リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~
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第四十四話 新天地へ
前書き
デビモンを撃破した子供達。
しかし…。
プロットモン[リリカルアドベンチャー、始まるわよ]
亡き友の名を呼び泣き叫ぶアリシアの目の前に、吸い寄せられるようにふわりとダルクモンの羽根が集まった。
微かに光を放ちながら、それは形を成してゆく。
アリシア「………え…?」
ぽん、と小さな音をたてて現れたのは、
フェイト「デジタマ…………」
ころりと小さな、命の器。
大輔「プロットモンのデジタマか…?」
ガブモンX[うん、きっとそうだよ…]
アリシア「…プロットモン…プロットモンなの……?」
なのははプロットモンのデジタマを優しく撫でた。
ブイモン[ダルクモンはきっと、デジタマからやり直すんだ]
チビモン[そうだよ。ちゃんと進化すればまた会えるよ!!]
口々にそう述べるデジモン達。
アリシアは涙を拭い、デジタマを抱え上げた。
アリシアは「大切に育てるからね…」
震える声で、アリシアが呟く。
パートナーの腕に抱かれながら、再び世界に生まれる瞬間を待つ。
すずか「見て、島が戻ってくる!!」
アリサ「この島を覆っていた暗黒の力が消えたからだわ…」
緩やかに波を上げて、ファイル島は元の姿を取り戻さんとしている。
それぞれの離島の端には、待ちきれないというように身を乗り出す沢山のデジモンの姿が見て取れた。
その数だけの歓声、笑顔があった。
賢「ダルクモンの犠牲は無駄じゃなかった…か…」
はやて「…ところで、これからどうするんや?」
はやてが戻っていくファイル島を見遣りながら言う。
これからどうすればいいのだろう?
大輔「そうだな…」
大輔が腕を組んで悩みだした時。
突然、地面が揺れ始めた。
地面の1部が音を立ててひび割れたかと思うと、そこから大きな投影機のようなレンズが顔を出す。
そして、その中に1人の老人が透きとおった姿を見せた。
その老人。
この世界に来てから初めて目にする。
人間の形をした存在は。
?『ほう…お前達が選ばれし子供達か。デビモンを倒すとは中々やるのう』
フェイト「…え!?」
面白いくらいに皆同じ表情をしている。
驚愕の表情。
鷹揚と自分達を見上げる小柄な老人。
アリサ「あ、あんた誰よ!?」
ルカ「デビモンの仲間?」
警戒心を露にする子供達。
老人はそれに慌てた様子もなくゆったりと子供達を見回した。
?『心配せんでいい、わしはお前達の味方じゃ、わしの名はゲンナイ。この世界の安定を望む者じゃ』
ユーノ「僕達以外にも人間がいたんですね」
ゲンナイ『わしは人間であって人間ではない』
アリシア「じゃあオバケ?」
ゲンナイ『…………いや…』
アリシアの率直な疑問にずるりと脱力した表情を引き締め、ゲンナイは皆に向き直った。
いつの間にか、全員がゲンナイの正面に集まっている。
ゲンナイ『今まではデビモンの妨害があってなかなか通信できんかったが、やっと会えたのう…』
ゆらゆらと虹色に光るホログラム。
すずか「通信って…、どこからしてるんですか?」
ゲンナイ『このファイル島から遠く離れた海の向こう、サーバ大陸じゃ』
大輔、賢「「サーバ大陸…」」
なのは「それって大輔さんの先輩の人達が冒険した所だよね?」
ゲンナイ『ほう、つまりお主達が…』
ゲンナイの視線が大輔と賢に向く。
賢「どうやら僕達のことを知っていたようですね」
ゲンナイ『無論じゃ』
はやて「ゲンナイさんはいつからそこにいるんや?」
ゲンナイ『最初からじゃ。わしは最初からこの世界におる』
アリサ「…私達に何の用があるのよ?」
焦れたアリサがゲンナイに尋ねる。
ゲンナイ『おお、そうであった。サーバ大陸へ来て敵を倒してくれ。選ばれし子供達よ。選ばれし子供達なら出来るはずじゃ…』
大輔「何?」
子供達が目を見開いた。
それはそうだ。
今しがた強敵との死闘を終え、もう心身ともにぼろぼろなのだから。
すずか「こ……、来いと言われても場所が分からないんですが」
大輔「そこかよ!!」
ゲンナイ『あ、それもそうじゃのー』
大輔「爺…」
疲労のせいなのか微妙にずれたことを言い始めるすずか。
…なんだかもう寸劇のようだ。
ゲンナイ『今お前のパソコンに地図を送ってやるわい』
ふぉふぉ、とまた笑ってゲンナイは自らの髭を撫でる。
大輔「だけどどうするつもりだ?デビモンを倒すのも苦労したんだぜ?それなのにファイル島よりレベルが高いサーバ大陸をどうしろって言うんだ?」
タグはないが、紋章がある自分と賢はまだいい。
しかし紋章を持たないフェイト達を守りながらとなるときつい。
ゲンナイ『お前達のデジモンがもう一段階進化出来ればそれも可能になる』
もう一段階、完全体への進化。
チビモン[私達がもっと進化する…!?]
目を見開くチビモンにゲンナイは頷く。
ゲンナイ『その為にはこれが必要じゃ』
言うなりゲンナイの姿は消え、代わりに別の映像がふわりと浮かび上がった。
小さなプレートだ。
大輔「紋章…?」
ゲンナイ『ほう、知っておったか。ならば話は早いのう。お主らの世界ではタグに紋章を差し込んでいるようじゃが…』
映像に映るのはD-3のディスプレイに紋章が吸い込まれる映像だった。
大輔「D-3に紋章を…?」
ゲンナイ『かつては紋章をタグに差し込むことで完成するはずじゃった。だが、お主達が来たことにより、デジヴァイスの性能を大きく向上させることに成功し、D-3と紋章を1つにすることで紋章の力を引き出すことに成功したのじゃ』
大輔「紋章とデジヴァイスを1つに…」
ちなみにこれは太一達の紋章の欠点を解消した物でもある。
最初からデジヴァイスに紋章をぶち込むという前提で作っていれば、光の紋章がヴァンデモンに渡ることは無かったし、アポカリモンに破壊されたりはしなかった。
何せ、究極体の攻撃を受けても罅1つ入らなかったのだから。
大輔は紋章を取り出すとD-3に近づける。
すると紋章が光りだし、紋章がD-3のディスプレイに吸い込まれた。
次の瞬間、D-3のディスプレイに奇跡の紋章が浮かんでいた。
賢もやってみれば同様の現象が起こった。
フェイト「…あの、紋章は何処にあるんですか?」
ゲンナイ『紋章はサーバ大陸のあちこちにばらまかれてしもうた。』
大輔「つまりそれを見つけないといけないわけか…」
大輔が溜め息を吐きながらぼやいた。
その時だった。
耳障りなノイズとともにゲンナイのホログラムがゆらめく。
ゲンナイ『あ、いかん。デビ…妨害が……』
大輔「ゲンナイさん?」
何をする間もなかった。
キィン、と高くハウリングのような音が響き、それに驚いた皆が閉じた目を開けた時、ゲンナイ老人の立体映像は、跡形もなく消え去ってしまっていたのだった。
なのは「消えちゃった…」
大輔「あのくそ爺…」
こめかみをひくつかせながら呟く大輔。
すずか「…地図は無事届いたみたい」
パソコンを操作し、すずかが告げる。
フェイト「これから…どうする?」
フェイトがなのはを見遣りながら言う。
大輔「とにかく山を降りよう。話はそれからだ」
清らかな水が絶えず湧き出る泉の辺で、久しぶりにゆっくりと過ごせる夜。
一口食べるごとに、飲むごとに、言葉を交わすごとに、張り詰めていた心も身体も緩やかに解けていくのを感じる。
アリサ「やっと落ち着いたわね…」
ギルモン[腹一杯食ったから、眠くなってきたぞお…]
呑気な台詞、そんなことを言えるのも、生きているからだ。
今の自分達ならそれがどんなに素晴らしいことかわかる。
他愛ない雑談の輪の少し外側、跳ねた飛沫がかかるほど水に近い岸辺で、アリシアはひたすらデジタマを撫で続けていた。
それを見たフェイトがアリシアの元に行く。
アリシア「何?」
フェイト「ん…頑張ってるねアリシア」
アリシア「うん、早く孵って大きくなるといいなって…」
フェイト「大丈夫、きっとすぐだよ。アリシアがこんなに会いたがってるんだから。プロットモンだってきっと同じ気持ちだよ」
アリシアの隣に座りながら言う。
アリシア「うん!!」
チビモン[きっとすぐに戻ってきてくれるよ…アリシアが望むならね]
アリシア「…そうだねっ」
アリシアはデジタマを優しく抱き締めた。
大輔「さて、飯も食ったしこれからのこと決めよう」
大輔が立ち上がる。
英気を養ったその瞳は、迷いなく勇ましい。
アリサ「ゲンナイさんは、サーバ大陸に来いって言ってたわよね…」
隣に座っているアリサが、大輔を見上げる。
すずかがゲンナイから送られてきた地図データを開いて皆に見せた。
すずか「この地図が正しいなら、ここからかなり離れてるはずだよ」
見ればファイル島であろう小さな島は、大陸から離れに離れており、とても1日2日では辿り着けそうにない。
アリシア「私、プールでもまともに泳げないんだよお…?」
情けない声を出すアリシアだが、よしんば遠泳の世界チャンピオンでもこの距離を泳いでいくなんて確実に無理だろう。
確実に沈んで深海魚とご挨拶する羽目になり、魚の餌となるだろう。
賢「行くにしても、デジタマが孵ってからにしないか?」
はやて「何でや賢兄?」
賢「生まれてすぐ戦いなんて酷じゃないか」
ルカ「…でも急がないといけないんでしょ?」
ルカが疑問を口にする。
すずか「そうだけど…」
フェイト「もう少し待とうよ」
アリシアを気遣って、出発を遅らせようと考える子供達。
しかしアリシアは首を振る。
アリシア「私達のことなら大丈夫だよ。」
大輔「いいのか?少しくらいなら…」
アリシア「ありがとうお兄ちゃん。でもいいの、ここにいたらプロットモンに怒られちゃうもん」
大輔「分かった…皆、行こうぜ。サーバ大陸へ!!」
全員【おお!!!!】
呼応する全員の掛け声が、空気を爽やかに震わせた。
そして大輔以外の全員が寝静まった時、再び大輔の前に投影機が出現。
ゲンナイが現れた。
大輔「何の用だ?」
ゲンナイ『いや、少し気になることがあってな…お主のブイモンのことじゃが…まだ通常の進化を果たしてはおらんのじゃろう?』
大輔「………」
痛いところを突かれた大輔は仏頂面になる。
ゲンナイ『お主のブイモンはチビモン達のように古代種の因子を持った現代種ではなく、既に滅んだはずの純粋の古代種のようじゃな』
大輔「古代種?」
ゲンナイ『まだデジタルワールドにデジタマへの転生の概念が存在しなかった時代から存在したデジモンじゃ…彼らは潜在能力は現代種を大きく上回るが、オーバーライトによる消耗が激しく、寿命が現代種と比べて短く、成熟期への進化はともかく完全体への進化は困難を極める。故に純粋古代種の完全体、究極体は伝説とまで言われておるのじゃよ』
大輔「ブイモンがその純粋の古代種なのか?」
ゲンナイ『そうじゃ、本来ならお主のブイモンは成熟期への進化を遂げていてもおかしくないレベルに達しておる。しかし、純粋古代種に通常進化はかなりハードルが高いようじゃな。複数のデジメンタルと紋章の力、そして強力なエネルギー体の力による肉体の強化、そして新たな力の解放…デジメンタルのエネルギーを限界を超えて出力する能力に、限界突破…“オーバードライブ”と名付けた。これでようやく条件が整い始めてきたようじゃ』
大輔「じゃあ、後は今までのようにきっかけか?」
ゲンナイ『そうじゃな、どのようなきっかけで進化するかは分からんがの。後、成熟期への進化はともかく、完全体への進化はブイモンの場合、困難じゃ。何らかの方法を考えておいた方がよいぞ』
大輔「…分かった。」
映像が消えると、大輔は眠そうに欠伸をすると寝床に戻る。
後書き
ブイモンにはある程度負担が少ない方法で完全体、究極体になってもらいます。
ブイモン→エクスブイモン(現代種)→パイルドラモン(擬似ジョグレス超進化)→マグナモン(奇跡のデジメンタルをパイルドラモンに使用)
エクスブイモン、パイルドラモンは基本地上戦しか出来ない主戦力アーマー体のフレイドラモン、ライドラモン、ゴールドブイドラモンの代わりの戦力。
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