ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories
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SAO編 Start my engine in Aincrad
Chapter-9 新婚生活
Story9-8 ダンジョンへ
第3者side
準備を整えたシャオンたちは早速出発した。
今、はじまりの街の裏通りを足早に歩いている。
裏通りのためか、プレイヤーはおろかNPCもほとんど見かけない。
ちなみに、子供たちもいっしょにいる。
どうしてもついて行くと言われ、眩しい眼差しで見つめられてはダメだとは言えなかった。
子供達は男性陣にだっこされながらユリエールのあとをついて行っている。
「あ、そう言えば肝心なことを聞いてなかったな」
キリトが、前を歩くユリエールに声を掛けた。
「問題のダンジョンってのは何層にあるんだ?」
「ここです」
予想外の返答に四人は驚く。
「ここ……って?」
「この、はじまりの街の中心部の地下に、大きなダンジョンがあるんです。
シンカーは多分、その1番奥に…………」
「マジかよ……」
キリトが呟く。
「Bテストの時にはなかったよな…………」
「そのダンジョンの入口は、黒鉄宮…………軍の本拠地の地下にあるんです。
恐らく、上層攻略の進み具合によって開放されるタイプのダンジョンなんでしょう。
発見されたのはキバオウが実権を握ってからのことで、彼はそこを自分の派閥で独占しようと計画していました。
長い間シンカーにも、もちろん私にも秘密にして…………」
「なるほど。未踏破のダンジョンには一度しかポップしないレアアイテムも多いからなー……結構儲かったんだろうな」
「それが、そうでもなかったんです」
ユリエールの口調が、僅かに痛快といった色合いを帯びる。
「基部フロアにあるにしては、そのダンジョンの難易度は恐ろしく高くて。
基本配置のモンスターだけでも、60層相当くらいのレベルがありました。
キバオウ自身が率いた先遣隊は、散々追い回されて、命からがら転移脱出する羽目になったそうです。
使いまくったクリスタルのせいで大赤字だったとか」
「ははは、なるほどな」
「そういうことかー」
キリトとシャオンの笑い声に、笑顔で応じたユリエールだったが、すぐに表情を曇らせた。
「でも、今は、そのことがシンカーの救出を難しくしています。
キバオウが使った回廊結晶は、モンスターから逃げ回りながら相当奥まで入り込んだ所でマークしたものらしくて。
シンカーがいるのはそのマーク地点の先なのです。
レベル的には、1対1なら私でもどうにか倒せなくもないモンスターなんですが、連戦はとても無理です。
失礼ですが、皆さんは…………」
「ま、60層くらいなら…………なんとかなるか」
60層のダンジョンを、マージンを充分とって攻略するには大体レベルが70あれば問題ない。
ちなみに現在のシャオンたちのレベルは
シャオンが97
キリトが96
アスナが93
フローラが94
という度合いだ。
これならば子供たちを守りながらダンジョンを突破できるだろう。
すると、ユリエールが気がかりそうな表情をし、言葉を続けた。
「それと、もう1つだけ気がかりなことがあるんです。
先遣隊に参加していたプレイヤーから聞き出したんですが、ダンジョンの奥で、巨大なモンスター、Boss級の奴を見たと…………」
「ボス……ですか?」
アスナが顔色をかえた。
「そ、それってアストラル系のモンスターですか?」
「そ、そこまでは…………」
「ははは、アスナとフローラはお化けとかが大っ嫌いだからな」
「でも……なんとかなるでしょう」
ユリエールにアスナが、もう一度頷き掛ける。
「そうですか、良かった!」
ようやく口許を緩めたユリエールは、何か眩しい物でも見るかのように目を細め、言葉を紡いだ。
「そうかぁ…………
皆さんは、ずっとBoss戦を経験してらしてるんですね。
すみません。貴重な時間を割いていただいて…………」
「いえ、今は休暇中ですから」
フローラが慌てて手を振っている。
そんな話しをしている内に、シャオンたちは前方の街並みの向こうに、黒光りする巨大な建築物を見つけた。
ついにシンカーが身動きを取れずにいるというダンジョンの入り口にやってきた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
現在、シャオンたちははじまりの街最大の施設、黒鉄宮のまえにいる。
そこの正門を入って直ぐの広間には、プレイヤー全員の名簿である生命の碑が設置されている。
現在の時点で生きているプレイヤーの名前には光があるが、死んだプレイヤーは名前が消えてしまう。
そこで再度シンカーの名前を確認し、シンカーが生きていること確認した。
そこは誰でも入ることができるが、その奥に続く敷地は完全に軍が占拠しており、面倒を避けるためにマキトたちは黒鉄宮の正門ではなく裏手に回った。
高い城壁とそれを取り囲む深い堀が侵入者を拒むべく、どこまでも続いている。
まさに牢獄と言う名がふさわしいような感じだ。
さらに数分歩き続けたあと、ユリエールが立ち止まる。
道から堀の水面近くまで階段が降りている場所だった。
そこを覗き込むと、階段の先端右側の石壁に暗い通路がぽっかりと口を開けて佇んでいる。
「ここから宮殿の下水道に入り、ダンジョンの入口を目指します。
ちょっと暗くて狭いんですが…………」
ユリエールの言葉に妻2人はそれぞれの子供たちを見た。
子供達は強い眼差しで言った。
「ユイはこわくないよ!」
「レイも、パパとママがいっしょならこわくない!」
シャオンたちは2人の精一杯の訴えに思わず笑みをこぼした。
ユリエールには、子供たちのことを一緒に暮らしている、としか説明していない。
彼女もそれ以上は聞いてこなかったのだが、やはりダンジョンに伴うには不安なのだろう。
すると、アスナが安心させるように言った。
「大丈夫です。この子たち、見た目よりしっかりしてますから」
「そうだな。将来は立派な剣士になるな」
「バカかお前は」
ちょっとした談笑に笑いあう一行であった。
ユリエールは大きくひとつ頷いた。
「では、行きましょう!」
シャオンたちは薄暗く湿ったダンジョンに足を踏み入れた。
Story9-8 END
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