天そば
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第六章
「天麩羅は欧州から、麺類は中国から伝わったもので」
「そうして日本に定着したものですね」
「はい、そうですから」
それでというのだ。
「それは日本でも同じですね」
「ですから」
「美味しければですね」
「どの国においてもです」
定着するというのだ。
「そうなります」
「そういうことですね」
「そうです、本当に」
また言うティオテだった。
「私は素晴らしい料理を祖国に伝えられました」
「そしてそのことにですね」
「喜びを感じています」
こう笑顔で言うのだった。
「心から」
「そうなのですか」
「新島さんに深く感謝しています」
「いえ、感謝はいいです」
新島は苦笑いでティオテに答えた。
「私はただご馳走しただけですから」
「そうですか」
「しかし。あの料理がコートジボアールでも親しまれると思うと」
それは、というのだ。新島も。
「私も嬉しいです、むしろ」
「むしろ?」
「私の方からティオテさんにお礼を言いたいです」
そうだというのだ。
「天そばと天ざるをコートジボアールの方々に紹介して頂いて」
「だからですか」
「はい、有り難うございます」
ティオテに対して深々と頭を下げての言葉だった。
「まことに」
「いえ、お礼はいいです」
今度はティオテが言うのだった、この言葉を。
「私はただ紹介しただけですから」
「コートジボアールの方々に」
「はい、ですから」
それ故にというのだ、そして。
ここでだ、ティオテはあることに気付いた。そうしてそのあることを新島に述べた。
「ここは私達二人が感謝するべきでしょうか」
「と、いいますと」
「日本の料理という文化に」
それに対してというのだ。
「感謝すべきでしょうか」
「天そば、天ざるのあるですね」
「そうです、日本の料理にそうしたものがなければ」
「こうしたことにもならなかったので」
「そう思うのですがどうでしょうか」
「言われればそうですね」
その通りだとだ、新島もティオテの言葉を受けて頷いた。そうしてだった、
そのうえでだ、彼はティオテにこう述べた。
「ではこれから」
「天そばをですね」
「天ざるでもいいですか」
「それを食べにですね」
「行きましょう」
こう笑顔で話してだ、そしてだった。
二人で天麩羅そばを食べに行くのだった。それのある日本文化に深く感謝しながら。
天そば 完
2014・6・25
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