ソードアート・オンライン ~Hero of the sorrow~
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ファントム・バレット編 ~守り人たち~
未来永劫ただ一人の仮面ライダー
前書き
ユキ君が一気にチートになります。
???
「手術完了!」
仮面の男はそう言って、手術器具をトランクケースの中に片づける。
そこに、怪人たちが現れた。
「・・・・あ~あ。シツコイなぁ」
躊躇なく、マグナムの弾丸を怪人たちに叩き込んでいく。
透けるような体だった仮面の男の体が、元に戻る。
(ユキの命が保証された証拠だな・・・・)
「ほぅーら、バァーン、バァーン、バァーン!!」
最後の怪人の四肢を、なるべく苦しむようにわざと外して撃っていく。
「待て!」
怪人がさらに増えたその時、仮面の男には、聞きなれた声が響いた。
「ショッカー共・・・・貴様らの相手はこの俺だ!!」
仮面の男は、思わず仮面を外して泣いた。
(なんで・・・・貴方達は、あきらめさせてくれない?)
いつも良いタイミングで助けてくれるかなぁ・・・・。
「本郷さん!!後は・・・・任せましたよ!!」
仮面を再びかぶり、凄まじい速さで男はその場から去った。
「・・・・・・」
(まさか、彼は・・・・)
彼、本郷猛は、この世界の『本郷』ではない。
更に過酷な運命を背負った仮面ライダーなのだ。
「ライダー・・・・変っ身!!!」
絶叫にも近い叫び声。
別世界の一文字隼人、ハヤトを失い、『仮面ライダー』の名と紅いマフラーを受け継いだ男。
それが、彼だった。
「ライダー・・・・パァンチ!!」
肉が引きちぎれ、飛び散る音と感覚。
改造人間たちを薙ぎ払いながら、『仮面ライダー』はユキに近付く。
そこへ、悪魔たちが現れた。
「あっれー?なんでsorrowがここに?」
『仮面ライダー』は振り返り、一組の男女と相対する。
「sorrow・・・・と本郷猛?・・・・」
ソロが沈黙し、ハートが語り掛けた。
「何で黙ってるの、ぼっち?」
「ハート・・・・後ろに下がれ」
「はぁ、何・・・・」
ハートが前に出ようとしたとき、咄嗟にソロが前に出て《メモリーブレイカー》を発動する。
《メモリーブレイカー》はとあるものを代償にし、感情を形にする能力だ。
イメージして壁を作る。パンチを受け止める壁。
イメージは完璧だ。あらゆるパンチをこの壁は防ぐ。
その筈だった。
ソロの腹部が貫かれる。拳を突き出した『仮面ライダー』に、甘さなどなかった。
「ニ、ゲロ・・・・ハートっ・・・・」
血を吹きだしながら、ソロは言った。
「ぼっち・・・・ッ!!」
ハートの右回し蹴り。圧倒的な速度で放たれたそれに、『仮面ライダー』は反応が遅れた。
『EXASシステム 起動』
「ハー・・・・ト」
パァンという破裂音。回し蹴りに通常の蹴りが炸裂し、嫌な音を周囲に轟かせた。
「あ・・・・っがあああああああああ!?」
EXASシステム。エクストラ・アンチ・ショッカーシステム。
全ての怪人を殺し、同胞の血を啜り、アシムレイトロイドを殲滅するシステム。
「もう容赦なんかしない」
ストロンガーの雷が迸る。スカイライダーの重力が押しつぶす。
関節を外す。滅茶苦茶に。殴る殴る殴る。ぐちゃぐちゃに。
「あっ、アアアアアアアアアア!!」
拳が振りかざされたその時だった。
「もう、いい」
『仮面ライダー』がユキの腕を止めていた。
「君は・・・・こんな事が嫌いなのだろう?」
「生きたいのだろう?大切な者が待っているのだろう?守るために、他者の血で体を染めるのが、辛くて辛くてたまらないのだろう?戦わなくていい。俺は、君のようにただ生きたいと願う魂を守る。俺の、誇りにかけて」
「あ・・・・」
ただユキは泣いた。拳を地面に叩き付け、おかしくなってしまった自分に泣きながら。
ただ『本郷』には、もとから泣いているように見えた。
システム発動時、涙のようなペイントが浮かんでいたからだ。
(そろそろ・・・・体も限界だ)
『本郷』はユキを支え、ゆっくりと外へ出た。
もうすでに夜だ。空には星が輝いている。
野宿することにした『本郷』は、ユキに話しかけた。
「君は何のために戦っている?」
「あなた・・・・本郷さんじゃないんですか?」
「いや・・・・本郷だが?」
「じゃあ・・・・貴方は別世界の・・・・」
「そのようだ。俺は次元を超えたようだな」
『本郷』はそう答え、もう一度同じ質問をぶつけた。
「・・・・大切な者を守って、誰かが愛し合うのを見守って・・・・」
「ごちゃごちゃしているな」
その一言で本郷は切った。
「なんっ」
『本郷』はユキの顔を掴んだ。
「もっと直接的に、一言でまとめてみろ」
そう言って、本郷は会話を始めた。
???
ハートは立ち上った。そして、ソロの顔を優しく撫でた。
「ハー、ト」
なぜ、と言おうとしたソロの口を、ハートが指でしーっという仕草をする。
これは・・・・この癖は。
「かお、り・・・・」
ソロは意識を覚醒させ、立った。
「香織・・・・」
ただ、君を求めて。ここまで頑張ってこれた。
二人は抱き合って、ハートは言った。
「ごめんね・・・・」
「え・・・・」
いきなりソロは突き飛ばされる。
「あんた・・・何やってんの?ぼっちのくせに!!」
何だっ・・・・たんだ?
「怪我、直さなきゃな」
そう言って、ソロは自分の手首を切った。
彼がそうするのは、理由があった。
オーバードウェポンは、凄まじい攻撃力を持つ代わり、回復機能が低下してしまう。
ソロの血には、浴びたものを癒す効果があるのだ。
「はい、ありがとう」
軽くそう言い、ハートはソロの縫われた右目を撫でた。
「ねぇ、私、あんたのココ縫ったかしら?」
「知らなくて、いい・・・・」
ソロはそう言って、眠りについた。
森
ユキは眠りについてから、三時間。
ユキは、そばから聞こえてくる呻き声に目が覚めた。
周囲を見渡して、『本郷』のほうを向く。
「ねぇ、『本郷』さ・・・・」
ユキは戦闘態勢を取った。目の前にいるのは、飛蝗人間。
けれど、気づいてしまった。それは、『本郷』であると。
「『本郷』さん、何ですか・・・?」
「ギシュルルルルル・・・・・・」
『本郷』はすでに、改造人間の枠を超えていたのだ。
改造された体は変異し、それは脳まで達していた。
体に限界がきている。それがその証だった。
「ク、ルゾ・・!!」
数百の怪人達が、周囲を囲み、一世に襲い掛かってくる。
『本郷』はそれを薙ぎ払っていくが、突如、苦しみ始めた。
「『本郷』さんっ!」
「グギュルアアアアア!!!!」
飛蝗男はユキに襲い掛かる。
その攻撃はそれを防ぐ古代障壁を砕き、防御する両腕の肉を抉っていく。
「っ、本郷さん・・・・!」
怪人たちの攻撃が、ユキの身を喰らい、抉り、傷つけていく。
「ああああああああ!!!」
葬炎で焼き払おうとするが、飛蝗男がそれを奪い、自身の体に突き立てた。
「『本郷』さ・・・・何して・・・・」
止めようと動いた、その時。
『EXASシステム 起動』
それが起動してしまった。
「やめろ・・・・よせ、やめろ!!」
でたらめに体が動き、周囲の怪人を薙ぎ払っていく。
そしてついに。飛蝗男の腹部を貫いた。
「あ、あああ・・・・」
錯乱しそうになるユキに、『本郷』が語り掛ける。
「コレ、デ、イイ・・・・」
「何、言って・・・・」
葬炎がまばゆい光を放出し、ユキ達の身を包み込んだ。
「すまないな、辛い思いをさせてしまって」
「『本郷』さん。なんでなんですか・・・・」
ユキは本郷に掴み掛るが、本郷は笑い、ユキの頭を撫でる。
「俺はもう、限界だった。この体が進化しすぎたせいで。鼠が永遠に太り続けて、やがては死んでしまうように」
「それでも・・・・生きることを諦めたら、どうしようもないじゃないですか」
「こればかりは無理なんだ。だから、君に受け継いでほしい。俺の力を。守りたいもの。大切な者がたくさんある君に。他者の痛みを感じることのできる君に」
「・・・・《同質化》」
『本郷』の体が消え始める。
この時、本郷には『ハヤト』が見えていた。
(ハヤト・・・・別の世界だが、未来は)
ニコッと本郷は笑って。
(いい若者がいる、いい世界になっていたよ)
そのまま『本郷』は消えた。
今ここに、『本郷猛』は死んだのだ。そして、彼は。
ユキの掌には、かつて『ハヤト』が着けていたマフラーがあった。
ユキはそれを首に巻き、立ち上る。
現実世界に戻る。周りには、数百体の怪人。その中の一体、『アポロガイスト』が、叫んだ。
「なんだ、貴様は!!?」
ユキは振り返る。そして、言った。
「僕が誰か?」
「覚悟をした『守る』男だ・・・・お前たち、ショッカーと戦う者。お前達ショッカーの牙から、人々を守る者」
しばし、静寂。周囲は怪人が放った火で爛々と燃えている。
「『仮面ライダー』だ」
数十体の怪人が一斉に襲い掛かるが、無駄な事だった。
ユキにはすべて見えている。
《オメガゲイン》《超感覚》『本郷』の改造人間の本当の力。
それら全てが組み合わさり、凄まじい『何か』を生み出した。
相手の筋肉の動きなどがスローモーションで見え、更には脳から発せられる信号すら見える。
そして、怪人たち。
みな忘れているが、怪人たちは全て、ライダーと引けを取らぬ性能を持つ。
それが数十体。一斉に襲い掛かってくる。
しかし、ユキは。目にも見えぬ速度で。たった二秒で数十体の怪人をバラバラにした。
「な、なん!?」
ユキはアポロガイストの顔を掴み、力を入れ始める。
「言ったはずだ。覚悟はできた、と。僕はショッカーと戦う。この先、自分が失ったものを想い、嘆く日も来るだろう。だが、それでも僕はショッカーと戦う。平凡な幸せをこの手にできなくなったとしても、『守る』ことができる・・・・。それが今の僕の誇りだ」
一つ付けたそう。彼はもう一つ、受け継いでいた。
それは、名だ。その名は。
『「未来永劫ただ一人の仮面ライダー!!」』
「次は、僕たちの番だ」
ユキはそう言って、アポロガイストを握り潰した。
爛々と燃える火が、ユキの顔を明るく照らした。
後書き
実はうまく書けなかったのですが・・・。ユキは今、力の制御がうまくいかず、ずっと女の状態でした。
ついでに言うと、『本郷』は小説版の人です。
えー、質問・感想・アドバイス・誤字・脱字ありましたらください。
お待ちしておりま~す!!ではでは~~!
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