雲は遠くて
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66章 信也と竜太郎と美結と裕子の4人で食事
66章 信也と竜太郎と美結と裕子の4人で食事
1月17日の土曜日。曇り空の、午後の5時過ぎ。
川口信也と新井竜太郎と、信也の妹の美結、落合裕子の4人は、
JR渋谷駅、ハチ公口からスクランブル交差点を渡ってすぐの、
レストラン・デリシャスのテーブルで、くつろいでいる。
デリシャスは、竜太郎の会社、エターナルが全国に展開している、
世界各国の美味しい料理やドリンクを提供する多国籍料理のレストランであった。
「じゃあ、乾杯しましょう」
竜太郎は、淡いピンク色のワインカクテルのグラスを手に持って、笑顔でそういった。
「美結ちゃんと裕子ちゃんも、この頃、本当に、女性らしい美しさで輝いているよね!」
竜太郎は、テーブルの向かいの美結と裕子を見て、満足そうに微笑む。
「あら、竜さんったら、お上手なんですから。わたしなんか、まだまだ新人のモデルと女優で、
未熟なことばかりで、得意なことは料理くらいのことで、美しさとか、優雅さとは、かけ離れていますから」
「そんなことないわよ。料理上手ってすばらしいことよ。わたしにはできないもの。
それに、美結ちゃんには、持って生まれた天性の美貌があると思うわ。
だから、美結ちゃんはもっと自信を持っていいのよ。天性のアーティストなんですからね。
お兄さまのしんちゃんと同じような、天才的な才能を感じているわ、美結ちゃんには!」
「まあ、ありがとうございます!裕子ちゃん。あなたこそ、その若さで、
ピアノとキーボードの女神といわれているんですから、わたし、尊敬してしまうわ!」
「ありがとう。美結ちゃん」と、裕子はやさしい眼差しで、隣の席の美結にいう。
川口美結は、2014年の5月に、エタナール傘下の芸能事務所のクリエーションで、
アーティスト活動を始めている。
落合裕子は、クリエーションの新人オーディションに、最高得点で合格した才女である。
美結と裕子は、1993年生まれの21歳で、同世代ということもあるせいか、
いまでは、おたがいに、無二の親友となっている。
「裕子さん、先日の『 FOR SONG 』のレコーディングでは、ありがとうございました。
おかげさまで、クラッシュ・ビートの中でも、ベストな名曲が誕生したと思ってます」
信也がテーブルの向かいの裕子にそういった。
「あら、よかったわ。わたしなんかでよかったら、いつでも、また、参加させてください!
わたし、信也さんの作る音楽って、ロックって、大好きなんですよ。
そうそう、わたし、竜さんと信也さんが、ユニオン・ロックという若い人向け慈善事業をしていることにも、
とても、感動しているんです。竜さん、しんさん、おふたりを、尊敬してしまいます!」
ピンク色のワインカクテルに酔いながら、魅力的な笑みで、落合裕子がそういう。
「ありがとう、裕子ちゃん、こちらこそ、また、よろしくお願いします!」
ほろ酔いの信也は、照れながらそういった。
信也は、裕子の色っぽい笑みと、大きな胸のふくらみを見ながら、
・・・ひょっとしたら、うまい酒飲んで、美女を前にして、これ以上の男の幸せはないのかも?・・・
などと、ぼんやりと思う。
「いやいや、おれたちのやっていることは、すべてビジネスにつなげているわけで、そんなに、
偉いわけじゃないんですよ。ただ、おれは、お金持ちがするような、道楽ごとが嫌いなだけです。
絵画の収集をするとか、何か高いものを買っては、パティーを開催して、それを自慢したりする、
そんな見栄や権威を振りかざすことが、好きじゃないと言いますか、バカバカしだけなんですよ。
あっはっは」
竜太郎は、そういって、わらった。
「そんな竜さんだから、おれなんかと、仲よくしてくれるってわけですね。あっはっは」
信也はそういって、わらうと、竜太郎も大笑いをして、美結も裕子も、声を出してわらった。
「竜さん、しん(信)ちゃん、それでも、若い人を援助してあげる、
ユニオン・ロックは、素晴らしいことだと思うわ。ギターとかピアノとかドラムとか、
好きだけど、お金がなくてできない若い人を応援してあげるんですもの!感動的な事業ですわ!」
「ありがとう、若い人には夢を持ってもらいたい気持ちもあるけど、
そんな若い人たちの才能を開花させて、それをビジネスにつなげて、お金を稼ごういうわけだから、
決して、偉いことしているわけじゃないんだよね。あっははは」
「でも、竜さん、お金なしじゃ、今の世の中、何もできないんだから、お金儲けを考えるのは、
正解だよ。お金がなければ、正義も貫けないよね。それにしても、竜さん、
ここのお店の料理おいしいですよね。今度から、ここで飲みましょう、竜さん、あっはは」
「ほんと、竜さん、ここの、お料理、おいしいわ!ね、裕子さん」
「うん、ホント、おいしいわ!ワインもおいしいし。また、連れてきてください!竜さん、しんちゃん!」
そういって、信也は、きれいな心が、素直にあらわれている、裕子の美しい笑顔を見ながら、
・・・裕子ちゃんに、恋するようなことになれば、ヤバいよな、それだけは・・・とか思うのだった。
≪つづく≫ --- 66章 おわり ---
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