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ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories

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SAO編
Chapter-6 圏内事件
  Story6-9 素敵だけども現実的

第3者side


「俺達は……何も見えていなかった。
見ているつもりで、何も見えていなかったんだ。
違うものを見ていたんだ。

圏内殺人、そんなものを実現する武器もロジックも最初から存在しなかったんだよ」

「え?ほんとっ?」

フローラはシャオンの方を向く。

「フローラ」

「どうしたの?」

「確か、ヨルコさんとフレンド登録していたよな?」

シャオンはフローラにそう聞く。

「そうだけど……」

フローラは表情を暗くしていた。

フレンド登録をしたその相手はもう、この世界にはいないのだから。

「少し確認してみてくれ」

「え?」

フローラはフレンド登録しているヨルコの位置情報を確認した。

すると

「えっ!!」

驚きの声が上がる。

「やっぱり。カインズ氏もヨルコさんも、まだ『生きている』」

そう言っていた。



「でも、なんで??

だって……目の前で……」

確かに、カインズもヨルコも目の前でその体が無数の硝子片となって、砕け散った。


それは鮮明に頭の中に残っていた。

「俺たちが見たのは、カインズ氏やヨルコさんが無数の欠片を振り撒いて青い光と共に消滅した、その現象だけだろ?」

「でも、それは……」

「この世界での『死』だろ?俺たちが見たのはそれに限りなく近く、でも本質は違う現象。

圏内では基本的にHPは減らない。でも、オブジェクトの耐久値は減る。さっきのポーションの残骸見たいに」

シャオンはそう説明。

「あの時の槍が削っていたのはカインズさんじゃなく、鎧の耐久値だった。そして、その鎧が砕け散った瞬間に」

「!まさか、転移結晶で?」

「多分な。光り輝き砕け散るその瞬間を狙って、転移すれば、後に残るのはあの死亡エフェクト同様のもの。
『見ているようで見ていなかった』そういうことさ。

俺は運が良かったんだよ。砕けたパズルのピースが勝手に戻ってきて、思いついたんだから」






そして、その後はキリトたちにメールを送った。

どうやら、キリトたちも同じ結論に至ったようだ。

ヨルコの件も聞いた。

その返答はキリトとシャオンの意見が一致した。

『彼女は、予めダガーを刺した状態だった』んだろうと。

根拠は彼女はあの場で一度も背中を見せることは無かった。

そして、耐久値が無くなるのを見計らって恰もダガーが突然飛んできたかのように見せたのだ。

「けっこう大がかりなことやるよな」

ヨルコとカインズ、2人はグリセルダの死に疑問を持ち続けていたのだろう。

その犯人をあぶりだす為に、圏内殺人なんて派手な事件を起こした。

「うん。後は彼女達に任せようか。この事件での俺達の役回りは終わりだ」

彼女達のやった事、それは決して褒められたものじゃない。

アレだけのパニックを起こしたのだから。

だが、その原因はギルドのリーダーの死。

それが忘れられなかった、忘れたくなかった。

だからこそ、実行に移したんだろう。

「それだけ……慕われていたんだろうね。グリセルダさんは」

フローラはそう思った。

「そうだな。俺達はまんまとその目論見通り動いちゃったけど。俺は嫌な気分じゃないよ」

「そうだね。


……シャオン君は、もしそう言う場面になったら、超級レアアイテムがドロップしたら何て言ってた?」

フローラがそう聞く。

黄金林檎で起きたようなことが、もし自分の身に起きたらどうしていたのかを聞きたかったようだ。

「そうだなー、元々俺は、そう言うトラブルが嫌だから、ソロをやっているって言う理由もあるし。

ま、ドロップさせた人の持ち物ってことで」

「あ、私や血盟騎士団と同じだね」

「そうなのか?血盟騎士団では」

「だって、SAOでは、誰が何を入手したのか、それは全部自己申告でしょ?隠蔽のトラブルを回避したかったら。そうするしか無いわ。

それに……そう言うシステムだからこそ、この世界の結婚に重みが出るのよ。結婚すれば、2人のアイテムストレージは共通化するでしょ?それまでなら、隠そうと思えば隠せたものが結婚した途端何も隠せなくなる。


ストレージ共通化って、とてもプラグマティックなシステムだけど。同時にとってもロマンティックだと私は思う。真剣にお互いが好き同士じゃなきゃ、成り立たないもの」

この世界において、個人の情報はまさに生命線といっても過言ではない。



確かに結婚と言うシステムは互いが最大級に信頼しあっていないと、出来ないものだ。

「なぁ、フローラ」

「ん?」

「さっき、ロマンチックだとか、プラグマティックとか言ってたけど、なんで?」

「だって、身も蓋も無いでしょ?ストレージ共通化なんて」

「まぁ、それはわかるけど。


……ストレージ共通化?」

その時、ストレージ共通化と言う言葉を再度聞いてシャオンは何かが閃いた。

何かが、もうひとつのパズルの欠けたピースの一つ一つが合さっていくような感じだ。

「シャオン君?」

考え込むシャオンにわからなかったのか、フローラはシャオンの方を見た。

「ストレージ共通化。その結婚の相手が死んだとき、相手のアイテム、それはどうなる?」

「それって、グリセルダさんとグリムロックさんの事?
えっと、相手が死んでしまったら……」

「とりあえず……ヒースクリフに聞いてみようか」

「うん」


数秒後、ヒースクリフからの返信には、結婚システムについて事細かに記されていた。

「自動等価分配……交互選択分配……パーセンテージによる偏り分配……一方的な離婚はアイテム分配率が自分0%相手100%じゃないと出来ないのか……


……あっ……ああっ!!そういうことか!」

「えっ!分かったの!?」

「ああ。 自分100%相手0%にできる方法が、一つだけある」

「……それは?」

「死別だ。結婚相手が死んだ瞬間、ストレージは元に戻り、持ちきれないアイテムはすべて足許にドロップするはずだ」

「!!!」

「あくまでも推測だけどな。でも、高確率だと思う。

そしたら見えてくる真実があるだろ?」

「指輪は最初から奪われたわけじゃ無かったって事?」

フローラは、驚きを隠せずそう聞く。

指輪の紛失のせいで、今回の事件が起きたと言っても過言じゃないから。

「違う。『奪われた』んだ。ストレージから」

「グリムロックが全ての犯人?じゃあ、何で、2人に協力なんて……」

フローラがそう聞く。

シャオンの結論は直ぐに出た。

「フローラ、ヨルコさんの位置情報。もう一度教えてくれないか?想像が正しければ……元黄金林檎の3人が危ない」

シャオンはその理由を推察をフローラに話した。

事態を悟った2人は行動を開始。



キリトたちにメールを飛ばすと、2人はあの3人がいるであろう19層・十字の丘へと急いだ。















Story6-9 END 
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