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第二章


第二章

「全くよ。まだ酒が残ってるぜ」
「それじゃあまずは走ってきたらいいわ」
「ランニングかよ」
「それでお酒抜いてきたらいいじゃない」
 今度はランニングを勧めてきたのだった。
「走ってね」
「朝からランニングかよ」
「走るのが仕事でしょ?野球選手なんだし」
「それはそうだけれどな。それにしてもな」
「どうしたの?」
「いきなり修道僧になったみたいだな」
 苦笑いと共の言葉だった。
「食事も変わって酒も変えてそれに朝早く起きて身体も動かしてってな」
「それが一番いいのよ。もっと勝ちたいでしょ」
「ああ」
 このことはすぐに答えたリチャードだった。ピッチャーならばこれは当然のことである。
「それはな」
「それに長い間投げていたいでしょ」
「これが仕事だからな」
 これも異論のないことであった。それに何よりも彼は野球が好きだった。愛していると言ってもいい。それならばこれも当然のことであった。
「それもな」
「じゃあいいわね。まず早寝早起き」
「ああ」
「それと食べ物も変えて」
 それもなのだった。
「後は朝早くから身体動かしてね。いいわね」
「煙草は最初からだな」
「間違ってもドラッグはやらないでね」
 このことも言い加えてきたのだった。
「それもね」
「ドラッグやる奴は馬鹿だよ」
 リチャードはこのことについては実に忌々しげに返した。
「あれは自分で自分の首絞めるだけのものさ」
「わかっていたらいいわ。間違ってもしないでね」
「言われてもしないさ。とにかくこれで生活変えていくんだな」
「そうよ。私も付き合うから」
 彼だけではないというのだった。自分もというのである。
「それじゃあね」
「わかったさ」
 こうして彼はその生活を一変させた。すると防御率も勝利数もさらによくなった。勝率もそれと共に見間違えるまでになった。
 それにスタミナもあがった。ピッチャーとしてさらによくなってきた。
「結婚してから変わったな」
「そうだな」
 誰もが彼のそうした活躍を見て言うのだった。
「あそこまでなるなんてな」
「意外って言うべきか?」
「いや、意外じゃないだろ」
 それは何故かというとだった。
「かみさんが凄いからだよ」
「そんなに凄いのか」
「だからあそこまでできるようになったんだよ」
 こう話されるのだった。
「シモンズはな」
「そうか。だからか」
「あそこまでか」
 皆そのことに唸る程だった。
「そしてだ」
「そして?」
「さらによくなるな」
 今以上にというのである。
「あのかみさんはかなり凄いからな」
「今以上にか」
「本当にどうなるかな」
 ファン達はさらに期待していた。
「これからな」
「そうだな。楽しみだな」
 話は続く。そうしてだった。エリーはまたリチャードに対して言うのだった。
「専門家じゃないけれどね」
「何だ?」
「試合の後はちゃんとケアとかしておいて」
 それを言うのだった。
「リチャードって変化球投げること多いじゃない」
「まあな」 
 彼はどちらかというと技巧派だった。スライダーとシュートを軸にしてそこにチェンジアップやカーブを投げる。他にもナックルやシンカーも投げるのだった。
 
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