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妻が最初に作るもの

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第二章

「実際にね」
「ですよね、だからですか」
「奥さんのお料理がですか」
「不安なんですね」
「どうしても」
「どうなのかな」
 やはり腕を組んでだ。大海は心配な顔で言った。
「本当に」
「それでしたら」
 ここで先程とは別の後輩が彼に提案した。
「一度奥さんに頼んでみたらどうですか?」
「奥さんになる人にだね」
「はい、実際にお料理を作ってもらって」
 そのうえで、というのだ。
「食べさせてもらって」
「そうして自分で確かめるんだね」
「そうしたらどうですか?」
 こう大海に提案するのだった。
「そうしたら」
「そうだね、それじゃあね」
「それじゃあですね」
「実際に食べさせてもらおうかな、ただ」
 ここでだ、大海は自分達つまり彼と香音の事情を話した。
「僕達明日婚姻届提出するんだ」
「じゃあ明日からですか」
「うん、夫婦になるんだ」
「じゃあ結婚してぶっつけにですか」
「明日からなんだよね」
 このことを言うのだった。
「一緒に住むんだ。彼女が僕のマンションに来て」
「それで晴れて夫婦生活スタートですね」
「どうなるんだろうか」
 大海は不安に満ちた声で言った。
「一体」
「明日からですか」
「うん、明日からだよ」
「明日全部わかるんですね」
「そうだね、泣いても笑ってもね」
 まさにそうなるというのだ。
「明日だね」
「そうですね」
「もうあれこれ言っても仕方ないかな」
 明日、まさにすぐにわかることだからというのだ。
「この期に及んで」
「そうですよね、じゃあ」
「明日ですね」
「明日何が出て来るのか」
「それを楽しみにしてね」
「うん、そうするしかないね」
 大海は腹を括ることにした、そしてだった。
 その日の夜だった、彼は香音が自分の為に作ってくれたその料理を前にした。仕事が終わって部屋に戻ってだ。
 丁渡香音も仕事から帰って来て料理を作ったところだ、その料理は。
 ゴーヤチャンプルにだ、葱と若布の味噌汁に。
 野菜の煮物、それに納豆があった。納豆はスーパーで買ったパックのものだが先の三つの料理はというと。
 どれもだ、彼にとっては。
「いいじゃない」
「大海さんの好物なのね、どれも」
「納豆も含めてね」
 まさにその全てがというのだ。
「僕好きなんだよ」
「よかった、じゃあね」
「今からね」
「食べよう、温かいうちに」
 二人でこう話してだ、そして。 
 大海はそのゴーヤチャンプルや味噌汁を口にした、そしてこう言うのだった。 
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