英雄は誰がために立つ
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Life6 逆襲の紅
前書き
シャアではありませんよ。
人間界、某所――――。
とある2人の人物が、所在地不明の屋敷の一室にて密談をしていた。
「――――コカビエルを利用した件、あまりにも迂闊すぎやしないか?奴らに勘付かれるぞ?」
「問題ない。勘付かれると言うのであれば今更だ。既に気づかれている。それでも奴らはそう簡単には来れまい」
その言葉に訝しむが、それも一瞬で終わる。
「足止めになりうる破壊工作でも仕掛けたか・・・・・・いや、今も現在進行中か?」
「それもあるが、要はこの――――に外壁を数重にも張った。1枚破るにも時間がかかる上、破られても1番内側にまた1枚自動的に形成されるものだ。それでもすべて破られたとしても、それこそ奴らからすれば地獄になるだろう。殲滅令が起動するからな」
その言葉に安心するにでは無く、顔を背けるだけだった。
「・・・・・・・・・・・・今更、教え子の心配か?」
「言葉を間違えるな。元、だ。変に勘ぐりおって・・・」
「そうか。ならばいい。そう言えば、――――――の―――が――――――らしいな?行くのか?」
「行くわけがない!誰が好き好んであんな茶番に赴かなければならん!」
あまりに当たり前の質問をされたのか、語尾が思わず強く成る。
「・・・・・・好きにすればいいがな。だがあまり暴走してくれるな。それこそ、今後に支障をきたすかもしれん」
「その勘繰りこそ余計だな。当然、重々承知している。それより―――――」
と言う、身内会話が続いていく。
彼らの言葉を理解する日が来るかは、誰にもわからない。
-Interlude-
サーゼクス来訪兼、リアス・グレモリーによる藤村士郎の折檻から数日。
オカルト研究部のメンバー全員は日曜日にも拘らず、登校していた。
但し、彼らの居る場所はプールではあるが。
プール開きにて、いの一番に使わせてもらえるのだと言う。
無論、ただでは無い。生徒会からの命令により、プール内の苔を取る等の清掃後と言う条件付きだ。
そして清掃後、彼らは思い思いに楽しんでいた。
その中に絶賛、未だ死に絶えていないにも拘らず天国を味わっている少年がいた。
少年の名は兵藤一誠。
天国の意は、現駒王学園高等部の二大お姉様と呼ばれる2人、リアスと朱乃に兵藤一誠を巡って争われているからだ。セクシーすぎる水着の格好で。
ただ動けば揺れる、ただ動けば弾む。乳フェチからの一誠からすれば、至極の光景に違いない。
しかし、口論はだんだんとヒートアップして、危険極まりない魔力のぶつけ合いに突入。
争いの原因たる一誠は、あまりの恐ろしさに2人に対して必死に謝罪してからその場を後にするのだった。
「ぜーはー、ぜーはー、危うく死ぬところだった・・・・・・って、木場にゼノヴィア!2人してこんなところで何してるんだ?」
一誠が堪らず逃げ込んだ先の用具室には、祐斗とゼノヴィアの姿が有った。
「イッセー君こそ、如何したの?」
「いや、ちょっとな・・・ってまさか!2人は何時の間にか出来ていたのか!」
「え!?違「いや、そんな関係では無い。いくらなんでもあり得ない」・・・・・う、うん。そうだね」
ゼノヴィアの言葉は確かなものではあるが、そこまで言われると男として居た堪れない気持ちになる祐斗。
「じゃあ、一体何を?」
「木場祐斗に相談したい事が有ったのだが・・・・・・丁度いい、兵藤一誠にも聞きたい事が有るんだ。出来れば相談に乗ってもらいたい」
「あ、ああ、別にかまわねぇけど」
「そうか、じゃあ直截に尋ねよう。今の私は如何だろうか?男からして魅力的かい?リアス・グレモリーや姫島朱乃に比べれば劣るであろうが、体つきには相応の自信が有るんだが?」
片手を腰に当てるポーズを取りながら、一誠と祐斗に尋ねるゼノヴィア。
「え?う、うん。それはもう・・・・・・ねぇ?イッセー君」
「そりゃ、当然!ゼノヴィア自身がOKサインを出せば、男ならだれでも飛びつくんじゃねえか?」
一誠の言葉に大げさすぎるのではないか?と思った祐斗は言及しようとしたが・・・。
「そうか!よかった。おかげで自信を取り戻せたよ。なら、私自身が原因である可能性は低いのか(ボソッ)・・・・・・」
「ん?なんて言ったんだよ?ゼノヴィ、あっ!?」
「む!?」
ゼノヴィアの最後の言葉を気になった一誠は、質問だけするつもりが無意識に片足を前に突き出して転んでしまった。ゼノヴィアを巻き込んで。
「イッセー君、ゼノヴィア、大丈・・・・・・って、あ!?」
「イテテ、ワリィ!ゼノヴィ、あぁああ!?」
直に立ち上がろうとした一誠の両手は、ゼノヴィアの双丘を鷲掴みしていた。
そして――――。
ガチャ。
後方からドアが開く音がした。
それ故、一誠のが後ろへ振り替えると、そこにはリアスと朱乃、アーシアと小猫も立っていた。
「イッセー?これは如何いう事かしら?」
リアスはとても綺麗な表情をしていた。赤い悪魔、再臨。
「ウフフ、そんなに押し倒したいのでしたら私にすればいいですのにぃいい♪」
朱乃はとても美しい表情をしていた。黒いオーラと電気を纏わせて。黒雷の女王、降臨。
「胸・・・やっぱり、胸何ですか?イッセーさぁん・・・!」
涙目になりながら、いや、若干泣いているアーシア。
「油断も隙も無いです」
小猫は、蔑むように白目で一誠を見ている。
そんな絶体絶命の最中にも、ゼノヴィアが起きるまで僅かに彼女の胸を上に置いて掌を、僅かに動かしていた。
-Interlude-
あの後、ゼノヴィアの説明により誤解の解けた一誠は、今ようやく正座から解放されていた。
「ハァ、漸く解放されたぁ」
「すまないな、私のせいで」
「そもそもゼノヴィアは、如何して祐斗と一誠に相談していたの?」
そんな2人に当然の疑問をぶつけるリアス。
「それは・・・だな、士郎さん事なんだ――――」
~回想~
「――――ふぅ、いい湯だった」
ゼノヴィアは、浴場から出て体の水気をふき取り寝間着に着替えてからドアを開いた。髪を乾かすのは、与えられた自室に戻ってからの様だ。
「あれ?士郎さん?」
ドアを開き廊下を出たすぐ先に、何と士郎がいた。寝間着とタオルを持って。
「もしかして、覗いていましたか?」
などと、茶化して聞いて見るゼノヴィア。こんなセリフが彼女の口から出るのは、新たな人生に慣れてきている証拠でもある。
「そんな訳がないだろう。気配で君が、そろそろ出る頃だと察知したから来たんだよ」
などと、簡単に言う士郎。
(だからそんな事、普通の一般人は出来ないんですよ!・・・・・・でも、藤村組の人達の半分くらいは出来るんだが・・・・・・・・・私がおかしいのか?)
口にもできずに、終いには自分の常識を疑うゼノヴィア。
「兎に角、次入らせてもらうぞ?ゼノヴィアも早く髪を乾かして寝るんだぞ?徹夜は女の子の肌には大敵だろう?」
そんな彼女を放って、横を通り過ぎ脱衣室に入っていく士郎。
それを見送ったゼノヴィアは、士郎の耳の良さを警戒したので心の中で思った。
(わ、私の色香に魅力は無いのかっっ・・・・・・!!)
そんな風に歯噛みする思いだった。
~回想、終了~
「――――と言う事が合って自信を失ってたんだが、2人の正直な言葉で取り戻せたと言う訳さ」
「理由は判りましたけど、ゼノヴィアさんは如何して藤村先輩にそんな風に接しているんですか?」
此処までの事を語ったにもかかわらず、アーシアのみが察することが出来ずに疑問をぶつける。
「いや、それはだな・・・。元々自身の体には自信があったモノの、主に使えるものとして女性の喜びをすべて投げ捨ててきたから今迄どうも思わなかったが、悪魔に転生して新しい人生を歩き始めた私は、同い年のクラスメイトの女の子とも付き合いだした上で、女性としての喜びも取り戻そうと躍起になっていたんだ」
「あら?いい傾向じゃない!」
元教会の戦士とは言え、今では自分の眷属となったゼノヴィアに一定以上の愛情を持つようになってきたリアスの本音だった。
「ああ!貴女の助言を実践していこうと思ってな。で、続きだが。そこで、友達となったクラスメイトの一人である桐生から、士郎さんに対する自身のよく解らない感情について相談したら、その感情は“恋”らしいので躊躇わずアタックしていこうとしたら、すべて躱される、色っぽいシチュエーションになっても気づかれないと言った感じで、困っていたんだ」
「あれ?さっきの回想だけじゃないのかい?」
堪らずに聞く祐斗。それはそうだ。まだ一月どころか、半月も経過していないのだから。・・・・・・そんな暇あったか?
「同じクラスの女子生徒でアーシアを除けば、最初に友達になったのが桐生だったんだ。うん、初日でなった」
ゼノヴィアの話を聞き届けたリアスは、ため息をつく。
「士郎に恋をね・・・。なら一つアドバイスと言うか、彼の致命的な欠点を教えてあげるわ!」
「なっ・・・・・・!あの人に、そんなものが有るのか?この学園に来て未だ日が浅いが、私にも士郎さんの完璧超人性は理解しているぞ?」
そう、藤村士郎は駒王学園内では、完璧性を誇っており故にモテる一因にもなっているのだ。
とは言っても士郎は実質、テレビゲーム上で言う経験値を引き継いだ2週目の主人公の様なモノ。
故に士郎からすれば、自分に付いて往ける生徒に尊敬の意を表していた。
「だけどあるのよ・・・。あまりにも残念な部分が、ねぇ?朱乃」
「ええ、そのおかげ?もあって、彼は未だに恋人ゼロとの事ですわよ?」
「え?そうなn「何ですとぉおおおおおおおおおお!!?」ん?」
朱乃の発言に食い付いたのは、ゼノヴィアでは無く一誠だった。いや、食い付きはしたが、盛大に被せられた。
「マジですかっっ!?朱乃さん!」
「え、ええ、少なくとも私が知る限りでは、知りませんわ」
「よっしゃぁあああああああああああ!!!これで俺が先に童貞卒業すれば、ある意味俺の方が先輩だぜ!!」
朱乃からの確認の言葉を確かに聞いた一誠は、雄たけびを上げる。正直、喧しい。
そして、そんな一誠を放っておいて話を続けるリアス。
「イッセーは放っておいて話を続けるわよ?それで、士郎の致命的欠点と言うのが“鈍感”なのよ。あまりにも」
「?解せないな。士郎さんは人の機微には鋭い筈だが?」
「あら?ごめんなさい。誤解させるつもりは無かったんだけど、要するに!他人から受ける好意に対して鈍感なのよ。特に異性からの情愛となれば、尚更ね」
リアスの口から告げられた言葉に、衝撃を受けるゼノヴィア。
「そ、そんな!なら、私はこれから如何すればいいのだ・・・」
少々大げさな態度で絶望するゼノヴィア。
そんな彼女の下にリアスが寄り、耳元に内緒話をするように語り掛ける。
「だからね、ゼノヴィア。まず始めにゴニュゴニョ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・成程!そうか、有り難う!リアス・グレモリー!今夜にも早速、仕掛けてみるよ!」
まるで天啓を授かった聖女のように、生き生きとした笑顔になるゼノヴィア。
そんな彼女を見るリアスの表情は、悪戯好きの悪魔のような笑みだった。
(ウフフ、これで十分士郎に仕返しできるわ!)
などと考えていたが、隣に居る朱乃は彼女の考えなど手に取るように判っていた故、その助言によってどんな結末になるか予想出来ていた。少なくとも“逆転”する事は確かと言えるであろう・・・。
-Interlude-
そんなオカルト研究部がプールにて楽しんでいる頃、士郎は生徒会室にて生徒会の仕事――――情報整理を手伝っていた。とある事情による次いでとして。
今この生徒会室には、士郎以外には会長と副会長のソーナ・シトリーと真羅椿姫だけであった。
そんなソーナと椿姫は、士郎の事をたまにチラ見していた。
士郎自身、その行動理由を理解していたので、視線にも気づきながら黙って作業を黙々とこなしていた。
しかしながら、何故この2人が士郎にそんなアクションを起こすかと言うと、それ相応の理由があった。
それは数日前のサーゼクスの来訪日までに遡る。
サーゼクス及びグレイフィアと幻想殺し(士郎)は、兵藤宅に行く前にソーナにも報告した方が良いと言う表向きの理由から、生徒会室に来ていた。
本当の理由は会談終了まで、士郎に協力できるものが数名必要だと言う事で事前に相談した結果、リアスでもその眷属らでもなく、ソーナ・シトリーと真羅椿姫に白羽の矢が立ったのだった。
突如としての3人の来訪に生徒会メンバーは全員、酷く驚いていた。
その後に直、動揺を抑える間もなくソーナと椿姫の2人と共に別室に行き、会談の件と士郎への協力を頼まれたのだ。無論、2人に正体を明かして。
勿論、幻想殺しの正体が士郎であることにも驚いていた。誰が信じられようか、相当なハイスペックとは言え一般人で同じクラスメイトだと思っていた男子学生が、コカビエル戦でとんでもない働きをした規格外な魔術師であるなどと。
一応、他の生徒かいメンバやリアス・グレモリー及び眷属らにも正体を明かすと言う事だそうだが、とある事情により2人以外には会談後と言う事に成っているのだ。
そして現在、その正体を隠していた規格外魔術師こと幻想殺しは、順調に作業を熟し続けていた。
そんな士郎の姿を見ていたソーナは、堪らずに質問をぶつけたい衝動に駆られていた。
そして――――。
「――――藤村君、聞きたい事が有るのですがよろしいでしょうか?」
「・・・・・・・・・ああ、構わないぞ」
自身を見る視線には、何時もの変わらない彼女の真面目さのほかにも別の感情が混じっていると、一瞬に感じ取った士郎は作業の手を止めて、ソーナに眼を合わせる。
それと、此方にも気づいていたが、椿姫も士郎を見ていた。
「その前に、別に士郎でも構わないぞ?シトリーがその方が良いのであれば、無理にとは言わないが・・・・・・」
「そうですか?では、士郎君と。その代り私の事も呼び捨てで構いませんよ?」
「なら、お言葉に甘えて。それでソーナ、聞きたい事とは?」
この2人の名前の呼び方の変更などに、互いに何の照れも無かった。
「何故、私と椿姫に正体を曝したのですか?リアスや姫島さんでは無く」
「・・・・・・分かっているとは思うが、差別意識からのモノではないぞ?」
「理解しています。それでご理由の方は?」
「たんに2人が、リアス及び眷属らや君の眷属たちも合わせた上で、一番感情コントロールが出来るからだよ。別に、冷酷とまで言うつもりは無いがな」
疑問形では無く、断言する士郎。
「確かに出来ますが、それが何かあるのですか?」
「あー、あるさ。と言ってもごくごく私的なものでな、神の子を見張る者にいる白龍皇ことヴァ―リ・ルシファーに知られたくないんだよ。会談前だと他の人間――――いや、悪魔か。兎に角、の感情コントロールの下手さで気づかれる可能性は高まってしまうんでな」
(とは言っても一応、気づくようなヒントは与えてはいるが。木場祐斗辺りは現に疑いも目を向けていたしな。ここ数日の間は)
「白龍皇、ヴァ―リ・ルシファーですか。噂では歴代最強との事ですが、だからと言って何故・・・?」
ソーナの質問に間を少しおいてから、口を開く士郎。
「あの男、戦闘狂との事らしいのさ。俺は別に戦いはそれほど好きじゃないんでな。そんな奴に目を付けられるなど、御免だ」
「そうでしたか。そう言う理由であれば仕方ありませんね」
士郎の言葉に嘘偽りがないと感じたソーナは、直に引き下がった。
しかし、そこで彼女の頭の中に天啓が降りてきたような閃きを得た。
「ところで士郎君、話は変わりますが。会談後でも構わないので、悪魔に転生する気はありませんか?勿論、私の眷属ではありますが」
「ソーナからそんな提案が出て来るとはな、意外と大胆だったんだな」
これについては本音だった。何時もクールビューティーで真面目な彼女が、そんな提案を出すなどと大胆過ぎて意外と思われても当然と言えるだろう。
「ええ、自分でもそう思う時もあります。それで、ご返答の程は・・・・・・?」
「本来であればソーナの様な美少女からの誘いを断る様な無粋さを露わにしたくはないのだが、遠慮させてもらうよ」
「・・・・・・・・・理由を聞いてもいいでしょうか?」
「別に深い意味が有る訳じゃ無いが、俺は人間である今のままでも満足しているからさ。別にソーナの眷属になりたくないと言う訳じゃ無いぞ?リアスだろうがサーゼクスさんであろうが、答えはNoだ」
「そうですか・・・。そこまで仰られるのであれば仕方ありませんね・・・・・・・・・・・・・・・ん?美少女?士郎君、先ほど私の事を美少女と言いましたか?もしや」
士郎の拒む理由に顔を俯かせたソーナだったが、士郎がさらりと言った言葉に確認を取ろうとする。
「?ああ、言ったが・・・・・・それが?」
「・・・・・・士郎君。そう言う言葉は、士郎君の恋人だけに言ってあげてればいいんですよ?」
士郎がモテるのは周知の事実同然であったため、ソーナは士郎には既に恋人が居ると思って話を進めていた。いくら素敵な男性に褒められようと、恋人付では空しいだけである。ところが・・・。
「ソーナ、それは嫌味か?俺に恋人なんぞ居ないし、出来た事も無いぞ」
「「えぇえええ!!?」」
「そんなに驚く事か?と言うか、真羅まで」
士郎の言葉の一部に、ムッとする椿姫。
「藤村君、会長は名で呼び捨てなのに私は姓なのですね?」
「ど、どうしたんだ?真羅」
また姓で呼ばれて、ムッとする椿姫。懲りない男である。
それに見れば、体の周りに怒りのオーラを纏わせていた。
数多の女性経験を持つ士郎からすれば、これは良くない前兆だと瞬時に理解できていたが、女心にまでは気を回せないでいる。本当に鈍い男である。
因みに、ソーナは今も直絶賛驚いている最中だ。
「・・・・・・・・・ハァ、言わないと分からないようですね?」
「す、すまない」
「呼び方です。私の事も椿姫と呼び捨てにして欲しいのです」
「?・・・・・・あー、そういう事か。別にかまわないが、なら俺も士郎でいいぞ?椿姫」
「!えっ、あっ、はい!それではこれからよろしくお願いします。士郎君」
「あ、ああ?これからよろしく・・・?」
よくわかっていない士郎だった。何所までも以下略。
因みに漸く驚きから抜け出したソーナは、士郎に食い付く。決して空気を読んで2人の会話の間に入らない様、自重していた訳では無かった。
「まさか士郎君に恋人が居ないなど夢にも思いませんでしたが、でしたら直の事彼女が出来た時にだけ言ってあげるべきです。その様な表面的なお世辞など・・・」
「お世辞なんかじゃないぞ?俺は本当にそう思っているさ。と言っても、それは椿姫にも言える事だがな。そんな美少女2人と同じ空間を独り占めしていると思うと、少しばかり緊張しているんだぞ?」
「「は、はうぅ・・・」」
なんの恥ずかしげも無く歯の浮く言葉を言われて、驚き以上に嬉しいのか否かよくわからない感情に翻弄されて、真っ赤になった顔を俯かせる2人。
「如何したんだ?2人とも。顔を赤くさせて熱でもあるのか?」
「「な、なんでもありません!」」
「そ、そうか。それならいいんだ、ん?」
ソーナと椿姫の思いっきりの否定に、気圧されている処に一度だけではあるが覚えのある気配を感じ取った士郎。
「どうかしましたか?」
「ああ、少し気配を感じてな・・・・・・・・・これは、コカビエル迎撃戦後に来た白龍皇ヴァ―リか」
コカビエル迎撃戦後で、魔王様方が到着する前に禁手状態の白龍皇らしき姿をした者が来ていたと報告にて、していた。
「白龍皇!」
「ヴァ―リ・ルシファーですかっっ!?一体何所に?」
無論、士郎の報告を魔王方経由で聞いていたソーナと椿姫は、この突然の来訪に驚きを隠せずにいた。
「位置は・・・・・・校門あたりか?」
そう言いきる前に携帯を取り出して、操作し始めた。
「よく解りますね?士郎君」
「まるでレーダーですねって、何をしているんですか?士郎君の携帯、そんなでしたっけ?」
「よく見てるな、椿姫。これは、仕事用のでな。神の子を見張る者の総督であるアザゼルに、牽制のメールを送ってるんだ」
「神の子を見張る者総督の連絡先を、何故知っているんですか?」
士郎の行動に驚きを隠せず、つい聞いてしまうソーナ。
「・・・・・・・・・ただで教えてくれたわけではないが、本人のためにもそれは話せないなとっ!これでいいかな?」
士郎の入力した文面には『神の子を見張る者総督は戦争嫌いと聞いていたが、それは嘘なのかな?あの白龍皇を好きに歩かせるとは』と入れた。
「牽制にしては少々、攻撃的過ぎるではありませんか?」
文面を見せてもらった2人の内、椿姫が疑問視する。
「彼の総督殿にはこれぐらいで十分だ。交渉とかは、下手に出過ぎて舐められ過ぎても良くないのは判るだろう?」
「それは確かに・・・・・・って、如何したんです?」
メールを送信し終えると、直に出入り口である廊下に繋がるドアに向かう士郎。
「一応、俺も行った方が良いかなと思ってね。校門の方に、いつの間にか一誠が歩いて行っている様だしな」
そのままドアを開けて行くのかと思いきや、振り返る士郎。
「俺一人で十分だから、ソーナと椿姫は作業を続けてくれていていいぞ?多分、戦闘にはならないだろうからな」
「了解しました、お気を付けて」
ソーナの労いの言葉後、一瞬にしてその場から消える士郎。
「・・・・・・・・・何といいますか、頼もしいですね士郎君は・・・・・・朴念仁ですが」
「そうね。士郎君の様な男性が、世に言う『イイ男』なのでしょうね・・・・・・鈍感だけれど」
部屋を出て行った時の士郎の背中を思い出しながら、何故か2人揃って頬を少し朱に染めていた。
それにしても、言いたい放題である。
-Interlude-
一誠はあの後、プールから出て校内を出ようとした処で、校門付近に居た銀髪の美少年に反応する。
お互いに気付いた処で挨拶したと思ったら、その後に自分は白龍皇であると暴露した。
その事に驚く一誠。自分の中にいる赤龍帝ドライグと対を成す存在で、堕天使側に身を置きつつその中でも4番目位に強いと聞いていたため、警戒心を最大限に引き上げ様としていたら、突如として背後側から現れた2人。ゼノヴィアが聖剣デュランダルで祐斗は聖魔剣でヴァ―リの首元に刃と突き付けていた。
「止めておいた方が良い。――――手が震えているじゃないか?」
「クッ!」「ッッ!」
「誇っていい、相手との力量差を見て判断できるのは強い証拠だ。――――俺と君たちとの間には決定的な戦闘力の差が有る。コカビエル如きに勝てなかった君たちでは、俺には勝てないよ」
「何言ってんだっ!勝ったから、こうして生きてんじゃねえか!」
あまりにも人を見下す態度に反感を覚えた一誠は、虚勢ではあるモノの言い返す。
「幻想殺しと言ったか・・・。あの赤い外套姿の人物の協力が有ればこそだろう?あの人物が居なければ勝てやしなかっただろうに。抱っこにおんぶ状態だと言うくせに、よく言う」
その言葉に、歯噛みするしかない一誠。実に悔しそうだった。
『――――そんな風に油断しすぎると、首が飛ぶぞ。ヴァ―リ・ルシファー』
「っ!?」
「え?」
「は?」
「幻想殺し!?」
そんな一触即発状態の4人の一帯に、何時に間にか白龍皇の背後から首筋に剣を当てている幻想殺しの姿が有った。
「・・・・・・確かにその通りだが、これは一体何の真似かな?」
首筋に剣を当てられたまま、自身の背後に居るであろう幻想殺しに言った。
『何の真似かと言われれば、それは此方のセリフだろう。保護者共々悪戯が過ぎるな』
ドスの利いた声で妙な真似をすれば即座に切られかねないと判断するヴァ―リ。まるで他人事の様だ。
「わかっ、ん?―――――――一ついいか?」
『何か?』
「どうやってアザゼルに連絡したんだ?たった今念話で『幻想殺しから嫌味のメールが来たから、暇つぶしもほどほどにして戻れ』って言われたんだが・・・」
ヴァ―リの言葉に一誠達は瞠目する。
『味方でもない奴に、話す義理は無かったはずだが?』
「一々、ご尤もだな。分かった、今日はこの辺にして引き下がろう。それに何より――――」
ヴァ―リは、士郎に当てられていた剣を退かさせてもらうと同時に、ある方向に指をさす。
そしてその方向には、激昂寸前の表情を浮かべるリアスの姿が有った。
彼女の周りには、朱乃に小猫そしてアーシアの姿が有り、アーシア以外の2人は臨戦態勢だった。
「――――君らの主人が来たから時間切れだしな」
「如何いう事かしら?白龍皇。貴方が神の子を見張る者に近しい人物であるのであれば、会談前の接触は――――」
「――――『二天龍』と称されたドラゴン、『赤い龍』と『白い龍』。この二体にかかわった者達は、人並みの平穏から無理矢理遠のきつつ、碌な人生を歩めなかったらしい。――――貴女はどうなるんだろうな?」
「――――――っ」
ヴァ―リの語りに言葉を詰まらせるリアス。
「俺が此処に来たのは、自分と対を成す宿主に一目会ってみたかったからさ。そして願わくば――――君とも」
『・・・・・・・・・つまり、私はまんまと釣られたと言う事か』
「あくまでも運が良ければが前提さ。だがこうして一目会えてよかったよ。前回は遠目で見ただけだったからな」
『お互いにな』
どこまでも憮然の立ち振る舞いを崩さない幻想殺しを、最後に見詰めた後踵を返してこの場を去るヴァ―リ。
ヴァ―リが去りはしたものの、妙な空気と緊張感に包まれる一同。ある一人を除いて。
『各自、今日は極力何所も拠らずに帰宅することを勧める』
その言葉にオカルト研究部一同は、首肯で答えた。未だに、何とも言えない空気が漂っているからだ。
ただ言える事は、招かざる者達が集まりつつあったと言うだけである。
そして、此処にもう1人―――――Kraだった。
『・・・・・・・・・・・・・・・』
彼の者の視線に気付けた者は、結局誰も現れなかった。
-Interlude-
夜、藤村邸――――。
チャポン――――。
一糸纏わぬ体に、発汗作用から来る汗や水滴が自然の摂理にのっとり一つまた一つと転がり落ち、湯ぶねの中で一つとなっていく。
みずみずしい体は、少し熱めの湯ぶねの中で肩まで浸かっていた。
そして当の本人は――――――――――――――――――藤村士郎だった。
日本の18と言う年齢の少年たちとは、およそ比較にならない程に鍛えぬかれた体だった。
ザァァッ。
士郎は息を吐きつつ、浴槽から立ち上がる。如何やら上がる様だ。
(ふぅ、やはりおかしいな)
脱衣所に入ると、てきぱきといつも通り体を拭きながら洗面台に向かう。
(今日の白龍皇と言い、先日のコカビエルと言いあまりに弱すぎる・・・・・・・・・いや、俺が異常に強くなっているんだろうな)
士郎は、以前の世界での自分の戦闘力について剣士としては一流に近い二流ではあるが、戦闘者としてはかなりの自負を持っていた。但し、あくまでも人間の中のレベルでの話だった。
にも拘らず、本来の世界での経験値や知識を引き継ぎつつ、更には血統にも恵まれたことにより以前よりも力が増したことは頷けるが、現状での戦闘力は士郎自身思うところがあるほど異常だった。
髪を乾かし終えた士郎は、脱衣所を出る。
(それだけじゃない。今更だが、投影も一切劣化が無いなんておかしいにもほどが有る!武器の類では無い宝具の小人の隠れ蓑すらも一切の劣化が見られないしな)
廊下に出た士郎は自室に向かう。
(この事は―――――――にも相談したが、専門外みたいだし無理に言えないからな。残りの3人は、愉しめればいいとか抜かしてるしな。―――――それ以前にあの4人とも、――――であるにも拘らず――――していること自体が問題なんだよな。本人たちも原因がよく解らないらしいし)
母屋から離れに続く廊下へ。
(――――やはりおかしいのは、来訪者の俺が――――――もの間―――――に―――されていない事だな。つまりこ―――には――――が無いって事なのか?それならばあまりに異常すぎるし、そもそも――「士郎さん!」・・ん?」
離れに到達して、自室は目と鼻の先と言う処で、ゼノヴィアに後方から声を掛けられて振り向く士郎。
「如何した?」
「いえ、あの、その・・・・・・」
(落ち着けゼノヴィア・クァルタ。リアス・グレモリーの助言通りに、実行する時だ!)
自分を叱咤させて、自身を奮い立たせるゼノヴィア。
「士郎さん!私の――――いや、私に――――」
「私に?」
「――――士郎さんの子供を孕ませてください!」
――――瞬間、世界が凍った。少なくとも士郎はそう感じた。
因みに、ゼノヴィアの居候先輩である彼の者は、嫌でも聞こえたので【何を言ってるのだこの娘は?】と呆れた。
ゼノヴィアはやり遂げた感で満ちていた。
一方の士郎は正気に戻り、眉間を押さえながら言う。
「済まないゼノヴィア。多分俺の聞き間違いだったようだ。もう一度言ってくれ」
「な!?」
(あ、あれをもう一度言葉にしろと言うのか。流石は士郎さん!やるぅ!!ならば――――)
気を取り直して自分を落ちつけるゼノヴィア。そして――――。
「――――私に士郎さんの共同作業をさせてください!士郎さんと、子作りがしたいんです!!」
ゼノヴィアのランクアップした言葉に喜ぶのではなく、本当に頭痛が起きているのではないかと錯覚させるほど、頭を押さえて苦虫を潰したような顔をする士郎。
「――――ゼノヴィア。それは誰に吹き込まれた?」
「え?それ・・・は・・・」
ゼノヴィアは気圧される様に、一、二歩後退する。
現在士郎の背後から黒いオーラを垣間見えたからだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・リアス・グレモリーにです・・・」
売った。チクった。
そうしなければ、自分のみが危ないのでは?と、頭の中で警鐘が鳴り響いたからだ。
「・・・そうか。ククク、やってくれるじゃないかリアス!可愛い後輩を巻き込んで来るとはな!」
何やら果てしなく誤解をしている士郎。
「あ、あの・・・士郎s「ゼノヴィア」わひゃい!?」
真正面から両肩を掴まれるゼノヴィア。
「夜も遅いし、女の子の肌には夜更かしは大敵だ。送るから早めに寝なさい。い・い・ね♡」
その言葉に、ゼノヴィアは神速で首を上下に振る。
「いい子だ」
そうやって、自室まで送られていくゼノヴィア。
あまりの急転直下の出来事に、彼女のドストレートな告白はうやむやな形となった。
この事がいずれ、色々と問題となる事など士郎は予感すらできていなかった。
因みに、言うまでも無いが次の日、リアスは士郎から長時間の説教を受ける事に成った。
後書き
別に、匙元士郎がソーナに恋焦がれている事や、椿姫が祐斗に異性としてみる事などを嫌っている訳ではありません。
ただ単に、士郎の天然ジゴロ振りの質の悪さを見せたかっただけです。
ではまた次回お会いしましょう。ではでは~。
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