Bistro sin〜秘密の食堂へいらっしゃいませ〜
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ビストロと咎人.2
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しかし賢太郎が考えている以上に、世間の前科者への目は厳しかった。
最初の三社、翌日の三社、その翌日の四社、全て「まことに残念ながら…」から始まる不合格通知。
就職困難な世の中に更に前科のある自分は、そうそう働き手に就くことはできない。
とその時、賢太郎は改めて世間の風の冷たさを感じた。
「世の中なんて、そんなもんか… まぁ働ければどこだっていいんだ。明日また探せばいい。」
賢太郎は、メモにとって歩いたバイト募集の店を片っ端から回って面接を受けた。
驚くほどの確率ではあるが、そのどの職場も全て落ちてしまったのだ。
まだ幾つかメモにとってある店はあったが、賢太郎はもはや希望を持ってはいなかった。
「俺って…なんなんだろう? 生きてる意味ってあんのかな?」
賢太郎の勤勉さは、逆に意欲の無さだと捉えられてしまうのだ。
おまけに、前科者の賢太郎。
次の日も、もちろん仕事を探した。
面接に向かう途中も、必死に「アルバイト募集中」のポスターをメモした。
その日も、二つほど店を回ってから次の面接を受けられる店を探して移動しようとしていた。
すると、眼鏡をかけた長身ヤセ型の中年男性に声をかけられた。
「あのぉ…」
「は、はい?なんですか?」
賢太郎は驚いたがすかさず返した。
男はニコリと笑いながら
「お困りのようですが何かお探しですか?」
と聞いてきた。
賢太郎は少し顔を曇らせて
「職場を…」
と答えた。
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