とある緋弾のソードアート・ライブ
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第二話「学園都市バスツアー」
1,
──11月3日。9:52。東京駅、丸の内駅舎付近。
「うーん!着いた!東京駅!」
ALOの鍛冶屋のレプラコーン・リズベットこと篠崎里香は終点の東京駅で電車から降りると、満員電車で凝り固まった体をめいいっぱい伸ばす。
現時刻は10時少し前くらい。バスの発進時間は10時半だから、急げば十分間に合うだろう。
「──けど、連休だからかすごい人でしたね。人に酔いそうだった…」
その後ろではALOのビーストテイマーのケットシー・シリカこと綾野珪子が少しぐったりした様子で立っていた。
それを見て苦笑するリズベット。確かに今日は連休中だからかバスも電車もすごい人だった。事実リズベットもシリカほどではないが、少し人に酔った感がある。
「まぁ学園都市行きのバスの中ではゆっくり休めそうだし」
「けど、学園都市ってどんなところなんでしょうか…やっぱり『科学の街』って感じなのかな?」
「ロボットとか普通にいるんじゃない?あと車が空飛んでたり」
「流石に空飛ぶ車は無いと思いますけど…確かにロボットは──」
改札口を抜け、地上に出る為のエレベーターに乗りながらそんな会話をする2人。
「あ、おーい!シリカさん!リズベットさん!」
2人が学園都市についての様々な憶測を飛び交わしていると、待ち合わせの場所、東京駅内にあるショッピングセンターの入り口が見えてきた。
見ると入り口脇のベンチには既に、手を振っているリーファ、キリト、アスナ、クラインの4人が待っていた。どうやらリズベットたちが一番遅かったらしい。
「ごめんねー遅れて。電車凄い人でさ」
「待ち合わせまでまだ十分に時間あるし、謝ること無いだろ?」
『そうです!パパの言う通り!』
キリトが持っている携帯端末からユイの声が響いてきた。恐らくは端末についたカメラから現実の様子を見ているのだろう。
「ユイちゃんもありがとう」
「それじゃあ皆さん揃ったことですし!学園都市への5泊6日の旅!存分に楽しみましょう!!」
場を絞めるクラインの一言に、全員は一斉に手を上げる。
「「「「おー!!」」」」
2,
「おお!!すごいぞこの建物!まるでお城のようだ!」
東京駅の丸の内駅舎を見ながら十香が感嘆の声を上げる。
今、士道たち一行は学園都市行きのバスが待っている東京駅にいる。
東京駅といえばレンガ造りの丸の内駅舎が印象的な駅だ。士道や琴里、美九、令音などにとってはテレビなどでも見慣れた物だが、十香や四糸乃、よしのん、耶倶矢、夕弦、七罪などの精霊たちにとっては面白いものらしく、目をランランと輝かせて丸の内駅舎を見入っている。
「お、おっきいです…」
『すっごいねー』
「ほぅ。中々良い建物ではないか」
「同感。まるでこの前やったゲームのダンジョンのようです」
「へー。こんな建物もあるのね」
思い思いの感想を彼女たちがあげていく中、士道は別の場所へと目をやっていた。
「ん?どうしたのよ士道君。可愛い女の子でもいた?」
「いや。そういうわけじゃないんだけど──」
士道が一行とは別の場所を見ているのに気づいた七罪が声をかけてくる。一瞬、「可愛い女の子」の部分で令音以外の目に猛禽のごとき眼光が灯るのを感じたが、士道が否定するとその気配も消えた。
ちなみに今の七罪は大人バージョンの七罪だ。
理由は七罪のメンタル面の弱さにある。 七罪は絶望的なほどの超ネガティヴなのだ。
通常の彼女は、少しでも嫌な事を考えたり想像しただけで簡単に霊力の逆流が起こってしまうため、変身能力が使用可能になってしまうのだ。 その状態でテンパって自身が変身、もしくは他人を変身などさせてしまっては大変面倒なことになってしまう。
しかし自身の能力を使って「理想の姿」というべき大人の姿になると、不安定な精神は落ち着かせることができるのだ。……テンションがハイになるのと、いらんちょっかいを出すようになるが、能力の暴走よりかはよっぽど良心的だろう。多分。
こうして見学会中は大人モードで行動できるようにしたのだ。 何せ今から行くところは学園都市である。精霊だとバレれば、どうなるか分からない。学園都市にはDEM社の支社もあると言うし、面倒なことになるのは確実だろう。
「もしかして……あれじゃないかなと」
「主語がはっきりしてないわよオタンコナス」
……酷い言いようだが、これで司令官モードの琴里は正常運転なのだから仕方ない。
琴里は頭につけたリボンの色で、自身の思考のスイッチを入れ替えるという。始めて見た時はその二重人格のような変わりように、大変ショックを受けたものだ。もう大分慣れたが。
「あれのことだよ」
琴里の暴言を受け流しながら士道はある場所を指差す。士道の指の方向に目を見やる一同。
そこには通常の物とは違う流線型の形をした、天井が開けた銀色のバスが止められていた。 表面はもはや鏡で、ここが日陰でなければ陽光を反射して、目も向けられなかったのではないかというほどだ。
「おおお!なんだ!?このバスは!ものすごくかっこいいぞ!!」
目を輝かせる十香。バスに興味津々のようで即座に近づいて行く。
「え~と……何だっけこのバス。テレビ番組とかで見たことあるんだけど……」
「確か……オープントップバスだったかな」
年中眠そうにくまを作る残念美人(ラタトスク職員談)、令音が士道の代わりに答えを出す。
「なんか目立つわね……形も色も」
オープントップバスは開放感と眺望を確保するために屋根の一部または全部を取り払ったバスのことでオープンカーの一種と考えられる。 日本国内各地でも一般客の乗車できるオープントップバスの運行が開始されており、誰でもテレビで見たことがあるバスだ。2020年の東京オリンピックでも観光バスの一つとして外国人客に多く利用されていた。
「送迎バスの乗り場もここみたいですし…本当にこのバスみたいですね」
『よしのん、なんだか緊張してきたよ~』
⚫︎
「む!もしかして学園都市特別見学会の参加者の方々ですか!?」
珍しいタイプのバスをじろじろ見ていた一行は、ふと後ろからかけられた声に振り返る。
そこにはストレートの金髪・碧眼の士道と同じくらいの少女が愛想のいい笑みを浮かべながら立っていた。着ている制服は修学旅行やツアー旅行などでよく見られるバスガイドの制服だ。
「質問。あなたはどちら様ですか?」
「ああ、挨拶は基本でしたね…。わたくし!今回の学園都市特別見学会のバスガイドを務めさしていただきます、因幡智恵と申します!!」
そう言いながらくるくると回り始めた少女。どうやらこの少女が今回、士道たち一行を学園都市へナビゲートするバスガイドらしい。 まだ士道たちと同じくらい若いのにツアーのバスガイドとは、対した人である。
「よろしくね~☆」
「うむ!よろしくなのだ!」
智恵の挨拶に元気良く答える十香。
「バスに乗るのはもうちょっと待ってくださいね!!運転手が車内点検してますから!あ、おにーさん!荷物の詰め込み手伝いますね!」
「あ。ありがとうございます」
「いえいえ。仕事ですし。しっかしおにーさん荷物多いね~。ハーレムだったはいえ大変だったでしょ」
「ハハハ……」
バスガイドからの感心の言葉に、士道は思わず苦笑する。東京駅までは車を令音が運転してきたが、駐車場からバス停までは9人分の殆どを士道1人で運んでいたのだ。距離は短かったが流石に少し疲れたのも事実だ。
「私は何度も自分で持つと言ったのに…」
「いいよ、いいよ。これくらいは俺が持つって」
不満に顔を膨らませる十香に何でもなさそうに笑顔で応える士道。こういう場合、女性の荷物を持つのは男性の義務とも言えよう。何より重たい荷物を女性に持たせてまま見て見ぬ振りなど、自身の男としてプライドが許さなかった。
「………………………チッ」
「?……なんか言いました?」
「なんでもないですよー」
「?む、そうか?」
一瞬聞こえた舌打ちに頭を傾げる士道と十香。まさか目の前の少女がしたとは思えない。男の声だったし。
「……ん、もしかしてアレも今回の参加者ですかねー?」
士道とバスガイドが荷物を詰め込むのを見ていた美九が、あらぬ方向に目をやる。それにつられて最後の荷物を詰め込んだ士道たちもその方向に目を見張る。
そこには──
3,
「おお~凄いバスだね~。なんか学園都市って感じの」
「なんか近未来的ですね…リズベットさんの言ってたような空飛ぶ車では無かったですけどね」
「なんだっけこのバス…前にお兄ちゃんと見たことあるんだけど…」
『オープントップバスですね。観光バスによく使われているバスです』
「ほ~、やっぱユイちゃん物知りだな~。しかし、かっけぇな。このバス」
「まずは荷物積み込みましょ」
「あ、俺とクラインとでやるからアスナ達は先乗ってくれよ」
「え、いいの?」
「アスナさん。こういう力仕事は男の仕事ですからね。か弱い女の人にやらせるわけにはいきませんよ」
「んじゃ、男2人に頼んだわよー」
「よろしくね。お兄ちゃん」
「──あっ、あれって他の参加者の人たちじゃないんですか?」
東京駅にて集合したキリト達一行がバスに近づくにつれ、バスの周りの人影も見えてきた。シリカが見つけたのはどうやら既にバスに乗り込もうとしている参加者たちだった。 シリカが指差す先、確かに何組かが纏まってバスの周りで荷物を纏めてバスガイドに渡したり、バスに乗り込んだりしていた。
その中でも目を引く特異な集団。それにキリトが気づいたのは、リズベットの一言が原因であった。
「うわっ。こっちの男女比も凄いけどあっちはもっと凄いわよ。一対八とか完全にハーレムじゃない」
「んだとっ!?誰だっ、キリの字以外にそんな美味しい環境にいる奴は!?」
「……なんだかあの男の人。ちょっとキリトさんに似てません?」
「へっ?」
シリカの指摘に思わず素っ頓狂な声を上げるキリト。一同は目をバス周辺に向ける。
「お兄ちゃんに?」
「あ、ホントだ。細身なところとか、ちょっと頼りなさそうなところとか、一歩間違ったら女の子と間違われそうな顔立ちとか」
「……アスナさん…。俺、何かしましたっけ…?」
ここまで言われる理由に、キリトは心当たりがなかった。
「言われてみればそうかもね~。このメンバーにクラインがいなかったら完全に同んなじだわ。特に中性的な顔立ちが!」
「オイ!リズベット!?」
ついでにリズベットにも言われる理由に心当たりはない。
「お兄ちゃん昔っから女の子に間違われること多かったもんねー。よく服買いに行ったら「姉妹で同じ服はどうですか」なんて」
「スグまで……」
「ハッハッハッ。昔はキリの字にも可愛いところがあったってこといでぇ!」
最後に放たれたクラインの一言を間髪入れずに足を踏むことで、キリトは(物理的に)黙らせる。
⚫︎
「私たちも大概ですけど、あっちの団体の男女比も中々ですよね~。2倍の差があるますもん」
「ホントね……ぷっ。ねぇ、あの真ん中の男の子、士道に似てない?」
突然吹き出した七罪の一言に一同の目は近づいてきてる集団に釘付けになる。
「へ?俺に?」
荷物を詰め込んだ士道は、皆の目線の先にいる少年を見た。何やら青年と口論をしているような少年は、個人的には自分と似ているとは思えなかった。
「おおっ!確かにな!体つきが細いところとか!」
「同感。夕弦も耶倶矢と同じ意見です」
「なんか頼りなさそうなところとか」
「オイ」
耶倶矢、琴里の一言に思わず突っ込む士道。
「確かにシドーと同じで優しそうな感じがするぞ!」
「十香……」
「あと……なんか女装とか似合いそうですよねー」
「美九ちゃん。それ、私も思ったわ」
「七罪さんもですかー」
「私も……ちょっと」
「………」
引きつった笑い方をする機会がこの頃増えた気がするのは自分だけだろうか。多分そうだろう。
「もう一度見たいですねぇ…士織ちゃん」
「待て美九。そう言いながらうちの学校の女子用制服を取り出すな。落ち着け。それとお前なんでうちの制服持っているんだ?」
「もちろん、いつでも何処でもだーりんを士織ちゃんにメイクアップさせるために…」
「やらないからな!もう女装はやらないからな!!」
声を荒げる士道。と言っても、バスガイドや通行人に聞かれないためにできるだけ静かな声で、だが。
ともかく、士道にはもう、更々士織ちゃんにチェンジアップする気などない。毛頭だ。
「私も見たいわー。ま、最も私の力があれば自由に士道くんの姿なんて自由に変えられるんだけどね…」
「すいません、ホントやめください。もう女の子はこりごりです」
「何言ってんのよ。何度でも必要だったら登場してもらうからね。士織ちゃんには」
「うう…琴里。ホントご勘弁を…」
⚫︎
「あ!そうだ!今度キリトの女装大会とかしない?私たちがプロデュースしてさ!」
「はぁ!?おい何言ってんだ!ふざけるな!」
「え……それは流石に…アリね」
「ちょ!?アスナさん!?」
「それは流石にキリトさんが……」
「シリカは見たくないんですか~キリトの女装姿」
「うっ……」
「シリカ!そこは否定してくれないか!?」
「昔は親戚のお姉さんとかにふざけてさせられてたけど、今も結構いけるんじゃない?」
「スグ。頼むから黙ってくれ。頼むから」
「………さっきから思ってんだが、それって誰得なんだよ、キリの字」
「俺に聞くな!!」
「キリトくん、中性的な顔立ちだから絶対似合うって!ね!」
「アスナさん、マジで勘弁して……」
⚫︎
「そうか…そうだったな。またシドーが女の子になりたがっているなら、私はいつでも手伝うぞ!」
「え、その勘違いまだ続いていたのかよ!?」
『もうホントに上付けて、下取っちゃえよ士道くん。そっちの方が需要あるって』
「もうその話題はやめてくれ……本当に……」
「あ~。もう一度見たいですね士織ちゃん。神様、どうか私にもう一度お恵みを──」
⚫︎
「「もう──それについて話すのはやめてくれ!!」」
⚫︎
──2人の少年の悲痛な叫びと
──他の面子の堪えきれなくなった笑い声が重なったのは
──ほぼ同時だった。
4,
──11月3日。10:20。学園都市第七ゲート付近の地下街。
連休中だと言うのに人通りが全くない地下街を歩きながら遠山キンジは、武偵校地下にある地下倉庫を思い出していた。
11月3日。ある人物の手引きにより無事に学園都市に潜入した、武偵校の並河製薬会社調査チームは、潜伏先の空き店舗へと案内されているところだった。
「──まさかあんたが学園都市への潜入の手伝いをしてくれるなんてね」
「そりゃーイギリス教会はイ・ウー殲滅をイギリス皇室から無理矢理押し付けられていたからなー。更にお前らは眷属側につこうとしていたリバティー・メイソンの連中を押しとどめてくれた。イギリス国内の2大勢力がそれぞれ別勢力についちまってはイギリスって国自体に大迷惑らしいし……ま、俺はそんなこと知ったこっちゃないがな」
「に、しては『必要悪の教会』は『戦役』に不参加だけどねー。ツッチー」
バスカービルの前を歩く少年──極東戦役の宣戦会議にて『必要悪の教会』及びイギリス清教の「不参加」を告げに来た1人──学園都市のスパイであるらしい少年、土御門元春は、見た限りでは人の良さそうな、だが明らかに胡散臭い笑みを浮かべながら、振り返った。
「それは仕方ないにゃー。ただでさえバチカンやロシア清教と仲違いしかけていたあの状況で『戦役』なんかに参加したら、その時点で確実に学園都市を巻き込んで第三次世界大戦が起こっていたからな~。……ま、結局起きちまったから同じだけどな」
「しっかし第三次世界大戦に『グレムリン』の騒動だろ?一応その時だけはどの組織も何もしてこなかったけど、よくまだ続ける気になったよな。『戦役』を」
「何を言っている遠山。極東戦役は国家元首でも迂闊に止めることは出来ないからな。止められるのは教授くらいのものだろう」
「何せ参加するのは僕のリバティ・メイソンのような、それぞれの国の皇室・王室や国家元首に口出しできるレベルの組織ばかりだからね。第三次世界大戦の時と『グレムリン』の時は、全ての組織が休戦した方がいいと判断したから、つかの間の休戦が実現できたけど、始まったからには中途半端な状況で辞めることはできない」
……元イ・ウー所属の魔女にして、あのジャンヌ・ダルクの子孫というジャンヌ・ダルク30世とイギリス最大の組織リバティ・メイソン所属にしてかの名探偵ホームズの相棒、ワトソン医師の曾孫であるエル・ワトソンがいうと説得力が違うな。
が、理解はできても納得はできるわけではない。キンジは頭を抱えながら
「ったく……どうしてこうなったんだよ…………って、俺のせいか…ハァ」
「はい」
「よくわかってるじゃないか、トオヤマ」
レキとワトソンが感心したかのようにうなづいてきた。こちらが馬鹿にされている気がしたが気のせいだろうか。
「その通りだにゃー。元々はキンジっちがシャーロック倒しちゃったから、こんなことに──……っと、この会話はここまでにしておこうか」
土御門が会話を打ち切った理由は直ぐに分かった。本部が見えてきて、そこに先に来ていた武藤や不知火たちがこちらに向かって来たからだ。
「運んできた機材なんかはもう配置しておいたからいつでも動けるよ」
「サンキューな、不知火」
本部は地下街の空き店舗だが、電気も水道も通っている上、台所まである。そこまで汚れたり、荒れたりもしていないし、安いだけが売りのような汚いホテルよりかは立派に人が泊まれる環境が揃っていた。
各々持ってきた折りたたみ式の椅子やら床やらに座る一行。ひとまずはここに潜入調査時の本部にし、一行は近くのホテルに泊まる予定だ。ホテルを本部にして潜入調査をしてしまっては、もし逆探知などで連絡や指示をしている場所がばれたさい、一般人を巻き込むことになってしまう。だからわざわざ本部と潜伏先を別々にしたのだ。
「しっかしまさか本部が地下街の空き店舗とはなぁ。見つかったりしないのか?」
「そこんとこは安心していいと思うわ」
武藤の不安に答えながら「座標移動」で機材運びを手伝っていた結標淡希、そして海原光貴も会話に混ざる。 2人は土御門の知り合いであり、今回の依頼についても断片的になら話していいとアリアが判断し、手伝いを頼んだ相手だ。
ちなみに土御門・結標・海原たちのことは武藤たちには学園都市にいるイギリスの組織の構成員で、その組織がアリアの知り合い説明しておいた。あながち間違いでもないだろう。
「ここら一体は前までは私たちのような暗部の小組織が隠れ家として使っていましたので、ここら一帯は今でも立ち入り禁止区域になっているんですよ。まぁ、近くに解放されるみたいですが」
「それにこの地下街なら調査が失敗して撤退するときも隠れる場所も豊富だし、追っ手を巻くことも可能だ。なんなら結標や海原もつけるぞー」
「私はいつからハッピーセットについてくるオマケみたいな扱いになったのよ」
「私も右に同じです」
「つれないにゃー」
「別にいいわ。っていうか手伝った方が邪魔になるわよ。これは武偵校への依頼。部外者をホイホイ巻き込むわけにはいかない」
アリアの言葉を聞いて少し苦い顔をする土御門。その反応に少し違和感を持ったキンジだったが、その違和感は発せられた白雪の言葉で遮られた。
「それよりも本当に学園都市の学生は超能力を持っているですね……驚きました」
「ま、大半は俺みたいな低能力者や無能力者が殆どだがな。結標のような大能力者は珍しいんだ」
「能力を得るには確か脳をいじくりまわさなくてはいけないのだ。本で読んだことがあるのだ!」
「そ、そうなのか?」
「あながち間違いってないにゃー」
「はいはーい!ここでりこりんからしっつもーん!私たちでいう超能力者と学園都市の超能力者ってどう違うの~?」
「東京の武偵校とかでは習わないのかにゃー?あそこにも超能力関係の学科はあるんだろ?あっちは超能力だが」
「あたしはイギリスにいるころから超能力者の事件に立ちあったことがあるからともかく…日本では超能力者による事件は少ないから。あまりSSR以外は超能力について知らないのよ」
「なるほど。そうでしたか」
「調査対象の障害に超能力者がいることも考えられるからちゃんと説明した方がいいわね…お願いできる?」
「お安い御用だぜい」
アリアの頼みに親指を建てる土御門。そう言うと、武偵たちに超能力の説明を始めた。
「簡単に言えばおまえらの言う超能力っていうのは、魔術と超能力の中間みたいもんなんだぜい」
「魔術……?」
久しぶりに聞いた胡散臭い単語にキンジは反応する。 それに構わず、説明を続ける土御門。
「例えば学園都市製の超能力はさっきも言ったように一度、能力のレベルが決まっちまえばレベルアップは相当難しい。それに身につけられる能力は基本一つしかないしな。それを応用すれば色々な現象を起こすことができるが」
「……」
「僕たちの知っている超能力も基本1人一つの能力しか身につけられない。しかしそれはやろうと思えば誰にでも身につけられるモノだし、レベルアップも可能だ」
「……それって聞いた限りじゃ俺たちの知ってる超能力の方が使い勝手が良くないか?」
これまでの説明を聞き、真っ当な意見を述べる武藤。しかしそれに反論したものがいた。アリアだ。
「確かにこれだけ聞けばそうかもしれないけど……白雪も然り、私たちが知ってる超能力は消耗が激しいのよ。全力で使い続ければ数分と持たないわ」
「逆に学園都市の超能力は消耗は殆ど無いに等しいから、長時間フルに使い続けることが出来るんだよ」
「成る程ね。効率は学園都市の方がずっといいってことか……それよりもワトソンもよく知っているね」
アリアの説明に補足を付けたら急に話題を振られたワトソンは、少し慌てながら不知火に返答した。
「あ、ああ。前の武偵校で習ったことがあるのさ」
「……そっか」
「よくわかったのだ!説明ありがとうなのだ!」
深々と頭を下げる平賀を見て「やっぱロリは最高だにゃー……」という土御門をほおっておいて、キンジは素朴な質問をした。
ちなみに、今回学園都市に潜入したのはリーダーとしてアリアを主軸とした特別チームだ。バスカービルの面々だけではなく、武藤剛気、不知火亮、平賀文、中空知美咲、エル・ワトソン、ジャンヌ・ダルク30世といったアリアが選出したメンバーも加わっている。
「結標さんは確かレベル4だったよな?」
「ええ」
「それより上っているのか?」
「いるぜい。7人だけだがな」
「あ!りこりん知ってる!学園都市のレベル5でしょ!!」
「そうです。この7人は他の能力者とは一線を画しています」
海原の言葉に驚くキンジ。ここにいる結標淡希という人物の能力は先ほど見たが、それでも驚いたものだ。それとは格が違うとなると、もう想像もつかない。
「──興味あるな。どんな連中なんだ?」
「聞きたい!聞きたい!」
「私も聞きたいのだ!」
その7人に興味を持ったのはキンジだけでは無いようだ。武藤や理子、平賀だけではなくアリアや不知火、ジャンヌたちも興味ありげな顔をしている。
「──やれ『学園都市230万人の頂点』やら、やれ『人格破綻者の集まり』だの言われてるが、俺にとっちゃあどっちも違うな。ありゃ──」
たっぷりと間をつけて、土御門は言い放った。
「ただのバケモンだ」
第二話「学園都市バスツアー」 完
後書き
初めましての初めまして。どうも。常葉です。
ここでちょっと各作品の時系列の説明を…。
〈とある魔術の禁書目録〉
時系列:上条がオティヌスをそげぶして、学園都市に帰還して2週間後。ちなみに上条は退院してから2日。 また、この時間軸では11巻の出来事はまだ起こってない出来事となっている。ようするにまだゴールデンレトリバーとシャチが殺りあってない。
〈緋弾のアリア〉
時系列:孫との接触と修学旅行Ⅱの間。キンジとレキが武偵校に帰ってきてすぐ。 この時間軸では孫との接触と台湾への遠征には結構な間があることになっている。
〈ソードアート・オンライン〉
時系列:キリトがGGOへダイブし、シノン、死銃に出会う数週間前。
〈デート・ア・ライブ〉
時系列:七罪攻略数日後。折紙が2日前に転校することを学校側に告げる。士道たちは折紙転校の旨をまだ知らない。
一章の時系列はこんな感じです。キリトとキンジがまだ本当の化け物になってません。
では、また。
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