リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~
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第六十二話 八神家の思い出
前書き
少し、日常を。
ツカイモン[リリカルアドベンチャー、始まります]
はやて「はあ~…やっぱり賢兄がいれてくれた紅茶は最強やな」
一乗寺家にお邪魔しているはやては、賢がいれてくれた紅茶を飲んでいた。
賢「そうかい?ありがとう」
はやて「うん、賢兄って何でもそつなくこなせるやろ?シャマルにもその才能を分けて欲しいくらいやわ…!!」
賢「はやて…」
男泣きするはやてに賢は苦笑する。
シャマルと言えば、超がいくつあっても足りないくらいの×××料理人。
前に賢とはやてが夕食を作った時も…。
シャマル『あら、いい匂い…。今日は賢君とはやてちゃんが作ったのね…そうだわ!!健康のために試作した調味料を入れて見ましょう!!』
賢とはやてが作った料理が入った鍋に、怪しい成分の調味料を勝手に投入した災厄シャマル。
そして賢達が戻って来たら…。
鍋の中身が泡立ち、どす黒い煙が吹き出ている。
賢、はやて『『!?』』
そして、慌てて駆け付けようとした瞬間。
はやて『鍋が爆発したーーーっ!!!?』
賢『何をしたんだシャマルーーーっ!!!?』
こうして、料理を台なしにされた八神家は店屋物を頼むことになった。
はやて「あの頃は大変やったなあ…」
賢「というか、どういう化学反応を起こしたら料理があんな状態になるんだか…」
はやて「鍋に穴が空いとったし、ゴム手袋も溶けて無くなってもうた…」
そして…。
そしてとうとう耐え切れなくなり、八神家全員がリビングに集まっていた。
因みに遼とドルモン、ダスクモンは外出中。
賢『今日の料理はガスだけでもお花畑が見えたね…』
ワームモン『臨死体験!?というかシャマル、毎回毎回君は何でこんな危険物を作るの!!』
シャマル『危険物って…』
ワームモンの言葉に思わずシャマルはムッとなる。
シグナム『ワームモンの言う通りだ…もう少し人が食べられる物は作れないのか!?』
ザフィーラ『このままでは我等の身が持たん…』
ヴィータ『そうだ!!賢、シャマルに教えてやれよ!!』
はやて『え゙…?』
賢『僕がシャマルに?』
ヴィータの発言にはやてが硬直した。
シグナム『…主?一体どうしました?』
はやて『あ、いやあ…シャマルには私が教えるから賢兄は無理せんでええよ!?』
シグナム『?』
賢『僕は別に構わないよ』
シグナムが不思議そうにはやてを見たが、賢が了承した為、そちらに注意が向いた。
賢がシャマルと一緒にキッチンに立った瞬間、はやてはシグナム、ヴィータ、ザフィーラを連れて自室に避難した。
ヴィータ『は、はやて?そんなに震えてどうしたんだよ?』
ヴィータは布団を被ってガタガタと震えているはやてを見つめる。
はやて『あ、あかん…もうシャマルは終わりや…』
ヴィータ『え?』
賢『それじゃあ包丁を持って』
シャマル『ええ』
シャマルが包丁を持った時。
賢『待つんだシャマル。何だい。その包丁の持ち方は?』
シャマル『え?』
賢『そんな包丁の持ち方で食材が切れる訳無いだろ!!それくらい気づけワレ!!』
シャマル『(ワレ!?)』
シャマルは賢の発言に目を見開いた。
賢は包丁の持ち方を教えると今度はキャベツを出した。
賢『このキャベツを千切りにして』
シャマル『は、はい…』
シャマルはビクビクしながらキャベツを刻み始めた。
数十分後。
賢『…いくらなんでもあまりにも遅すぎない?』
まだキャベツを刻み終わらないシャマルに尋ねる。
シャマル『ええ、まだキャベツを千回刻んでないから…』
賢『ちょっと待って、まさか千切りを千回刻めばいいと思ってるんじゃないよね…?』
シャマル『え?違うの?』
賢『違うわああああっ!!!!』
賢が叫ぶと八神家が声の振動で揺れる。
はやて『ヒイイィィッ!!』
はやては布団を被り耳を塞いでいた。
ヴィータ『な、成る程…』
シグナム『こうなるのが分かっていたから主は必死に止めようとしたんですね…』
ザフィーラ『……』
守護騎士達が頬を引き攣らせながらシャマルの無事を祈った。
賢『次は大根をイチョウの形に切って!!』
シャマル『イチョウって…?』
賢『ふざけているのかい…?』
首を傾げるシャマルに対して再び放たれるどす黒いオーラ。
シャマル『ふ、ふざけてません!!い、イチョウ!?イチョウの形に切ればいいのね!?』
賢『分かってるなら聞くな!!』
シャマル『は、はいぃぃ!!(もう嫌あ…)』
シャマルが内心で半泣きになりながら賢の指導は続いた。
そして、賢が運んで来たシャマル手製の料理の品々。
全員【………】
全員が目を見開いた。
あのシャマルがこんなにも料理らしい料理を作れていることに。
はやて『見た目はまあ、大丈夫やな…』
ワームモン『見た目よりも問題は味だね…』
ヴィータ『あんだけ扱かれて不味かったら話にならねぇな』
シグナム『不吉な事を言うなヴィータ。』
ザフィーラ『…とにかく食べてみるとしよう……』
全員が料理を口に運んだ。
はやて『あ…』
ワームモン『はやてと賢ちゃんに比べれば、味は大分劣るけど…』
ヴィータ『普通に美味い…』
シグナム『シャマルがまさか…き、奇跡だ…』
ザフィーラ『賢の指導は上手くいったようだな…』
賢『まあ、可もなく不可もなくってところかな』
ヴィータ『(何であんなに怒鳴ったのに賢は平気なんだ?)』
ヴィータは散々怒鳴ったのにピンピンしている賢を不思議に思った。
シグナム『だが、これ以上は今のシャマルに望むのは酷ではないか?』
はやて『確かにそうやね』
ヴィータ『まあ、これでまともなメシにありつけるな。』
シャマル『…私だけ辛い思いするのは不公平よね……?』
シグナム『…何が言いたいシャマル……?』
シグナムがシャマルの次の言葉を警戒する。
シャマル『賢君。シグナムとヴィータちゃんにも指導してあげてくれないかしら?』
シグナム、ヴィータ『『何!?』』
賢『別にいいけど?』
シグナム、ヴィータ『『な、何ぃ!!?』』
あっさりと了承する賢にシグナムとヴィータは口元を引き攣らせた。
思わずはやてとザフィーラ、ワームモンはシグナムとヴィータの冥福を祈ってしまった。
シグナムとヴィータは賢にキッチンへと引きずられて行った。
そして八神家全体に響く賢の怒声。
半泣きになりながら教わるシグナムとヴィータ。
はやて達ははやての部屋に避難しながらシグナム達を応援した。
余談だが、これ以後シャマルの料理はそんなに酷い物は出なくなったらしい。
はやて「いや、まあ、賢兄の指導のおかけでシャマルの料理は大分マシになったんやけど…時々、ハズレが出るようになってもうたな…」
賢「確かに…ハズレを食べた遼さんが三途の川を渡りかけたからね……」
はやて「あの威力を思えば、前のように常にド下手の方が良かったんやないかな~って思うんよ」
賢「う~ん」
今のシャマルの失敗料理の破壊力のことを思えば、良かったかどうか微妙なとこであった。
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