最強イタリア軍
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第一章
第一章
最強イタリア軍
「閣下、大変です!」
「どうした」
アドルフ=ヒトラーは総統官邸の執務室において部下の報告を受けていた。丁度フランスとの戦いの行く末が決定的になった時だ。
勝利のせいで彼は機嫌がよかった。その彼への報告であった。その報告はというと。
「イタリア軍がフランスに宣戦布告しました」
「そうか。ではフランス南部のフランス軍は壊滅だな」
ヒトラーは確かな笑みを浮かべて述べた。
「我々に敗れた彼等には余力はない。それではな」
「いえ、それが」
ところがだった。部下の顔がここで曇るのだった。
「あの、宜しいでしょうか」
そしてだ。ヒトラーに対して怪訝な顔で言ってきたのである。
「確かにフランス軍は最早死んだも同然ですが」
「何かあるのかね?それでも」
「ですがイタリア軍はです」
「まさかと思うが足踏みしているのではないだろうな」
ヒトラーにしては珍しくその言葉に冗談を入れた。今のフランス軍に負ける筈がない、彼は実に気楽に考えて冗談を入れたのである。
「それとも何かね。イタリア軍はニースに入ってバカンスを楽しんでいるのかね?」
「いえ、ニースどころかです」
ところがだというのであった。
「その。フランス軍にです」
「彼等に?」
「負けています」
こう言うのであった。
「それもかなり。国境にまで追いやられようとしています」
「馬鹿な、そんな筈がない」
ヒトラーは驚いた顔になってだ。その報告を否定しようとする。
「今のフランス軍にだ。負ける要素があるのか」
「しかしです。実際にイタリア軍はです」
「負けているのか」
「その通りです」
部下もだ。驚きを隠せない顔だ。信じられないというのだ。
「今のフランス軍にです」
「馬鹿な、有り得ない」
流石のヒトラーもだ。唖然となっている。
「あの瀕死のフランス軍にか」
「どうされますか、それで」
部下は真剣な顔でヒトラーに尋ねた。
「ここは」
「もうすぐ戦争も終わりだ」
だが、だった。ヒトラーの言葉じゃ冷静だった。
落ち着いた声でだ。こうその部下に告げた。
「ここはイタリア軍に援軍を出すよりもだ」
「戦争を終わらせることですね」
「そうだ。戦争を終わらせる」
また言う彼だった。
「フランスを降伏させよう」
「わかりました。それでは」
こうしてドイツはフランス自体を降伏させ戦争を終わらせた。かくしてイタリア軍は窮地を救われた。あと少しでイタリアにまで攻め込まれるところであった。
しかもだ。それで終わりではなかった。何とだ。
いきなり何を思ったのかユーゴスラビアやギリシアに攻め込みだ。負けた。
あまりにも酷く負けてだ。ドイツ軍は止むを得なく援軍を出した。見ればイタリア軍は捕虜を異様に出していた。
これにはユーゴで彼等と戦っていたチトー率いるパルチザン達も呆れた。しかもだった。
彼等はだ。呆れながらこう話をするのだった。
まずはだ。ドイツ軍の捕虜達を見てだった。彼等は縛られていても反抗的な態度である。負けてはいないといった顔でだ。そこにいた。
「頭にくるな」
「ああ、あそこまで反抗的だとな」
「拷問しても絶対に何も喋らないな」
「糞っ、こうなったら」
「こっちも容赦しないでおこうな」
「ああ、ソーセージ野郎共が」
彼等はドイツ軍の捕虜達を憎しみの目で見ていた。そのうえで言うのであった。
「戦っても強いしな」
「捕虜になったらなったでこんなのだしな」
「この連中だけは許すか」
「何があってもな」
彼等に対してはこうであった。そのうえでだ。
ドイツ軍の捕虜達よりも遥かに多い、何倍もいるイタリア軍の捕虜達は固まってがたがた震えている。パルチザン達が少し目を向けるとだ。
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