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僕の周りには変わり種が多い

作者:黒昼白夜
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九校戦編
  第16話 モノリス・コード

初めてでたモノリス・コードには勝ったが、次の対戦が試合終了から30分後だ。ステージが発表されないまま、『小通連』の簡単な調整を達也がおこなったあと、軽くサイオンを流して、思い通りに動くかの確認動作を、一高の天幕の控室でおこなっていた。

そこでは、シスコン兄とブラコン妹が独特のコミュニケーションを図っているのは、いつものことと無視していたが、幹比古はなれていないせいか、落ち着かなさそうにしている。

この控室に入ってきたのは、七草生徒会長と中条先輩。入ってきたとたんにカチンと固まっているが、あの兄妹の様子を見たら普通の反応かもしれない、と考えた。交渉ごとは、達也に任せて聞いているばかりだが、次のステージが「市街地ステージ」だと聞いた時には驚いた。昨日の今日で行う場所か? とも思ったが、決まったことは仕方がない。

そのまま準備をして、控え室からでようとすると、中条先輩が達也にたいして『小通連』のことを室内で振り回すのには適さないのでは? と『小通連』本来の使い方について質問してきた。達也が市原先輩の分析であることを示唆して、中条先輩が顔を赤くしているからあっているのだろう。

「それじゃあ、ご希望通りに『小通連』本来の使い方をお披露目しますか」

「ああ、やってくれ」

円明流合気術は剣などの武器も使うから、こういうのも慣れている。本式の剣道や、剣術と、少々異なるのはご愛嬌だろう。



市街地ステージのモノリスの前で、スタートをしてから森林ステージと同じように、サイオンを感知させないエリア魔法、実際には古式魔法の結界を張った。この中では魔法は実際発動するが、サイオンから数cmの範囲でしかサイオン光が届かないため、監視カメラや他人にはサイオン光が検知されないってことで、古式魔法の隠密性を保つ方法の1つの中を切り出したものだ。

だからといって、完全に現代魔法になっているわけでなくて、修行しないと使えないのと、欠点があるから起動式が表にでてもさして問題はない。そして、その欠点を二高はさっそくついてきた。

「探知された」

通信機へ一方的に話して、この魔法の欠点である、魔法式のサイオン光が観えないというのを、逆に利用して、探査魔法をかけてサイオン光が見えないところをさぐっていたのだろう。

それで、土精を集めて、ビルの構造を随時把握できるようにしておく。相手の居場所なら、プシオンでわかるが、どこで大穴があいたりするか、僕にはわからないから、土精に聞くためだ。それに相手までの最短ルートなども聞ける。

達也には、相手のいた場所を、プシオンで3人が離れようとしたタイミングから、教えてあるからそっちの方向へビルの屋上を、魔法を使わずに飛び移るという芸当をおこなっているので、多少時間がかかるのは承知で、幹比古は相手モノリスがある位置と思われる方向とは斜め後方で、身の安全をたもっていてもらうのが達也の作戦だ。

さーてと、相手が侵入してきたのは1階か。問題は2人ということだが、相手が向かっている場所への最短ルートを土精に聞いて、その通りに動いて4階から2階まで降りていくと、相手は慎重にきているようで、1人が階段をようやくのぼりはじめたところだ。

ここで2階の階段から陰になるところで待つが、相手は4階へまっすぐのぼるか、それとも2階を探すのか。このサイオン光遮断エリア魔法は、起点をモノリスより6mばかりずらしているので、2階から、真下だと思われる付近で、モノリスを開く専用魔法を使用しても、届かないようになっているのと、結界魔法をはっているので、2重の安全装置になっている。さて相手は、どちらを選ぶかと思ったら、いったん2階を探るようだ。

1人がこちらに向かってきて、もう一人は階段を上り終わったところに控えているので、気を『小通連』の先端に集めて、30cmほど浮かばせた。土精がいるので、サイオンも今回は遮断してくれるから、相手に気づかれない。そのまま、こちらをのぞこうとしている気配に向かって、つっこみ、手を薙ぎ払ってから、胴体への逆けさというのが普通だろうが、ここは水平切り。この胴体への水平切りに裏気当をのように気も注ぎこんだ。

1人を倒して、残りの相手が、僕に移動魔法をかけてこようとしたので、縮地の2連で、壁の影に隠れる。縮地と名はついているが、片足の気を足元にためて、一機に水平方向へ移動する大陸系の技法だ。忍術にも似た技法はあるらしいが、どちらにしろ熟練者は80mぐらい飛べるが、問題は1直線というところだ。必要なのは、細かく曲がることなので、飛ぶ時の速さだけを利用して、細かく飛んで相手が予測する反応速度を上回るのが目的だったが、うまくいったようだ。

残った1人が上へ向かっていったので、まず、倒した1人の頭のヘルメットを脱がせて、この相手は競技行動が禁止させる。なので、モノリスのところにもどろうとしたところで、達也と幹比古の間で、「モノリスの位置を探ってくれ」とのやりとりが聞こえた。達也も相手のビルに到着したのだろう。

こちらは、自己加速術式を使って、4階までかけ上がる。今度は相手が待っているのがわかっているので、どの手で行こうかと考えて、相手の錯覚を利用することにした。ひっかかるにしろ、ひっかからないにしろ、損はしないだろう。

縮地の要領で飛び出して、壁を足場に再度縮地で、天井だが、そこにあるのは、何枚かある薄い天井板そこを踏み抜いた「パリン」という音が発生はしたが、その音が僕の耳に聞こえる前に、土精が土ぼこりなどで作った足場をもとに最初の壁とは反対の壁へと、今度は普通に飛んでそこで再度縮地による相手への後方からの接近。後ろからヘルメットに『小通連』を50cm浮かばせた状態でたたきつけた。とりあえず相手が倒れたのはいいが、生体波動を観測してみて、脳内出血などは発生していない。単なる気絶だろう。相手のヘルメットを脱がせて、あとは達也と幹比古の連携を待つばかりと、モノリスのある場所で待っていたら、試合終了のサイレンが聞こえてきた。



この試合を見ていた三高の2人は

「どうだ? ジョージ」

「二高が相手でも、結局は収穫は1つだけ」

「ほー、何かわかったのか?」

「ああ。あの陸名翔だけど、通常の剣術とは違う技を使っている、ということだけはわかったよ」

「どこでかな?」

「二高のオフェンスにたいして、胴体へ水平に振ったことを覚えているかい?」

「ああ、あそこは、逆けさが普通だと、確かに思ったが」

「そこに、ヒントがあると思うんだけど、こうやって対戦相手を悩ませるのが、彼らの基本戦略じゃないのかと思う」

「こちらとしては、どうするつもりなんだ?」

「何も。いつも通りに行うのが、一番だと思う」

「なるほどね」

こうして、三高は普段の戦術で行くと決めた。



昼食は少し早めの時間だが、ホテルで泊まっている部屋でとることにした。学校で習う形式とは違う魔法や、部活でみる体術などとも違うので、一高の天幕の中では、食べずらい雰囲気だったからだ。

次の決勝トーナメントは、九高とだが、その前に正午からの三高と八高の競技を見逃すわけにはない。一般席で達也や幹比古だけではなく、レオ、エリカ、美月に深雪が一緒にいる、そこでは、達也は疲れているように見え、美月はどこかの不審人物を思わせるような動きをしていた。美月はさておいて、オフェンスである達也の調子は、モノリス・コードのかなめだ。

「達也、調子はどうだ?」

「なんだかずいぶん疲れているようだけど……」

「少し、気疲れすることがあってな。なに、精神的な疲労というより情緒的な疲労だから、試合で気合が入れば大丈夫だ」

「達也がそういうなら大丈夫なんだろうけど、1科生みたいに気合の空回りだけは気をつけろよ」

「もちろんだ」

三高と八高の試合の方は、プリンスが身の周りを魔法で守りながら、相手モノリスまで500mとなったところで、砲撃魔法を本格的に行うというものだった。昨日と同じで、ある意味参考にはならないが

「達也、昨日の戦い方と同じだよ」

「そうか。あとひとふんばりだ」

「ああ」

達也の中で、勝つための方程式は、できあがっているはずだ。あとはそれを実践できるかどうかだが、まずは、次の九高との試合だ。



九高との試合は、僕にとっては暇な時間になった。最初に、サイオンを感知させない古式魔法の結界を張ったあとは、すべて、達也と幹比古が組んでおこなって、一般的にいう魔法はまるで発生しなかった。これも水が多くてとどまりやすい渓谷ステージだから、幹比古にとって行ないやすい『霧の結界』ができたからなんだが。



そして決勝戦を迎えて、部屋で一休みしたあとに、一高の天幕の控室にいくと、一足早くついていた達也からフード付きのロープを渡された。使い方の説明は聞いたが、この服装のセンスをなんとかしてほしかった。しかし、変に切り刻むわけにもいかないし、着込む覚悟を決めていると、幹比古も来てフード付きロープの説明を聞かされていた。

達也はモニターを見ていると言っていたが、3位決定戦後の決勝戦の使用ステージが「草原ステージ」だと、僕と幹比古は、控え室で知らされた。昨晩の想定通りだ。たぶん、何らかの方法で、ステージ決定システムが操られている。想定外だったのは、市街地ステージの代わりに岩場ステージが選ばれると想定していたところが、違っていたところだ。こちらの予測では、砲撃魔法のスタイルをとっている三高に市街地ステージが1度もあたっていないことと、一高の対戦相手に有利な場所を提供するのと、一高の戦力を分析してくるだろうというところを達也が話して、それを逆手にとって、三高との対戦まで手の内を明かさないで戦っていく。これが基本方針で決勝までおこなってきた。

予測と違ったのは、一高の僕らに砲撃魔法に相当する魔法に慣れさせないということを、この順番をえらんだのだろう。そう3人で結論にいたった。

それにしても、若干賭けの要素……『小通連』で使う硬化魔法は、それほど得意でない魔法なので、単純なのに起動式から魔法式の発動まで、使えるという目安である0.5秒とはならずに、約0.6秒。だから、それをまわりにわからせないようにサイオンを感知させない古式魔法の結界を使用した。

市街地フィールドで、幹比古の攻撃魔法や、僕の魔法はサイオンを感知させない古式魔法の結界と、『小通連』を使用するだけ。あとは直接的に相手のところにいけるのも、探知魔法を行っているのだろうと錯覚させて、三高の方法を変更させないことが目的だった。

そして決勝戦では、こちらのスタイルを変更して、相手のスキをつく。どのようにしてかは、実際にできるかだ。

そして、決勝フィールドに出ていった僕たちには、何ともいえない微妙な視線が漂ってきて、雰囲気もやはり微妙だ。幹比古は目深にフードをかぶっているが、僕は『小通連』を持っていた時になれていた。しかし、今度は「なぜ『小通連』を持っていないんだ?」というような視線が多くあるのではないかと思われる。

それはこれからの競技相手である、三高もそう思っていた。
 
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