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とある3人のデート・ア・ライブ

作者:火雪
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第六章 颶風の巫女
  第3話 それぞれのアピール

 
前書き
どうも、ラーフィです。

今週はさほど忙しくなかったので2話投稿しようと思います。

では、どうぞ! 

 
修学旅行に来ていた生徒は、夕食を済ませ、自由時間を満喫していた。

そうーー士道と上条以外は。

上条「はぁ……不幸だ……」

士道「なんてこった……」

士道と上条はのたのたと廊下を歩いていた。

それもそうだろう。未封印の状態の精霊が二人も現れ、士道と上条に絡んできたのである。

耶倶矢も夕弦も令音の説明?を受けて随分大人しくなったが……それでも不安だらけだ。

凜袮『頑張ってね〜』

そんな上条に頭に直接話しかけてくる凜袮は呑気だった。

上条『………頑張るけどさ、もう少し休憩したい……』

とか凜袮に言っても意味はないのだが。

と、ここで上条は少し疑問に思ったことがあった。



幻想殺しに触れた『石』は何で打ち消されないんだろう……と。



それを聞こうとした、その時ーー




耶倶矢「やっと来たか。遅刻したものには罰を与えねばな……」

夕弦「疑惑。時間を指定した覚えはありません」

二人が現れて聞きそびれてしまった。

……また厄介なことになりそうだ。

士道「二人とも、何してるんだ?」

耶倶矢「ふ……教えてやろう。こっちだ」

夕弦「確保。当麻はこちらに」

耶倶矢は士道に、夕弦は上条に抱きつくと、それぞれ別々の場所へ連れて行かれた」

士道「なんなんだよ、一体」

上条「どこに行く気だ?」

二人はお互いの言葉が小さくなるのを感じながら、連れて行かれるのであった。


ーーーー
ーーー
ーー




〜士道side〜

耶倶矢に連れて行かれたのは、『男』『女』とそれぞれ書かれている青と赤ののれんがかけられたーーつまり露天風呂である。

士道「風呂?」

耶倶矢「くく……貴様の身体は常闇の穢れを蓄積さし過ぎた。その身を浄化することを許す」

士道「………は?」

…………恐らく風呂に入って汗を流せ、ということだろう。

通訳係の夕弦がいないと、理解するだけでもこんなに苦労するとは。

耶倶矢「すでに準備はできておる。誰もいない大浴場に入るが良い。無論、貴様に選択肢などはない……」

どうやら入ることは決定事項らしい。

でも確かに汗を流すのは悪くない。一日の疲れを取るのは少し早い気もするが別に大丈夫だろう。

そして、士道と耶倶矢は『男湯』の方へ入っていった。




さて、上条はどこへ連れて行かれたのやら。



ーーーー
ーーー
ーー



〜上条side〜

上条が夕弦に連れて行かれたのは公園らしき場所だった。

そこにあるベンチに座るように促されて、上条は戸惑いながらも座る。これじゃあただのデートだ。

けど、

夕弦はそんな雰囲気を全く見せなかった。

先ほど耶倶矢と一緒にいた時と変わって、真面目な表情をしていた。

と、彼女は決心したようにこちらと目を合わせた。

夕弦「質問。聞きたいことがあります」

上条「ん、何だ?」

彼女は一拍置いて、そして言った。









夕弦「あなたはーーー何者ですか?」










唐突で、しかも初めてだった。

確かに今までこんな質問は何度か受けたことがある。

でもその時は『幻想殺し』の存在を知らない人達がその理解不能な『幻想殺し』の力を使った時に言う言葉だった。

そう。

こんなに唐突に言われたのは初めてだ。

でも、彼はこんな質問をされた時は決まってこう言う。



上条「何者って……上条さんは普通の高校生ですよ?」



ーーと。

夕弦「………訂正。言い方を変えます」

でも、彼女には確信すべきことが一つだけあった。





夕弦「なぜ貴方が″精霊の力を保持している″のですか?」






上条「ーーーーッ!?」

目を大きく開いて夕弦を見た上条。彼は今かなり動揺している。

夕弦「説明。初めてあなたを見た時から『違和感』を覚えていました。貴方は士道とは少し違う″何か″を持っている、と。夕弦はその『違和感』の正体を知りたかった、だから貴方をパートナーに選んだのです」

上条「………それで、何が分かったんだ?」

夕弦「解答。それはあなたの中には二つの巨大な力があることです」

………恐らく『幻想殺し』と、凜袮の意思と切り離された『精霊の力』だろう。

夕弦「補足。あなたは一人ではありません。その『石』の中にいる……精霊。夕弦が抱いた『違和感』は恐らくこれだと思われます」

あの短時間の付き合いでそこまで見抜くとは……どうやら彼女はかなり勘がいいらしい。

夕弦「質問。もう一度言います。貴方がなぜ『精霊の力』を保持しているのですか?」

上条「………」

上条は夕弦から目を離し、夕焼けで紅く染まった空を見上げた。




正直言って、言い訳なんで出来なかった。

いや、全て知らんぷりをすればいい話だ。何故から証拠がないのだから。

でもーー

凜袮『……彼女には全て話した方がいいんじゃない?』

突然凜袮が頭に話しかけてきた。

上条『……凜袮もそう思うか?』

凜袮『うん。彼女はほぼ確信を持って言ってるよ。私と同じ精霊だから分かったのかな?』

………なら何故、他の精霊は分からなかったんだ?という疑問は言わないでおこう。

上条『いいのか?』

凜袮『うん。別にバレたら悪いってことじゃないしね……言ったところで信じてもらえない、っていうのが本音だし』

上条『ま、そうだな』

彼は再び夕弦の目線を合わして、こう言った。

上条「………今からする話は全て実話だ。信じれるか?」

夕弦「解答。それが質問の答えになるなら」

上条「……なら話す。……あれはーー6月24日から始まった出来事だ」


ーーーー
ーーー
ーー



〜士道side〜

耶倶矢からの熱烈なアピールを受けること数十分、戸が開く音がした。

士道「お、おい……誰か入ってきたぞ。お前、隠れないとまずいんじゃないのか?」

ここは男湯である。男子生徒が入ってきたら耶倶矢も士道も色々まずいだろう。

耶倶矢「くく……何を言っておるのだ士道よ。むしろ心配するのは貴様の方ではないか?」

士道「は……?」

と、

?「とりゃー!」

元気のいい声とともに入ってきたのは、

紛れもなく夜刀神十香そのものだった。

十香「ん?」

どうやら十香も先客に気づいたらしい。

士道「……」

十香「……」

そして。

士道「ギャーーーッ!?」

十香「ギャーーーッ!?」

二人は全く同じ悲鳴を上げた。

十香は慌てて両手で、バッと胸元と下腹を覆い隠す。

十香「な、なぜこんなところにいるのだシドー!」

士道「お前こそ何で男湯に!?」

十香「何を言っている!?ちゃんと赤い方に入ったぞ!」

士道「は……!?」

赤い方。つまり女湯。

士道「まさかお前……」

耶倶矢「うむ。士道が入る前にのれんを入れ替えておいた。何か不満があったのか?」

士道「お前なぁぁぁぁ!!」

と、立ち上がって耶倶矢を睨みつけるが、そんなことを言っている場合てめはない。

士道「十香!信じてくれ。俺は誓ってこんなことをするつもりじゃなかったんだ!」

十香「お、おお……!?ではなぜこんなところに……?」

士道「騙されたんだ!すまん、すぐに出て行くからーー」

と、扉に行こうとした時に気づいた。

十香が入ってきているということは、もう女子生徒全員が入浴時間で来ていることに。

それに気づき、岩陰に隠れると同時に、女子のご一行様が入ってきた。

「やー、広いじゃない!海すぐそこじゃん!」

「あ、転校生さんもう入ってたんだ。はやーい!あれ?もう一人の子は?」

夕弦「応答。お呼びでしょうか?」

「あ、こんなところにいたんだ」

耶倶矢「フン、ようやくお出ましか。一足遅かったな。我は既にやり終えたというのに……貴様が奴に同じことをしようとしてもこの有様だ。もう手遅れだろう?」

夕弦「否定。そんなことをする必要などありません。夕弦は耶倶矢と違って魅力的ですから」

耶倶矢「何だとぉ!?」

「あれ?鳶一さん、お風呂に入らないの?」

折紙「……私にはやらねばならないことがある」

「そ、そう……がんばってね」

耶倶矢「ふ、ふん!我は士道にこれでもか!というまでアピールしたのだからな!」

夕弦「説明。そこまでしなくては夕弦に追いつけない耶倶矢はもう手遅れです」

耶倶矢「何だとおぉぉぉ!!」

いや、士道が手遅れだった。

今は何とか岩陰に隠れて身を隠しているが時間の問題だろう。

後ろには裸の女子生徒。自分が今いるのは岩淵。その下は一面に広がる海。

士道「(こうなったらーー!)」

彼がしたことは単純だった。

「あれ?今変な音しなかった?」

「え、どんな音?」

「ドボーン!っていう……プールに飛び込んだような音が……」

「気のせいじゃない?まさか風呂に飛び込む人なんているわけないし」

「それもそうだね」

その時、岩陰には士道の姿はなかった。


ーーーー
ーーー
ーー


〜上条side〜


夕弦が風呂に入るちょっと前。


上条「ーーが、全ての真実だ。嘘は言ってない」

夕弦「応答。そんなことがあったのですね」

と、夕弦が少し身体を丸めてその『石』の方をジー、と見つめている。

すると、その石に惹かれるように手が伸びていき、その石にちょんと触れた。

すると、『石』は呼応したかのようにピクンと跳ねた。

夕弦はその仕草に何かを感じ取りーー『石』を優しく包み込みながら上条の胸にコツンと頭を押し付けた。

上条「ちょっ!夕弦!?」

一瞬パニクるが、そう思ったのも束の間、夕弦の動作のすぐに理解した。

夕弦『質問。聞こえますか?』

それは、凜袮と会話をしている時の……頭に直接話しかけれらるような時と全く同じカンジだった。

上条『え……何で夕弦の声が……』

凜袮『あれ、この声って今目の前にいる……』

夕弦『歓喜。成功しました。何となくでやってみましたが、うまくいきました』

凜袮『……もしかして、私たちの″領域″に進入できたの……?』

上条『そんなことが……』

凜袮『これは大発見だよ。夕弦ちゃんすごい!』

夕弦『挨拶。初めまして、八舞夕弦といいます。あなたは?』

凜袮『私は園神凜袮!凜袮って呼んでね!』

夕弦『応答。よろしくお願いします。凜袮』


全く、夕弦は侮れないなぁ。


上条は夕弦の心地よい香りのする中で目を瞑り、しばらく3人での会話を楽しんでいた。



ーーーー
ーーー
ーー


士道帰還後。


上条「バカだろお前」

士道「し、仕方ねえだろ!ああするしか方法がなかったんだから!」

あの後、風呂に入り自分たちの部屋へと戻った二人は先ほどのことについて話し合っていた。

士道「それで?そっちはどうなんだよ」

上条「そうだな……」

まさか秘密を知られたとは言えまい。

いや、そもそも士道はこの秘密を知らないから言ってはならないのだ。

上条「……まあ、順調かな?」

士道「意味分かんねえよ。そっちがデレる立場なのに」

確かに。

でも夕弦はあれっきり、上条をデレさせるという感情があまり見られないような気がしたのだ。

とりあえずーーよく分かんないことになっている。




これからどうなるのか。


この時の彼らは複雑な気持ちだった。


だって、




あの二人のどちらかは消えてしまうのだから。


 
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