遊戯王デュエルモンスターズ ~風神竜の輝き~
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第1章 夢への第1歩
第6話 絆の力が穿つ穴
「魔法カード!《極彩宝石竜の降臨》を発動!」
楠田の宣言と同時に、フィールド上に古びた岩の台座が姿を現す。
台座には五芒星が描かれ、その頂点の5ケ所に何かをはめられるような窪みがあった。
「自分の墓地の宝石竜モンスターを全てゲームから除外し、ライフポイントを半分支払う事で、手札から極彩宝石竜を特殊召喚できるカードだ!」
「極彩宝石竜……!?」
「そう!俺のデッキ最強のモンスターだ!さぁ、現れろ!グランジェム・ドラグーン!!」
楠田のデュエル・ディスクの墓地から、5体の宝石竜が現れ、それぞれが自身の名前と同じ宝石となって、台座の窪みに吸い込まれて行く。
全ての窪みが埋まった所で、今度は楠田のデュエル・ディスクのライフカウンターから、五芒星の中心に向けて光線が放たれた。
楠田 庄司
LP/1000→LP/500
光線が収まるのと同時に、五芒星から巨大な光の柱が立ち上る。
そしてその中から、目を見張るほど巨大で、そしてこの世の物と思えないほど煌びやかに飾られた竜が、咆哮と共に姿を現した。
《極彩宝石竜 グランジェム・ドラグーン》
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 光属性
ATK/4000 DEF/4000
【ドラゴン族・効果】
このカードは通常召喚できない。
《極彩宝石竜の降臨》の効果でのみ特殊召喚できる。
1ターンに1度、このカード以外の自分フィールド上に存在するドラゴン族モンスター1体を墓地に送る事で、相手フィールド上に存在するカードを2枚まで選択して破壊する事ができる。
また、このカードが攻撃する時に魔法・罠・効果モンスターの効果が発動された時、このカードの攻撃力を1000ポイントダウンする事で、その発動を無効にして破壊する事ができる。
「な、何だこれ……!?」
「すごい……こんなモンスターがいるなんて……!」
「驚いている暇はないぞ!グランジェム・ドラグーンで、《混沌の聖女-カオス・エルフ》を攻撃だ!破滅のシャイニング・ブレス!!」
高く吼えたグランジェム・ドラグーンの口から、まるで宝石が散りばめられたように光り輝くブレスが吐き出される。
「リバースカード、《和睦の使者》を発動!戦闘ダメージを0にして、モンスターの破壊も防ぎます!」
《混沌の聖女-カオス・エルフ》の盾になるように、修道女達が姿を現し、祈りを捧げ始める。
しかし、楠田はそれを許さなかった。
「悪いが、グランジェム・ドラグーンの効果を発動する!自分の攻撃中に魔法、罠カード、効果モンスターの効果が発動された時、攻撃力を1000ポイント下げて無効にする事ができる!」
「そんなっ……!?」
ブレスの勢いは少し弱まったが、修道女達の祈りは届かず、《混沌の聖女-カオス・エルフ》と共に、そのブレスになぎ払われてしまった。
「くっ……けど、《エルフ族の秘境》の効果で、戦闘ダメージは受けません!」
「そのカードは厄介だな……だが、それも次のターンまでだ。ターンエンド」
「私のターン……ドロー!」
計4枚の手札は《死者蘇生》、《復興への戦備》、《エルフ族の拘束魔法》、《エルフ族の魔力集約》。
「《死者蘇生》を発動!墓地から《救済するホーリー・エルフ》を特殊召喚します!」
再び色白の肌の美しいエルフが、祈るように手を組んで姿を現した。
「更に手札から、《エルフ族の拘束魔法》を発動!《極彩宝石竜 グランジェム・ドラグーン》を拘束します!」
「そうは行かない!リバースカード発動!《光塵迷彩》!」
《光塵迷彩》
カウンター罠カード
フィールド上に表側表示で存在する光属性モンスターを対象にする効果モンスターの効果・魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。
《極彩宝石竜 グランジェム・ドラグーン》の姿が、光の塵のようになって消失する。
亜璃沙のフィールドのエルフ達は、魔法をかける対象を見失い、魔法を行使できなくなってしまった。
「くっ……またかわされた……!」
「危ない危ない。ここで動きを封じられるわけにはいかないからな」
「……リバースカードをセットして、ターンエンドです」
「なら俺のターンだ、ドロー!……よし、《ロックガッツ・ドラゴン》を召喚!」
《極彩宝石竜 グランジェム・ドラグーン》の脇に、岩の体を持つ竜が姿を現した。
《ロックガッツ・ドラゴン》
☆☆☆☆ 地属性
ATK/1000 DEF/2000
【ドラゴン族・効果】
墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする事ができる。
「そして《ロックガッツ・ドラゴン》をリリースし、グランジェム・ドラグーンの効果を発動!その2体のモンスターを破壊だ!グランジェム・トルネード!!」
光となった《ロックガッツ・ドラゴン》を吸収したグランジェム・ドラグーンが、巨大な翼を激しく羽ばたかせる。
1度羽ばたかせただけで発生した巨大な竜巻は、亜璃沙のフィールド上の《ハイエルフ・ソードマン》と《救済するホーリー・エルフ》を遠くまで吹き飛ばしてしまった。
「さぁバトルだ!《極彩宝石竜 グランジェム・ドラグーン》でダイレクトアタック!破滅のシャイニング・ブレス!!」
先程《混沌の聖女-カオス・エルフ》をなぎ払った強力な息吹が、亜璃沙に襲い掛かる。
為す術のない亜璃沙は、その身でブレスを受けるしかなかった。
「きゃあっ!!」
「亜璃沙っ!?」
神原 亜璃沙
LP/4000→LP/1000
「まずいよっ、このままじゃ亜璃沙が負けちゃう!」
「くっ……まさかあんな大物が出て来るなんてな……」
「まだだ!俺は手札から、《スタンピング・クラッシュ》を発動!」
《スタンピング・クラッシュ》
魔法カード
自分フィールド上にドラゴン族モンスターが表側表示で存在する場合のみ発動する事ができる。
フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を選択して破壊し、そのコントローラーに500ポイントダメージを与える。
「その効果により、《エルフ族の秘境》を破壊し、神原に500ポイントのダメージを与える!」
グランジェム・ドラグーンが、その巨体を支える大木のような足で強く地面を蹴った。
それは巨大な地震となり、エルフ族の美しい村を形作る木々をなぎ倒して行く。
エルフ達の集落は倒れた木々に押し潰され、無残にもそのまま消滅してしまった。
神原 亜璃沙
LP/1000→LP/500
「やりましたよ先輩!厄介な《エルフ族の秘境》を破壊しました!」
「ああ。監督の勝利が見えて来たな」
「亜璃沙……負けるな……!」
そんな観客達の声を聞きながら亜璃沙は……喜んでいた。
自分の切り札の発動タイミングがようやく訪れた事を。
「遊雅、大丈夫よ!私は勝つわ!」
「亜璃沙……そうだ、行け!やっちまえ!」
「ほう、この状況で勝てると言うか。では見せてもらおうか!その起死回生の一手を!」
「ええ、お安い御用です!私は速攻魔法カード、《復興への戦備》を発動!」
荒れ果てた地で、エルフ達が武器を掲げ奮起している様子が描かれたカードが姿を現す。
《復興への戦備》
速攻魔法カード
自分のライフポイントが1000ポイント以下の時に、自分フィールド上に存在する《エルフ族の秘境》が破壊された場合のみ発動できる。
自分の墓地に存在する『エルフ』と名のついたモンスターを、可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。
「この効果により、私は墓地から《混沌の聖女-カオス・エルフ》、《ハイエルフ・ソードマン》、《嘲笑するダーク・エルフ》、《エルフ族の斥候》、《翻弄するエルフの剣士》を特殊召喚します!」
「なにっ、そんなに多くのモンスターを!?」
亜璃沙のフィールド上に、5体のエルフモンスターが姿を現す。
「自分達の故郷を滅ぼされた彼女達は、その相手を討つために、手を取り合って戦う決意をしました。次のターンで、それをお見せします!」
「くっ……ターンエンドだ!」
「私のターン、ドロー!」
ドローカードの確認もせずに、亜璃沙は行動を開始した。
「まずは、《嘲笑するダーク・エルフ》の効果を発動します!」
《嘲笑するダーク・エルフ》
☆☆☆☆ 闇属性
ATK/2000 DEF/800
【魔法使い族・効果】
このカードは1000ライフポイント払わなければ攻撃できない。
1ターンに1度、相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターの攻撃力を300ポイントダウンする。
ダーク・エルフが《極彩宝石竜 グランジェム・ドラグーン》を嘲るように笑う。
それに対してグランジェム・ドラグーンは怒りを露わにした咆哮を返した。
《極彩宝石竜 グランジェム・ドラグーン》
ATK/3000→ATK/2700
「更に、墓地の《祈りのエルフ》の効果を発動!手札を1枚捨てて、このカードを手札に戻します!」
《祈りのエルフ》
☆☆☆ 光属性
ATK/300 DEF/1200
【魔法使い族・チューナー】
1ターンに1度、手札を1枚捨てる事で、墓地に存在するこのカードを手札に戻す事ができる。
「そしてこのカードをもう一度墓地に捨てて、《混沌の聖女-カオス・エルフ》の効果を発動!光属性モンスターの攻撃力を1000ポイントアップ!」
カオス・エルフが、増幅した右手の光を自陣に降り注がせる。
《混沌の聖女-カオス・エルフ》
ATK/2200→ATK/3200
《ハイエルフ・ソードマン》
ATK/2400→ATK/3400
《エルフ族の斥候》
ATK/1200→ATK/2200
「バトル!《混沌の聖女-カオス・エルフ》で、《極彩宝石竜 グランジェム・ドラグーン》を攻撃!カオスエンド・フォース!!」
カオス・エルフが、両手の力を集めた巨大な力を、グランジェム・ドラグーンに放つ。
その瞬間に、楠田はカードの発動を宣言した。
「墓地の《ロックガッツ・ドラゴン》の効果発動!攻撃を無効にする!」
「よっしゃあ!防いだぜ!」
グランジェム・ドラグーンを守るように、《ロックガッツ・ドラゴン》が現れる。
海堂の歓声をよそに、亜璃沙もまた、このように宣言した。
「言ったはずですよ先生!私は勝つって!速攻魔法カード、《エルフ族の魔力集約》を発動!」
カードの発動と同時に、カオス・エルフを除く4体のエルフモンスターが、カオス・エルフの手に自分達の手を重ね合わせた。
手を通じて繋がりあった5体のエルフ達を巻き込むように、巨大なオーラが発生する。
それと同時に、カオス・エルフが放った波動も更に強力な物となった。
《エルフ族の魔力集約》
速攻魔法カード
自分フィールド上の『エルフ』と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターの攻撃力は、そのモンスター以外の自分フィールド上に存在する『エルフ』と名のついたモンスターの攻撃力の合計の数値分アップし、攻撃を無効にする事はできない。
この効果を発動する場合、このターン選択したモンスター以外は攻撃宣言を行えず、エンドフェイズ時に自分フィールド上に存在する『エルフ』と名のついたモンスターを全て破壊する。
《混沌の聖女-カオス・エルフ》
ATK/3200→ATK/12200
「こ、攻撃力12200だとぉっ!?」
「《ロックガッツ・ドラゴン》の効果も効きません!これでトドメです!」
エルフ達の協力によって勢いを増した波動は、《ロックガッツ・ドラゴン》と共に、《極彩宝石竜 グランジェム・ドラグーン》の巨体を貫いた。
グランジェム・ドラグーンは苦しそうな呻き声を上げ、眩い光を散らばせながら、消滅した。
楠田 庄司
LP/500→LP/0
「……なんてこった……まさかグランジェム・ドラグーンがやられるとは……」
「嘘だろ……いくら攻撃力が下がってたとは言え、監督の切り札を……」
「すっげぇ!やったな亜璃沙っ!!」
「すごいよ亜璃沙!まさかあんなモンスターを倒しちゃうなんて!」
「エルフ達が頑張ってくれたお陰よ。みんな、ありがとね」
亜璃沙の労いの言葉に、エルフ達はそれぞれ微笑んでから、光となって亜璃沙のデッキへ戻って行った。
「まさか、3人とも負けるとは思ってなかったぜ。これならもう文句はないな」
「そうッスね……悔しいッスけど、負けは負けッスからね」
「よしっ!それでは改めて、我がデュエル部にようこそ!これからよろしく頼むよ!」
「はい!おっしゃあ、燃えて来たぜ!」
「うん!色々と楽しみだね、遊雅!」
「私も、何だか楽しくなって来た!」
その盛り上がりに乗じて、竜兵がこんな提案をする。
「そうと決まりゃ、歓迎会だな!監督、どっか食べに行きましょうよ!」
「おういいぞ!嬉しいから今日は俺の驕りだ!新生デュエル部の門出を祝って、派手に行くぞぉっ!!」
「おぉ、監督太っ腹ッスね!」
「本当ですか!?やったな、2人とも!何食う!?」
「そうだなー、お寿司とか?」
「フルコースディナーなんかも捨て難いんじゃない?」
「お、おい君達……あ、あんまり高いのは、勘弁してくれな?」
突如として弱気になった楠田の様子を見て、一同は爆笑の渦に包まれる。
歓迎会の舞台は、多数決によってバイキングレストランに決定した。
6人は楽しく食事をして、夢や今後の目標を言い合って盛り上がっていたが、楠田の財布は、まるで先程の自分のライフポイントのように、オーバーキル級の大ダメージを受ける事となった。
楽しい宴も終わりを告げ、遊雅と亜璃沙は4人と別れて帰路に着いていた。
「いやー、食った食った。美味かったなぁ」
「そうね……ちょっとお腹が心配かも……」
「にしても、無事にデュエル部に入れてよかったぜ。これで俺の夢にも1歩近づけたな!」
「まずは、高校生のデュエル大会に優勝するのが目標?」
「ああ!公式大会なら、すごく強ぇデュエリストもたくさんいるだろうしな!プロデュエリストにスカウトされたりして!」
「そんな簡単にはいかないわよ。……けど、応援してるわ。頑張ってね!」
「おう、ありがとよ!」
間もなく、亜璃沙の家に到着する。
「それじゃあ、また明日ね、遊雅」
「おう、明日!じゃあな!」
別れの挨拶を交わして、遊雅は再び歩き出す。
程なくして、遊雅は自分の家に辿り着いた。
「ただいまー」
「あら遊雅、おかえり。どう?美味しかった?」
みんなで食事をする件については、既に母親に連絡済みだ。
「すっげぇ美味かったよ!あっ、それと、デュエル部に入る事が決まったんだ!」
「あら、そうなの?よかったじゃない!」
「どんな奴とデュエル出来るか今から楽しみだよ!それじゃ俺、ちょっと部屋でデッキ調整して来る!」
「もう少しでお風呂沸くから、寝ちゃ駄目よ~?」
走りながら返事をした遊雅は、そのまま自分の部屋に飛び込んだ。
すぐさまデッキケースから自分のデッキを取り出し、調整の前に、一番の相棒をデッキから抜き取った。
「……頼りにしてるぜ、フレスヴェルク」
立派な翼を広げて吼える様子が描かれている風神竜のカードを眺めながら、遊雅はそう呟いた。
後書き
これにて、第1章完結でございます。
1章から随分とデュエルだらけの忙しい章になってしまいましたが、楽しんで頂けたでしょうか?
オリカ盛り沢山のご都合主義感は否めませんが、何とか楽しいデュエルを描いていけるよう頑張りたいと思います。
今後とも、よろしくお願いします!
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