Sword Art Online 月に閃く魔剣士の刃
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7 蒼と星
「スイッチいくぞ!」
昨日散々薙ぎ払った「Knight Geist(亡霊武者)」の剣を長剣でカチ上げ、空いた胴体にアークシュートを0距離で叩き込み、左へサイドステップしてスペースを作る。
【投剣】のソードスキルであるアークシュートはどうやら投げる前から十分なアシストがかかっているらしく、円月刃の形状なら直接叩き込むことも可能らしい。
それにしてもやっぱりあの時は補正が掛かっていたらしく、素のコイツはその甲冑のおかげかアホみたいに硬い。
「はい!」
凛とした声を響かせスペースに飛び込んだのは例のミーティア。
さながら流星の如く光の尾を残して繰り出されたのはレイピアスキルのパラレル・スティングだ。
高速の2連突きを繰り出しノックバックを取ると続けてストリーク・パニッシュ。今の所確認されているレイピアスキルの中では最大連撃数の5連撃が叩き込まれる。
(コイツ熟練度だけならアスナ並みじゃねぇか、剣速も中々だし)
と心の中で呟くと同時に相手の剣が青く光った。
自分もよく使う技、【バーチカル・アーク】だろう。
「弾くからスキル叩き込め!」
ミーティアに指示しつつ自分はその横を掠めてノックバックで開いた僅かなスペースに躍り込むと、
「絶対当たらないからそのまま打ち込め!!」
身を捻り、地面に対して垂直に回転しながら体術スキル雷牙を発動。
左肘による超高速の肘打ちを、振り下ろしてくる剣を保持している手首へ合わせて叩き込んだ。
綺麗に柄を握っていた左手首を捉え、柄を握っていた手首を叩き飛ばすとそのまま倒れ込む寸前で地面を蹴って背後に回る。
死角から疾風の如く現れた何者かにスキルを中断させられた亡霊騎士は大きく体制を崩されディレイを喰らう。
そこにシュンの離脱から間髪入れずにミーティアのリニアーが叩き込まれ2歩ほど後ずさるようによろめいた。
が、後ろには俺もいる
片手剣スキルシャープネイルでまずは3連撃、最後の斜め斬りおろしの勢いを殺さずに回転して両手の二刀で斬りおろしで再度斬りつけ、さっきも使っていたスキル雷牙で前に押し込む。
雷牙はリキャストが短い体術スキルの中でも僅か5秒という超高速のリキャスト時間を誇り、そして勢いを乗せればそこそこの威力がでるため体勢が崩れてる敵をノックバックさせる程度訳ない。
そして前のミーティアがスキルを使わない2連突きから出の速さとディレイの短さに優れたストリーク、さらにリキャストの終わった瞬間再度ストリーク・パニッシュによる5連突きだ。
それだけの連続攻撃を喰らい、ようやく亡霊武者は散っていった。
「お疲れ、よく躊躇しなかったな。」
「だって絶対って言ってたから...。それに間に合ってくれるって言ってましたよね?」
「...まあ確かに。とにかくお疲れ様。」
グータッチを交わしてから、
「向こうもひと段落ついてるし安全エリア見えてるし、休憩しようか。」
少し離れた場所で戦闘していたアスナとクラインにも声をかけて安全エリアへ。
「で、どうだった?」
安全エリアに入ってアスナが尋ねてきた。
「戦闘力は問題なし、多分スイッチとかのタイミングをもうちょい詰めていけばボス攻略出していいと思う。」
「それで、シュン君にちょっとお願いしたことがあってね...。」
急に深刻そうな顔になって、
「次のボス攻略にはミーティアも参加して欲しいの。だからレベリングとパーティ戦闘のイロハを教えてあげて欲しいんだけど...いい?」
「...は?どうして俺がそんなこt「第24層フィールドボス」謹んでお引き受けします。」
「よろしい♪ねえミーティア、明日からシュン君と一緒にレベリングしてもらえる?」
「え、ええ!?いや、一体どう言う風の吹き回しっ!?」
「まあ色々あってね。それに私は私で忙しくって...。彼なら戦闘も強いしさ?」
「別にやるならやるでキッチリ仕上げてやるし、やんないならアスナに任せるけど。」
一応確認しておく、これで断りでもされたら俺がフィールドボスの件でケーキ三つは確定だろう。
「こ、この後早速・・・ダメですか?」
「ん、分かった。アスナたちとの狩りが終わったらやろうか。」
「よし、決まりぃ!でもそろそろお昼時かぁ...あ!!!」
アスナがかなり慌てたように声を上げる。それに心当たりがあったのかミーティアが小さな声で、
「そう言えば今日ってお昼から定例会議...。アスナさん不味いんじゃ。」
「か、帰る!!それじゃミーティア頼んだわ!!」
それだけ言い残すとその辺にPOPしてる敵MOB達をごぼう抜きにして駆け去った。
そして残されたクラインは、
「それじゃあ三人で行こうk「は?冗談にしては笑えんなぁ」え?」
「おら帰った帰った、今度飯奢ってやるから今帰るか俺の肘打ち一発喰らうかどっちだ?」
「ったくチクショウ...。んじゃな、多分それなりに近くで仲間とレベリングしてるから緊急時は声かけろよな」
「俺が遅れを取るとでも?まあ助かるけどな、サンキュー。」
それだけやり取りするとクラインも何処かへ行った。
「さて・・・色々やる事があるんだがその前に、だ。」
少し前置きをしといて、
「ミーティアにとって俺は大丈夫なんだな?」
それだけで意味は理解したらしい。
「...はい、大丈夫です。」
「ん~、なんでか分かる?」
「なんでだろう...。あ、でも私の男性恐怖症はある程度大柄な方によく発動してるし、それにシュンさんはなんか安心出来て。」
「安心・・・なぁ。ま、起きないならいいか。」
そう言って話題を本題へと持っていく。
「まあそれはいいとしてさ、俺以外の男とパーティ組んで最低でもさっき以上の動き、出来そう?」
「...すいません、それは無理かもです」
「いいよ、謝らなくて。今はしゃーない、それよりボス戦でフリーズされたらそれこそ生死に関わるから。ちゃんと知っておきたかっただけだ。」
という事は俺とミーティアだけで組むとすると多分遊撃的な立ち回りが割り振られる事になる。
だが、遊撃って一言で片付けられるこの役割は一番キツい。
基本的には取り巻きを散らしつつ手が空いたらボスへのダメージを稼いていく事になるんだが、実際はそんな生易しいものではなく、キツくなってくるローテを暫定的にカバーしたり、ダメージディーラー達へのタゲを奪ってタンクが展開する時間を稼いだりと、とにかく打ち合せ外の事態が最も多く発生する役割だ。
勿論アスナやキリトの現場指揮は頼りになる、しかしやはり最終的にはこっちで策や対応を考えないとジリ貧になって徐々に押し込まれてくる。
まあまだまだ攻略組の人数が足りてない、ってのが原因だからそのうち何とかなるだろうが。にしても少数精鋭が大前提で成り立ってる遊撃に間に合わせるとなると...。
一週間。いや、コイツの飲み込みの早さなら五日もいけそう。
とここで、巡らしていた思考を吹き飛ばすように、
「あ、あのっ!」
どうやら俺が黙り込んだ事によって大分気まずい思いをさせたらしい。
「ん、あー、ごめん。どうした?」
何も聞いてなかったので聞き返す。
「そ、その・・・ざっと見積もってみてどのくらい掛かりますか?」
「ん~・・・そうだなぁ」
弾き出した数字を何回か確認し、
「レベリング挟みながらだとパーティ関連含めて10日位かな、パーティだけに絞れば多分1週間、いやそっち次第では5日いけそうかな」
「じゃあ目標5日でお願いできますか?」
「よし、んじゃ早速はじめるか。まずはボス戦時の状況別のセオリーからだ」
そして時はその夜へと飛び。
「さて...遅くなりすぎたな」
ちょっと遅くなってしまったらしく周りは真っ暗、おまけに今夜は月に一度の新月の夜、月明かりさえない。こんなところまでリアルじゃなくていいんだけどな...。
そして、
「あ、あああのし、しっしシュンさん...。」
さっきからミーティアが微妙に震えつつマントの端を掴んでいる。どうやら真っ暗闇が苦手なようで、
「ど、どこにもいかないで...」
「いや、どこにもいかないから、お前裾掴んでるだろ?」
気が動転しすぎて何が何だかわかっていないらしい。
「ん~...転移結晶で飛ぶのは流石に勿体無いし、いよいよここで野宿かな...。」
「わ、私、転移結晶持ってないです...。」
「それはそれは...。まあしゃーないし、それに俺も使わんから大丈夫だよ。」
裾は掴ませておいたままポンポンと頭を叩きつつ、
「元々置いて行く気はないから。一緒にいるから今夜はここで一夜明かす、いい?」
コクコクと懸命に頷いてくれているからまあ大丈夫だろう。それよりこのままじゃアレだし少し灯りが欲しい所だが。
「あ、ちょっと待ってな、いいものあったわ。」
言うとアイテムストレージからある物を実体化させた。
キャンドルの燭台に正八面体が乗ったようなアイテムを地面に置く。すると辺りが青みがかった薄明かりで満たされた。
「わぁ...。」
「すごいだろ、クリスタルトーチっていうアイテムなんだとさ。」
まあインテリアなんだろうが...。まあ結果オーライだな。
「少しは落ち着いたか?」
声はないがマントの端を握っていた手が少し緩んでいるのが答えだ。
「なんか羽織るものある?流石に肌寒いでしょ。なんかいる?」
ゲーム内時間だとそろそろ秋も中頃、少し涼しくなってきている。
声は出さないがやはり小さく小さく頷いた。
「これくらいしかないけど、ごめんな。」
言うと黒っぽいローブを実体化させ、肩にかけてやるとそ近くの岩を背もたれ代わりにして座った。
その隣にはミーティアがすがるように座る。
「寝るまでは起きててやるから、おやすみなさい。」
「ありがとうございます...。お、おやすみなさい。」
ミーティアがローブにくるまるようにうずくまると、シュンも片膝を立てて寝る体勢に入った。
そして少し夜も更けてきた頃。
...トン。
突然の感触にうたた寝から覚めると、ミーティアが居た方に重みと体温を感じた。
そのまま丸まった体勢の腕をミーティアの肩が滑り落ちていき、そのまま俺の左足に落ち着く。
「どうしようか...。」
声には出さずに苦笑する。結局起こしちゃ悪いと、このままにすることにした
「おやすみ。」
起きないように小声で囁くと今度は完全に眠りについた。
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