウの案内で、通されたのがこの宴会場だった。鍋、鋤焼き、刺身にご飯。パスタにパンにオートミール、挙句の果てには麻婆豆腐やカレーまであると来た。和洋折衷という謎のラインナップが取り揃えられた料理に一行が舌鼓を打つ中で、外食が苦手なセモンだけはなんとなく乗り遅れている感があった。ちなみにセモンは家庭料理の方が好きなので、相対的にプロの料理人が作った料理などは苦手になるのだ。
「私たちは高級料理を作ることに特化した《人造錬金自動人形》ですので」
料理を運んできた、一房だけ色の違う白髪、どこか機械めいた輝きを持つ紅蓮色の瞳、そしてメイド服という全く同じ顔・格好をした十人ばかりの少女たちがそう言ったのを覚えている。ちなみに《白亜宮》の長である《主》も高級料理が苦手なので、一部の上位存在には家庭料理も作れるらしい。《主》との間にこんな共通点なんて欲しくなかった。
「うぉぉおッ! うめぇぇぇぇッ!」
「もぅ、雷斗君ったら、お行儀悪いよっ!」
口いっぱいに料理をほお張り、なおもつめ込もうとする雷斗に向かって、苦笑しながら注意するサナ。そんな事言いながらも「はい、あーん」とかしているその認識をどうにかしてほしい。
「ライトぉ……慰めてぇ……」
「分かった、分かったから。というかお前何も悲しいことないだろうが」
なぜか泣き上戸化したミザールを撫でる来人。ちなみに一行の中で彼らだけが唯一の成人であるので、合法的に酒が飲める。飲んでるのは新潟県産の日本酒だった。陰斗の故郷……っておい、宣伝すんな《主》。
――――非合法なら飲んでる奴いるけど。
その非合法に酒を飲んで思いっきり酔っぱらった人物……理央は、先ほどからシノンに抱き着き、「詩乃可愛いよ詩乃愛してる詩乃大好き詩乃……」と延々とささやき続けている。うっとおしそうにしながらも決して押しのける事の無いシノンさんマジパネェ。というか末永く爆発しろ。
爆発しろと言えば……
「リュウ、次はこっち食べさせてあげるね。はい、あーん」
「あー……ん」
「じゃぁ次はこっち」
「ってちょっと待てそれ酒だろうが。一応未成年だぞ俺」
「私の酒が飲めないというのですかこのナミウズムシ」
「久しぶりに聞いたなマリーの罵倒! というか何故にプラナリア!?」
「むぅ……じゃぁ私のコップに注いであげるから、こっちで飲んで! これでリュウと間接キス……ハァハァ……」
「や、やめろ……ビールじゃないんだぞ! おい、ちょ、待、うわぁぁぁぁぁぁぁアッ――――――………」
リュウ・マリーペアは今日も平常運転であった。というか旅館効果というかこれもご都合主義結界の効能なのだろうか。マリーが謎の積極性を見せている。この人こんなキャラじゃなかっただろ。亀驤さんホントごめんなさい。
対照的に、理音・アリスペアは非常に静かに食事をとっていた。何と言うか……纏っている雰囲気が……武家屋敷と言うか、昔ながらのお家というか。
「……」
「……」
「うまいな」
「はい」
「でも俺はアリスが作った飯の方が好きだな」
「っ……は、はい」
静かにいちゃつくのやめろ。
というか理音は本気でアリスの事が好きなんだろう。動作一つ、言葉一つとっても思いやりが透けて見える。参考になるなぁ。
所で、西洋において文化は輪廻するというが、お次は騒がしく食事をしている奴。メテオとアステのペアである。
「なぁなぁネオ、『あーんして』ってやってくれよ」
「嫌よ」
「何でさ! 良いじゃないか、ほら、やってやって!」
「嫌よ!」
「何でさ!」
「嫌ったら嫌!! ……そ、その……恥ずかしいじゃない!」
「ネオ……」
「あああもうっ! い、一回だけだからね!」
「おう!」
「……あ、あーん、して?」
「あーん!」
「きゃっ!? ちょ、ちょっと、そんな早く取らないでよ! お箸落としそうになっちゃったじゃない!」
感動しているのか、ふるふると震えるメテオ。というかアステからそこはかとなくコハクと同質の気配が漂ってくるんだが。世にいう『ツンデレ』という奴なのだろうか。コハクは何か違う気がしなくもないがな。
「はい、ハリン君、あーん!」
「あーん……うん、おいしいね」
「ですよねぇ! 来たかいがありましたね!」
良妻と良夫とはこのことを言うのか。SAOの良心とその嫁は、やってることは他人と同じでも謎の癒しになる。なんでこうも違うのかね。
「アツヤ! ほら、食べて食べて!」
「断る! それを喰ったら何か既成事実になりそうな気配がある! というかその肉さっき酒に浸してたよな!」
「もぅっ! アヤセじゃなくて私を連れてきた時点でもう既成事実は在るような物だよ? ほら、だから諦めて食べて! はい、あーん!」
「やめろ! おい、やめろって! ぐぁぁぁぁっ!?」
リュウと同系統の受難を受けているやつが此処にもう一人いた。アツヤも苦労してるんだなぁ、と思う。ダブルヒロインの弊害だろうか。
というか先ほどからメタ思考が目立ってきた。セモンは自分がだんだんご都合主義結界に取り込まれかけていることに気付いて、ブンブン頭を振る。よし、これで大丈夫だ。
気を取り直して、残りのペアに目を向けてみる。
「あ、美味いなコレ。ほら、真夜美も食べてみろって」
「いい。もう食べた」
「嘘付け。さっきから全然食ってないだろうが」
「いいの」
「そんな事言うなって。それとも……」
「……んっ……!?」
「……こうして貰いたかったのか?」
「……和人の……馬鹿……っ」
キリト&ミヤビはお約束の糖分空間だった。渋るミヤビに、キリトが口移しで料理を食べさせる。やはりこのキリトは、セモンの知っているキリトとは大きく異なるようだ。Sっ気はキリアスにもあったが、こっちのキリトはその倍増しくらいである。もうとりあえず爆発しとけ。
「おいしいね、隆也」
「ああ、美味いな。生きててよかった、とはこのことだ」
「もう。不吉な事言わないでよ……これからも一緒だからね」
「ああ。ほれ、あーん」
「もうっ、普通は私がやるんでしょ? ……あーんっ」
「理奈も俺に食わせてくれ」
「ずるいよ、隆也だけ得して!」
ゼツリナはどさくさに紛れて将来を誓い合ったりしている。ゼツは過酷な過去を潜り抜けてきた猛者何だったか。ほほえましいなぁ。
願わくば、彼らの未来に久遠の幸福が訪れんことを、なんて陰斗みたいなことを思って、即座に陰斗≒《主》であると悟って慄然とした。
「うめぇなぁ。運動の後だから余計に」
「もう、刀馬はホントにスポーツ馬鹿何だから。ほら、あーんして?」
「ん? くれるのか? あーん」
――――ジンって以外と鈍感……?
まぁとにかく、理音・アリスペアに勝るとも劣らずまともな食卓……っとちょっと待て。まさかネタ切れになったんじゃぁあるまいな。
――――いかんいかん。またメタ思考に流されかけてしまった。
再び頭を振って、ご都合主義結界から抜け出すセモン。
「清文? どうしたの?」
隣に座るコハクが、心配そうに問うてくる。
「あ、ああ……大丈夫。ごめん、心配かけたな」
「ううん。あんまり食べてないみたいだから……」
「あー……まぁ、なぁ。やっぱりどんなに上手くて美味しくても、琥珀が作ってくれた方がおいしいって感じるのは……」
――――きっと嫁馬鹿の兆候なんだろうなぁ。
しみじみと感じるセモンであった。その隣ではコハクが真っ赤になってあわてている。
「な、なに言ってるのよ……そんな事より、ほら、清文。私も、その……これ、やりたいの」
「ん?」
コハクが牛肉を持ち上げて、セモンの口元まで運んでくる。ああ、そう言うことね。
「……あーん、して?」
「あーん」
ぱくっ、とセモンが肉を咥えると、すぐにコハクが箸を抜いてしまう。メテステとは逆である。
まぁ、とにかく――――普通に喰うより百倍近くおいしかった、と記しておこう。嫁の力ってすごい。
「よぉお前ら、楽しんでるか~?」
そんなことを言いつつ宴会場に、料理の乗ったお盆を抱えてシュウが入ってくる。その後ろには五人ばかりあの人造錬金自動人形…確か彼女たちは自らを『”エンジェ・ドールズ”』と名乗ったか…が、大手旅館のプロの給仕顔負けの精度で、御膳を重ねて続く。
「追加オーダーだぜ? ゆっくり食べろよな」
「待ってましたぁ!!」
「いっそのこと食べ比べしようぜ食べ比べ!」
「勝つのはこの俺だ!」
「いいや俺だね!」
「……うるさいぞ……静かに食わせろ」
宴会場、という名前の割には、全然宴会っぽいことやってない気はするモノの……
「これはこれで、楽しいかもしれないな」
久しぶりに、朗らかに笑うセモン。それを見て、コハクもどこか、温かい気持ちになるのであった。
***
「……起きてるか、お前ら」
「おう、当然のように」
その日の夜。カラオケ大会とか色々やって、セモンが謎の腕前というか喉前を発揮して「演劇やってた」とカミングアウトしてビビられた後。
草木も眠る、とは言わないが、そこそこ世間も寝静まって来たであろうその真夜中に、メテオが一人、ぽつりとつぶやいた。答える理央。
「……何をするつもりだ」
「いや、夜中にやることと言ったらもう一つしかないだろ」
「コイバナでもするってか? だったら俺パス」
「じゃぁ俺がサナの良い所について五時間語って進ぜよう。まずサナは――――」
「やめろ」
上から順に理音、メテオ、アツヤ、雷斗、キリト。嫁自慢を中断された雷斗は「なんだよー」とふてくされた表情で布団を被る。
「……残る候補としたら、嫌な予感しかないんだけど」
ハリンが苦い顔をする。ゼツほどではないが長い髪を下ろしていると、その柔和な顔立ちも合わさって女子っぽい。
「Yes。当然のことながら夜這いだ――――」
「させるかぁぁぁぁぁぁぁッ!! サナの寝顔は俺のモノだぁぁぁッ!」
即座に飛び起きた雷斗が二刀とシールドビットを構える。
「俺はお前を超えていく! ネオの寝顔を見るんだぁぁぁぁッ!!」
「加勢するぜメテオ! 詩乃―――――ッ!!」
「夜這いってなんかこういうものじゃない気がするんだが!?」
メテオと理央がご都合主義結界から与えられた使命に燃え、理音が知識との差異に困惑し、そして嫁の寝顔を守るべく漢たちが立ち上がる。
「そ、そうだぞ! 俺すら琥珀の寝顔、まだ見てないんだからな!」
防衛軍に参加すべく、《自在式》を一部解放しかけたセモン。
その瞬間。
「え?」
「え?」
「え?」
「Why?」
「ちとまてや。今なんつった?」
一斉に少年たちがこちらを向いた。
「え? いや、俺も琥珀の寝顔は見たことないから、お前らに見せるわけにはいかないって……」
「……まさかとは思うがセモン。もしやお前……今だ一度も抱いてないとは言うまいな?」
「な!? シャノンといいお前らといい、何で知ってるんだよ!?」
「なんでや!?」
「むしろこっちが聞きたいわ!!」
「だ、だって……こ、婚前交渉はダメだろう、と思って……」
「ふっる!? セモンふっる!?」
「いったいいつの時代の人間だオノレは!」
そんな風に、騒がしく夜は更けていったのであった。
因みに規則正しきスポーツ馬鹿はぐっすり眠っていた。
その後、我らの幸運少年が謎の悪寒を感じて飛び起きたのだが、丁度その頃女部屋では、「リュウぅ……リュウゥゥううウウウウッ!!」と絶叫するマリーが、男部屋に突撃しようとするのを、少女たちが総出で押さえていたとか何だとか。
後書き
俺の中で理音君は物静かな武人気質というか、ライバルキャラが主人公はってる感じというか、そんなイメージ。水面下でイチャラブする人。個人的に結構好きなキャラ。
そんなわけでシュウさんが久しぶりの登場の回。黒神先生、MORE DEBANN状態で申し訳ありませんでしたッ!
刹「本当ですよ……前にいただいた感想も返信してないうちに消されちゃったじゃないですか……」
うう……面目ない……。
因みにセモン君の「演劇やってた」設定は、作者と提供者卿が中学生の時に学校行事で演劇をやったことに起因します。
さて、お泊り編も次回で最終回(の予定)。更新は今週末から来週明けを目指します。
刹「デュエルトーナメントの参加募集も受け付けています。詳しくはつぶやきへ。それでは次回もお楽しみに!」
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