ソードアート・オンライン ~Hero of the sorrow~
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人形
前書き
明かされる、ショッカーの科学者。
「やぁ、お疲れ様、ユキ君、キリト君」
全員の目の前に現れたのは、茅場明彦。
全員が身構えるが、彼を攻撃しても意味がないことを伝えると、警戒を解いた。
「茅場博士・・・!!」
本郷が驚いた顔で言った。ユキが知ってるんですかと問う。
「彼は・・・俺の恩師である緑川博士とタッグを組んでいた人物だ・・・!」
「ええ!?」
「緑川君か・・・彼の娘さんは元気かい?」
「・・・元気ですよ」
「そうか・・・まぁ、用はユキ君達にあってね。キリト君に渡したいものがある。これを」
キリトが腕を出すと、光が浮かんでキリトの手に納まった。
「これは?」
「魔法の箱だよ」
そう答え、ユキの方へと向き直る。
「ユキ君・・・君はショッカーの技術顧問が二人いたことを知っているかい?」
「そう・・・なんですか?」
ユキが口ごもると、代わりに本郷が前へ歩み出た。
「サルベージしたデータには、二人いたことしか書いていませんでした・・・。もう一人とは、誰なんです?茅場博士」
「もう一人の技術顧問―――――――彼の名は」
「桐ケ谷 和希。桐ケ谷君、君のお父様だよ」
全員の目が見開かれる。
「父さんが・・・・?なぜ!?」
「それは・・・」
言おうとした茅場はため息をついた。
「すまん、時間だ」
そう言うと茅場は消えた。キリト達が止めようとしたが、無駄な事だった。
「どういう事でしょうね・・・」
「わからない・・・でもなんで父さんが・・・?」
二人が悩んでいると、後ろで剣崎が言った。
「そろそろ・・・俺は行くよ・・・」
剣崎がバイクに跨る。キリトはそれをじっと見ていた。
始さん達が飛びだし、剣崎に近寄った。
「剣崎・・・!」
「始・・・橘さん・・・睦月・・・」
一番悲しいのは、剣崎だ。
それでも・・・剣崎は笑った。
「また・・・未来で」
スロットルを回す。立ち去ろうとする剣崎に、始は言った。
「行って来い・・・必ず勝ってこい・・・!!」
「俺たちはいつでも待っている。だから・・・」
剣崎はキリトに話しかけた。
「キリト君・・・頑張ってね」
そして始たちの方を向く。
「―――――行ってきます」
ブルースペイダーが走り出し、次元の壁へと去って行った。
「さて・・・俺達も帰るか」
茂が歩き出す。
「え?もう行くんですか!?」
ユキが言うと、茂はそうだと答えた。
「俺達には守るべき奴らがいるし・・・久々に、岬の墓参りに行きたいからな」
そう言って消えると、全員が壁へと歩みだした。
「ユキ君、ひとつ聞いていいかい?」
一也が問いかける。
「その拳は・・・誰のために振るう?」
「守るために振るいますよ・・・傷つけるためではなく、ね」
一也は満足げに笑い、壁へと消えて行った。
「ユキ君・・・君は・・・その人生を歩んでいくか?」
本郷がユキに近づいて問うた。
「歩んできますよ。これからも」
ユキが笑うと、本郷は微笑んで壁へと消えて行った。
全員が壁へと消えて行った頃―――――アルゴが叫んだ。
「あ―――――――っ!!なんで帰ってないんだ、あんたら!?」
そう、何人か残っていたのである。
アマゾン、巧、五代。巧は言った。
「少しこの世界を回りたいからな・・・じゃあな」
オートバジンに跨り、巧は消えて行った。
「雄介と・・・「アマゾンさんです」・・・アマゾンはどうするんだ?」
「いやー・・・申し訳ないんだけど、お金がなくて・・・」
「もっと、この世界見たい!休暇、貰った!」
「あ、僕も家がないんだ」
三人がそう言うと、アルゴは大声で言った。
「ああ、もう、わかった!!家に来い!!」
わーいと言ってるうちに、キリト達が駆け寄った。
「ユキ、ログアウトしよう」
「あっ、ハイ!」
ちょうどそこにカナリアが現れる。
「終わったみたいね。じゃあ、行くわよ」
光がユキ達を飲み込んだ。
病院
「いやー終わりましたね」
「のんきに言ってる場合か」
五代さんが壁で寝込み、アマゾンさんは床に寝そべっている。
通信が鳴る。僕はもしもしと答えた。
「・・・sorrowですか」
「オーク?なあに」
「今まで・・・すみませんでした」
「いいですよ、別に。それで用は?それだけじゃないんでしょう?」
「・・・はい」
「クライは・・・最後に何と言っていましたか?」
重々しく放たれた言葉に、僕は一瞬、息が詰まった。
「さようなら・・・愛でした」
「そう、ですか」
「あなたは・・・また哀しみと恨みを受けるんですね」
「愛っていう人のこと?・・・そうだね。でもさ、この体は、拳は、もう血で汚れてるからさ・・・哀しみも恨みも全部この体で背負うよ。・・・僕がクライを殺したことには、変わりないんだから」
「・・・そうですか。通信のアドレスを送ったので、いつでも連絡してください」
そこで通信が切れるが、今度は本郷から通信が入る。
「すまない、ユキ君。オークの体のことなんだが・・・」
「なんですか?」
「力の加減は、アシムレイトロイドはどうしているのか聞きたくてね」
「あ、わかりました。今そっちに僕のデータを送ります」
「そうか・・・すまない」
「あ、それと、オークの部品とかの代金は、こちらが払います」
「・・・それは正直ありがたいが・・・君はお金があるのか?」
「ありますよ、とある異世界の勇者さんからのお年玉が!」
「口座に振り込んどくので。それでは」
通信を切り、アルゴに向き直る。
「何してたんだ?」
「通信です」
そう答えると、改めてアルゴを見た。
「しかしアルゴさん・・・こっちだとずいぶん雰囲気が違いますね」
「そうか?」
「ゲームと比べて髪は少し長いですし」
僕の超感覚が、声を聴いた。
「・・・アルゴさん、すみません。出かけてきます」
「・・・そうか。また誰かが傷ついてるのか」
「・・・はい」
僕は外に出て、スーシールシーカーに跨り、アスナさん達がいる方へと向かった。
病院
病院では争う声が響く。
須郷がナイフを和人に振り下ろそうとした瞬間。
「間に合った!!」
ナイフを右腕で引っ掴んだ雪は、首筋に手刀を落とす。
「・・・!!」
和人が起き上がる。須郷は気絶し、寝そべっている。
「和人さん、行ってください」
和人を病院へと行かせると、背後で気配があった。
「まぁだ・・・終わってないかもよ~」
トン。軽い音と共に、ユキの腹部にナイフが刺さる。
「っ・・・グ!!」
振り向くと須郷が立っている。
しかし、その眼は正気ではないことが、一目でわかった。
「あな、たは・・・」
黒髪の少女は立ち上がり、こちらを向いた。
「ボクはね・・・Hatred。アシムレイトロイドNo8.Hatred。意味は憎しみ。ハートって呼んでくれると嬉しいな」
「いやぁ、助かったよ~。気絶させてくれたおかげで、あっさり操れるんだから」
クンッと中指を動かすと、須郷がナイフを振り回し、病院へ突っ込もうとする。
「よせっ!!」
魂共鳴を発動させ、須郷を無理やり押さえつける。
「ねぇ、何で殺さないの?殺しちゃった方が速いじゃない」
「しませんよ・・・」
「なんで?私が覚醒した時から、あなたはそうだった。私達の中で一番強い力を持ちながら、人間を殺せないなんてさ。人間でもないその体で」
「そもそもさ、その力があればショッカーを潰すぐらい簡単でしょ?戦火を広げるのを止めるだけで、迎撃に徹するなんていう消極的な選択。何でしないの?馬鹿なの?そうした方が、逆に人間の被害が少ないとか思わないの?」
「わかりません・・・わかりませんけど・・・『今』はそれが自然だと思っています」
その言葉を聞いたハートは、イラついた口調で言った。
「自然~?その体が?元から人間でもないくせに?」
「確かに自然ではありません。確かに人間ではありません。だけど人と同じ『心』がある!・・・だからこそ僕は人間の領分に生き、守る為に戦うと決めた」
それを聞いたハートは笑った。
「・・・やっぱり、あなたはあなたのままなのね」
キッとユキがハートを睨みつけると、ますます笑みを深めた。
「ああ・・・ゾクゾクする・・・ッ!!」
ジャコンッと言う音と共に、ハートの腕に機械的なグローブが装着される。
しかしここで、看護師たちが騒ぐ声が聞こえた。
「チッ・・・ねぇ、あなた、人を巻き込む戦闘ってあり?」
「ダメに決まってるでしょう」
そう言うとクルリとハートは周り、背を向けた。
「じゃあ、無しね。あなたとは全力で決着をつけたい」
あ、と何かを忘れたように、ハートは振り向いた。
「そうそう、私の能力は、残酷人形劇。特定条件で相手を操ることができる能力。そのかわりにあなたの『今』の名前を教えてよ」
「僕の名前はユキ!青空雪!!とある少女からもらった名だ!!」
「へぇ・・・バーイバーイ」
そのままハートは消えて行った。
ユキは安心すると一気に力が抜けた。
しかし踏ん張ってスーシールシーカに乗り、そのままアルゴのいる病院へと向かった。
研究所
「なんだこのデータは・・・・!!」
ユキから送られてきたデータを確認していた本郷は驚いた。
「アマダムが・・・・全身に・・・・!!」
アマダムが、すでに全身に駆け巡っている。
「ユキ君・・・・君は大丈夫なのか・・・!?」
暗闇の中で、少年の体の異常を示すアラートが鳴り続けていた。
???
「まったく。彼は何をしているんだ」
仮面の男は思わず毒づいた。
「何でここまで予想外の行動してくれるかなぁ・・・。これじゃあクライに悪を持たせる意味なかったじゃないか」
「もっと計画に修正が必要だな」
彼は仮面を外し、傍に座る少女の頬を撫でた。
後書き
病院終わったーーーー!!次は番外だー!!
ユキがハートに言ったセリフはZXがSPIRITSで言っていたセリフです。
GGO編のメンツが決まりそうなんですが・・・。一人だけ決まりません。
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