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リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~

作者:setuna
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第三十八話 烈火の超闘士

 
前書き
フレイモン進化の話。
ガブモンX[リリカルアドベンチャー、始まるよ]
 

 
グリズモンと別れてしばらく森の中を歩いていると、雲行きが怪しくなり先程までの晴天が嘘だったかのように空が雲に覆われ、寒気が子供達を襲った。
時折吹く冷たい風になのはとアリシアが揃って身を縮める。
アリシア「寒い…」
なのは「大丈夫?ガブモン?プロットモン?」
ガブモンX[僕は平気。というか僕は本来寒冷地のデジモンだからね]
プロットモン[わ、私も…だ、だだ大丈、夫よ…]
ガブモンXは元々寒冷地のデジモンだからか平気そうだがプロットモンは身体をプルプルと震わせ、ガチガチと歯の根が合っていない為、説得力皆無である。
なのは「全然大丈夫そうに見えないよ…」
なのはが苦笑しながら呟いた。
ユーノ「流石に…半袖は寒いなあ…」
大輔「まあ、たまには寒いのも悪くないよな」
全員【ええーー!!?】
両腕を摩りながら子供達が口々に寒さを訴える中、元気そうに大輔がそう言い放つ。
すると一斉にブーイングが響いた。
はやて「大輔さん、勘弁してえな」
寒いのが嫌いなはやてが嘆いた。
大輔「雪が積もれば雪合戦が出来るぜ?」
なのは「雪合戦かあ…。」
フェイト、ルカ「「雪合戦って何…?」」
賢「雪合戦というのは雪玉をぶつけ合う遊びさ」
フェイトとルカの疑問に賢が答える。
大輔「とにかく、電車で見つけた毛布をマント代わりにして進もうぜ」






























ルナモン[ギルモン勝負!!えい!!]
ルナモンも雪玉を作ってギルモンに投げるが、ギルモンは軽くかわした。
チビモン[ルナモン、援護するよ!!]
コロナモン[俺も!!]
フレイモン[俺もルナモンに加勢するぜ!!]
チビモンとコロナモン、フレイモンがルナモンに加勢する。
ギルモン[おめえ達もか…よし、そろそろお互い本気出して…決戦も決戦。超最終決戦と行こうじゃねえか!!]
はやて「ギルモン、それ人様の台詞やで…?」
ツカイモン[それにしてもいくらギルモンとは言え流石に多勢に無勢…私達も…]
プロットモン[ええ…ギルモンを援護するわよ!!]
ガブモンX[お仕置きタイム!!]
ツカイモン達がギルモンに加勢する。
戦いは一方的だった。
プロットモンのパピーハウリングでルナモン達は動きを止められ、的になったルナモン達は雪玉の弾幕をその身で受けた。






























数十分後、雪玉の弾幕を受けたルナモン達が雪に沈んでいるのを大輔達が救出するのだった。
大輔「お前ら…俺達より楽しんでどうすんだよ」
ブイモン[アハハ、ごめんごめん………?]
頭を掻きながら謝るブイモンだが、突如、腐った卵のような臭いが鼻腔を擽った。
ブイモンはこの臭いを嗅いだことがある。
すずか「ブイモン?」
アリサ「どうしたのよ?」
鼻をひくつかせているブイモンにアリサとすずかは不思議そうな顔をする。
ブイモン[温泉だ…]
全員【え?】
ブイモン[温泉の臭いだ!!]
はやて「何やて!?」
“温泉”という単語にはやてだけではなく女子陣全員が反応した。
アリシア「お風呂入りた~い!!」
大輔「よし、行ってみるか!!」
大輔を先頭に子供達は温泉がある場所へと向かった。






























温泉は、あった。
確かに煙の下には温泉が存在していた。
しかし…。
すずか「……うわあ」
ユーノ「…沸騰してるんだけど…」
目の前の光景に思わずユーノは小さく頬を引き攣らせた。
湯気が立ち上る穴の中。
白く濁ったお湯はボコボコと泡を吹き上げて沸騰していたのだ。
いくら寒かろうがこれに入るわけにはいかない。
入ったら火傷ではすまないだろう。
はやて「これに浸かるんかいな……?」
アリサ「……そんな訳無いでしょ」
フェイト「大輔…お湯って何度で沸騰するんだっけ……」
大輔「たしか、100℃ぐらいだったと思うな…」
賢「これは入れないな…」
眉間に皴を寄せて賢が小さく呟く。
そしてアリシアがかつてないくらいがっくりと肩を落とし膝をついて落ち込んでいる。
ギルモン[でも暖けえぞ]
ツカイモン[これで寒さは凌げるな]
隣ではギルモンとツカイモンは湯気に手をかざし冷えきった身体を暖めていた。
大輔「…確かに。後は食い物があればいいんだけどな」
アリシア[あるよ、お兄ちゃん。]
復活したアリシアが大輔の服を引っ張りながら言う。
大輔「え?何処だ?」
アリシア[あそこ!!]
アリシアが指差した先には何故か1台の冷蔵庫が居座っていた。
ゴツゴツとした岩場に冷蔵庫は何ともミスマッチだ。
大輔「どれどれ?」
大輔が冷蔵庫に近づいて開けると、中には生卵がぎっしりと並べられている。
ブイモン[卵だ!!]
ユーノ「今日の夕食は、これで決まりだね」
すずか「でもこの卵、食べられるのかなあ…?」
すずかが不安そうに卵を見つめる。
はやて「私に見せてみい?」
はやては冷蔵庫から卵を1つ取り出すと、それを割った。
はやて「…うん、新鮮な卵やから大丈夫や」
このメンバーで最も料理が上手いはやての保障を貰った子供達は、目を輝かせた。
賢「なら…」
はやて「うん。夕食はこれで決まりや!!」






























数十分後、賢が持参した調理道具を使い、目玉焼きに茹で玉子、オムレツ、スクランブルエッグ、卵焼き等と卵料理が急拵えの切り株のテーブルの上に並んだ。
ブイモン[美味い!!大輔、この卵焼き美味しいよ。]
チビモン[美味しい!!]
ブイモンとチビモンが砂糖を大量に入れた激甘卵焼きを嬉々として口に入れた。
大輔「お前達のだけ激甘にしたからな…」
アリサ「それはもう卵焼きじゃなくてお菓子よ…よく胸焼けしないわね」
大輔とアリサが顔を引き攣らせる。
ギルモン[美味えー!!はやて達はこんな美味え物、毎日食ってんのか!!?]
ギルモンがオムレツを頬張りながら言う。
はやて「フッ…これくらいで驚いて貰っちゃあ困るでえ…」
ギルモン[…っ!!?]
これくらい、だと!?
ちょっと待って、それどういう意味?
硬直するギルモン。
はやて「卵料理も他に沢山あるってことや、今は材料が無いから作れへんけど、オムライス、親子丼、カツ丼、茶碗蒸し、カルボナーラ、かに玉…」
ギルモンには、衝撃の事実である。
どれだけバリエーションがあるんだ卵。
人間の料理の種類の豊富さは半端じゃない。
デジタルワールドだってそこまで食を追求している奴は、指折り数えるほどしか無いだろう。
無性にはやての世界が羨ましくなったギルモンである。
全然想像することが出来ないギルモンは、目をぱちくりさせるしかない。
はやての世界に行きたい。
はやてが生まれてきた世界。
ずっと育ってきた世界。
きっとそこはギルモンが知らない物が沢山あるのだろう。
それはギルモンにとって魅力的な物だ。
ギルモン[オラ…はやて達の世界に行きたくなってきちまったあ…]
羨ましそうに子供達を見遣るギルモン。
大輔「まあ、いずれ向こうに戻る日が来るだろうからその時にな」
ギルモン[おう!!]
すずか「そうだ。ねえ、皆は目玉焼きに何かけるの?私はお醤油」
なのは「あ、私もお醤油。」
ユーノ「僕は…ソースかな…」
目玉焼きを一口サイズに切り分け、それに醤油等をかけてみたが、1番口に合ったのはソースだった。
はやて「私も基本的にソースやな…」
アリシア「私はケチャップとソースを混ぜたのが好き!!」
大輔「俺はケチャップだな…」
フェイト「私も大輔と同じ」
大輔は元から目玉焼きにケチャップをかけていたし、フェイトは大輔がかけていたからケチャップをかけて食べていた。
アリサ「私は塩胡椒ね」
賢「僕は塩単品で、ルカは…どれが好き?」
まさか、ルカのオリジナルのクロノの母親、リンディ・ハラオウンのように甘党だったりするのだろうか?
緑茶に砂糖とミルクを入れていたリンディだったら目玉焼きに砂糖か黒蜜をかけるくらいやりそうだ。
想像して実際有り得そうで少し気分が悪くなった賢であった。






























リンディ「ハクション!!」
どっかの次元世界での仕事中、くしゃみをするリンディ。
プレシア「あら?リンディ風邪?」
エイミィ「大丈夫ですか?艦長?」
クロノ「艦長、少し休んだらどうです?」
リンディ「大丈夫よ…。(誰かが噂してるのかしら…?)」
正解。






























ルカ「……」
そしてデジタルワールドではルカは醤油、ソース、ケチャップ、塩胡椒、塩がかけられたそれぞれの目玉焼きを口に運んで咀嚼していた。
なのは「どう…?」
ルカ「僕はこれが好き…」
ルカが指差したのは、醤油がかかっている目玉焼きだった。
賢「醤油か…」
大輔「意外と普通のをチョイスしたな」
フェイト「大輔、これからどうするの?」
大輔「ん?ああ、大分戦力も整ってきたからさ。あのムゲンマウンテンを登ってみようと思ってる。あの山に登れば全体を見渡せるからな」
ユーノ「成る程、確かにあれに登れば、これからの指針になると思います」
大輔「移動に関しては、スティングモン、ファイラモン、ウィザーモンのように飛行可能なメンバーで…一応ブイモンも飛べるしな…」
ルカ「ねえ…」
大輔「ん?何だルカ?」
ルカ「何で今から行かないの?」
ルカが首を傾げながら言う。
フェイト「今は暗いし、皆疲れてるから…今行ったら満足に戦えないの」
ルカ「ふうん…」
ルカが納得したようにムゲンマウンテンを見つめた。
今日はここに一泊することにし、子供達は毛布に包まって眠り始めた。






























全員が寝静まった後、ルカは寝床から抜け出してムゲンマウンテンを見上げた。
フレイモン[ルカ]
ルカ「あ、起こした?」
振り向くとフレイモンが佇んでいた。
フレイモン[ん?いや、寝付けなかったんだ。それより行くのか?]
ルカ「うん。僕は真っ暗でも見えるから」
フレイモン[でもこのまま行けば皆に心配かけるぜ?書き置きくらいしとけよ]
フレイモンがルカに木の棒を手渡す。
ルカは賢達から習った文字を地面に書いた。
“先にムゲンマウンテンに行ってきます。”
ルカ。
そうルカは書き置きを残すとフレイモンを伴って、ムゲンマウンテンへと走って行った。






























ルカ「近くで見ると大きい…」
フレイモン[早く行こうぜ。大輔達が起きちまうぞ]
ルカ「そうだね」
ルカとフレイモンは頂上に向かって歩き出した。
ルカとフレイモンは身軽な動きで山を登っていく。
フレイモンは感心したように言う。
フレイモン[ルカ、結構身軽なんだな]
ルカ「これくらい出来ないと、訓練じゃ生き残れないから」
その言葉にフレイモンはあの施設のことを思い出した。
あの非道な施設で受けた訓練がこんな形で役に立つことになるとは多分、記憶を失う前のルカは思いもしなかったろう。
フレイモン[まあ、辛くなったら俺が手を貸してやるよ]
フレイモンが子供らしい笑顔を浮かべながら言う。
ルカ「ありがとう」
対するルカは笑みを浮かべて礼を言う。
フレイモン[…っ!!]
フレイモンは目を見開いてルカの表情を見つめた。
ルカ「フレイモン?」
フレイモン[あ、何でもない(何だ…笑えるじゃん…)]
今まで殆ど無表情だった為、こういう表情を見れて嬉しい。






























ルカとフレイモンはどんどんムゲンマウンテンの頂上へと近づいていく。
その時であった。
ルカ「!?」
フレイモン[地震か!?]
足を止めて、辺りを見回すルカとフレイモン。
その視線の先で、山がぱっくりと開いてしまった。
しかしそこから出てきたのは熔岩などではなく。
ルカ「あれって…黒い歯車!?」
生まれ落ちた歯車は、八方に飛んで散ってゆく。
ルカ「…様子を見に行こう」
フレイモン[おう]
一際足場の悪いそこへ、2人は向かうことにした。






























一歩一歩、歩く度に、地面が少しずつ崩れる。
そんな脆い土なのに、さっきの割れ目はどこにも見当たらない。
ルカ「もっとよく探してみよう、フレイモン」
フレイモン「…ちょっと待てルカ、何か聞こえる!!」
物陰に隠れて息を殺していると、空からふわりと舞い降りたのは翼のはえた白馬。
ルカ「あれ何…?」
フレイモン[ユニモンだっ!!賢くて大人しいデジモンだよ。もっと近くで見てみようぜ!!]
確かにユニモンは大人しそうで、2人の姿を視認しても暴れる様子もなく水を飲んでいる。
安心しきった2人が、ユニモンに1歩近づいた時。
ルカ「っ…何か……来る!!」
フレイモン[黒い歯車だ!!!]
急降下してくる黒い歯車。
それはよりにもよって目の前の、ユニモンの背中にざっくりと突き刺さった。
悶えるユニモン。
その目にはすでに正気はない。
ルカ「あ…」
フレイモン[目がイッてるぞこいつ…!!]
正気を失ったユニモンがルカとフレイモンに襲い掛かる。
フレイモン[ベビーサラマンダー!!]
拳に纏った炎をユニモンに向かって放つ。
フレイモンの実力は成長期ながら成熟期に迫る程、直撃すればユニモンにダメージを与えられる。
あくまで当たればの話だが。
ユニモンはフレイモンの炎を回避するとフレイモンに突進した。
フレイモン[うわっ!!]
突進を受け、地面に叩きつけられたが、受け身を取り、ダメージを最小限に抑えた。
ルカ「フレイモン!!」
フレイモン[大丈夫だ!!けどこいつ、素早くて狙いが…!!]
ユニモンがルカ目掛けてホーリーショットを放つ。
フレイモン[ベビーサラマンダー!!]
フレイモンは自身の技で、ユニモンの技を相殺する。
フレイモンはユニモンに殴り掛かるが、ユニモンは飛翔して回避する。
フレイモン[くそ!!]
空を飛べないフレイモンと空を飛べるユニモンとではどちらが有利かなど一目瞭然だった。
ユニモンがルカの近くを過ぎった時…。
ルカ「黒い歯車…?」
ユニモンの背には歯車が飛び出している。
ルカ「あれを外せば!!」
ルカは足に力を入れて跳躍し、ユニモンの背中に飛び移った。
フレイモン[ルカ!?何を…]
ルカ「これを、外せば…」
ルカは歯車を引っ張った。
ユニモンは痛みに暴れまわる。
ルカ「うわっ!!」
フレイモン[無茶だ!!止めろ!!]
必死に歯車を抜こうとするルカを、フレイモンは不安げに見ていることしか出来なかった。
もがくユニモン。
ついにルカは手を離してしまった。
フレイモン[ルカーーー!!!!]
落下していくルカ。
あの高さからでは、助からない。
ルカの目の前に岩が迫る。
フレイモン[ルカ!!]
フレイモンがパートナーの名を叫んだ時、進化の光がフレイモンを包み込んだ。
フレイモン[フレイモン進化!アグニモン!!]
フレイモンはインド神話に伝わる火の神である“アグニ”をモデルとし、スピリチュアルファイアーと呼ばれる聖なる炎を自在に操作する能力と東洋武術を用いて戦う魔人型デジモン、アグニモンに進化した。
アグニモンはルカの元まで一瞬で移動して受け止めた。
ルカ[フレイモン…!?]
アグニモン[今はアグニモンだ。ルカ、下がっていろ]
アグニモンは上空のユニモンを見上げると足に力を入れ、一気に跳躍する。
アグニモン[ファイアダーツ!!]
手の甲から噴出させた小さな火をユニモンに向けて、手裏剣のように飛ばして発射する。
ユニモンは炎の手裏剣をかわす。
ユニモンを大きな岩がある方まで誘導すると、アグニモンな拳に炎を纏う。
アグニモン[バーニングサラマンダー!!]
フレイモンのベビーサラマンダーとは比較にならない炎が岩を粉砕する。
辺りが土煙によって覆われる。
ユニモンは思わず動きを止めた。
アグニモンは気配でユニモンの位置を確認すると、全身に炎を纏った。
アグニモン[サラマンダー…ブレイク!!]
全身を炎で包み、回転蹴りを繰り出し、黒い歯車に叩き込んだ。
黒い歯車は一瞬で粒子となって消えた。
ルカ「やった…」
大輔「おーい!!」
ルカが黒い歯車が破壊されたのを確認した時、大輔の声が響いた。
ルカ「大輔さん…?」
大輔「勝手に行動すんなよ。心配したじゃねえか!!」
賢「ルカ、独断で行動してはいけないよ」
大輔と何故か怪我をしている賢がルカに説教をする。
なのは「フレイモン、進化したの?」
アグニモン[今はアグニモンだ。よろしく]
アリサ「へえ…まるで人間みたいね」
アリサがアグニモンをまじまじと見る。
大輔「さあ、皆。頂上へ行こう!!」
大輔のかけ声で皆は歩き始めたのだった。






























おまけ

ルカが寝床から飛び出す前の話。

賢はすずかに呼ばれて、温泉から少し離れた場所にいた。
賢「すずか?何処にいるんだい?」
すずか「ここだよ賢さん」
賢「すずか…!?」
フワッ……
賢の身体に妙な感触が走った。
突然のことに対処出来ず、仰向けに倒れた。
一瞬それが何かは理解出来なかったが、すぐに理解する事が出来た。
すずかが賢の首に手を回し、抱きついてきたのだ。
ちなみにすずかが賢を押し倒す格好になっている。
賢「ちょ…!? す…すずか!?一体何を……!?」
当然抱き着かれた賢は動揺し、抱きついてきているすずかに問い掛ける。
するとすずかは賢の身体から少し離れると、何故かトロンとした眼差しで賢を見つめてくる。
すずか「賢さん……私ね…もう……我慢出来ないの……!!」
賢「え…?それってどういうことすずか!!?」
何故か賢の脳内で警報が鳴り響いている。
すずか「ここに来てから……ずっと我慢してきた…今日も本当は我慢するつもりだったんだけど……賢さんの顔を見たら…そんなの吹っ飛んじゃった…」
賢「何が!?すずか、何をする気か知らないけど、気をしっかり持って!!」
賢は必死に説得するが、すずかはトロンとした瞳のままジリジリと賢に顔を近づけてくる。
正直賢はすずかの色っぽい表情を見た瞬間、不覚にもときめいてしまった。
すずか「賢さん……!!」
賢「待ってすずか!!お願いだから待っ…」
賢の必死の説得も虚しく、ついにすずかは……。
カプッ
賢の首筋に噛み付いて…。
チュウ~
血を吸い始めた。
賢「~~~っ!!」
それに賢は声にならない悲鳴を上げた。
そしてしばらくそうしていると、すずかは満足したように賢の首筋から口を離した。
すずか「プハァ……ご馳走様、賢さん♪」
笑顔でそう言う彼女の肌は、心なしか先ほどよりもツヤツヤしているように見えた。
賢「き、君は一体…?」
首筋を摩りながら、すずかに尋ねた。
すずか「…はい」
すずかから聞いた話だと月村すずかは普通の人間ではないらしい。
彼女の家は“夜の一族”…または“吸血鬼”と呼ばれるものだ。
とは言っても、ホラー小説や映画のように人を襲っては血を吸ったりせず、普段は輸血用血液パックを常飲しているらしい。
しかしデジタルワールドにそんな物があるわけないので、すずかは好意を抱く賢の血を頂いたというわけだ。
どういう原理か分からないが噛まれた痕もすぐに治っている。
賢「へえ…吸血鬼とはね…」
すずか「…意外と反応が薄いですね」
賢「あはは、僕は非常識には耐性がついてるからね。知り合いが吸血鬼でしたってくらいで驚いたりなんてしないよ」
すずか「…それじゃあもう少し…」
賢「…出来れば首じゃなくて腕にしてくれない?」
すずか「首筋の方が美味しいんです」
そう言ってすずかが口を首筋に近づけようとした瞬間。
?「賢兄~…」
突如聞こえてきた、まるで地獄の底から響いてくるような声。
賢「っ!!は、はやて…」
賢が後ろを振り向くとどす黒いオーラを纏ったはやてだった。
はやて「賢兄…随分すずかちゃんと仲ええな~~…賢兄、すずかちゃんと付き合っとるんか?付き合っとるって言いたいんか?」
賢「え…?」
はやて「賢兄のアホオオオオッ!!!!」
賢「うわああああ!!!!」
賢がはやての誤解を解き、普段通りになるまでかなりの時間を要したのは言うまでもない。
 
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