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ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories

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SAO編
Chapter-6 圏内事件
  Story6-12 真相

第3者side


そこから現れたのは3つの影。


内1人は、夜の闇にでも鮮やかに浮き上がる白と赤の騎士服。
もう1人は白と橙色の鮮やかな服。

言わずと知れず、閃光のアスナと舞姫のフローラ。

2人は左右に別れ、中心にいる人物に細剣を突きたてている。

決して逃がさぬように、だ。


その2人の持つ武器はアインクラッドで最も繊細且つ美麗な剣。


だが、その裏では一点を貫く、あらゆる防御を貫く獰猛で凶悪な武器でもある。



2人に連行されるかの様に来たのは男。

その男はかなりの長身。

裾の長いゆったりとした前合わせの皮製の服。そして、つばの広い帽子。

そして、闇夜でも月光が反射して光るのはサングラスをつけているからだろうか。


そして、限りなく黒の存在だ。

カーソルはグリーンだろうと、その本質はレッド。








この時、二人は安堵していた。
アスナとフローラがグリムロックを逃がすまいとしてオレンジになるかもしれないことを考えていたからだ。

「やぁ、久しぶりだね。皆」

グリムロックは、静かに、そして低い声色で皆に言った。

その姿を見たヨルコは涙混じりに

「グリムロックさん……あなたは本当に……?」

グリムロックはそのヨルコの言葉には反応せず、ただ黙っていた。

「グリムロックさん、ちょいといいかな。俺はシャオン。ま、部外者だけど。

俺の推理を聞いてほしい」

「ふむ……」

「去年の秋の指輪事件、これをあんたが主導してる。

結婚してたアンタとグリセルダさんはストレージを共有してたはずだ。

なら、死別後指輪はアンタの手元にのこり、ひそかに換金、半額をシュミットに手渡した。


そして、今回は3人を葬り、過去を闇に葬ろうとした。


どうかな?」

「なぜ、私の手元にあると言えるのだ。

その指輪だ。

グリセルダはスピードタイプの剣士だった。その力に魅せられて体感したかったとしても、不思議はないだろう?」

「あっ……」

ここにいたみな、そのことに気づき、はっとする。

しかし、シャオンとヨルコは違った。

「実は俺、ヨルコさんに1人でグリセルダさんのことを聞いていたんだ。

どういう人だったか、どういう状況だったか、とかね。


彼女はギルド想いの人だったみたいだ。そんな彼女が印章を外すとは思えない。

さらに、彼女は結婚指輪を常にはめていたらしい。

指輪アイテムは両手に各1個ずつだけだからな」

「その証拠は?」

「ヨルコさんがここに埋めたものがある。


それがこれ。ちょっと拝借してたんだ。

これは事件の時にはめていたものを届けてもらったらしい。

ヨルコさん……これはつまり」

「そう、リーダーは死ぬ間際までこれを装備していた。




何でなのグリムロック……何でグリセルダさんを、奥さんを殺してまで指輪を奪ってお金にする必要があったの!」

大粒の涙が零れ落ちる。

その言葉に対するグリムロックの答えは違った。

「ふっ、 金?金だって?」

その笑いに、戸惑っているように眉を寄せるヨルコを見上げ 次いでオレ達を順番に見渡し、グリムロックは乾いた声で笑った後、言った。

「金のためではない。私は、私はどうしても彼女を殺さねばならなかった。彼女がまだ私の妻でいる間に」

丸眼鏡を一瞬苔むした墓標に向け、直ぐに視線を外した。

「グリセルダは、現実世界でも私の妻だった」

その言葉に皆が驚愕を隠せない。小さく口を開ける。鋭く息を呑む。そしてヨルコ達も驚きの色が走っていた。

「私にとっては、一切不満の無い理想的な妻だった。夫唱婦随と言う事場は彼女の為にあったとすら思えるほど、可愛らしく、従順でただ一度の夫婦喧嘩すらした事が無かった。だが、共にこの世界に囚われた後、彼女は変わってしまった」

グリムロックは帽子に隠れた顔をそっと左右に振り低く息を吐いた。

「強要されたデスゲームに怯え、恐れ、竦んだのは私だけだった。彼女は現実世界にいるときよりも遥かに充実したようで生き生きとして、その様子を側で見ながら、私は認めざるを得なかった。私の愛したユウコは消えてしまったのだと」

前合わせの長衣の肩が小刻みに震える。それが自嘲の笑いなのか、あるいは喪失の悲嘆なのか、皆には判断が出来なかった。囁くような声でそれは更に続く。

「ならば!ならばいっそ、合法的な殺人が可能なこの世界いる間にユウコを!永遠の思い出の中に封じてしまいたいと願った私を誰が責められるだろう!?」

それは、正におぞましい独白だった。

それが途切れても、暫く言葉を発するものはいない。

キリトは、自分の喉からひび割れた声が押し出されるのを聞いた。

「そんな理由で、奥さんを殺したって言うのか?
SAOから解放を願って自分を、こんなにも慕ってくれている仲間がいる人を!そして、いつかは攻略組の一員にもなれただろう人をアンタはそんな理由で」

背中にある剣に走ろうと一瞬震えている右手を、キリトは無意識に左手で抑えていた。

切り捨てたいと言う衝動に悩まされているのだろう。


その問いにグリムロックは一笑、そして囁きかけた。

「そんな理由?十分すぎる理由だよ。君達にもいずれわかるさ、探偵諸君。愛情を手に入れ、それが失われようとしたときにね」

そう口にしたとき

「それは違う」

それに強く答えたのは後ろにいたシャオンだった。
珍しく語調が強い。

「お前のそれは愛情じゃない!所有欲だ!
お前はグリセルダさん……いや、ユウコさんを自分の理想の妻のままで縛っておきたかっただけだ。
『自分の理想の妻』を愛しただけで『ユウコさん自身』を愛したわけじゃない。

そんな所有欲みたいな愛情はいつ、どこの世界にもない。

それに世界は決して自分の思い通りにならないことぐらい、子供でも知ってる。


俺はまだ成人してないから……結婚がどう、とかよく分からない。

けどな、これだけは言える。

『本当に《愛してる》って言いたいのなら、その人のすべてを受け入れてから言え』

自分の思い通りにならないからって、簡単に人を殺していいわけがない。

それに、生きてる人には、死んだ人の『生きた証』を、守り続ける義務があるだろ!
お前には二人の結婚指輪をずっと持っている必要があるんだ。

それなのに、お前は結婚指輪を捨てた。お前に、グリセルダさんへの愛情を語る筋合いはないんだ!!」



『本当に《愛してる》って言いたいのなら、その人のすべてを受け入れてから言え』


『生きてる人には、死んだ人の『生きた証』を、守り続ける義務があるだろ!
お前には二人の結婚指輪をずっと持っている必要がある』


『それなのに、お前は結婚指輪を捨てた。お前に、グリセルダさんへの愛情を語る筋合いはないんだ!!』


シャオンの、それらの言葉がトドメだった。



グリムロックは力なく膝をついた。

先ほどまでの威勢のよさは何処にも無かった。


















そして再び静寂が訪れる。

誰も動く事は無かったがその静寂を破ったのが元・黄金林檎メンバーだった。

「キリトさん。シャオンさん。この男の処遇は私達に任せていただけませんか?」

カインズがグリムロックの右側に、シュミットが左側に立ち、カインズがそう言った。

続いてシュミットが

「勿論私刑にはかけたりしない。しかし、必ず罪は償わせる」

そう言う。

その落ち着いた声には数秒前まで怯えきった響きはまるでなく、凛とした表情だった。

「任せる」

キリトは、大男を見上げて小さく頷く。

それはシャオンも同様だった。

聞きたかった答え、この男からは聞けなかったが、2人から聞けたと、満足をしているようだった。

その後は無言で頷き返し、シュミットはグリムロックの右腕をつかんで立たせた。

ガクリと項垂れる鍛冶屋をしっかり確保し、「世話になった」と短く残して丘を降りていく。

そして、カインズもシュミットをフォローする形で付いて行く。

ヨルコは皆の横で立ち止まり深く一礼すると、ちらりと目を見交わし、ヨルコが口を開いた。

「アスナさん。フローラさん。キリトさん。シャオンさん。本当に、何とお詫びして、何とお礼を言ったらいいか……本当にありがとうございました」

言い終えると同時に、再び深く一礼をした。

そして、シュミットらに続いて丘を降りていく2人を、皆で立ったまま見送り続けた。

やがて、4つのカーソルが主街区の方向へと消え、荒野の小丘には青い月光と穏やかな夜風だけが残されていた。















Story6-12 END 
 

 
後書き
はい出ましたシャオンの名言ww

シャオン「作者さんうざい」

ドカッ バキッ チーン

シャオン「作者さんには寝てもらうとして……

本当は……めちゃくちゃ恥ずかしいんだ、ああいうこと言うのって。

でも……この時だけは何故か俺が言わないといけない気がしたんだ。


あ……えーと、次回は圏内事件の最終話だな。

次回も、俺たちの冒険に! ひとっ走り……付き合えよな♪」 
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