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柔よく剛を

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第三章

「それじゃあな」
「手合わせさせてもらうんだな」
「お願いしてみるな」
「じゃあうちの学校丁渡合気道部もあるからな」
「今度行ってみるな」
 こうしてだった、定義は合気道部に手合わせをお願いした、それは合気道部の顧問の先生のところに行ってした。
 その先生は八尾什一といった、社会の先生であり背は一六〇もない定年をとっくに過ぎて今では属託で学校に来ている、その先生のところに行ってお願いすると。
 八尾は笑顔でだ、こう彼に答えた。
「はい、わかりました」
「いいんですね」
「喜んで」
 定義の申し出を受けるというのだ。
「そうさせて頂きます、それでは」
「はい、合気道部の道場に行って」
「そうして手合わせをしましょう」
「わかりました」
「私がです」
 八尾は温和な笑顔で定義に言った。
「そうさせて頂きます」
「先生がですか」
「はい、私がです」
「先生は合気道をされてましたね」
 定義は事前に聞いていた八尾のことを言った。
「九段ですね」
「そうなっています」
「しかし、それでも」
 ここから先は言わなかったが思った、八尾は既に六十をかなり超えていて格闘技には高齢に過ぎる。しかも小柄だ。これではだ。
「お願い出来ますか」
「是非共」
「わかりました、では」
「お互い怪我のないようにしましょう」
「そうですね」
 こう話してだ、そしてだった。
 定義は合気道部の道場に行ってだった、そのうえで。
 合気道部の部員達が見守る中で八尾と手合わせをした、定義はジャージを着ているが八尾は合気道の袴に上着だ。
 二人共まずは念入りに準備体操をした、勿論定義もだ。八尾は柔軟体操もする定義に温和な笑顔で言った。
「いいことですね」
「準備体操がですか」
「はい、することは」
 それがだというのだ。
「非常にいいことです」
「身体をほぐしておかないと」
 どうかと言う彼だった。
「怪我をしますから」
「その通りですね」
「ですからいつも」
「手合わせの前にですね」
「トレーニングの前にも」
 常にというのだ。
「こうしています」
「じっくりと身体をほぐしてですね」
「それからです」
「本当にいいことです、では」
「はい、これから」
「私もこうしていますので」
 見れば八尾も念入りに準備体操をしている、身体のあちこちを伸ばしほぐしている。そうしつつ定義に言うのだ。
「お願いしますね」
「いえ、こちらこそ」
 こう二人で話してからだった、あらためて。
 二人は見合い礼をしてだった、そのうえで。
 手合わせとなった、はじまるとすぐにだった。
 定義は八尾に突進し技を仕掛けようとした、だが。
 気付いた時にはだった、彼は投げられていた。しかも。
 二度三度とだ、何度仕掛けてもだ。
 彼は投げられた、受身は取っていたのでダメージは少なかったが。
 それでも仕掛ける度に投げられた、打撃技を使ってもだ。 
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