ひねくれヒーロー
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閑話・ペインにいちゃん
閑話・ペインにいちゃん
◇◆◇ペイン◆◇◆
————シアワセなセカイのために————
————貴方も協力してくれるわよね————
————長門————
熱のこもらない瞳が、何よりも恐ろしく思えて
光の無い道を選んで生きてきたというのに、彼女がいる闇が怖くて
怖くて、怖くて
どうしようもなくて
みっとも無く逃げだせば、歪な黒い炎が身を襲った
———残念、アンタはシアワセにはなれないようだ———
子供のような、大人のような
どちらにもとれる声が、ケタケタと笑いだし、程なくして静まり返る
小さな人型を成した炎に、小南が寄り添い、オレは思わず叫んでいた
彼女の名を何度も呼びながら、叫び続けるオレを見て、残念だと溢された
すがる思いで伸ばした手には、なにも掴めない
———・・ン————
ただ恐怖だけが、腕に残った
———・イン———
どうすれば良かったのか、どうすればまた共にいられたのか
それだけが心残りで———
「ペイン!!!」
飛びこんだのは金色の光
「うわぁっ!?」
いつの間にかリンクを切り離していたペインに、再び繋ぎ直す
鮮明となる視界が正常に機能していることを証明する
・・・天道の体に異常が出ていたのだろうか
無意識のうちにリンクを切り離すことなど、今までなかったのだけれど
近いうちに、天道を変えなければならないのだろうか
「ようやく起きた!
ダメだってばよ、すぐ起きなきゃ忍者失格だってばよ」
陽光が部屋に差しこみ、目の前の少年の髪を照らし出す
金色の髪と光が反射し合って目に焼きついた
少年——うずまきナルト——が何時から居たのか、何時から呼びかけていたのか
リンクが切れた身ではまったく分からなかった
「すまない、ナルト君」
軽く頭を下げれば、彼は腕を組んでオレではない何かに怒り始めた
「もー!
エロ仙人もどっか行っちまうし、ペインはなんかボヤっとしてるし!
オレの修行はどうなるんだってばよー!」
・・・自来也先生がいない・・・
そういえば、馴染の情報屋に会いに行くと昨夜言っていたな
暁及び大蛇丸の情報収集のためには、新たな弟子となった少年の面倒までは見られない・・か・・・
・・・兄弟子として、少しは修行を見てやるか
「ナルト君、たまには体を思いっきり動かすのはどうだ?」
「へ?」
「組み手、どうかな」
キョトンとした顔が、見る見るうちに満面の笑みに変わる
自来也先生の修行は意外と座学が多い
それは先生の師がプロフェッサーとまで謳われた人物だということが影響しているのではないか
密かにオレはそう思う
普段の言動からは想像できないほど知識が豊富、人生経験からくる知恵も多い
実践を交えた忍術の講義は、一度先生の元を離れた自分にも新たな刺激を与えた
しかし、そんな修行もまだまだこの少年にはつらいのだろう
説明の最中に印を組み始めるなんてざらだ
頭で理解するよりも、体を動かしたいのだろう
急かされるように出入り口に立たれ、思わず笑みがこぼれた
修行場として使っている野原へと移動し、向き合った
「そうだな
まずは影分身ありで10分、やってみるか」
「10分どころか1時間組み手で良いってば!」
「おいおい、いきなりそんなに飛ばしてどうするんだ・・・」
「コンの所はそんな感じだってばよ」
暁に、邪神に狙われている弟弟子ねたみコン
あまり体が丈夫ではないというのに、1時間組み手・・・
あ、他の班員だけなのだろうか
オレに伝わりやすいようにコンの所と表現したのかもしれない
きっとそうだろう
※1時間組み手は初日からコンも参加しています 血反吐吐いてます
何度か拳を打ち合えば、思っていたよりも重い拳が繰り出される
しかし、フェイントを交えない真っ直ぐなその攻撃は、戦いではすぐさま見抜かれ避けられることだろう
こちらから攻撃してみれば、拳の動きに注目しすぎて蹴りに反応できず転がった
「上半身だけ、下半身だけ見るのは止めて・・・もっと全体を見るべきだな」
「いてて・・・」
そうやって何度か転ばしているうちに、町の方から正午を知らせる鐘が鳴り響いた
「・・・そろそろ、食事でも食べようか」
「さんせいー!オレもうお腹ぺこぺこ!」
町に降り飲食街を歩く
ラーメンが好きだと事あるごとに語るナルト君だが、今日もラーメンを食べるつもりなんだろうか
好きな所に行こうと言って見れば、意外な事に少しさびれた食堂を選んだ
この年頃の子は、こういった所は暗い、汚いなどの先入観があって来ないものだと思っていたが・・・
店に入ると大皿に盛られた惣菜が並べられ、バイキング形式のように好きなものを選んで食べるようだ
皿をとって、適当におかずを並べていく
あ、焼き魚がある・・・サンマ、いや、鮭も捨てがたい・・・
六道の体は死体を利用しており、食事の必要性はないが、ナルト君が傍にいるのに何も食べないというのもおかしい
だから食べるんだ
・・・食べたいからじゃない、食べなきゃおかしいんだ
「・・・野菜、嫌いじゃなかったのか?」
「んー・・・なんか煮豆とか筑前煮が昼飯にないと落ち着かないってばよ・・・」
煮物好きなのか・・・?
※コン手作り弁当には必ず煮物が添えられています
「ニンジン、カボチャ、ピーマンは絶対食べなきゃいけないような気になるってば・・・」
好きじゃないんだけど・・・
そう呟きながら、チンジャオロースーを食べ始める
・・・確か、コン君と同居していて・・・食事は彼の担当だったな
コン君の躾の賜物だろうか
野菜嫌いを公言している子供に、条件反射で食べさせるとは・・・やり手だな
※口酸っぱくして色の濃いものを食べさせています
「野菜食わずにいるとゴーヤ丸ごと食わせられるってばよ・・・
ワタは食えないってば・・・」
「・・・え、生で?」
「生で」
※口に捻じ込みます
・・・ある意味恐怖政治・・・?
「そうか、生はヒドイな・・・
コン君にも嫌いなもの食べさせたらどうだい?」
生ゴーヤの仕返しで。
「そう思って、嫌いなもの尋ねたら、果物って言われてさ・・・
胃に負担がかからないようにリンゴのコンポート買って来たんだってば
・・・火を通した果物は好きだってむっしゃむしゃ食ってた・・・」
気を使ったのに悪戯にならず・・・可哀想に
「・・・生リンゴにすべきだったね・・・」
※コンの嫌いな果物・値段の高いもの 例メロン、モモ、イチゴ等
やっすいのは大好物です
店を出て、再び修行場へ向かうため街道を歩く
すれ違った親子が、アイスを二つに割って食べている
ふと隣のナルト君を見れば、それを羨ましそうに眺めている
そうか
確か、この子に両親はいなかったな
ふと脳裏に浮かぶのは、今は亡き父と母
あんなアイスを買ったことはなかったけれど、好きなものが食卓に上がれば、多めによそってくれたのを覚えている
もう、二度と戻れない
近くの売店でアイスを買った
二つに割って、片方をナルト君に渡す
途端、真っ赤に染まった顔が、まるでトマトの様だと感じた
「前にさーコンが同じようにアイス買ってくれたんだってば」
アイスを食べながら、少しずつ話しだす
「でもアイツってば・・・
アイス食べられないのに無理して食べちゃって・・・」
・・・冷たいものも、胃にとっては刺激物・・・だよな
本当に、彼は食べられないものが多い
辛いものは一切ダメ、油の多いものも駄目、ナマモノも消化不良を起こすから駄目
長い時間加熱して、ドロドロになるぐらいの物しか口に入れていないらしい
「嬉しかったけどさ、ちょっと悲しかったってば
・・・無理させたかったわけじゃ、ないのに・・・」
落ち込んだ頭を、半ば無意識に撫でる
我に返って手をひっこめれば、ナルト君が笑いながら見上げていた
「ペインって、兄ちゃんみたいだ」
「・・・兄は、コン君じゃないのか」
コン君の班員と家族なんだろう
「コンは兄貴!」
そういって笑う子供が、とても眩しくて
日に透ける金色が、まるで太陽の様で
心の内を蝕む、あの黒い炎を吹き飛ばすように光が差し込んだ
兄ちゃんと、兄貴の違いは良く分からない
だけれど
嬉しいと思ったのは確かだった
それからオレはナルトと呼ぶようになり、ナルトはオレをペインの兄ちゃんと呼ぶようになった
———父さん、母さん———
————オレは、にいちゃんに、なりました———
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予約投稿って素敵!!
さーて次はコンとキバだー
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