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戦国異伝

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第百九十一話 水攻めその十二

「それがしで」
「御主達は毛利の両翼となれ」
 元春、隆景にも言う元就だった。
「よいな」
「はい、我等両川はです」
「毛利本家の為にです」
「身も心も砕きます」
「そうしていきます」
「頼むぞ、ではな」
 それではと話してだ、そうしてだった。
 元就はその林兄弟を本陣に迎え入れた、そうしてそこでだった。
 彼等の話を聞いた、その話を聞いて。
 元就も毛利の主な家臣達も驚きだ、林兄弟に思わず問い返した。
「何と、それはまことか」
「はい、左様です」
 その通りだとだ、林通勝は元就に答えた。
「我等としてその条件で、です」
「我等を織田家の中に入れてか」
「その中で働いて欲しいのです」
「和睦のうえでか」
「はい、織田家にお入りください」
「そして石高はか」
「百二十万石とさせて頂きます」
 それが毛利家の石高だというのだ。
「毛利本家は四十万石で」
「そして後の八十万石はか」
「はい、毛利の家臣の方々でそれぞれです」
 石高を定めたうえで、というのだ。
「分けてもらいます」
「では実質毛利は四十万石でか」
「安芸の国において」
 まさにその国で、というのだ。毛利の本拠である。
「織田家の家臣として天下の為に働いて欲しいのです」
「そしてわしもか」
「はい、このままです」
「織田家の家臣としてか」
「毛利家の主としてです」
 織田家の臣下である毛利家の棟梁として、というのだ。
「お仕えして頂きたいのです」
「毛利家は誰も腹を切る必要はないか」
「はい」
 まさにその通りだというのだ。
「元就公も、そしてです」
「高松城もか」
「若し和睦し織田家に入って頂けるのなら」
 その時はというと。
「すぐに高松城の堤を開けます」
「そして城の兵を助けてくれるか」
「無論清水宗春殿も」
 その彼もというのだ。
「これからは天下の為に働いてもらいたいというのが」
「織田殿のお考えか」
「左様です」
 こう元就に話す林だった。 
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