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転生赤龍帝のマフィアな生活

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四十四話:俺に従え


Sideバジル


「出てきませんね……ギャスパー殿」

「そうね…よっぽど一誠とイリナが怖かったのね」


今現在、拙者は一誠殿とイリナ殿に会ったことによりさらに外に対する恐怖心が出てしまった為に再び引き籠ったギャスパー殿の部屋の前にいます。どうにかして出てきてほしいのですが……拙者達では難しいですね。

頼みの綱であるゼノヴィア殿も今はまたイリナ殿に対する恐怖心が再発したのか部室の隅っこで『ハリネズミ怖い、ハリネズミ怖い、ハリネズミ怖い、ハリネズミ怖い、ハリネズミ怖い、ハリネズミ怖い、ハリネズミ怖い』とガタガタと震えながら体操座りをしているので役に立ちません。後で……あちらへもフォローしにいかなくてはいけませんね。

それにしても、あのお二方も会っただけで引きこもりを再発させるとは……恐ろしいです。
あ、でも二人共攻撃もしていましたね。もしかしてそれが原因でしょうか?
そんな事を考えている拙者にある人が近づいてきました。


「私に…任せて」

「クローム殿?」

「あなたに出来るの? クローム」

「多分…ギャスパーは昔の私に似ているから」


そう言って扉を無理やり開けて部屋の中に入っていくクローム殿。
中からギャスパー殿の悲鳴が聞こえてきますが……ここは任せるしかないでしょうね。
そう思って拙者は親方様にアイコンタクトをしてここから離れるように促します。
親方様も渋々といった感じではありますがそれに従い離れていきます。
後はクローム殿に任せましょう。それにしても―――


「拙者はいつまでこのメイド服を着ていればいいのでしょうか?」

「あら、ごめんなさいね。次はスク水を着せる時間だったわね」

「すみません。やっぱり今のままでいいです」


拙者は残念そうな顔をする親方様に冷や汗を流しながらギュッとメイド服を着た自分を抱きしめるのでした。そしてその時の仕草に親方様が鼻血を流したのはどうでもいいことですよね。
……どうでもいいですよね。





クロームが部屋に入ってまず目にしたものは部屋の隅で小刻みに震える段ボール箱だった。
それに対して彼女は若干、戸惑ったような顔をしたが普段から異常なことになれている彼女はすぐに切り替えて段ボール箱のすぐそばにまで行きその横に座った。段ボール箱の中の主は人が近づいてきたことを知ってか先程よりも強く段ボール箱を揺らしだす。そんな様子に彼女は昔を思い出すような目をしてから段ボール箱の主―――ギャスパーに声を掛ける。


「一人は寂しいよね…?」

「―――っ!?」


その言葉に反応して段ボール箱が器用に飛びあがる。
そのことに若干驚いた様子を見せる彼女だったが気を取り直して再び話し始める。
それは彼女が実際にした経験であり、実際に感じた感情。


「今から言うのは独り言だから…」

「…………………」

「みんな…みんな私を不気味がるの……生まれた時からそう。ずっとのけ者にされた…私なんかいらないって……でも…それでも良かったの。どうせ誰からも必要とされないから…一人になりたかった」


ポツリポツリと話し始める彼女の重い言葉にギャスパーは静かに聞き耳を立てて聞き入る。
何故ならそれは今自分が抱いている感情と同じような物だったからだ。彼女のことは良く知らないがギャスパーは今、どこかしらの親近感を彼女に感じ始めた。


「私は良く分からない力を持っている。そのせいでやっぱり気味悪がられる…ただ私は普通に居たいだけなのにどうして私にばかり変な力があるの…? ……こんな力私は欲しくなかった、他の人だってそう、こんな力を持つ私なんて望んでない、それなのに…どうしてこんな力が私にあるの?」


ギャスパーはそこで理解した。彼女もまた自分と同じように望まないままに力を持たされたが故に自分と同じような境遇にあった人間なのだと。そしてそこまで理解してある疑問が芽生える。彼女はどうして自分と同じような目にあっていながら自分のようにはなっていないのかと。自分のように人に恐怖していないのかと。


「どうせ私を必要としてくれる人なんていないんだから、ずっと一人で居たいと思っていた……でも、お兄ちゃんがそれを変えてくれた」


そう言って本当に嬉しそうに笑うクローム。その様子を段ボール箱の小さな隙間から覗いていたギャスパーは心底羨ましいと思った。自分もあんな笑顔を見せれる人になれたらどれだけ素晴らしいかと思わず想像してしまった。そのことを知ってか知らずかクロームはさらに言葉をつづける。


「お兄ちゃんが私を必要だと言ってくれた…私に手を差し伸べてくれた。家族になってくれた。あなたにも手を差し伸べてくれる人はいるでしょ?」

「………………」


ギャスパーは無言で自分の周りに居る人たちを頭に思い浮かべる。自分の命を救ってくれたリアスにその眷属達は確かに自分を受け入れてくれるだろう。でも……もし、拒絶されたら? そこまで考えるとまた恐怖で動けなくなる。そんなところにまた声が聞こえてくる。


「怖いと思うけど…大丈夫。あの人達ならあなたを受け入れてくれる。
 だから―――勇気を出してその手を握り返してみて」

「僕は………」

「頑張ってね…応援しているよ」


最後にそれだけ言い残して去っていくクローム。ギャスパーはそんな彼女が完全に去って行った事を確認した後でゆっくりと段ボール箱の中から出る。そして自分の手の平をゆっくりと眺めて見る。この手の平を本当に握り返してくれるのか、自分に差し伸べられた手を掴む勇気があるのかと……そして数分考えた後に決意を固める。


「僕…頑張ってみます」


ギャスパーは手を握り返すことを決めた。






三勢力会談、その目的と情報が書かれた資料に俺は目を通す。目の前にはその資料を持ってきたカスザメとブルーベルが、俺がどんな反応を見せるかを興味深そうに見つめている。
今度、駒王学園行われる、三勢力のトップ全員が集まる会議。表向きの議題としてはこの前会ったコカビエル(ドカス)が起こした聖剣強奪についての説明と言ったところか。

確かにあの件においては悪魔と堕天使、そして教会勢力が関わった、下手すれば戦争が起こりかねねえ状況だったから集まって話し合いをしようというのも頷ける。だが、全勢力のトップが出張って来る必要はねえ。今まで一度たりとも接触しようとしてこなかったカス共がそうまでして接触を図るのはもっとでけえ理由があるからだ。そうだ、裏向きの議題は―――神の死についてだ。

正直って俺にとっては消すべき対象が一人減った程度の感覚でしかないが、カス共にとってはそうはいかないらしい。
俺はそこで軽く息を吐き、ミランダに淹れさせた紅茶を飲む。芳醇な香りを楽しみつつ、俺はもう一つの資料を手に取る。その資料には最近裏側でこそこそと勢力を広げていっているテロリストについて載っていた。
そのカス共の名前は―――『禍の団(カオス・ブリゲード)

構成としては今の所、一番勢力のあるグループは負け犬どもの集まりである旧魔王派らしいな。よくもまあ、負け犬どもが喧嘩を売ってこようなんざ考えたもんだ。カスはカスらしく従ってりゃいいものを。これだからカスは嫌いなんだ。そしてこれが三勢力会議の資料と同時に渡されたってことは十中八九、会談中に攻撃を仕掛けてくるんだろうな。
だからこそ、カスザメ共は俺にこれを渡しに来たんだろう。


「おいボス、それでどうするつもりだあ?」

「ブルーベルはどっちでもいいよ」


俺にどうするのかと聞いて来るカスザメとブルーベル。何を聞きたいかなんざ聞かなくても分かる。カス共をカッ消すかどうかだ。三勢力会談については俺も呼ばれている。コカビエルを直接殺った、張本人として呼ばれてるみてえだが大方の理由は神の死についての口封じだろう。

信徒でねえ俺を破門することは出来ねえ、さらに言えば、俺に対してぞんざいな扱いをすればボンゴレに喧嘩を売ったとみなし、全面戦争も辞さない。戦争をしかけないにしても今まで払い続けていた莫大な“寄付金”を無くすぐらいはしてやる。

教会の弱点は最も信仰を広めているがゆえに表の仕事をおざなりにできないことだ。人間が関わっている以上は必ず金が絡む、神に仕えると言っても信仰で腹は膨れねえ。神が生きていた時ならいざ知らず、神の居ない今となっては奇跡も起こらない。

敬虔な信者なんざほとんどいねえんだ。金で操作してやれば簡単にこっちに手のひらを反して来るようなカス共ばかりだ。そんなカス共でも上の地位についているから教会は切り捨てられない。故に俺達から金を受け取り続けるしかない。神が望んだ信仰なんざとうの昔に死んでいる、それでも信仰を、力を維持するために天界共は今の状況を、指を咥えて見ることしか出来ねえ。ざまあねえな。

それで、今回はそんな結びつきの強い教会も負け犬どもの標的に入っているという事だ。
そして会談に出席する予定である、俺本人にまで喧嘩を売ってきているというわけだ。どうするかなんざ考えるまでもねえ。俺は立ち上がり手の平から炎を出して資料を燃やす。


「イタリアからヴァリアーを呼べ……負け犬どもを皆殺しにする」

「そう言うと思ったぜえ! 久しぶりに暴れられるぜえええっ!」

「にゅーん! いっぱい殺っちゃうもんねー!」


俺の言葉に沸き立つ二人、こいつらにはしっかりと働いて貰わねえとな。動くなら負け犬どもが仕掛けてきてからだ。今の負け犬どもはまだ犯罪者じゃねえ、ただ集まっているだけだ。そんな状態の奴らを潰すのはつまらねえ。負け犬どもが意気揚々と攻め込んできたところで圧倒的な力の差を見せつけて絶望を味あわせてから殺してやる。
そう考えると愉快さで顔がニヤリと歪む。久しぶりにストレス発散の相手が見つかりそうだぜ。


「………ゔおぉい、ボス」


何やらかなり聞きづらそうな様子で口を開くカスザメ。ブルーベルも若干気まずそうな顔をして俺を見つめてきている。……何で、今の今まで気を使っていたのにここになって聞いてくんだよ、くそが。


「…………何だ?」

「何で、てめえは女になってるうえに変な耳と尻尾まで生えてんだよおおおっ!?」

「ブルーベルは軍服を着ているのが気になるんだけど……」


そうだ、俺は未だに女の姿のままで戻れていない、しかもライオン耳と尻尾もずっと生えたままだ。おまけにうちの女性陣が渡してくるコスプレ衣装は未だにとどまることを知らない。今現在、俺が来ているのは軍服だ、そこにさらに馬用の鞭を持たされている。一応雷の炎を纏わせれば武器として仕えるからまだいいんだが……というか、こいつらは俺が女になっていても俺だという事がなんで分かったんだ? そう思いカスザメに聞いてみる。


「おい、カスザメ。なんで、てめえは俺だと分かったんだ?」

「はっ! 俺がクソボスを見間違えるわけねえだろ。俺達のボスはお前しかいねえんだよ」

「ブルーベルも同じだよー!」


こちらを見てニヤリと笑うカスザメ、ブルーベルはピョンピョンと飛び跳ねながら挙手する。こいつら……分かっているじゃねえか。ああ、そうだ。てめえらのボスは俺しか居ねえんだ。他のカス共にてめえらは飼いならせねえし、てめえらが従っていいのも俺だけだ。

……べ、別に分かってくれたことが嬉しくて照れている訳じゃねえからな。俺はただ、カス共が俺に従っているのは当然だと思っているだけだからな。ほ、本当だからな!
俺は赤くなっている顔を隠すように軍帽を深くかぶりなおす。そして気を落ち着かせて部屋から出るために歩き出し、扉の前で立ち止まる。


「男だろうが女だろうが関係ねえ、カス共は黙って俺の背中に付いて来りゃいい。
 ……何か俺が間違っている所があるか?」


振り向きざまにそう言い放つ俺。
それに反応してカスザメどもが凶悪そうな笑みを浮かべる。
ああ、そうだ。この久しぶりの感覚が俺の本来の姿だ。


「いいや、何もねえなあ」

「異議なーし」

「そうか……なら、付いて来い!」


「「Yes sir Decime(イエス サー デーチモ)」」


待っていな、負け犬ども。てめえらが喧嘩を売ろうとしている人物がどういう奴かを直ぐに思い知らせてやる。最強かつ最恐のボンゴレ(デーチモ)の名に懸けて、てめえらをカッ消す!

 
 

 
後書き



シリアス「カオスよ、私は帰って来たぞ!」


 
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