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ハイスクールV×D ライド15
「……それで、あなた達の用件は?」
どす黒いオーラを纏って『ギリギリ』と歯軋りをしている木場を背景にリアスがそう問う。
「七本のエクスカリバーはカトリック、プロテスタント、正教会が各二本ずつ保有し、残りの一本は三つ巴の戦争の折に行方不明になっていた」
(確か行方不明なのは『支配の聖剣』だったか? 寧ろ、一本だけ行方不明になって還って良かったんじゃないのか、この場合?)
ゼノヴィアの話を聞きながらふとそんな事を思う。各宗派のパワーバランス的に一本多く所有すると言うのは問題だろう。
なお、例によってエクスカリバーについての情報を買った時に行方不明になっている七本目の名前と能力も知っている。
「そのうち各修派から一本ずつが奪われ、この地に持ち込まれたって話さ」
「まったく無用心ね……誰がそんな事を?」
「奪ったのは堕天使組織『神の子を見張る者』の幹部、『コカビエル』だよ」
「堕天使の組織に!? それもコカビエルなんて、聖書にも記された者の名が出るとはね……」
(予想通りか……)
(そうね、勝てる?)
(勝てるさ、オレ達二人なら)
ある意味、立会人の依頼を受けた最大の理由は此処にある。教会側から敵の情報を得られるに越した事は無い。
予想通りとは言え、大物の名前が出て来た事には流石に内心で動揺してしまうが、それを表に出したりはしない。
「私達の依頼……いや、注文とは。私達とグレゴリのエクスカリバー争奪の戦いに一切悪魔が介入しない事。つまり、今回の事件に関わるな、と言いに来た」
「悪いけど、無理だな」
「な、なんだと!?」
なるべく話しに入らない様にしていた四季は此処で初めて口を出す。……天界、堕天使の両サイドから奪還の依頼を受けてはいるが、この様子では揉める事は間違いないだろう。だったら、依頼の事を知らせずに行動する方が良いだろうと判断した訳だ。
「流石にこの街に入り込んでいる以上、何を仕出かすか判らない。……特にコカビエルはグレゴリの中でも過激派の筆頭、そっちが失敗……いや、行動が僅かに後手に廻っただけでも最低でも、この街にいる魔王の妹二人とその眷属の命、最悪は街そのものを危険に晒す事になる」
「四季」
「お前……」
師機が自分達の心配をしてくれていると思って感動を覚えるリアス達だったが……
「別に変態を初めとするリアス・グレモリーとその眷属はどうでも良い! だけど、それなりに世話になった会長の所には友人も居る」
きっぱりと『どうでも良い』と言われた事にずっこけるグレモリー眷属一同。
「何より、街に影響を及ぼす行動だったら、詩乃が危ない!」
その言葉を聞いた瞬間一誠は思った。『やっぱり、それかよ』と。ある意味三大勢力間の戦争とか以前に、究極的に一個人の為に行動していると言う四季の行動原理に流石の聖剣コンビもフリーズしてしまった。
まあ、根本的に四季の思考は詩乃最優先であるから、このリアクションも無理は無いだろうが。
「しかも、戦闘向けじゃなさそうな聖剣しか残っていないだろう、正教会は傍観か残りの一本の死守と言う異見で纏まってるんだろう。切り札は有るんだろうが、僅か二人で三本のエクスカリバーを相手に……なんてどう考えても負けるのがオチだ」
そう言いきると四季は鋭さを増した視線で二人を見据える。
「悪いが、詩乃の安全をコカビエルの……ミジンコ以下の善意と、君達二人の能力に掛ける気は無い」
エクスカリバーが三本。其処から推測すると敵の戦力はエクスカリバー使いが三人とコカビエルが一人。コカビエルの部下の堕天使が加わる可能性を考慮すれば敵の最大戦力が更に上がる。
「エクスカリバーに対抗できるのはエクスカリバーだけなのよ!」
「そうだな、対抗できるエクスカリバーが敵は三本……最大で二人で三人の聖剣使いを相手にする……そして、敵にはコカビエルも。絶対的に戦力不足だろ? ……って、どうした?」
もっとも、同等かそれ以上の聖剣が有ればエクスカリバーにも対抗で出来るだろう。そんな事を考えながら先ほどから静かだったグレモリー眷属の方を向いてみると、全員が頭から突っ伏していた。
「……何遊んでんだよ、大事な話をしてる時に」
『それはこっちの台詞だ!!!』
グレモリー眷属一同のツッコミが四季へと向けられるが、当の四季はと言うと。
「? 至って真面目だが?」
「他の人はそう思えないわよ。……私は嬉しいけど」
最初から大真面目な四季だった。まあ、そんな四季の言葉に溜息を吐きながら突っ込みを入れる詩乃。
「兎も角、堕天使幹部の中でも特に凶悪且つ危険思想の持ち主で……ある意味じゃ『堕天使最強』と言う理想主義者のコカビエルの行動パターン、この駒王町と言う土地の“特別性”を推測すると、間違いなく悪魔サイドも無関係とは居られないだろう」
「どう言う意味だ?」
「単純な話しだ。大昔の戦争の続きがしたい、だから教会から聖剣を盗んだ。そして、今度は魔王の妹を殺す事で、悪魔と堕天使の戦争を引き起こす」
そう言って四季は足元を指差した。
「既に巻き込まれているだけだ、お前達の思惑……いや、使命など関係なくな」
四季の言葉に黙り込む。
「だが、協力は仰がない。悪魔側も神側と一時的にでも手を組んだら三竦みの関係に少なからず影響を与えるだろうからね……」
「そりゃそうだ。下手に動いたらどっちにしても、ある意味じゃコカビエルの思惑通り……と考えるべきだろう」
そう言った後、四季はそう言って肩を竦める。
「用件は以上だ。イリナ、帰るぞ」
「そう、お茶は飲んでいかないの?」
「いらない」
朱乃がティーポットとカップを用意しているが、ゼノヴィアはそれを断ってイリナを促して帰ろうとする。
「ゴメンなさいね。それでは」
イリナがそう謝って立ち去ろうとするが、ゼノヴィアの視線が一人の……グレモリー眷属の中の一人に止まる。
「兵藤一誠の家で出合った時にもしやと思ったが、『魔女』アーシア・アルジェントか?」
アーシアに視線を向けながらゼノヴィアはそう問うが、それは問いと言うよりも既に確信を持っての言葉に聞こえた。
(魔女ってどう言うこと?)
(彼女……アーシア・アルジェントの過去に関わりがある事、彼女がグレモリー眷属になる切欠とでも言うべきかな、この場合?)
小声でそう問いかける詩乃の言葉に同じ様に小声でそう答える。……グレモリー眷属の過去については一通り調べて有るが、それでも必要以上に他言する心算は無い。流石に詩乃が危険に晒される可能性を考慮して熱くなって交渉に割って入ってしまったが、これ以上は拙いだろうと判断する。
後書き
四季くんは根本的に詩乃さん優先の思考をしています。
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