水車の側で
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第二章
第二章
「だからな。今はな」
「水車に隠れて」
「そうしてですね」
「敵を待ち受ける」
「気をつけろ。あいつ等の銃は凄いからな」
特に狙撃がなのである。
「隠れていないと全滅だからな」
「ですね。あいつ等は強いですからね」
「絶対に諦めませんし」
「しぶといですよ」
そのことでもだ。彼等は定評があるのだった。
「イタリア軍なんて全然大したことないのに」
「何かっていうと逃げて」
「捕まえたらぴーーーぴーーー泣いて」
「楽な相手だったんですけれどね」
「あの連中はまた特別弱いからな」
ドイツ軍と比べればだ。彼等はそうなのだった。
「そう思うとアフリカは楽だったな」
「ですね。本当に」
「ロンメルは手強かったですけれど」
「イタリア軍もいましたから」
「連中狙えばよかったですから」
それと比べればというのだ。今は。
「ドイツ軍ばっかりっていうのは」
「幾ら勝っていても」
「洒落になりませんよね」
「じゃあ太平洋に行くか?」
ピットはそちらの戦線の話もした。この戦争は欧州だけで行われているのではない。太平洋でも激しい戦闘が続いているのだ。
「日本軍は装備は悪いがもっと凄いぞ」
「何か五百人いたら」
兵士達もだ。日本軍のその話は聞いていた。それは。
「四百九十五人が戦死するまで戦って」
「後の五人は自決するんでしたっけ」
「そんな戦争するんですよね」
「そうだ。ドイツ軍より凄いからな」
それが日本軍であり太平洋での戦争だったのだ。
「しかも最近はな」
「何か戦闘機に爆弾積んで突っ込んでくるんですよね」
「特攻でしたっけ」
「それしてくるんですよね、確か」
「そうだ。自分の命を捨ててくるからな」
それを聞いてだ。兵士達は苦笑いを浮かべてだ。口々にこう言うのだった。
「いかれてますね」
「死ぬのが怖くないんですか」
「戦争でも」
「らしいな。あれはあれで戦いたくない相手だな」
「全くですね、本当に」
「あの連中は」
そんな話をしていた。そうしてであった。
そんな話をしながらだ。彼等は水車の陰にそれぞれ隠れた。そうしてそのうえでだ。敵であるドイツ軍を待つのだった。
水車の中から見張る兵士がだ。下にいるピットにトランシーバーで報告してきた。
「来ました」
「そうか。数は?」
「およそ一個中隊規模です」
「そうか、数は同じか」
彼等もだ。一個中隊である。規模としてはまさに同じだった。
それを聞いてだ。彼はこう言った。
「それならだ」
「はい、どうしますか」
「ここは」
「このまま戦う」
そうするというのである。
「そしてそのうえでだ」
「奴等をですね」
「退けますね」
「そうだ、そうする」
まさにそうだというのである。
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