戦国異伝
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第百九十三話 高天神からその十一
「よき者達を持った、特にな」
「特に、といいますと」
「それは」
「御主じゃ」
幸村を見ての言葉だった。
「御主は天下一の漢を目指しておるな」
「はい」
その通りだとだ、幸村は信玄の問いに答えた。
「そしてその力で」
「わしの天下を助けたいのじゃな」
「それがし、御館様が治められる天下を見そして」
「そのわしを助けてか」
「天下泰平を見たいのです」
「左様ですか」
「そうさせて頂いて宜しいでしょうか」
こう信玄に問うのだった。
「それがしが」
「頼むぞ、その御主に出会えたことがな」
「それがしにですか」
「わしは嬉しい、御主はその気になれば天下人も狙える」
そこまでの器だというのだ、幸村は。
「しかし天下は望まぬか」
「恐れ多いことです、御館様を差し置き」
「いや、確かに御主はその器じゃ」
天下人のそれだというのだ。
「その器は確かじゃ、しかし御主が望むのは」
「はい、あくまで漢です」
天下一のそれだというのだ。
「それを目指します」
「左様じゃな、ではな」
「はい、それでは」
「そのまま進んでじゃな」
漢の道、それをというのだ。
「天下一の者を目指すか」
「文、そして武も」
「共にじゃな」
「そうさせて頂きます」
「ではその力でな」
「はい、御館様の天下を支えさせて頂きます」
「ではな」
ここまで聞いてまた言う信玄だった。
「これからも頼むぞ」
「さすれば」
「御主はこれからさらに大きくなる」
まさに漢としてだ。
「何処までも大きくなるのじゃ」
「漢として」
「その器で天下を安らかにせよ」
信玄は幸村を見て告げた。
「よいな」
「そうさせて頂きます」
幸村も応える、そしてだった。
彼は山懸と共に先陣を務める、そのうえで。
織田の動きを聞きながら兵を進めていた、その中で穴山が彼に言った。
「殿、これから我等が目指す場所ですが」
「設楽ヶ原じゃな」
「はい、あちらになります」
こう幸村に言うのだった、今幸村の馬の周りには十勇士のうち九人までがいる。いないのは猿飛だけである。
「あちらにおいて」
「織田、徳川と戦か」
「そうなります」
こう幸村に言うのだった。
「織田もどうやら長篠城ではなくです」
「我等を倒すつもりか」
「どうやら」
「わかった、ではな」
幸村はその設楽ヶ原の方を見つつ穴山に答えた。
「この度の戦も、全てを賭けて戦おうぞ」
「ですな、腕が鳴ります」
「わしもです」
三好清海と三好伊佐も言う。
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