| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

剣の世界で拳を振るう

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

世界樹へ

「それじゃ、乾杯」

「「乾杯」」「乾杯です」

あの後、無事に近くの町、《スイルベーン》へと到着した俺達は、
到着直後に一悶着あったものの、酒場へと移って食事の席へとありついた。

「取り合えず助けてくれてありがとう。
そう言えば色々と教えてほしいって言ってたけど、具体的にどんなこと?」

リーファは飲み物を一口飲んでから話を始めた。

「世界樹ってやつのことを教えてほしいんだ。
俺は世界樹の上に用がある」

「世界樹の……それって多分、全プレイヤーが思ってることだと思うよ」

「……どういうことだ?」

キリトはリーファの答えに聞き返す。

そもそも世界樹の上に行くためには、その根本にあるグランドクエストなるものをクリアしなくてはならないと言う設定だったはずだ。
そのクエストとは、襲い来るガーディアンを掻い潜り、天へと連なる門を開けると言うもので、
言ってみれば簡単だが、実際は無理ゲーなのだ。
先ず遠い。その次にガーディアンの数が尋常じゃない。
そして……開かない。

ゲーマーの心をへし折るこのクエストは、プレイヤーの意思を未来へと遠ざけ、
このクエストに挑む準備や合併、同盟を行う時間を浪費させるものだ。

運営に問い合わせても、『このゲームバランスは妥当なものであり…』と、聞く耳を持とうとしない。
当たり前だろう。
世界樹には、プレイヤー達が夢見る様な場所は無く、研究所の様な室内に、
モルモットにされているSAOプレイヤーが300人幽閉されているのだから。

「だからさ…何れクリアに向ける時が来るのを待つのが手っ取り早いんだよ」

「それじゃ遅すぎるんだ!」

バタンッと机を叩いて立ち上がるキリト。
その様子をリーファとユイが心配そうな目で見つめる。

「…ごめん、スグ。でも俺、どうしても行きたいんだ」

「……パパ」

「……わかった。
なら私が付いていってあげる。道案内だって出来るし、必要なことも道なりに教える」

リーファが立ち上がり、胸に手を当てて言い切った。
キリトはその様子を驚愕の表情で見た。

「でも「キリト」…ケン?」

「こうなればもう 無関係ではいられない。
ス…リーファも連れていき、何とかして世界樹へたどり着くのが妥当なんだ」

俺はキリトを宥め、リーファを見つめた。

「理由は行きながら話す。
だから頼んでいいか?世界樹まで」

「うん!任せて!」

「なら今すぐ…」

「待てコラ」

颯爽と立ち上がって出ていこうとするキリトの襟首を掴み、
引き寄せるように椅子に戻す。

「キリト…そんな装備で大丈夫か?」

「え?……問題ない」

「大有りだ馬鹿野郎。
リーファ、武具を取り扱っている店に案内してくれ。装備を整えたい」

「え?良いけど……お金あるの?」

「ああ。たんまりな」

こうして俺たちは武器屋へと向かい!装備を整えることにした。



「これなんかどうだ?」

「アホか。軽すぎる」

「ねぇねぇ、これは?」

「んー…長さがなぁ」

「籠手装備が見つからない…」

「ホントに拳で戦ってるんだ…」











「よし。取り合えずこんなところだろう。
現実ではもう夜だからな。明日の……何時だ?」

「私は部活があるから…お昼には帰ってくるよ」

「俺は暇だ」

「あーそー。なら午後1時にここへ集合。
集まり次第出発しよう」

「「「おお!」」」

こうして俺達は各自にログアウトをしてリアルへと戻った。










俺は戻ってから夕食を食べ終わり、部屋にあるパソコンで調べものをしていた。

「アルヴヘイム…武器一覧……と」

買い物中、いくら探しても小手装備は見つからず、諦めてそれなりの剣を買ったのだが、
やほり諦めきれずにGoogle先生に頼ることにしたのだ。

「おお…結構あるな…えーっと、ガントレットはっと……少なっ!えっ!?何で!?」

籠手装備に検索欄はあったものの、全部で9種しかない。
その内一番性能が良いものでも、キリトが購入したバスターソードと変わらない。

「くっそ…どうす………ん?モンスター?にへ……」

数が少ないと言うことは使うやつ、若しくは人気がないかのどちらかになる。
運営からして装備の数に偏りを見せるのはあり得ないはずだ。

「神は言った!『無いなら落とせば良いじゃないっ!』ってな!リンク・スタート!」

俺はナーヴギアをかぶってログインした。









「…っし。行くか」

俺はログアウトした場所へと現れる。
そしてマップを開いて目的地を検索し、いざ行かん!――――としたところで

「お出掛けですか?」

と、後ろから声を掛けられた。

「…子供は寝る時間だぜ?」

俺は話しかけてきた少女?に向き直った。

「パパは寝てしまってやることがありませんから。
それにAIは眠ることはありません。
良かったら付いていっても良いですか?」

まぁ、言うまでもなくキリトの娘、ユイなのだが。
つーか付いてくるのかよ。

「まぁ、装備取りに行くだけだからな」

「ありがとうございます!えへへ!」

ユイは俺の肩に乗る。
俺はそれを確認して目的地へと飛ぶのだった。







「――――で、こいつがそうか」

目的地へと到着した俺は、真っ先に獲物を見つけた。
Google先生の必殺《Wikipedia》にて拝見したイラストとは明らかに印象が違う。
紫…よりも赤に近い形の巨大なモンスター。
名前は《ドラグモンク》と言うらしい。
筋肉質な体格に、ゴツゴツとした手甲。
構えは格闘家だと一目でわかるし、他の武器は持っていいない。
Google先生はパーティー推奨とされていたが、俺にそんなお友達はいない。

『ウガァアア!』

ドラグモンクは雄叫びを上げ、その頭上にHPバーが表示される。
バーの数は二本。
ドラグモンクは此方へと走り出した。

「戦闘開始だぁ!おおおお!」

俺も続いて走り出し、勢いにのせられ、振り下ろされたドラグモンクの拳を飛び上がって回避し、
その脳天へと踵落としを食い込ませた。

「まだまだ行くぞぉぉ!」

俺は羽を出し、空中で浮かびながら顔面にラッシュを叩き込んだ。










――――パァンッ。
最後の一撃が決まり、ドラグモンクはポリゴンとなって破裂した。
俺の目の前にリザルトの表記が現れ、ユルドやドロップ品等が記載される。
その中には勿論――――

「あったぁ!っしゃあ!」

目当ての物があり、早速ながら観覧してみる。

[U]《ドラゴンハンド》
攻撃 250 敏捷70
攻撃、敏捷値50%up
弱点(ウィークポイント)攻撃時、ダメージ2倍


「何このチート武器。
……ん?何この[U]って」

「おめでとうございます!ユニーク装備ですよ!」

ユニーク装備?あぁ、だからUなのか。

「そんなに珍しい武器なのか?これ」

「はい!この世界に存在している強力な装備品の一つです!
ドロップ事態珍しいそうで、確率は0.1%にも満たないとされています!」

おい運営。お前らアホだろ。
何でそんなにドロ率低いの?あげる気無いって事なの?分かりません。
つーかそれを落とした俺は何なの?
ご都合主義ですね。ホントにありがとうございました。

「今のモンスターがPOPするには一月掛かるみたいです…。
お兄さんは凄く運が良いんですね!」

「いやぁ、はっはっは」

こんな偶然を喜ばれても困るんだけど…。
つーかこれって他のプレイヤーから妬みの対象になるんじゃないのか?

「…帰るか。
明日に備えて休んどけよユイちゃん」

「はいです!お兄さん!」

何か途中から呼び方変わってるんだけど…まぁいいか。

俺は羽を出して飛び上がり、スイルベーンのログアウト地点へと戻るのだった。

 
 

 
後書き
このドラグモンクですが、完全にオリモンなので、
ドロップ品も確率もオリジナルとなっています。
なお、オリ主は気づいていませんが、このモンスターをパーティーで倒せば0.1の確率ドロップ。
一人で倒せば確定となっていますので、最早オリ主の為にある装備と言っても過言ではないです。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧