ラグナロク 蒼き瞳のESP(超能力)
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第一話 『任務開始』
前書き
皆さんこんにちは。前回のプロローグに引き続き、第一話を作成させていただきました。楽しんでいっていただけると幸いです。それでは、第一話をお楽しみください。
春の暖かい風が、銀色に輝く髪をなびかせ、どこからか流れてくる桜の香りが、仄かにびこうを刺激する。始めてきた土地なのに、どこかなつかしいような感覚に私はほほを軽く緩ませた。
2020年 4月20日、ここは東京都世田谷区。生まれも育ちもアメリカの私、アリス・フィリア・レヴィオンはどうしてこの様な場所にいるのかと言うと、上官が私に押し付けたある任務のせいなのである。
三日前
それは、中国首相警護の任務を終えて、出撃エントランスのベンチで休憩していたときのことだった。
「アリス大尉!お疲れ様です!」
この娘は、私の担当オペレーターを勤めてくれている、フレンダ・セリオス・マルキューリだ。
「お疲れ様、フレンダ」
「アリスさん。バーカス大佐が、暇なときがあったら顔を見せにこい、だそうですよ」
座っていたベンチの隣に腰掛けながらそう言った。
「そう。じゃあ、暇は無いので無理ですって言っといて」
スポーツドリンクを飲みながらそう言うと
「相変わらずですね~アリスさんは」
などと上目使いで言ってきた。
「どういう意味よそれ」
そんな会話をしながら、シャワールームへ向かおうとしていたとき、一本のアナウンスが流れた。
『アリス・レヴィオン大尉、至急支部長室までお越しください』
「アリスさん呼ばれてますよ?あ、もしかしてまた業務違反したんですか?」
「あのねぇ、なんでもかんでも業務違反にしないでくれない?多分仕事の話でしょ」
そんなことを言っている私だが、アナウンスで呼ばれたのは初めてだ。いつもはHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)にメッセを飛ばしてくるのに。直接口で言うくらい重要な仕事なのか、もしくはあの変人支部長の気まぐれか。まあ、どちらにしろ出頭拒否するわけにはいくまい。
「それじゃ、ちょっと行ってくから」
「頑張ってくださいね」
フレンダは、立ち上がった私にむかって、上目遣いでそう言ってきた。何を頑張るんだかね、と思いながらエレベーターの方へと向かった。
私が配属されているのは、SSF(サジット・シャサール・フェンリル)社、東アジア統括支部というところで、総勢214名で構成されている。その基地が置かれているのは、ロシアのハバロフスクだ。その他、アメリカ、ニューヨークにある本部を含め、11の支部が世界各国に存在している。だが、その場所、実態、構成員についてのデータは全くといっていいほど公開していない。世界一有名で、世界一謎の会社と言えるだろう。フェンリル社で働く社員は、全員がIQ126以上を誇るエリートだけで構成されている。入社試験の7つの項目をクリアして初めて、フェンリル社の社員として認められるのだ。因みに私のIQは180オーバー。9歳からここでしごかれて育てばこうもなる。などと説明していると、いつの間にか支部長室の真ん前まで来てしまっていた。正直、あの変わり者にはできれば顔を会わせたくはないのだが、突然私の自室に顔を出されても困るので仕方がない。覚悟を決めた私は、意を決してドアをノックした。
「支部長。アリス・フィリア・レヴィオン大尉です」
「アリス君か。どうぞ入って」
私がそう言うとテノールでナルシスト口調の声が帰ってきた。それだけで私は回れ右をして今すぐシャワールームに逃げ込みたいのだが、その考えを何とか押さえ込みドアノブにてをかけた。
「失礼します」
中に入って最初に見に入るのは、第二次大戦中の戦艦 アイオワの模型。次に見えるのが、イラク戦争で実際に使われていたと言う実銃のバレットM82。そしてどこからてに入れてきたのか全く不明なタヌキの置物。その他もろもろの珍コレクション(しかもカテゴリーが様々)がずらりと並んでいて、もう趣味がワケわからなくなっている。
「支部長、一体なんのご用ですか?わざわざこんなとこにまで呼び出すなんて」
「なーに。ちょっとした任務の話さ」
このよくわからない異趣味で変な男こそ、SSF東アジア統括支部の最高司令官、トーマス・エルドリエ中将だ。
年はなんと34歳。こんな年で中将などと言う位にいるのはなかなかに異例だ。17歳で大尉の私が言えたことではないのだが……。IQはなんと238で、その指揮統括能力は米軍の将軍をもしのぐと言われる頭脳の持ち主だが、とにかく変人なのだ。
「それならディス(ヘッドマウントディスプレイの略、命名アリス)に送って頂ければ済むことなのでは?」
「まあ、たまには口頭で伝えるのもいいと思ってね」
どうやら先程の予想は後者が正解だったようだ。全くあきれた人だが、これ以上長居はしたくないので早速本題に入らせてもらおう。
「それで、その任務と言うのは?」
「うん。アリス君はもちろん、日本と言う国を知っているね」
また変なことをいい始めるのかと思っていたので、単刀直入な質問に、少し困惑して答えた。
「え、ええ。行ったことは無いですけど、うちの担当地域ですから。医学レベルは世界最高水準を誇る国であり、そのそれが逆手に出てしまい、少子高齢化?とか言うのが進んでいる。そうきいています」
「そのとうりだ。実はその日本の首都である東京に、蒼海学園と言う私立高校が在るんだが、その学校から、強力な生体エネルギー反応が検出された。アメリカ中央情報局(CIA)やイギリス情報局極秘諜報部(MI6)などが合同で調べた結果、レベルAクラスのESPであると判断された」
「ESP!?それもレベルAクラスって……」
ESPと言うのはエスパーを略した用語で、いわゆる超能力者。そのなかでも、攻撃型のエネルギー波を検出した人物をESPと呼ぶのだ。しかし、初めて超能力が科学的に証明されてから、30年以上が経過しているが、クラスA以上の人材は今まで確認されていなかった。つまり世界初の高位能力者と言うことになる。
「その情報、確かなんですか?」
「間違いはないだろう。CIAもMI6も優秀だ」
そう答える支部長の目は、いつになく真剣だ。
「そう……ですか。それで、そのESPと任務とがどう関係してるんです?まさか世界的な驚異になりかねないから暗殺しろとでも?」
冗談混じりでそう言うと、まるで馬鹿にしたかように鼻で笑い、私の質問を弾き返した。
「まさか。我々は極秘暗殺部隊ではないからね。その逆さ。君には、ESPの護衛任務についてもらいたい」
「……護衛ですか」
なぜ今沈黙の時間ができたかと言うと、この男の態度があまりにムカつくため、銃を抜いて気持ちよくしてやろうかと言う考えが浮かんだからだ。だが何とか押さえ込むことに成功し、言葉を返したのだ。
「うん。まあ、君と同じ考え方をするやからもいると言うことさ」
「暗殺を企てている組織があると?」
「そのとうりだ。これは、アメリカ政府からの直接の以来でね。最高の人材を送ってくれと言われているんだ。だから君を選んだ」
おそらくは、なんちゃら教の信者やどこかの過激国家が暗殺部隊を送り込むつもりなのだろう。はた迷惑な話だ。
「と言うわけで君には、蒼海学園に潜入してもらう」
「……はあ!?…な、何で私が……裏で極秘に護衛すればいいじゃないですか!」
あまりに予想外すぎて、声をあげてしまった。なぜなら幼少のときから学校に通ったことなど無かったのだ。それに今更そんな所にいっても仕方ないし、恥ずかしいし。
「たのむよ。君はESPと同じ17歳だから、とても都合がいいんだ」
「いや、だからって私が潜入しなくても……」
「常に近くにいたほうが護衛もしやすいだろ?」
「でも私は……」
「君の任務成功率は98.7%だ。君なら確実にやり遂げられる」
「で、でも……」
「ならこう言おう。やってくれ。これは命令だ」
「……り、了解しました……」
とんだことになっちゃったな~と、私は涙目になりながら支部長室を後にした。最後の最後まで自分のルートを貫き通した支部長。今思えば、なんか妙だった気がする。いつもなら無理だと言えば強制はしないのだが、今日はまるで、私に押し付けるかのように任務を受諾させた。まあ、そんなときもあるのだろうと、無理やり自分を納得させた。
エントランスに戻ってくると、フレンダがベンチで爆睡していた。まあ、いつものことなのだが……
「フレンダ!起きてフレンダ!」
「ふにゅ……んっ……ティラミス……」
フレンダは幸せそうな寝顔をしながらよだれを垂らしている。
「寝ぼけてないで起きなさいよ!」
「ん~……みゃ……じゅるるる……あれ、アリスさん?」
半起きしたフレンダは、見上げるようにこちらに視線を向けた。
「フレンダ。……任務の時間よ」
と言うわけで私は、今この辺境の地へと来ていると言うわけだ。
「さてと。装備の確認でもしようかな」
などといいながら、ファイブセブンにサイレンサーを付けたり、スペアマガジンの確認などをしていると、耳につけたイヤリング型の通信機に
「どうですかアリスさん。ちゃんと聞こえてますか?」
と言うフレンダの声が聞こえてきた。
「大丈夫よフレンダ。感度良好、よく聞こえるわ」
「今回の任務も頑張ってくださいね。蒼海学園の転校生さん」
などとからかってきやがった。あんにゃろう……
「同じセリフをもう一回言ってみなさい。今すぐハバロフスクにもどって、その頭すっ飛ばしてやるからね」
「も~ジョーダンですよジョーダン」
などと言いながら、無線ごしにクスクスと笑っている。
だが、ふざけている中でも仕事は適格、それがフレンダの良いところだ。場の雰囲気を和らげてくれるのはいつもフレンダだし、私のオペレーティングもしっかりやってくれている。なんと言うか、憎めない相手だ。
「目標対象の情報をアリスさんのディスに転送しました。確認お願いします」
「了解フレンダ。相変わらず仕事が出来るわね」
などと少し誉めてやると、
「おー。アリスさんに誉められるのって、なんか違和感ですね」
なんてことを真面目な声で言ってきた。
「あんたそれどういう意味よ」
「い、いえなんでも!あ、9時になりました。任務開始時刻です」
どさくさに紛れて話を反らしやがった。まあこの話は、いずれ決着を着けるとしよう。
「ええ分かったわ。それじゃいきますか」
ファイブセブンを左胸のホルスターにしまうと、私は自分のほほを叩き、学校の方へと向かって歩き出した。
後書き
いかがだったでしょうか。初めてまだ日が浅いので、アドバイス等をいただけるととても助かります。それでは、次回、ラグナロク第二話でお会いしましょう。
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