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ドリトル先生と学園の動物達

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第五幕その十

「自決するその直前にね」
「それまではずっと独身でしたね」
「それどころかエバ=ブラウンのことも殆どの人が知らなかったよ」
 ナチスの高官達でも殆どの人が知らなかったのです、ヒトラーにエバ=ブラウンという人がいたということを。
「自伝で結婚の話を聞いて驚いていた将軍もいたよ」
「将軍ですらですか」
「うん、知らなかったんだ」
「そこまで秘密だったんですね」
「そう、そして死ぬ直前まで」
 自殺したそのまさに直前までだったのです。
「ヒトラーは一人だったから」
「ヒトラーは独身、つまり実質的にですね」
「彼は生涯独身と言ってもよかったよ」
「随分孤独な人だったんですね」
「独裁者は孤独なものだけれどね」
「何か寂しいですね」
「幾ら権力を持っていてもね」
 先生はそのお顔を遠いものにさせてお話するのでした。
「寂しいと悲しいね」
「全くですね」
「幸せは人それぞれだよ」
 こうしたことも言う先生でした。
「ヒトラーは孤独でしかも物凄く禁欲的だったらしいね」
「菜食主義者でお酒も煙草もしなくて」
「勿論ギャンブルもしなくて女の人ともね」
 遊ぶことはなかったのです、そうした遊びも。
「凄く真面目な生活だったんだ」
「趣味は読書とかだったんですか」
「後は音楽鑑賞、歌劇も好きだったよ」
「イメージと違うね」
「全然ね」 
 ジップとチーチーも言います。
「てっきり拷問とか好きかと思ってたけれど」
「食べるものもお肉ばかりとかね」
「権力を使ってやりたい放題とか」
「そういうことしてそうだったのに」
「ヒトラーはそうした人だったんだよ」
 先生は動物の皆にも彼についてお話するのでした。
「確かにヤクザ屋さんより厄介な人だったけれどね」
「ヤクザ屋さんはギャンブルの元締めですからね」
 このこともまたどの国でも同じです、皆がこの前までいたイギリスでもです。それでトミーも言うのでした。
「日本でも」
「賭場があってね」
「ヤクザ屋さんが仕切っていたんですね」
「そうしていたからね」
 それで、というのです。
「ヤクザ屋さんはそちらだよ」
「悪いことをすることがまさにお仕事ですね」
「そしてそのヤクザ屋さんよりもですね」
「真面目なヒトラーは厄介なんだよ」
「それも世の中の厄介さですね」
「そのうちの一つだね」
 先生はトミーに述べました。
「こうしたことも」
「全くですね」
「このことはね」
「ううん、ヒトラーがヤクザ屋さんより酷い悪人かといいますと」
「また違うんだ」
「人種的偏見があっても」
 ヒトラーはそちらはかなり強かったです、言うまでもなく。
「物凄い真面目な生活だったんですね」
「僕なんかより遥かにね」
 先生はお酒は好きです、煙草は吸いませんが。
「まあ独身なのは同じかな」
「だからね」
「早く結婚しないと」
「そこはヒトラーと一緒だとよくないから」
「ちゃんと相手を見付けるの」
 またこのことについてです、動物達は一斉に言うのでした。 
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