ひねくれヒーロー
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ある人間を判断する
ある人間を判断するには、その人の言葉によるよりは、むしろ行動から判断したほうがいい。
というのは、行動はよくないが、言葉が素晴らしい人間が多くいるから。
—クラウディウス—
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ある人間を判断する
◇◆◇地陸◇◆◇
まさかあのまじらずシナイ殿と出会い、対話する日がこようとは・・・思いもしなかった
本堂からは我ら二人のみ、他の者は皆外へ出て行った
見つめ合い、何から話すべきか、何から聞くべきか、お互い口をきけずにいる
「・・・その、記憶を持つというのは地陸殿だけなのでしょうか」
恐る恐る、といったように小さく訊ねられる
記憶を持つ、それだけならばもう1人、この寺に存在している
「いえ、私のほかにソラ・・・先程の少年僧が記憶を持っております
ですが、ソラの記憶はどうも別物のようでして・・・」
そう、ソラの記憶は私の知るものとは違っていた
「別物?」
小さな唇が囁きかける
「はい ソラの父親は私と同じ守護忍十二士カズマなのですが・・・
カズマは木の葉の忍と交流を多数持っておりました
そんな忍たちにソラを会わせるのはしょっちゅうでした
ですが、ただ1人、木の葉に存在しない者を覚えているのです
調べてみても該当する人物はおりません
恐らく、私の思い違いでなければ、ソラは我等とはまた別の記憶を持っております」
カズマの友人なら、私も何度か顔を合わせた事がある
木の葉出身のアスマだってそうだ
アスマに手紙を送っても、該当する人物はいなかった
「・・・有り得ることです
私のみならず何人か別の記憶を持ったものと出会ってますから・・・」
眼を伏せ、何かを考えるようにしばらく沈黙なされた
真っ直ぐこちらを射抜いて語りかける
「もしや、お二人が記憶を持っていると認識したのは・・・二年前ではございませんか」
何故分かるのだろうか
二年前
云われるように私は二年前から記憶を持った
「!? ・・・確かに、私が記憶を持ったのは二年前
ソラの挙動があやしいと感じたのも二年ほど前になります」
「やはり・・・なら、貴方は死の直前まで記憶を持っているのでは?」
私の答えに何度も1人頷いて、話を進めて行く
「・・・その通りです
私は暁の手の者によって死、気づけばこの寺でいつものように佇んでおりました
最初は時間が巻き戻ったのかと、奇跡でも起こったのか、夢ではないか半信半疑で・・・
暁について独自に調べている最中、歴史が私の記憶とかみ合わない事に気が付きました
・・ジャシン教が台頭してきたのも二年前でしたね
これはジャシン教が起こした奇跡なのでしょうか」
異教の奇跡によって、歴史的偉人に出会うこととなるとは思わなかった
多少感謝ぐらいして良いような気がする
「・・・関係は、あるでしょうね
だからこそ我々はジャシン教を調べているのです」
ジャシン教か・・・
確かあの暁の手の者は、ジャシン教の信者の様だった
彼の者に殺害されたが故に、記憶を持ったとでも言うのだろうか
「この世界の歴史は知らないはずなのに、あちらの世界の歴史か知らぬはずなのに
しかし、私は”ここの歴史”を知っていた
まじらずシナイ殿の存在を、ここの歴史は記していなかった
ここは、元の世界ではないのですね」
予想はしていた
だからこそはっきりと言う
ここは私が生きてきた世界ではない
それに彼女は頷いてから・・・少し悩んだ後首を傾げてこういった
「・・・別段、歴史に名を残すようなことはしておりませんよ」
謙遜、しているのだろうか
そのような事を云われても、私の知るまじらずシナイと言う人物は偉人である
「何を謙遜されますか
貴女の功績は忍界の歴史に名を刻み、まじらずシナイの名は確実に語り継がれております」
伝記だけでなく、博物館に縁の品が展示されるぐらいなのだが
「・・・いえ、本当にそんな功績と呼ばれることは成しておりません・・・」
・・・?
もしや、シナイ殿の生前には功績が認められていなかったのだろうか
彼女の功績は木の葉のアカデミーどころか、各里の歴史の授業で必ず教えられるものなのだが・・・
「チャクラ感応紙の作成、五種のチャクラ性質論の確立
また基本印十二種の制定など、数々の功績を成し遂げられたのは貴女ではありませんか」
全忍術の基礎となる五種のチャクラ性質
その特性と優劣を解き明かした彼女の講義録は、二代目火影が各里のアカデミーに模写して配布したという
またチャクラ感応紙による性質の確認
得手不得手が明確に表現され、どの術が自分に対応しているのか
これほどわかりやすいやり方はないだろう
「え・・・あ、そんなこともありましたね・・・
しかし、基本印は何処の一族にもあるはず・・・」
「確かに一族ごとに基本の印となるものはありました
しかしそれはあくまで一族内部でしか通じない、云わば秘伝の印
術の教えを請う場合、まず印を盗み出すことから始まったと習いました
印を盗み出せたとしても、術の発動に必要な印、チャクラ量が分からず暴発し、命を落とした者は多い
貴女は各一族の印傾向をまとめ、基本となる十二の印を図示し、書に認め各有力一族に配布した
これにより戦国時代後期の忍の質は向上したと言っても良いでしょう」
伝記を書いた志村ダンゾウ殿が、二代目から直に聞いたと記していた
火影の師として相応しい方だと言われている
「・・・あ、そう、なんだ・・・ははは・・・
初代、二代目に教えるために描いた奴が、そんなに広まってるなんてね・・・」
淡褐色の眼が虚ろに宙を見上げた
・・・弟子を想うその心が、多くの者を術の暴発から守ったのですね
彼女の基本印のおかげで、木の葉は多彩な術を扱うことが出来た
基本印が出来るまで忍びは皆、一族秘伝の術を扱うか、体術で戦うことしかできなかった
秘伝の術を教えられるものは数少なく、末端に位置する者たちは身一つで戦い続けた
なんと恐ろしい時代か・・・
「初代・・・そういえば
千手一族とうちは一族の和平を、間を取り持ったのはまじらず一族棟梁である貴女さまだと聞き及んでおりますが・・・」
「え
・・・
・・・あ、あれか」
千手一族の頭領兄弟の師であり
うちは一族と居住地が隣接していた、まじらず一族
戦国時代後期、千手とうちはの戦争と化していた時代
多くの忍一族は長い戦いに疲弊していき、両者に対抗する力もなかったという
そんな彼らの嘆願を聞き届け、戦い続ける彼らの元へ割り込み、和平への道を指し示したまじらずシナイ
そのころには終戦に異を唱える者はおらず、戦争は終結した
「懐かしいな・・・あいつら家の前で九尾呼び出したり、森作り出したりしやがったからなぁ・・・」
正直迷惑だったわー
「え」
何かとんでもない言葉を聞いてしまったような
伝記で語られた人物像とは似て非なる何かを聞いてしまったような
「あ、なんでもない」
「はぁ・・・」
そうだ、これだけは聞いておきたい事があったのだ
「まじらず一族は何故————————滅んだのです?」
千手とうちはとまでいかずとも、その名を知られた一族
木の葉が創設されても定住せず、放浪の日々を送り、滅亡したという
「・・・人も、桜も、いつかは散る
そういうことです」
◇◆◇コン◇◆◇
地獄絵図
この状況に題をつけるのならば、オレはこうつけたい
「鶸茶助けて!鶸茶ー!」
「ほらほら!!青春フルパワーで行くぞ!」
両手を縛りつけられ救いを求めるサイ、次々と体術を繰り出すガイ先生
それを眺めるオレと、ソラ
ガイ先生の拳圧で、ときたま髪や木々の葉が切り裂かれる
基本的に支援を専門とするサイに、体術のエキスパートであるガイ先生の相手は厳しい
しかも術が使えないよう両手を縛られ、その身体能力だけで拳を避けなくてはならない
え?
縛ったのは誰だって?
シナイちゃんですよ
本堂から出ようとした瞬間、キレイに縛られましてね
そのままガイ先生に首根っこ引っ掴まれてこの状況です
・・・拳圧だけで血が見れる体術なんて、滅多に見れないものだ
頑張れサイ
ガイ先生のスピードになれたら、オレと組み手だからな
うちの班の修行風景そのまんまだ
まず身動きの取れない状況に追い込まれ、先生の超スピード体術に強制的に慣らされる
ある程度時間がたてば、班員同士の組み手の開始
ここで先生のスピードに慣れ、班員のスピードが大したことがないと慢心すれば、容赦ない一撃を喰らわされる
スピードがないから大丈夫だと安心しても攻撃される
・・・少しでも、油断すればアウトだ
ガイ先生の事だから、きっと凄い一撃をくれる筈さ
生温かい目でサイを見守る
泣きが入っているがスルーだ
「た、助けなくて良いのか・・・?!」
ソラが何やら哀れみの眼で見ているが、気にせず瞑想の態勢に入る
少しでもチャクラの総量を増やさなければならない
身体エネルギーはこの虚弱体質の影響でろくに作れたものじゃない
なら総量を増やす為には精神エネルギーを強化する必要がある
「まぁ直に終わりますから
オレは瞑想しますので、彼らを適当に止めてくださっても構いませんよ」
「・・・お前さぁ、敬語使ったりタメ口になったり・・・統一しろよ」
そう言われても
一応任務の協力者だから、丁寧に接しようと思って敬語だったんだけど
たまに年下だからタメ口出てしまう
これが依頼人だったら減点ものだな
「・・・どちらがお好みで?」
「え・・・た、タメ口とか・・・?」
ふーむ
意外とタメ口で話してたのは好感触だったのかね
「なら友達の様に話すか」
「だ、誰が友達だ!誰が!」
おーおー吠えるねえ
友達いない歴何年だいお前
視界の隅で逃げ惑うサイとそれに容赦ない追い打ちをかけるガイ先生の姿が見える
「そういえば、お前ぐらいの年の奴、寺で見かけないなぁ
なんで?」
「・・・オレは小さいころに、親を亡くして寺に引き取られたから」
あ、重い
軽く言ってるけどかなり重い
「・・・悪かった」
「へっ別に謝られるようなことじゃねぇ
こうして寺で生活してるし、地陸さまに修行を見てもらえるしな」
「寺も修行か・・・体術?それとも忍術か?」
修行僧・・・
モンクみたいなイメージがあるんだが
「基本は体術だな、性質変化の修行が終われば本格的に忍術を教えてもらえるけど・・・」
「・・・お前はまだ、忍術教わってないんだろ」
ジト目で見つめてやれば(マスクで分からないと思うが)
怯んだように身を縮みこみ、後ずさったソラ
「何で分かった!?
・・・しょうがねぇじゃんか・・・風の性質は火の国じゃあんまり居ないんだから」
「お前の性質は風か・・・
うーん、まじらず上忍は雷だし、ガイ先生は忍術あんまり得意じゃないからなぁ」
雷遁ばっかり使ってるなーと思って聞いてみたら雷の性質、あと水だった
雷の修行ばっかしてきたから、水のほうはあんまり使わないらしい
オレもチャクラ性質調べておこうかな
・・・火のような気がするけど・・・
風ならアスマ先生だが・・・他に誰かいたっけな・・・
「・・・オレの、親父の友達に風の性質の人が居たらしい」
「居た・・・ってことはもう・・・」
亡くなられているのか
生きていればその人に教えてもらえるのに
「暗部の人でな、要人警護中に殉職したそうだ
あーあ・・・風の性質って珍しいから中々教えてくれる人居ないんだよなぁ
その人が生きていたら、修行つけてもらえたのになぁ・・
生きてたら良かったのに・・・シュロさん」
「ぶふーっ!」
思わず血を吹いた
マスクが赤くて良かった!
え、ちょ、あ、そういえばシュロの奴風の性質か!?
ということはソラも、記憶持ち!?シュロと同じ世界か!?
「お、おい大丈夫かよ・・・」
「ス、スマン
知り合いに同じ名前の子が居たから・・・」
しどろもどろに答える
「へーそんな偶然もあるんだな
あー・・・でも、シュロさん本当にいたのかあんまし分かんねえんだよ」
「は?」
「なんかさー、二年ぐらい前?急に思い出したんだよ
親父が、木の葉の強い蜂使いだって教えてくれた記憶
でも、木の葉にそんな蜂使いいないって言われて・・・
今までずっと・・・父さんの、あの真っ白な腰布しか思い出さなかったのに・・・
あ、オレの親父、地陸様と同じ守護忍十二士だったんだ」
あ、なんか聞いたことある
アニメ版のオリジナルストーリーでそんなんあったような・・・
たまにしかアニナル見てなかったから記憶があやふやだ
ん・・・
二年前?
ジャシン教が台頭してきたのも二年前だよな?
なにか関係があるんだろうか
二年前に、何があったんだろうか
考え込んでいると、気づいた事がある
今から二年前って、オレが湯隠れで、自来也に保護された時期じゃないのか——?
◇◆◇?◇◆◇
黒い炎が、歪な人型に成る
————|並行《平行》世界の境界が確立されたのか————
そう呟いて黒炎は歩き出す
———祈りは 歪んだまま———
虚空に向かって歩き続ける黒炎は、一度だけ振り向いて再び歩きだし、消え去った
黒炎が消え去ったのを確認したかのように、金色の光が、人の形を成す
————|並行《平行》世界の境界が自覚されました————
——祈りは 届いていません——
金の炎が片手を上げる
炎に写し出されたのは、仮面をつけた、傍らに蜂を置く男
————お日様は、笑いません————
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一族の場所と距離感はこんな感じのイメージ↓
千手家 森森森森森 まじらず家 小川 うちは家
玄関から出ると、千手とうちはのガチバトルが見学できる立地条件です
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