ソードアート・オンライン~狩人と黒の剣士~
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ディバイティング:空白
ユイリSaid
「……ん」
私は目をゆっくりと開けた。
辺りは埃が舞い、隣には何故かユリアが居て、私の上にライトが覆い被さっていた。……え?
「ライ……ト……?」
私はゆっくりとライトの身体を押して起こすと、血が大量に出ていた。
「ライト!!」
私はドライバーを使って治療しようと思ったが、出来ない事に気付く。
ドライバーはあくまで変身の物。治療目的では不可能。それならば。
「ユリア、起きて!!ユリア!!」
治療系統の神聖術を扱えるのはこの場ではユリアのみ。私はユリアを揺すって起こす。
「……ん。あ、お姉様……良かった、元に、戻ったんだ……」
「その話は後よ!ユリア、ライトが!!」
「え……?」
ユリアは少し惚けていたが、ライトを見た瞬間、蒼白な顔をした。
「ライトさん!!」
ユリアはすぐにライトの方に行くと、印を切ってステイシアの窓を開けて、ライトの生命力を確認した。
「……6764の内、127。二秒毎に一のペースで、減ってる……このままじゃ、ライトさんが……」
「それが解ってるから起こしたのよ!!ユリア、お願い。貴女の神聖術でライトを!!」
所が、ユリアは頭を横に振った。
「……無理だよ。ここまで来てたら」
ユリアがライトの顔に指先を当てた。
「ライトさん……何で……何で私達の盾に……」
泣きそうになっているユリアに、私は言う。
「そんなの決まってる。ライトは……一度救うって決めた人は絶対に守る。そんなやつだって事は付き合い長いから解るでしょう!?」
私はユリアに叫ぶ。
学院でもそう、このセントラル・カセドラルでも、私を救ってくれた。
借りがあっても、返せなきゃ意味がない!!
「ユリア……今度はライトを私達が救う番よ。……借りを作っても返しきれない恩を、私達は受けてる。その恩人を殺す気なの!?」
私はユリアに叱責する。
すると、ユリアが顔を上げた。もう、迷いの顔ではない。
「ーーー普通のじゃもう間に合わない。危険だけど、高位の神聖術を試すしかない。お姉様、手伝って」
「ええ」
「左手を貸して」
すぐに差し出し、右手で掴み、ユリアはライトの右手を掴んだ。
「この術が失敗したら、二人とも命を落とすかも知れない。覚悟は良いよね、お姉様?」
「ええ。元よりライトに救ってくれた命。……だけど、その時は私の命だけで済ましてよね。ーーーー信頼してるわよ?」
ユリアは頷き、息を吸い込む。
「システムコール、トランスファー・ヒューマンユニット・デュラビティ、ライト・トゥ・レフト!!」
途端、ユリアを中心として、青い光の柱が屹立した。
(ライト、貴方は絶対に死なせはしない。返しきれない恩を返してない。返すまで……絶対に死なせはしない!)
ユリアの手をギュッと握って心の中で言う。
天命の減少に伴い、全身を強烈な寒気が包み始める。徐々に暗くなる視界の中でライトの様子を確かめる。
傷はある程度治っては来ているものの、それは完全とは言いがたい。
「お姉様、まだ行けますか!?」
ユリアが言う。
「……私を、誰だと?これくらいで根をあげないわよ?」
そうは言うものの、段々と身体の感覚が消失し、すでにユリアに握られている手しか感覚が感じない。
「ユリア、ギリギリまで使って……!」
「お姉様、それは危険よ!そうしたらお姉様の天命が……!」
「構わない!!」
私は叫ぶ。命懸けで救ってくれたライトに、命懸けで救わなければ意味がない。
「ユリア、やりなさい!!」
「……っ!解った!!」
ユリアは更に手を握り、とうとう感覚すらも消えて、暗闇に放り込まれた。
ライトSaid
『……っ。ここ、は』
俺は起き上がって言う。
辺りは暗く、そして何も見えない。
『……ここは精神世界。何回も来ただろ?』
俺の目の前にロードが現れた。
『ロード……』
『全く……死ぬ気かい、ライト。今、死の淵に足を踏み入れてる様な状態だよ現実の君』
ロードは呆れて言う。
『……仕方ねぇだろ。ユリアを救うのに必死だったんだから』
『無茶無謀。今の君にお似合いの言葉だね』
『んだ……』
殴り掛かろうとすると、ロードが銃剣を此方に向けた。
『……どういうつもりだ』
『見た通りだよ。……ライト、もう良いだろ。一つに為ろう?』
ロードが俺に言う。
『ゲン、僕は君の性格から生まれた人格だ。君の素体じゃ、もうこの先は不可能だよ』
『……っ!そんなの……』
『やってみなくちゃ解らない、かい?残念だけど目に見えてるね。君が殺られ、ユイリとユリアまで殺される』
『……』
俺は黙りこくった。
『……確かに君は強いよ。素体のままで、性格の融合などもし続けてきた。けど、もう良いだろ。元に戻ろう?』
『……そうだな』
俺は言う。
『……君の決断に感謝するよ。ライト』
俺の目の前に立ち、手を俺にかざす。
『お別れだ。最後に一つ、言っておくよ』
ロードが笑いながら言う。
『案外、悪くない生活だったよ。君があの世界で僕を作っていなければ、出来ない体験だったよ。ま、デストの件はさておいても、ね?』
『……俺も、お前と言う性格は嫌いでは無かったよ、ロード』
そして、ロードの身体が淡く光り始める。
『『お別れだ。最後に、ありがとう。最後まで付き合ってくれて』』
そして、ロードが俺の中に消えた瞬間、俺の目はロードの髪の色と同じ、赤になった。
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