美しき異形達
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第三十三話 神もなくその六
「貴女のその武器を受けてもね」
「防げましたね」
「私の頭蓋骨でね」
それが出来たというのだ。
「実際に貴女の剣は防いでいたわ」
「はい、ですが」
「そこに力を使えば」
風、それをだ。
「貫けるわ」
「風の力を一点に、全て集中させました」
レイピアの先、そこにだ。
「そうしてです、貴女の脳を貫きました」
「そういうことね、本当によく考えているわ」
「完全に不死身の生物はいません」
そして、なのだった。
「脳と心臓は絶対の急所ですから」
「ええ、私にしてもね」
その脳、それに心臓はというのだ。
「この通りよ」
「では」
「これで終わりよ」
怪人は自ら敗北を認めて言った。
「貴女の勝ちよ、奇麗なだけでなく強くもあるのね」
「有り難うございます」
「お礼はいいわ、私は貴女の敵よ」
「敵であろうともお礼は言うものですので」
「礼儀作法もいいわね、ではね」
「私達はこれでね」
ウツボカヅラの怪人も言うのだった。
「去るわ」
「そうさせてもらうわ」
「そう、ではね」
「これで、ですね」
「そう、さよならよ」
「二度と会うことはないわ」
こうそれぞれ言って灰になっていってだった、怪人達は消え去った。
その消え去った一部始終まで観てだ、薊は考える顔で言った。
「伊勢神宮のところまで来るなんてな」
「ええ、ここは聖地の中の聖地よ」
菖蒲がその薊に応える。
「邪悪な存在は入ることが出来ないわ」
「だよな、道でもな」
「そういえばお寺でも闘ったわよ」
向日葵は自分のことを言った。
「そのことも考えるとね」
「怪人は邪悪でもないんだな」
「うん、そうなるわよね」
向日葵も考える顔で言う。
「やっぱり」
「ああ、しかも連中はあたし達だけ狙ってな」
「何処でも出て来るから」
「八条町だけじゃないんだよな、本当に」
「ストーカー?」
向日葵は首を傾げさせてこうも言った。
「追っ掛けて来るのなら」
「そうね、少なくとも怪人は他の人は襲わないわ」
菖蒲はまた言った。
「そのことは間違いないわ」
「何者だろうな、本当に」
「引き合ってるのかしらね」
菊も首を傾げさせつつ言う。
「私達と怪人って」
「そう言うと兄弟かしら」
「兄弟になるの?」
菊は菫の言葉に顔を向けて問うた。
「引き合うって」
「何か遺伝子で怪人を呼び寄せるものがあるのかしら」
「まさか、そんなことないでしょ」
菊は菫の言葉にいぶかしみそのうえで返した。
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