騎士道衰えず
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第四章
第四章
「それだ」
「航続距離ですか」
「その問題ですか」
「ドイツ軍の戦闘機の航続距離は短い」
隊長はこのことを知っていたのだ。
「ロンドンに来るのでもやっとなんだよ」
「だからですか。こうして少し時間を稼げば」
「それでいいんですね」
「ああ、そうだ」
まさにだ。そうだというのだ。
これを話してだ。早速だった。隊長は部下達に告げた。
「じゃあ後はな」
「はい、引き返そうとするドイツの連中を」
「ここで」
「仕留めるぞ、いいな!」
「了解!」
「わかりました!」
フランス隊はフランス海岸にまで戻ろうとするドイツ機に襲い掛かった。そうしてだった。
メッサーシュミット109を次々に撃墜していく。まずは彼等だった。
ポーランド隊はだ。メッサーシュミット110に向かっていた。ポーランド隊もだ。隊長が部下達に対してだ。こんなことを言うのだった。
「いいか、格闘戦を挑むぞ」
「あの双発にですか」
「俺達がですか」
「ああ、そうする」
まさにそうするとだ。隊長はポーランド語で話すのだった。
「それなら充分に勝てる」
「ですがメッサーシュミット110はです」
「こうした状況の為の戦闘機ですよ?」
「爆撃機の護衛の」
まさにそれだというのだ。実際にドイツ軍はこれまでメッサーシュミット110は爆撃機の護衛として使ってきたのである。それで今ロンドンに来ているのだ。
「その連中に俺達がですか?」
「向かうんですか」
「そうだ、行くぞ」
隊長は強い声で彼等に話す。もう自分達に向かってきている彼等を見ながらだ。
「わかったな」
「了解です。そう仰るのなら」
「俺達も」
「格闘戦だ。いいな」
とにかくそれをしろと言う隊長だった。そうしてだ。
彼等は双発の戦闘機と格闘戦に入った。小回りを活かしてだ。するとだ。
その小回りが効いた。彼等は単発の戦闘機である。双発の戦闘機よりも小回りは遥かにいい。それによってだ。
メッサーシュミット110の死角に回ってだ。次から次にと撃墜していく。これにはだ。撃墜するポーランド隊の面々の方がだ。驚くのだった。
「何だ、これって」
「おいおい、あのメッサーシュミットが簡単に撃墜できるぞ」
「どういうことだよ、これって」
「信じられないぞ」
「こういうことだ。小回りだ」
まさにそれだとだ。隊長は言うのである。
「双発の戦闘機より単発の戦闘機の方がだ」
「運動性能がいいからですか」
「こうしてですか」
「双発の戦闘機は爆撃機の護衛には向いていないんだよ」
隊長はにやりと笑って言った。
「俺はそれがわかったんだ、最初の戦いでな」
「あの俺達が負けた戦いで、ですか」
「あの時に」
「ああ、わかった」
この戦争の最初であった。ドイツ軍はポーランドに電撃的に攻め込みだ。瞬く間に降伏させたのだ。彼等にとっては実に苦い思い出だ。
だがその時にだ。隊長はわかったというのである。
「それで撃墜できたからな」
「成程、そうだったんですか」
「それで」
「わかったな。それではだ」
隊長は部下達にあらためて話した。
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